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2005年08月07日

バナー著作権侵害事件 =H17. 6.30 名古屋地裁判決=

下級裁主要判決情報より

H17.6.30 名古屋地方裁判所 平成16年(ワ)第3697号,同第4834号 著作権侵害行為差止等請求事件


事案は、ウエブサイト内のバナーを無断でコピーして利用したというもので公衆送信権侵害として争われています。
バナーの著作物性などは争点になっていません。個人的には最小サイズで文字と色彩だけの「バナー1」の著作物性を争点にしても良かったのではないかと思うのですが、本件では損害額の算定が中心となりました。

無断使用されたバナーは2種類。「バナー1」は88×31ピクセルの「言語と美術の複合的著作物」。「バナー2」は動画バナーで「写真及び言語の複合的著作物」。「バナー2」では、バナーをクリックしてリンク先にサイトが移動することにより広告料が発生する広告契約が締結されていました。


結論的には、著作権法第114条3項(使用料相当額)の損害額を認定。

前記認定事実によれば,本件バナー1については,その制作費見積額,バナーの形状・機能,これ自体によって利益が発生するものではないこと,被告による侵害状況,侵害期間が約6か月間であること等を総合考慮すれば,原告が著作権の行使について受けるべき金銭の額は,総額で3万円であると認めるのが相当であり,本件バナー2については,そのバナーの形状・機能,収入状況,侵害状況,延べ侵害期間が約11か月間であること等を総合考慮すれば,原告が著作権の行使について受けるべき金銭の額は,総額で44万円と認めるのが相当である。」(名古屋地裁判決より抜粋)


著作権法第114条3項は、通常の使用料相当額が最低限の損害賠償額として保証される法定規定で、権利者がどのような損害を受けたかの立証は不要で社会的な相場の使用料金額を立証しさえすればその額が無条件で確保される(侵害者の反証不可)という被害者保護を趣旨とする規定(みなし規定)です(加戸守行「著作権法逐条講義四訂版」2003 662頁以下参照)。
したがって、本条項を適用する場合は使用料について社会的な相場が形成されている場合、たとえば音楽ならジャスラックの使用料規程であったり、出版物なら定価の10%(印税相当額)などが相場となります。
著作権者は本条2項と異なり侵害者の利用形態を現に行っていなくても本条項の適用を主張することができるので裁判例でも3項によるものが多いようです(早稲田祐美子「著作権侵害による損害」牧野利秋ほか編『新・裁判実務大系 著作権関係訴訟法』2004 540頁以下参照、作花文雄「詳細著作権法第三版」2004 482頁参照)。
本条項の適用に際しては客観的にみて相当な使用料相当額を追求することになるはずですが、法改正の経緯も踏まえ判例上寄与度により損害額が算定されていて当事者間の具体的な事情を踏まえた上での損害額認定となっています(金井重彦・小倉秀夫編「著作権法コンメンタール下巻」(岡村久道)2002 255頁参照)。

本条の趣旨からすると使用料について社会的な相場が形成されない場合は適用が困難となるはずですが、本事案のようなバナー無断使用の場合にも適用されていますから(バナーのライセンス契約は通常行われないと思われます)かなり柔軟な運用です。


ところで、知人のWebデザイナーにバナーの制作費用の大まかなところを聞いてみたところ、「バナバナネットを参照してみては」ということでした。サイズなどの問題もありますが、「バナー1」のような最小サイズでシンプルなものなら1万円かからないということで、制作費用15万円という原告の主張は理解しがたいところです。また、「バナー2」のほうが制作費用はかかっていそうですが、原告はこの点について主張していません。いずれにしろ原告において想定困難な使用料についての社会的な相場額を立証し切れてはいません。

結局、本件では広告料収入が生じないバナーについては制作費が、これに対して広告料収入が発生しているバナーについては広告料収入が損害額算定要素として重視されたといえます。

なお、著作権法第114条2項の規定に基づく請求もなされていましたが、原告に損害の発生はないとして受け容れられませんでした。


上記参考文献のほか、松田政行「通常受けるべき金銭の額(2)」『著作権判例百選第三版』2001 204頁以下参照。
written by ootsukahoumu at 00:36│Comments(1)TrackBack(0)知財判決速報2005 

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この記事へのコメント

1. Posted by フィジカルプランナー社長   2005年08月07日 16:35
従前の広告宣伝の方法とはやり方も規定も
異なるネット上のトラブルは使用者側にとっても
非常に不安の多い点です。
ただ、実物を手に取ることができず
判断に迷うところも多く
難しいのではないかと思っていたところ
今回の判決を読むとやはり判定基準は
客観的に見ても難しいのかなというのが感想です。
今後、こういう問題やはり増えてくるのでしょうか??

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