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2005年12月25日

「カルティエ腕時計『パシャ』商標権侵害」事件〜商標権侵害差止等請求判決(知財判決速報)〜

知財判決速報より


H17.12.20 東京地裁 平成17(ワ)8928 商標権 民事訴訟事件



■事案
カルティエの真正腕時計などにあとからダイヤを加工して
販売した業者が商標権侵害で訴えられた事案。



■結論


請求一部認容(原告勝訴)


なお、当初より被告側は事実関係を認め和解を求めていました。
しかし、被告が弁論準備期日に無断欠席を重ねるなどの経緯もあり、
和解期日は取り消されました。


■争点


条文 商標法第25条、36条、民法709条

真正製品への後付け装飾加工が商標権侵害となるか



■判決内容


被告製品は,原告製品を加工したものであるが,以下のとおり,原告製品の品質にも影響を及ぼす改変を施したものであり,原告商標の出所表示機能及び品質保証機能を害するものといわざるを得ない。
   ア 原告製品は,原告独自の品質管理に関する基準に基づき,製造されている(弁論の全趣旨)。
   イ 上記(1)イの部品には,いずれもダイヤモンドが付されているが,このダイヤモンドは,原告製品よりも小さいものである(甲16の1ないし25及び甲37)。
   ウ 上記イのダイヤモンドには,一見して傷が見られることから,品質が良くないものである(甲37)。
    よって,被告製品の譲渡等の行為は,原告製品を加工したことをもって違法性を欠くことにはならない。
    また,被告製品の広告には,「アフターダイヤ」などの表示があるが(甲10の1ないし21),真正な原告製品として,ダイヤモンドを付したものが販売されており,被告製品がこれと混同を生じるおそれのある形態であること(甲11)に照らせば,上記表示があるとしても,原告商標の出所表示機能及び品質保証機能を害することに変わりはない。



被告の改変行為は、原告商標の出所表示機能や
品質保証機能を害するものと判断されました。



なお、損害額は被告が利益を受けた額であるとして(商標法第38条2項)、


売上金額ー変動費(仕入原価+広告費用+加工費用)=販売利益

として計算されました。



■コメント


純正品にあとから装飾加工して販売する商品は
よく見かけます。

腕時計でも、大柄のロレックスなどでは
とても真正製品とは思われないような、
べゼルや文字盤にダイヤのちりばめられた
ものがあったりします。

ロレックス社が特注でそうした製品を
製作した場合や個人的なレベルで加工業者に
特注したのであれば問題はないかもしれませんが、
個別受注以前に加工業者が加工製造したうえで
一般販売した場合はどうなるのか。

今回のカルティエの事案は、
加工されたダイヤが粗悪品であったことから
特に問題となったものと思われます。
真正製品の価値を倍化させるような加工であれば、
あるいは目をつぶってもらえたのかもしれませんが、
今回はそうはいきませんでした。


たとえば、「タンクフランセーズ」のべゼルに
加工されたダイヤは1個1600円程度。
石留め加工料が590円(1個あたり)ですから
とても安い印象です。
(24個のダイヤ加工費用は5万円程度。そのほかに文字盤に同数加工。)



パシャ、タンク、サントス・・・
カルティエは宝飾品、皮革製品とともに
腕時計でも歴史のあるブランドです。

なかでも「サントス」は、アルベルト・サントス・デュモンが
単翼飛行機設計をしていた当時、友人のルイ・カルティエに
腕時計の製作を依頼。
行動的なサントス・デュモンにマッチしたデザインの腕時計が
完成(1904年)、1911年には「サントス」として
一般にも販売されています。


こうした一個の腕時計の誕生にも物語のある
歴史ある会社(ブランド)の商品を汚す行為は
決して許されません。

海賊版製作はもちろんですが、
真正商品の改変はもっと始末が悪い行為とさえ
思われます。



■参考判例

[ゴルフクラブ販売差止商標権侵害事件]

東京地裁平成10年12月25日判決 平成6年(ワ)第5563号 商標権侵害差止等請求事件(日本ユニ著作権センター/判例全文・1998-12-25)

ゴルフクラブのヘッド(原告会社の真正構成部品)に被告がシャフトを結合加工して販売した行為が商標権侵害とされた事案です。


■追記(05.12.25)

知人の工芸作家に小粒ダイヤモンドの値段について聞いてみました。
この工芸作家さんも判決文中にあるアサオ工芸
利用しており、値段については4C判断でピンキリだということでした。

ちなみに、アサオ工芸のサイトで「上質」のものは1個1522円(1.7mmI1ブリリアントカット)と
なっています。

透明度(クラリティー)はI1だと11段階の下から3つ目。
内包物などが肉眼で容易に発見できるレベルのようです。

カルティエの宝飾品として用いるダイヤモンドの品質として
どうなんでしょうか。
written by ootsukahoumu at 05:40│Comments(2)TrackBack(1)知財判決速報2005 

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1. カルティエ訴訟判決-ブランド品のリメイクは違法  [ ファッション流通ブログde業界関心事 ]   2005年12月27日 07:46
 12月26日付け繊研新聞によると、去る20日、東京地裁が、高級時計ブランド、カ

この記事へのコメント

1. Posted by taka   2005年12月28日 02:30
こんばんわ

コメントありがとうございました。
ファッション流通ブログde業界関心事のtakaです。

そう、ファッション業界は、モラルが高くないので、生活者利益のためには、先生のような方々の啓蒙活動が必要だと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。
2. Posted by 大塚   2005年12月28日 05:44
takaさま

アパレル業界でご活躍のかたに
ブログで情報発信をしていただけると
たいへん助かります。


衣料既製品を加工しての販売について
問い合わせもあり
アタマを絞っているところです。

今後ともよろしくお願いいたします。

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