2008年05月03日
新刊案内 坂田均「判例で学ぶ 著作権法入門-実践的理解をめざして」(ミネルヴァ書房)
5月15日刊行の本書は、弁護士坂田均先生による
ワークブック体裁の著作権法入門書です。
判例を素材としていて、入門書としてはちょう
ど良い分量(100件弱)、随所に注釈を盛り込み
重要判例については分量を取ってわかりやすい
判例解説がされています。
学部生の頃にこうしたワークブックがあったら
著作権法の理解も進んだろうになあ、という
思いです。
(もっとも、20年前の学部生の頃は、
学部の科目に「著作権法」はなくて、
品川先生の「工業所有権法」くらい
しかありませんでしたが)
判例で学ぶ著作権法入門―実践的理解をめざして
ワークブック体裁の著作権法入門書です。
判例を素材としていて、入門書としてはちょう
ど良い分量(100件弱)、随所に注釈を盛り込み
重要判例については分量を取ってわかりやすい
判例解説がされています。
学部生の頃にこうしたワークブックがあったら
著作権法の理解も進んだろうになあ、という
思いです。
(もっとも、20年前の学部生の頃は、
学部の科目に「著作権法」はなくて、
品川先生の「工業所有権法」くらい
しかありませんでしたが)
判例で学ぶ著作権法入門―実践的理解をめざして
2008年05月02日
四国八十八ヶ所霊場会写真事件〜不正競争防止法 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
四国八十八ヶ所霊場会写真事件
★東京地裁平成20.4.25平成19(ワ)29381損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
原告が撮影した仏像画の写真の写真集を基に
四国八十八ヶ所霊場会が御札を無断で製作、
販売したとして不正競争行為性が争われた事案
原告:写真家
被告:四国八十八ヶ所霊場会ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 改正前不正競争防止法2条1項3号 民法709条 著作権法2条1項1号
1 不正競争行為性の肯否
2 一般不法行為性
■判決内容
<経緯>
H13.8 Dが霊場会とお砂踏本尊の製作契約(著作権譲渡)を締結
H13.9.4 原告とNHK出版が出版契約
H14.5 Dが大師御影とお砂踏本尊88点を納品(「D著作物」)
H14.5 原告がD著作物を撮影
H14.6 NHK出版から書籍2冊が出版される
H16.12 被告霊場会が87ヶ所の御影を御札として各1万部印刷
H18.6 さらに8万部増刷
<争点>
1 不正競争行為性の肯否
原告は、原告写真集の被告による複写行為等
について不正競争防止法2条1項3号の商品形態
模倣行為性(いわゆるデッドコピー)を争点と
しています。
しかし、裁判所は、
(1)
被告霊場会が製作した御札が、出版物である
別冊「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」の模倣
(実質的同一)をしたものとはいえない
(2)
原告は、営業上の利益を侵害される者にあた
らない
(3)
仮に写真集の画像が「他人の商品」性に該当
するとしても、忠実な再現を目指す性質から
すると画像に表現された線や色は同種の商品
が通常有する形態である
(改正前3号「通常有する形態」に該当)
(4)
仮に出版物がDの「心」と「魂」を伝えるもの
であり画像に表現された線や色が「通常有する
形態」ではないとしても、御札は再現において
粗雑であるからDの「心」と「魂」を伝えるもの
ではなく、模倣(実質的同一)の点を満たさない
(15頁以下)
という諸点から、原告の主張を退けました。
2 一般不法行為性
被告霊場会の担当者は、御影作品が縦1.4m、
横0.5m程度の大きさであり、原告の出版物の
画像(縦14.2cm、横5.5cm)から作品を複写
したほうが一から撮影するのに比し、作業が
楽であったという理由で原告の了解を得るこ
となくカメラで複写し、御札を製作しました。
この点について、裁判所は、原告の機材の準
備、労力、写真家の経験により得られた成果
への被告霊場会のただ乗りを認めつつも、
(1)
被告霊場会が御影作品の著作権、所有権を
保有していて御札を製作し販売すること自
体は何ら問題がないこと
(2)
2冊の出版物の発行は、被告霊場会の協力
があって可能となったものであること
という点から、被告霊場会の複写行為と御札
製作、販売行為の不法行為性を否定しました。
(16頁以下)
■コメント
四国八十八ヶ所霊場会というのは、四国にある
88ヶ所の弘法大師の霊場寺院の住職を正会員と
して組織された権利能力なき社団です。
原告が撮影した御影(おみえ)とは本尊などを
描いた絵画ですが、平面的な作品を忠実に撮影
した写真であったことから、その撮影された写
真には著作物性(著作権法2条1項1号)がないこ
とを原告も争っていません。
(5頁以下)
著作権をめぐる攻防ではなく、原告は不正競争
防止法も争点とはしていますが、被告霊場会が
同種の書籍を無断出版したわけではないですし、
