一家に一冊はある?かもしれないほど有名な高島開運暦(運勢暦)本。易に関する何冊かの著作物を巡って関係者が訴訟をしています。
争点は書籍の著作者、職務著作の成否、編集著作物性といった点で事実認定が中心の事案です。

結論的には原告の全面敗訴


ここでは吉凶が書かれた方位盤の著作物性あるいは編集著作物性について触れた部分を紹介したいと思います。

本件各方位盤は,方位の吉凶を示す図であり(甲3,37),気学では方位を特に重要視し,人の動きによって受ける吉凶の影響を前もって知っておくことの重要性を教えている(甲3,37)というのであるから,方位の吉凶に関係のある要素を方位盤に織り込むことはありふれた表現にすぎない。また,方位盤が方位を示すものであることからすれば,これを八角形で表すこと自体はありふれた表現であるし,上記のように方位を八分割した八角形の図に吉凶を示す事項を記載することは,本件類似書籍にも見られるところである(甲5ないし7)。方位,八卦のマーク,火の場所,十二支及び九星の5つの要素を織り込んだ点についても,本件各方位盤におけるそれらの表現は,同様にありふれたものである。
したがって,本件各方位盤は,原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず,素材の選択又は配列によって創作性を有するものともいえないから,著作物あるいは編集著作物とは認められない。
』(知財判決速報より)


著作権法で保護される著作物として必要な創作性の有無の判断は「ありふれた」ものかどうかが判断基準となります。
一見すると工夫を凝らしたデザインをもつ方位盤もありふれたものだと著作権の成立が否定されるわけです。


どうしてこんなにハナシがこじれたのか、一緒に仕事をしてきた者同士が何をきっかけとして仲たがいするようになったのか。
判文からははっきりとは伺えないそうした事情こそ知りたい事案です。

H17. 9.28 東京地裁 平成16(ワ)4697 著作権 民事訴訟事件