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2005年12月29日

風呂バンス浴湯保温器取扱説明書著作権侵害事件〜不正競争防止法差止等請求判決(知財判決速報)〜

知財判決速報より

★控訴審
H17.12.15 大阪高裁 平成17(ネ)742 不正競争 民事訴訟事件
★原審
H17.2.8 大阪地裁 平成15(ワ)12778 不正競争 民事訴訟事件

■事案

浴湯保温器(浴槽内の湯を温める電気ヒーター)の類似商品販売をめぐって不正競争防止法違反や商品に添付された取扱説明書、イラストの複製性に関して著作権法違反などが争われた事案

■結論

控訴棄却

■争点

条文 著作権法21条、12条 不正競争防止法2条1項1号等

1 不正競争防止法2条1項1号の商品形態、商品名の周知性、類似性
2 取扱説明書等の複製性、編集著作権侵害性

■判決内容

1 不正競争防止法2条1項1号について

裁判所は原審同様、商品の形態と商品名称について、「周知性」「類似性」を否定しています。

2 取扱説明書等の複製性

(1)「イラスト」の複製の有無について

取扱説明書の一部に使われていたイラストについて、

引用にかかる原判決認定,説示のとおりであって,商品の取扱説明書の場合,商品の使用方法,機能,生じ得る問題点とその対処方法,部品や部分の名称,注意事項や禁止事項などが文章やイラストで説明されるが,説明すべきこれらの内容が共通し,その説明内容等がありふれた表現でなされる限り,別の商品の取扱説明書であっても表現として同一又は似通ったものとなることが考えられる。しかし,著作権法が保護するのはあくまで思想や感情の創作的表現であること(著作権法2条1項1号)からすれば,仮に上記のような点に共通性が認められたとしても,そのことをもって,創作性ある部分が実質的に同一であるとか,表現上の本質的な特徴が直接感得できるとかいうことはできない。
 そうすると,控訴人イラストが著作物性を有するか否かの点はともかくとして,被控訴人イラストと控訴人イラストは,それぞれが共通する部分は,結局,控訴人商品と被控訴人商品の部品や商品部分の説明としてありふれた表現方法を使用して表現したものにすぎないし,また,ありふれた表現以外の部分において相違点が認められ,被控訴人イラストが,控訴人イラストの創作性ある部分と実質的に同一であるとか,控訴人イラストの表現上の本質的な特徴を直接感得させるとかいうことはできないから,被控訴人イラストが控訴人イラストを複製したものであるとはいえない。
 したがって,争点(3)ア(ア)(著作物性の有無)を判断するまでもなく,控訴人イラストの著作権侵害を理由とする控訴人の請求は,いずれも理由がない。


としてイラストの複製性を否定しています。

(2)「取扱説明書」の複製の有無について

原告は取扱説明書自体については、編集著作権の侵害を問題としました。

編集著作物は,「素材の選択又は配列によつて創作性を有するもの」に限り著作物として保護される(著作権法12条1項)ところ,商品の取扱説明書は,当該商品に関する各種情報という素材を扱うものであるから,控訴人取扱説明書と被控訴人取扱説明書とは対象とする商品が異なっており,「素材」となる情報も異なるから,既にこの点において,被控訴人取扱説明書が控訴人取扱説明書の編集著作権を侵害するものということはできない。
 また,この点をおいて,控訴人の主張する説明文(文章内容及び文字の大小・太細,下線の有無など),イラスト,絵表示自体を著作権法12条1項の「素材」ととらえて,その編集著作物性の有無を検討しても,控訴人主張にかかる,々義平余ι覆了藩冓法,特徴点,生じ得る問題とその対処方法,手入れ方法,各部の名称等,安全上の注意事項及び警告事項等の章立て,使用方法の説明においては時系列に沿って説明文を配列していること,∪犬呼世詭簑蠹世箸修梁仆菠法の説明において,問題点を頁の左に,対処方法を頁の右に配置していること,禁止事項についてはイラストに「×」印を付していること,C躇媚項と警告事項を分け,各事項の説明においては頁の左側に絵表示を,その右側上段に各事項を,その右側下段に説明文を配置していること,だ睫席犬鳳茲辰禿宜イラストをその横や下に配置していること,ッ躇媚項等の前には絵表示を置いて注意事項等であることの注意喚起を促していることは,いずれも,商品の取扱説明書における,章立て,文章,イラスト,絵表示の配列としてありふれたものといわざるを得ないから,「配列」の創作性を肯定することはできない。
 したがって,いずれにせよ,控訴人取扱説明書には編集著作物性を認めることはできないから,争点(3)イ(イ)(複製の有無)について判断するまでもなく,控訴人取扱説明書の編集著作権侵害を理由とする請求は,いずれも理由がない。


これに対し,控訴人は,本件の場合,編集著作物としての「素材」は,「浴湯保温器という商品の各種情報」であり,控訴人取扱説明書と被控訴人取扱説明書とで素材は共通していると主張する。
 しかし,控訴人商品と被控訴人商品は,「浴湯保温器」という点では同じであるが,既にみたとおり,商品の形態及び商品名とも類似するものとはいえず,別個の会社の製造販売する別個の商品であることは否定できないから,「素材」となる情報は異なるといわざるを得ない。


として、「素材の選択」「配列」いずれにおいても編集著作権の侵害性が否定されています。

■コメント

家電製品で同種商品の取扱説明書の著作権法上の保護の限界を示す事例です。
同種商品では取扱説明書の性質上、項目立ても含めてどうしても似通った表現となってしまいます。
今回の裁判所の判断でも表現方法や「配列」について、ありふれたものであるとされました。
もっとも類似商品を販売された先行企業としては、当該商品に関して商標登録がしてあれば商標権を根拠として、なければ不正競争防止法さらには著作権法、民法と、諸法令を駆使して侵害対応をすることになります。
したがって、著作権法の側面からの主張もその当否はともかく、訴訟上は重要な検討項目となります。
後発販売企業もこれらの点に充分留意して製品開発(添付する取扱説明書なども含めて)することが求められます。
written by ootsukahoumu at 00:06│Comments(0)TrackBack(0)知財判決速報2005 

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