争点としてあげるには厳しい印象です。
ともかく、御影の著作権が霊場会に帰属している
ので、写真家さんも問題をこじらせればこの写真
集以外に撮影した画像を二次使用するのは許諾が
得られず不可能となるわけで、そうしたリスクを
負ってまで提訴に踏み切ったというのは、よほど
思うところがあったのでしょう。
霊場会は、御札の販売にあたって、1から御影の
撮影をするのが面倒だったので写真家さんには黙
って写真集に掲載された御影の画像を複写したわ
けですが、ひとこと事前に写真家さんに説明があ
れば、その諾否も含め防げた紛争でした。
なお、今年は3月の八坂神社祇園祭ポスター事件
もあって、神社や霊場会まで被告にされてしまう
現状をみるにつけ、著作物の利用について馴れ合
いでは済まされなくなっているという印象を強く
します。
■原告写真集
「四国遍路 秘仏巡礼」(【別冊】「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」)
NHK出版 Online Shop
■追記(08.5.7)
名古屋の商標亭
5月6日記事
書籍に掲載された写真の複製
5月7日記事
書籍に掲載された写真は商品か
四国八十八ヶ所霊場会写真事件
★東京地裁平成20.4.25平成19(ワ)29381損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
原告が撮影した仏像画の写真の写真集を基に
四国八十八ヶ所霊場会が御札を無断で製作、
販売したとして不正競争行為性が争われた事案
原告:写真家
被告:四国八十八ヶ所霊場会ら
■結論
請求棄却
■争点
条文 改正前不正競争防止法2条1項3号 民法709条 著作権法2条1項1号
1 不正競争行為性の肯否
2 一般不法行為性
■判決内容
<経緯>
H13.8 Dが霊場会とお砂踏本尊の製作契約(著作権譲渡)を締結
H13.9.4 原告とNHK出版が出版契約
H14.5 Dが大師御影とお砂踏本尊88点を納品(「D著作物」)
H14.5 原告がD著作物を撮影
H14.6 NHK出版から書籍2冊が出版される
H16.12 被告霊場会が87ヶ所の御影を御札として各1万部印刷
H18.6 さらに8万部増刷
<争点>
1 不正競争行為性の肯否
原告は、原告写真集の被告による複写行為等
について不正競争防止法2条1項3号の商品形態
模倣行為性(いわゆるデッドコピー)を争点と
しています。
しかし、裁判所は、
(1)
被告霊場会が製作した御札が、出版物である
別冊「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」の模倣
(実質的同一)をしたものとはいえない
(2)
原告は、営業上の利益を侵害される者にあた
らない
(3)
仮に写真集の画像が「他人の商品」性に該当
するとしても、忠実な再現を目指す性質から
すると画像に表現された線や色は同種の商品
が通常有する形態である
(改正前3号「通常有する形態」に該当)
(4)
仮に出版物がDの「心」と「魂」を伝えるもの
であり画像に表現された線や色が「通常有する
形態」ではないとしても、御札は再現において
粗雑であるからDの「心」と「魂」を伝えるもの
ではなく、模倣(実質的同一)の点を満たさない
(15頁以下)
という諸点から、原告の主張を退けました。
2 一般不法行為性
被告霊場会の担当者は、御影作品が縦1.4m、
横0.5m程度の大きさであり、原告の出版物の
画像(縦14.2cm、横5.5cm)から作品を複写
したほうが一から撮影するのに比し、作業が
楽であったという理由で原告の了解を得るこ
となくカメラで複写し、御札を製作しました。
この点について、裁判所は、原告の機材の準
備、労力、写真家の経験により得られた成果
への被告霊場会のただ乗りを認めつつも、
(1)
被告霊場会が御影作品の著作権、所有権を
保有していて御札を製作し販売すること自
体は何ら問題がないこと
(2)
2冊の出版物の発行は、被告霊場会の協力
があって可能となったものであること
という点から、被告霊場会の複写行為と御札
製作、販売行為の不法行為性を否定しました。
(16頁以下)
■コメント
四国八十八ヶ所霊場会というのは、四国にある
88ヶ所の弘法大師の霊場寺院の住職を正会員と
して組織された権利能力なき社団です。
原告が撮影した御影(おみえ)とは本尊などを
描いた絵画ですが、平面的な作品を忠実に撮影
した写真であったことから、その撮影された写
真には著作物性(著作権法2条1項1号)がないこ
とを原告も争っていません。
(5頁以下)
著作権をめぐる攻防ではなく、原告は不正競争
防止法も争点とはしていますが、被告霊場会が
同種の書籍を無断出版したわけではないですし、
争点としてあげるには厳しい印象です。
ともかく、御影の著作権が霊場会に帰属している
ので、写真家さんも問題をこじらせればこの写真
集以外に撮影した画像を二次使用するのは許諾が
得られず不可能となるわけで、そうしたリスクを
負ってまで提訴に踏み切ったというのは、よほど
思うところがあったのでしょう。
