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2005年12月17日

「NOVAうさぎ商品化契約」事件〜損害賠償請求判決(知財判決速報)〜

知財判決速報より


★H17.12. 8 大阪地裁 平成15(ワ)10873 著作権 民事訴訟事件

http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/caa027de696a3bd349256795007fb825/a6b58b96c1bd6e0a492570d500202da9?OpenDocument


■事案
英会話教室を運営しているノバのキャラクター「NOVAうさぎ」の
商品化をめぐって商品化権許諾契約
(3年間の包括的継続的商品化権許諾契約)が成立しているのか
どうかが争われた事案。



■結論

請求棄却(原告の衣料品販売業者らの敗訴)


■争点

1 包括的継続的商品化権許諾契約は成立していたか
2 契約が成立していない場合の損害賠償の範囲



■判決内容


1 包括的継続的商品化権許諾契約の成否

ノバと衣料品販売業者とのあいだで契約交渉が重ねられ、
NOVAうさぎ「商品化権許諾契約書案」のやり取りが
続いていました。

そうした中で契約書への正式調印がないまま、
原告は商機を逃さないためTシャツやトートバッグなどを製造。
被告ノバ側も製造販売を認めた上で契約案の規定に沿った
著作権使用料(ロイヤリティー)相当額を請求。
原告はこれに応じて著作権使用料(ロイヤリティー)を
支払っていたという状況でした。



裁判所は、

原告サクラと被告は,電子メール等のやりとりにより,平成15年5月中旬には,被告が,原告サクラに対して本件キャラクターの商品化を許諾すること,指定商品はTシャツ等のアパレル関連の商品とすること(ただし,原告サクラは独占的な商品化権被許諾権者ではない。),サブライセンシーは原告アウトバーンのみとすること,年間最低保証使用料は500万円で,ロイヤリティーは上代の5%とすること,契約期間は3年とすることといった,商品化権許諾契約の主要な点について口頭で実質的に合意され,それ以降,約3か月弱の間,その実質的合意に沿う形で,現実に本件キャラクター商品が販売され,年間最低保証使用料が授受され,さらに実際販売量に応じたロイヤリティーも授受されたことが認められる。これらの原告サクラ及び被告の行動には,前記のような実質的合意に沿った本件許諾契約が正式にも成立していたのではないかと思わせる側面があることは否定できない。

としつつも、契約書作成・調印に向けた
当事者の意思・行動を重視し、

当事者が,契約書を作成し調印することによって契約を締結することを予定している場合においては,調印に至る過程での当事者間の口頭あるいは文書によるやりとりは,いかに主要部分について実質的に合意がなされ,一部それに則った行動がとられていようと,未だ契約交渉の一環にとどまるのであって,契約の正式な締結には至っていない,と解するのが相当である。

として、契約は締結されていないと判断しました。


さらに、標記契約が成立していないにもかかわらず
著作権使用料(ロイヤリティー)が支払われていた点について、

平成15年5月16日の実質的合意以後の当事者の行動は,契約の正式締結を見越して,商機を逃さないために前倒しで商品販売を行い,使用料の支払を行ったものといえ,これを法的に見れば,将来,3年間の継続的商品化権許諾契約が成立することを前提として,個別的単発的な商品化権許諾契約が個々の取引ごとに成立していたと認めるのが相当である。

として、個別的単発的な商品化権許諾契約が
個々の取引ごとに成立しているに過ぎないと判断しました。



2 契約が成立していない場合の損害賠償の範囲

原告は、仮に包括的継続的契約が成立していない場合であっても
被告が契約交渉の熟度が増した段階で正当な理由もなく
契約の締結を拒絶したことは契約締結上の過失又は
信義則上の付随義務違反、あるいは不法行為にあたる。
そしてこの場合の損害賠償額は向こう3年間にわたる
逸失利益であると主張しました。


しかし裁判所は、被告による契約締結の拒絶が、
契約締結上の過失又は信義則上の付随義務違反、あるいは不法行為に
あたるとして、被告が何らかの損害賠償責任を負うとしても
その範囲は原則として信頼利益の範囲に止まるものである。
その点について原告側は主張立証を尽くしていない
としてこの点の主張も退けました。





■コメント

「NOVAうさぎ」キャラクターの爆発的なヒットがあって
双方の思惑にずれが生じてしまったようです。
ノバ側としては、3年間も包括的な許諾契約に拘束されるのは
不利益が大きいと判断したのでしょうし、
衣料品販売業者も商機を逃したくないし長期的独占的な
キャラクター利用権を確保したいと考えるところです。


結論からすれば、双方が包括的継続的許諾契約書にハンコを
ついてない以上、個別契約成立の認定に止まるざるを得ない
と思われます。

商品化許諾、サブライセンシーの特定、年間最低保証使用料、
ロイヤリティー、契約期間など商品化許諾契約の主要部分に
ついては口頭で実質的に合意され、その合意以降3ヶ月間で
実際に合意に沿った形で販売、ロイヤリティー支払いが
行われてはいました。

しかし、契約交渉最終段階でロイヤリティー条項についての修正事項、
他社との競合に関する条件も出ていますし、こうした詰め切れていない
最重要事項もいくつかある以上交渉実態を重視して包括的継続的契約の
締結を肯定するのは微妙なところでした。


結果論ですが、最大限の利益追求を図った原告側の契約交渉に
判断ミスがあったといえるかもしれません。
商品化権を保持している側が強い立場にあります。

本判決は、キャラクター商品化契約交渉場面を伝える素材として
示唆に富む事案といえます。



■参考文献

1 トッパンキャラクター商品化権研究会編著
  「キャラクター・商品化権実務ガイド」(2004)

  ・・・26頁以下に契約書ひな型があります。

2 土井輝生著「キャラクター・マーチャンダイジング
  ー法的基礎と契約実務」(1990)

  ・・・本書は少し古くなりますが、81頁以下に
    日本商品化権協会標準契約書ひな型の解説が掲載されています。




written by ootsukahoumu at 00:10│Comments(0)TrackBack(0)知財判決速報2005 

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