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2006年01月04日

「テレビ番組背景音楽著作権侵害」事件〜損害賠償等請求判決(知財判決速報)〜

最高裁判所HP知財判決速報より

H17.12.22 東京地裁 平成16(ワ)17750 著作権 民事訴訟事件


企業法務戦士の雑感[企業法務][知財] 著作権は会社のものか?



■事案

テレビ番組向けに楽曲(背景音楽、効果音など)を提供していた作曲家が、
楽曲の著作権が自分にあることの確認と債務不履行等に基づく損害賠償請求を行った事案。


■結論

請求一部認容(原告側実質敗訴)



■争点

条文 著作権法第61条等

 楽曲利用許諾契約は包括的なものか。さらに著作権譲渡契約であったのか。



■判決内容

テレビ局との間の楽曲利用許諾権利関係は包括的なものか。

上記各認定事実によると,本件楽曲等は,数秒から長くても数分程度の短いものであり,テレビ番組の映像のイメージに合わせて挿入される背景音楽等であり,本件各番組と一体となって使用されることが当然の前提となっているものである。また,テレビ番組が,本件各番組のように,ローカル番組として再放送されたり,全国放送されたりすることはよくあることである。さらに,スポット用の背景音楽等については,スポット番組の性質上,反復継続的に使用されることは当然の前提とされているものである。そして,被告は,従前から,このような背景音楽等については,いわゆる「買い取り」の合意をしていたことから,本件契約についても同様に理解していたものであること,及び,原告も,本件各番組について,約22年の長期間にわたり,本件再放送等がなされており,これがテレビで放映されるだけでなく,新聞のテレビ番組予定表やその番組紹介欄にも掲載され続けてきており,本件再放送等の事実を当然に認識し得る状況が続いていたにもかかわらず,約22年間,本件再放送等について追加の対価を請求していなかったことからすれば,原告は,被告に対し,本件契約により,本件楽曲等に関する本件再放送等も含めた利用について,その都度支払を受けた報酬をもって,少なくともこれを包括的に許諾していたものと認めるのが相当である。また,原告は,平成10年の本件差押事件とこれに続く和解交渉等において,原告が被告に対し本件楽曲等の本件再放送等に伴う対価請求権を有しているとの主張を一切しておらず,このような請求権がないことを前提として行動しているものであり,このことも本件楽曲等の利用について包括的許諾があったことを強く推認させるものである。



包括的利用許諾契約をこえて著作権譲渡契約であったといえるか。

被告は,本件契約は,本件楽曲等の著作権の譲渡を内容とするものであったとも主張する。しかし,著作権の譲渡は著作権者に重要な影響を及ぼすものであるにもかかわらず,本件契約においては,契約書等,譲渡の合意があったことを明確に示す文書が作成されていないこと,被告としては,本件再放送等において追加の対価を支払うことなく自由に本件楽曲等を使用することができれば,本件契約の目的を十分達成することができること,原告が平成7年にJASRACに加入する際,当時,被告の編成局テレビ編成部長であったDは,同年12月13日付けで,本件楽曲等の一部(3曲)について,原告に著作権があることを前提としていると思料される作品公表証明をしていること(甲6),原告が被告に対し,本訴提起の数年前に,本件楽曲等の一部を原告が制作するCDに使用して良いかを念のため問い合わせたところ,被告が本件各番組とは別個に本件楽曲等を使用することについては承諾していること(乙28)などからすると,本件楽曲等については,本件契約により,被告に対し,被告が本件各番組の背景音楽等あるいはスポットとして使用することについては包括的な許諾がなされたものと認められることは前記のとおりであるものの,著作権譲渡の合意があったとまでは認めることはできない。


裁判所は、「買い取り」という合意を当事者間でしていても
文書による合意がないなどの諸事情を勘案して、
契約内容としては包括的利用許諾の範囲で認め
著作権譲渡があったとまでは認められない旨判示しました。


■コメント

原告の作曲家と被告テレビ放送局とは20年、取引金額も6000万円以上に及ぶ
付き合いがありました。
そのようななかで原告側に金策の必要が生じたのでしょう
(差押などを受けており、テレビ局にも相談しています)、
5億円の損害賠償請求をたてた訴訟を提起しました。

結論的には、著作権譲渡の合意の存在が認定されなかったので
著作権存在確認の請求の範囲では認容されたわけですが、
内容的には実質敗訴。
訴訟費用も原告が全額負担となっています(民訴法64条但書)。


著作物の利用関係についてそれが著作権譲渡とされるためには
たんなる「買い取り」などの口約束だけではなくて
文書による取り決めが重要であることを再認識させられます。

事実認定が中心の事案ですが、
テレビ番組に提供する楽曲製作の現場の雰囲気を伝えるものとして
参考になるのではないかと思います。



written by ootsukahoumu at 12:57│Comments(0)TrackBack(1)知財判決速報2005 

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1. サウンドロゴ  [ 音楽リスナーとPCユーザのための著作権パブコメ準備号 ]   2006年01月07日 03:57
すでに話題の  アサヒコム:「サウンドロゴ」は著作物? 作曲家が住生提訴     原告の作曲家のブロク uBuLOG=ウブログ  も参照すべし。 著作権ヲチャ系ブロガから既にけっこういろんな意見がでてますな。裁判では著作物性が認められるような気がします...

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