霊場会は、御札の販売にあたって、1から御影の
撮影をするのが面倒だったので写真家さんには黙
って写真集に掲載された御影の画像を複写したわ
けですが、ひとこと事前に写真家さんに説明があ
れば、その諾否も含め防げた紛争でした。
なお、今年は3月の八坂神社祇園祭ポスター事件
もあって、神社や霊場会まで被告にされてしまう
現状をみるにつけ、著作物の利用について馴れ合
いでは済まされなくなっているという印象を強く
します。
■原告写真集
「四国遍路 秘仏巡礼」(【別冊】「四国八十八ヶ所 お砂踏本尊」)
NHK出版 Online Shop
■追記(08.5.7)
名古屋の商標亭
5月6日記事
書籍に掲載された写真の複製
5月7日記事
書籍に掲載された写真は商品か
2008年05月01日
新刊案内 金井高志「民法でみる知的財産法」(日本評論社)
CRICでの金井先生の講演会に参加していてもわかりますが、
金井先生は民法の基礎から知的財産法を読み解くアプローチ
をなされておいでで、わたし自身の民法の知識のブラッシュ
アップにもなって講演会はとても参考になるものでした。
4月30日刊行の本書も「民法の基礎理論からその応用として
の知的財産法を解説する」もので、参考文献も豊富に掲載。
手元に置きたい一冊です(本文全266頁)。
民法でみる知的財産法
金井先生は民法の基礎から知的財産法を読み解くアプローチ
をなされておいでで、わたし自身の民法の知識のブラッシュ
アップにもなって講演会はとても参考になるものでした。
4月30日刊行の本書も「民法の基礎理論からその応用として
の知的財産法を解説する」もので、参考文献も豊富に掲載。
手元に置きたい一冊です(本文全266頁)。
民法でみる知的財産法2008年04月29日
人工漁礁事件(控訴審)〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
人工漁礁事件(控訴審)
★知財高裁平成20.4.23平成19(ネ)10096不正競争行為差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 澁谷勝海
★原審
東京地裁平成19.10.23平成19(ワ)11136不正競争行為差止等請求事件PDF
■事案
人工漁礁の形態の商品等表示性(不正競争防止法2条1項1号)が
争われた事案の控訴審
原告(控訴人) :魚礁場設計製造会社
被告(被控訴人):人工漁礁等製造販売会社ら
■結論
控訴棄却
■争点
条文 不正競争防止法2条1項1号
1 商品形態の商品等表示性
2 形態の類否
3 特許権侵害性(略)
■判決内容
<争点>
1 商品形態の商品等表示性
2 形態の類否
不正競争行為該当性について、控訴審は原判決の判断を
維持しています。
(12頁)
結論として、特許権侵害性の争点の判断も含め原判決を
相当として請求を棄却しました。
■コメント
不正競争行為該当性について、原判決をそのまま
引用(原判決19頁〜25頁)して判断を維持してい
ます。
■過去のブログ記事
2007年11月03日記事
「人工漁礁」事件〜不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
2008年04月28日
ネットワーク研修教材事件〜著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
ネットワーク研修教材事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)26738損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 瀬田浩久
■事案
CCNA技術者認定資格試験対策のためのネットワーク
研修教本を元従業員らが無断で複製したことについて
元請け会社のみなし侵害行為性が争われた事案
原告:システム、人材開発会社
被告:ナレッジツール事業会社甲
一般労働者派遣業会社乙(元請け)
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第15条、21条、19条、20条、113条1項2号
1 原告教本の職務著作性
2 被告甲による著作権侵害性
3 被告甲に対する差止の要否
4 被告甲に対する損害賠償の可否
5 被告乙に対する差止の可否
6 被告乙に対する損害賠償の可否
■判決内容
<経緯>
H14 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
原告と被告乙間で講師派遣契約
原告がパワポ資料「平成14年資料」を作成
H15 被告乙がNTTラーニング、原告とH14と同一内容で契約
被告乙がNTTラーニングと教材販売契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成15年教本」を作成
H16 被告乙がNTTラーニング、原告とH15と同一内容で契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成16年教本」を作成
