Tweet

2005年05月06日

学術論文盗用と共同研究者の評価 =著作者人格権侵害事件=

神奈川医科大の歯科学教室を舞台にした教授と講師との間の著作権侵害事件について、横浜地裁で判決が出たとの記事が掲載されています。

小児歯科学教科書無断引用事件


ところで、上記の裁判の事案とは異なりますが学術の場が舞台になった事件についての控訴審判決が知財判決速報に掲載されています。

H17.4.28 大阪高裁 平成16(ネ)3684 著作権 民事訴訟事件


事案は、薬理学共同研究に参画したものの、発表された英文の論文には氏名すら表示されなかったとして、原告の貢献・研究成果に対するフリーライドを追及したものです(著作者人格権侵害に基づく名誉回復措置及び損害賠償請求)。

結論的には、原審、控訴審ともに原告の請求は退けられました


争点としては、学術論文における「創作性の判断方法」、「翻案権侵害態様の場合の侵害認定の方法」といえます。

控訴審判決は、まず「学術論文での創作性」についてですが、
自然科学論文、特に実験により得られた自然科学上の知見を表現する場合は、一義的かつ明確に読者に伝達する必要があることからどうしても定型化・画一化された表現形式になってしまうので表現の選択はきわめて限定されたものになり、そこに創作性が生じる幅はおのずと小さくなってしまうということを指摘。

また「翻案」の判断方法については「江差追分事件」判決(最判H13年6月28日判決)を踏襲しつつ、原告被告両論文に関して表現上の本質的な特徴の同一性があるかどうか等を検討しています。

その上で、問題とされた両論文の表現部分について「創作性があるとはいえない」、あるいは「表現上の本質的な特徴の同一性があるということもできない」と判断しました(従って、翻案等はなく著作者人格権侵害はない。)。

控訴審、原審ともに通説的見解に立つもので結論も妥当なものと思われます。


院生の頃、指導教授から常日頃「歴史の重要性」を指導されました。
学問をするさいの研究者・学者のプライオリティは、先人の研究成果に対する厳格な認識があってのことである、と。
自分より以前に発表された研究論文があるにもかかわらず、さも自分が発見、考えついたような論文を公表することは研究者・学者として失格です。

云わずもがなですが、共同研究の成果の公表に当たっても研究参加者に対する細心の配慮が必要であるということ。控訴審判決を読んでそんなことを思いました。

既存著作物への依存一般論について、作花文雄「詳解著作権法 第三版」214頁以下参照。

H16.11. 4 大阪地裁 平成15(ワ)6252 著作権 民事訴訟事件(原審)

written by ootsukahoumu at 07:40│Comments(0)TrackBack(0)知財判決速報2005 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