7月に第五版が出ました。第四版から3年での改訂版となります。
「はしがき」を読んでもどこが変わったのかわからない。本文を読み比べてなくてすみません・・・

独特の文体で肩が凝らず、通勤の電車の中でも取扱い易いサイズ。
著作権と編集者・出版者」(2004)なども含めてお薦めの著作権関連本です。


裁判例に現れた出版社、編集者の責任について本書36頁以下で触れられています。
持ち込み企画の場合の出版社の責任について、「胃疾患の診断と治療」事件控訴審判決では出版社の過失(注意義務違反)を否定しています(千葉地裁S54.2.19、東高判S55.9.10)。

ところで、出版社があってはじめて表現されたものが世に出されますから著作権に関する第一次的な責任が出版社にあるという考えにも一理ありますが、執筆者と出版社・編集者はお互いの信頼関係(もちろん、いろんな場合があるので一概には括れませんが)のうえで出版行為を行っているわけですから、直ちにこの考えに対して肯首するわけにはいきません。

ただ、実際問題として紛争が発生した場合は、矢面に立つのはまず出版社であって、執筆者ではありません。
どれだけの注意義務を果たせばいいのか、出版社・編集者としては悩ましいところです。

出版社の責任について、本橋光一郎ほか編著「要約著作権判例212」(2005)を見てみると、上記「胃疾患の診断と治療」事件のほか

レリーフ『樹林』事件」(東京地判H2.4.27) 出版社の注意義務違反肯定
改訂薬理学」事件(東京地判H2.6.13) 肯定
ぐうたら健康法」事件(東京地判H7.5.31) 否定
世界極上ホテル術(ホテルジャンキーズ)」事件(東京地判H14.4.15) 肯定

などが見て取れます。


編集者の著作権基礎知識