H16.2 Aらが教本「ネットワーク基礎」(第1版)作成
H16.5 教本「ネットワーク基礎」(第2版)作成
H17.6.20 Aが退社
H17.7 教本「ネットワーク基礎」(第3版)作成
H17.8 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
被告乙と被告甲間で講師派遣契約
被告乙とNTTラーニング間で教本制作販売契約
H17.9.7 Aが被告甲を設立、代表取締役に就任
B,C,Dが被告甲の取締役に就任、その後原告を退社
被告甲が「別件被告教本」を作成、販売
H18.1.19 原告が被告甲に「別件被告教本」販売中止通知書送付
H18.1.26 被告甲が原告に回答
H18.2.2 原告が被告甲に対して「別件被告教本」について提訴
(東京地裁平成18(ワ)2012)
H18.3.3 損害賠償金100万円で訴訟上の和解成立
------------------------------
平成14年〜16年の取引状況
NTTラーニング(CCNA資格試験対策研修開催)
↓委託(講師派遣委託)
被告乙(元請け)
↓委託(講師派遣委託)
原告
・原告社員を講師として派遣
・教材作成
------------------------------
<争点>
1 原告教本の職務著作性
被告甲は、原告に著作権が帰属していることを
認めているので争点とはなっていません。
裁判所は、原告のネットワーク研修に関する業
務を担当する部署であるシステム技術部に所属
する社員らによって作成された原告教本の職務
著作性を認めています。
(22頁以下)
2 被告甲による著作権侵害性
原告会社の退社社員である被告甲の代表取締役及び
取締役のAらは、原告に無断で原告教本に依拠し、
かつこれを複製して被告教本を作成したことを認め
ており、複製権侵害、著作者人格権(同一性保持
権、氏名表示権)侵害が認められています。
(23頁以下)
3 被告甲に対する差止の要否
被告甲は、現在被告教本を作成、販売していない
こと、今後も作成、販売行為による著作権侵害等
のおそれがあるとは認められないとして差止の必
要性が否定されています。
(24頁以下)
4 被告甲に対する損害賠償の可否
被告甲に著作権侵害等についての故意が認められ、
著作権侵害部分として21万円余り(販売数79冊)、
人格権侵害部分として50万円が損害額として認定
されています。
(25頁以下)
5 被告乙に対する差止の可否(113条1項2号)
被告乙が、著作権侵害物である被告甲の教本を情
を知って販売していたかどうか(みなし侵害行為
113条1項2号)が争点となっています。
裁判所は、被告乙に教本の著作権の帰属関係につ
いて、明確な認識を有していたと認めることはで
きないとしてみなし侵害性を否定、差止請求は理
由がないと判断しています。
(27頁以下)
6 被告乙に対する損害賠償の可否
被告乙については、みなし侵害行為(113条1項2号)
が否定されていることもあって、教本販売行為の
不法行為性が否定されています。
(29頁以下)
結論として、被告甲には71万円余りの損害賠償が
認められ、被告乙に対する請求は棄却されています。
■コメント
退職従業員による研修教材流用事案です。
別の教本に関する別訴で和解が成立している経緯
もあって、今回の教本でも著作権侵害性の部分で
は大きな争点とはなっていません。
見るべきところとしては、研修講師派遣業務の元
請けとなった乙の責任です。
原告会社を退職した従業員らが立ち上げた新会社
がいままで原告会社が行ってきた研修業務を実質
的に引継いで担当するカタチになったわけですが、
元請けの乙が原告との従前の取引関係を踏まえど
の程度教本の著作権関係などに注意をしなければ
ならなかったのか。
今回の事案では、詳細な検討に至っていませんが
(27頁以下)、クライアント先に納品する教材の
著作権関係について、元請けが無関心でいられる
訳にもいかないので、事例判断とはいえ参考とし
たいところです。
■過去のブログ記事
15条関係
2008年1月16日記事
「メンタリングトレーニング職務著作」事件〜著作権 不正競争行為差止等請求事件判決
2006年10月22日記事
「講習会資料職務著作」事件(控訴審)〜著作権 損害賠償等請求事件判決
2006年3月4日記事
「講習会資料職務著作」事件(原審)
21条関係
2007年9月3日記事
「営業ノウハウ書籍」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決
■参考文献
岡邦俊「職務著作以外の業務上の文書を会社が複製できる条件
「計装士講習資料」事件」
『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)60頁以下
ネットワーク研修教材事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)26738損害賠償等請求事件PDF
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 阿部正幸
