最高裁判所HP知財判決速報より

H17.12.28 東京地裁 平成17(ワ)8053等 不正競争 民事訴訟事件

企業法務戦士の雑感 [企業法務][知財] 『一橋学院』対決

■事案

大学受験予備校の商標名「一橋学院」(商標登録申請中)をめぐって、
これより先に「一橋学院」の文字を含む登録商標(後に審決取消訴訟で登録の無効が確定)
を受けた原告が、被告である「一橋学院」に対して不正競争防止法に基づく
使用差止請求権等を被告が有しないことを確認する訴えを提起した事案。


■結論

原告敗訴


■争点

条文 不正競争防止法第2条1項1号、商標法第33条1項等

差止請求の肯否


■判決内容

差止請求の肯否について、裁判所は被告の使用している名称の周知性や
原告の登録していた商標との類似性、取引の実情などから誤認混同の可能性を検討。
そのうえで原告に対する「一橋学院」表示を含む看板やポスターの
使用差止請求を肯定しています(不正競争防止法第2条1項1号、3条)。



■コメント

商標法と不正競争防止法が交錯する事案です。
商標法がカバーしている場面を不正競争防止法が同じように
カバーしていることがよくわかる内容。

こうした点もあってでしょう、原告側は差止請求の肯否の議論の中で
中用権(継続的使用権 商標法第33条1項)の
抗弁(反訴の審理)を主張している点は新味がありました。

もっとも、この点について裁判所はそっけなく、容れませんでした。
さすがに解釈論的にも結論的にもこの主張には厳しいものがありますが、
事案によってはひとつの検討項目として念頭においていい議論だと思いました。

今回の裁判だけで着手金・成功報酬で600万円の弁護士弁理士費用が
かかってしまう「一橋学院」側としては、もっと早くから商標登録をしておくなど
予防法務に努めておくべきだったとの印象が強い事案でした。


本事案を分かりやすく解説するブログ記事として、
企業法務戦士の雑感さんの記事をお読みいただければと思います。

企業法務戦士の雑感 [企業法務][知財] 『一橋学院』対決