裁判官 平田直人
裁判官 瀬田浩久
■事案
CCNA技術者認定資格試験対策のためのネットワーク
研修教本を元従業員らが無断で複製したことについて
元請け会社のみなし侵害行為性が争われた事案
原告:システム、人材開発会社
被告:ナレッジツール事業会社甲
一般労働者派遣業会社乙(元請け)
■結論
請求一部認容
■争点
条文 著作権法第15条、21条、19条、20条、113条1項2号
1 原告教本の職務著作性
2 被告甲による著作権侵害性
3 被告甲に対する差止の要否
4 被告甲に対する損害賠償の可否
5 被告乙に対する差止の可否
6 被告乙に対する損害賠償の可否
■判決内容
<経緯>
H14 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
原告と被告乙間で講師派遣契約
原告がパワポ資料「平成14年資料」を作成
H15 被告乙がNTTラーニング、原告とH14と同一内容で契約
被告乙がNTTラーニングと教材販売契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成15年教本」を作成
H16 被告乙がNTTラーニング、原告とH15と同一内容で契約
原告と被告乙間で教本制作販売契約
原告が「平成16年教本」を作成
H16.2 Aらが教本「ネットワーク基礎」(第1版)作成
H16.5 教本「ネットワーク基礎」(第2版)作成
H17.6.20 Aが退社
H17.7 教本「ネットワーク基礎」(第3版)作成
H17.8 被告乙がNTTラーニングと講師派遣契約
被告乙と被告甲間で講師派遣契約
被告乙とNTTラーニング間で教本制作販売契約
H17.9.7 Aが被告甲を設立、代表取締役に就任
B,C,Dが被告甲の取締役に就任、その後原告を退社
被告甲が「別件被告教本」を作成、販売
H18.1.19 原告が被告甲に「別件被告教本」販売中止通知書送付
H18.1.26 被告甲が原告に回答
H18.2.2 原告が被告甲に対して「別件被告教本」について提訴
(東京地裁平成18(ワ)2012)
H18.3.3 損害賠償金100万円で訴訟上の和解成立
------------------------------
平成14年〜16年の取引状況
NTTラーニング(CCNA資格試験対策研修開催)
↓委託(講師派遣委託)
被告乙(元請け)
↓委託(講師派遣委託)
原告
・原告社員を講師として派遣
・教材作成
------------------------------
<争点>
1 原告教本の職務著作性
被告甲は、原告に著作権が帰属していることを
認めているので争点とはなっていません。
裁判所は、原告のネットワーク研修に関する業
務を担当する部署であるシステム技術部に所属
する社員らによって作成された原告教本の職務
著作性を認めています。
(22頁以下)
2 被告甲による著作権侵害性
原告会社の退社社員である被告甲の代表取締役及び
取締役のAらは、原告に無断で原告教本に依拠し、
かつこれを複製して被告教本を作成したことを認め
ており、複製権侵害、著作者人格権(同一性保持
権、氏名表示権)侵害が認められています。
(23頁以下)
3 被告甲に対する差止の要否
被告甲は、現在被告教本を作成、販売していない
こと、今後も作成、販売行為による著作権侵害等
のおそれがあるとは認められないとして差止の必
要性が否定されています。
(24頁以下)
4 被告甲に対する損害賠償の可否
被告甲に著作権侵害等についての故意が認められ、
著作権侵害部分として21万円余り(販売数79冊)、
人格権侵害部分として50万円が損害額として認定
されています。
(25頁以下)
5 被告乙に対する差止の可否(113条1項2号)
被告乙が、著作権侵害物である被告甲の教本を情
を知って販売していたかどうか(みなし侵害行為
113条1項2号)が争点となっています。
裁判所は、被告乙に教本の著作権の帰属関係につ
いて、明確な認識を有していたと認めることはで
きないとしてみなし侵害性を否定、差止請求は理
由がないと判断しています。
(27頁以下)
6 被告乙に対する損害賠償の可否
被告乙については、みなし侵害行為(113条1項2号)
が否定されていることもあって、教本販売行為の
不法行為性が否定されています。
(29頁以下)
結論として、被告甲には71万円余りの損害賠償が
認められ、被告乙に対する請求は棄却されています。
■コメント
退職従業員による研修教材流用事案です。
別の教本に関する別訴で和解が成立している経緯
もあって、今回の教本でも著作権侵害性の部分で
は大きな争点とはなっていません。
見るべきところとしては、研修講師派遣業務の元
請けとなった乙の責任です。
原告会社を退職した従業員らが立ち上げた新会社
がいままで原告会社が行ってきた研修業務を実質
的に引継いで担当するカタチになったわけですが、
元請けの乙が原告との従前の取引関係を踏まえど
の程度教本の著作権関係などに注意をしなければ
ならなかったのか。
今回の事案では、詳細な検討に至っていませんが
(27頁以下)、クライアント先に納品する教材の
著作権関係について、元請けが無関心でいられる
訳にもいかないので、事例判断とはいえ参考とし
たいところです。
■過去のブログ記事
15条関係
2008年1月16日記事
「メンタリングトレーニング職務著作」事件〜著作権 不正競争行為差止等請求事件判決
2006年10月22日記事
「講習会資料職務著作」事件(控訴審)〜著作権 損害賠償等請求事件判決
2006年3月4日記事
「講習会資料職務著作」事件(原審)
21条関係
2007年9月3日記事
「営業ノウハウ書籍」事件〜著作権 著作権侵害差止等請求事件判決
■参考文献
岡邦俊「職務著作以外の業務上の文書を会社が複製できる条件
「計装士講習資料」事件」
『最新判例62を読む 著作権の事件簿』(2007)60頁以下
2008年04月25日
スターボ広告代理店事件〜著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)〜
裁判所HP 知的財産裁判例集より
スターボ広告代理店事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)10704損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
クライアントの製品広告に使用されたイラストのラ
イセンス契約関係について、製作・取次を担当した
広告代理店の著作権処理に関する責任が認められた
事案
原告:カー用品製造販売会社
被告:広告代理店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 民法415条、709条
1 原告被告間の契約内容
2 被告の履行の有無
3 損害および過失相殺
■判決内容
<経緯>
S60〜 原告被告間で取引開始
H5.9 原告製品「スターボ」(RS-12)のリーフレット製作委託
H5.11 原告製品(RS-12)の自動車雑誌用広告原稿の製作、
広告掲載取次を委託
H5.12 被告が原告に本件イラストのデュープを交付
H6.9 原告製品(RS-50)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H8.9 原告製品(RS-60)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H10.6 原告製品(RS-651)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品のパッケージデザイン製作を委託
H10.8 原告製品(RS-601)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品(RS-701)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H11.9 原告製品(RS-2000)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H12.2〜H14.5
原告新製品について、他社へデザイン製作を依頼、
広告掲載取次ぎは被告へ依頼
H14.3 本件イラストを作成したCが著作権侵害の問い合わせ
H14.7 原告は社内デザイナーによりデザインを製作、
被告が広告取次ぎ
H15.10 Cが原告に対してイラストの使用中止などの通告書送付
H15.10.24 C代理人弁護士による通告書送付
H16.1.10 Cが原告に対してイラスト使用差止等を求め提訴
(東京地裁平成16年(ワ)1398)
H17.5.16 原告とCが損害金1200万円、パッケージ廃棄で和解
------------------------------------------
平成5年9月の契約状況
クライアント(原告) 代表取締役D
↓デザイン製作依頼、印刷取次依頼
広告代理店(被告) 担当者A
↓デザイン発注
デザイン会社 代表取締役B
↓イラスト発注
イラスト製作 C
------------------------------------------
<争点>
1 原告被告間の契約内容
1.イラストの著作権譲渡の有無
原告が被告に対してデザイン製作を依頼した際、本件
イラストの著作権や著作者人格権について取決めた契
約書はありませんでした。
また、取引の経緯からも原告被告間での著作権譲渡の
口頭の合意も認定されるに至っていません。
(20頁以下)
2.契約内容に関する黙示の合意
平成12年4月以降は、原告はデザイン製作を他社に依頼
したり、自社で製作し、広告掲載の取次ぎのみ被告に
依頼していました。
この平成12年以前の原告被告間での合意内容としては、
被告に品番ごとに著作権者との翻案の許諾、著作者人格
権不行使のための権利処理が求められていたこと、また、
12年以降は、被告による権利処理について黙示の合意
がされていたと認定しています。
(21頁以下)
3.被告の契約義務内容
被告としては、著作権、著作者人格権についての権利
処理が求められ、権利処理が行われていなかったこと
を認識し又は認識し得たときは契約による信義則上、
原告への連絡など被害拡大防止義務を負っていたもの
である、とされています。
(22頁)
2 被告の履行の有無
1.被告による権利処理の有無
イラストを作成したCのことを被告担当者Aは当初か
ら知らなかったことから、権利処理は行われていませ
んでした。
(23頁)
2.被告による連絡義務の履行の有無
Cからの苦情の取扱いについて、被告社員Aは積極的
な対応をとっていませんでした。
『平成14年4月当時,原告は,既に,本件イラストをキャラクター的に使用していたものであるから,Aがその使用の中止を求めたとすれば,原告は,その宣伝広告の方法を根本から見直す必要があり,当然,そのことによって原告に生じる損害の補償問題や,それがこじれた場合の取引関係の解消の問題が生じることになり,被告として補償に応じるのか否かを真剣に検討せざるを得ない状況になる。しかしながら,Aが,このような点まで十分考慮し,以後責任を負えないことを明確に伝え,本件イラストの使用中止を強く求めることをうかがわせる状況を認めるに足りる証拠はないものである。C前訴が提起された後においても,C前訴の提起後の原告による使用は原告の自己責任である旨を伝える内容証明を原告に送付したり,被告の担当役員がD社長と面談して,上記の旨を伝えたことがうかがわれないことは,AがCからの苦情につき,明確な態度を採らなかったことをうかがわせるものである。』
(23頁以下)
結論として、被告は原告に対する連絡義務(先行行為
による通知義務)を果たしていないとされています。
3.被告の責に帰すべき事由(過失)
『被告にCが著作者であるとの認識がなかったとしても,広告代理店である被告として,自己の履行補助者の立場にあるゼル社に製作過程等を確認するなどして,著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務を有していたことは当然であるところ,被告がこの義務を履行していないことは明らかである。』
(25頁以下)
裁判所は、広告代理店として著作権法上の権利処理を行
う義務があることを明確に示しています。
3 損害および過失相殺
1.C前訴での和解金
Cと原告が別訴で和解をしていて和解金が1200万円(著
作権侵害800万円、慰謝料400万円)となっていましたが、
この1200万円が被告の債務不履行行為と相当因果関係が
ある損害と判断されています。
(26頁以下)
2.パッケージ廃棄、差替費用など
パッケージの廃棄、差替費用として発生した1979万円余
りの費用が損害として認定されています。
また、原告とCとの訴訟についての弁護士費用420万円も
損害として認定されています。
(27頁)
3.過失相殺
原告がCからの苦情を知った平成15年10月以降について
は、原告にも損害拡大防止が期待されていたとして結論
的には過失割合を原告:被告=4:6と認定しています。
(28頁以下)
結論としては、本訴の弁護士費用とあわせて3000万円余
りが損害額として認められました。
■コメント
被告の広告代理店は、交通広告に実績がある総合広
告代理業社で、戦前からの歴史のある会社です。
広告代理店の担当者は、イラストの使用中止をクラ
イアント先に強く求めることが長年の取引がある大
口取引先に対して出来なかったのかもしれません。
こと著作権侵害事案においては、書籍出版社の責任
にみられるように、取次業、仲介業社に注意義務違
反が認められ易い昨今の状況があるかもしれません。
広告代理店が著作権管理について末端の下請け先ま
で工程管理しなければならないと説示された点は重
要です。
ところで、下請けのデザイナーさんとデザイン製作
会社の間では、イラストの使用範囲を自動車雑誌用
の広告までと考えていたようです(8頁以下参照)。
なお、イラストの作成対価は25万円でした。
パッケージなどの他の媒体での二次使用は別途協議、
イラスト(キャラクター)の髪型や体型、衣装の色
彩を変更する場合はデザイナーさんに話を通せ、勝
手にやるな、ということだったと思われます。
昨年の「おりがみあそび」イラスト事件でもそうで
すが、筋を通さないと末端の制作者さんは黙っては
いません。
とはいえ、エンジンスターター用の遠隔リモコンを
手に持つミニスカートの女性の後ろ姿のイラストだ
けで4桁、5桁の損害賠償をデザイナーさんから請求
されたら正直なところ、ちょっとどうかな?という
感じですが、これがキャラクター展開(「スターボ
ねえちゃん」)していたとなると話が違うのかもし
れません。
■参考判例
・イラスト使用関係で広告代理店の責任が争点となった事例
恐竜イラスト事件(原審)
東京地裁平成10.10.26平成8(ワ)3385損害賠償請求事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・1998-10-26
・イラストの無断改変について出版社に責任が認められた事例
「おりがみあそび」イラスト事件
東京地裁平成19.11.16平成19(ワ)4822損害賠償等請求事件PDF
■参考サイト
原告会社製品
リモコンエンジンスターター[STARBOシリーズ]|サンヨーテクニカ
スターボRS-1500パッケージデザイン
isshiy's room エンジンスターター・スターボ装着
■参考文献
斉藤博ほか「シンポジウム 広告と著作権・著作隣接権」
『著作権研究』21号(1995)71頁以下
■追記(08.5.7)
企業法務戦士の雑感 5月7日記事
■[企業法務][知財]「スターボねえちゃん」をめぐる騒動の果てに。
*企業法務戦士の雑感さんの記事にイラストレーターさんの
訴状のリンクの紹介があります。
訴状
参考サイト
著作権その可能性の中心(弁護士 柳原敏夫先生)
陳述書(1)
*イラストレーターさんの原告側陳述書も掲載されています。
スターボ広告代理店事件
★東京地裁平成20.4.18平成18(ワ)10704損害賠償請求事件PDF
東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 市川正巳
裁判官 大竹優子
裁判官 宮崎雅子
■事案
クライアントの製品広告に使用されたイラストのラ
イセンス契約関係について、製作・取次を担当した
広告代理店の著作権処理に関する責任が認められた
事案
原告:カー用品製造販売会社
被告:広告代理店
■結論
請求一部認容
■争点
条文 民法415条、709条
1 原告被告間の契約内容
2 被告の履行の有無
3 損害および過失相殺
■判決内容
<経緯>
S60〜 原告被告間で取引開始
H5.9 原告製品「スターボ」(RS-12)のリーフレット製作委託
H5.11 原告製品(RS-12)の自動車雑誌用広告原稿の製作、
広告掲載取次を委託
H5.12 被告が原告に本件イラストのデュープを交付
H6.9 原告製品(RS-50)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H8.9 原告製品(RS-60)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H10.6 原告製品(RS-651)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品のパッケージデザイン製作を委託
H10.8 原告製品(RS-601)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
原告製品(RS-701)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H11.9 原告製品(RS-2000)広告原稿の製作、広告掲載取次を委託
H12.2〜H14.5
原告新製品について、他社へデザイン製作を依頼、
広告掲載取次ぎは被告へ依頼
H14.3 本件イラストを作成したCが著作権侵害の問い合わせ
H14.7 原告は社内デザイナーによりデザインを製作、
被告が広告取次ぎ
H15.10 Cが原告に対してイラストの使用中止などの通告書送付
H15.10.24 C代理人弁護士による通告書送付
H16.1.10 Cが原告に対してイラスト使用差止等を求め提訴
(東京地裁平成16年(ワ)1398)
H17.5.16 原告とCが損害金1200万円、パッケージ廃棄で和解
------------------------------------------
平成5年9月の契約状況
クライアント(原告) 代表取締役D
↓デザイン製作依頼、印刷取次依頼
広告代理店(被告) 担当者A
↓デザイン発注
デザイン会社 代表取締役B
↓イラスト発注
イラスト製作 C
------------------------------------------
<争点>
1 原告被告間の契約内容
1.イラストの著作権譲渡の有無
原告が被告に対してデザイン製作を依頼した際、本件
イラストの著作権や著作者人格権について取決めた契
約書はありませんでした。
また、取引の経緯からも原告被告間での著作権譲渡の
口頭の合意も認定されるに至っていません。
(20頁以下)
2.契約内容に関する黙示の合意
平成12年4月以降は、原告はデザイン製作を他社に依頼
したり、自社で製作し、広告掲載の取次ぎのみ被告に
依頼していました。
この平成12年以前の原告被告間での合意内容としては、
被告に品番ごとに著作権者との翻案の許諾、著作者人格
権不行使のための権利処理が求められていたこと、また、
12年以降は、被告による権利処理について黙示の合意
がされていたと認定しています。
(21頁以下)
3.被告の契約義務内容
被告としては、著作権、著作者人格権についての権利
処理が求められ、権利処理が行われていなかったこと
を認識し又は認識し得たときは契約による信義則上、
原告への連絡など被害拡大防止義務を負っていたもの
である、とされています。
(22頁)
2 被告の履行の有無
1.被告による権利処理の有無
イラストを作成したCのことを被告担当者Aは当初か
ら知らなかったことから、権利処理は行われていませ
んでした。
(23頁)
2.被告による連絡義務の履行の有無
Cからの苦情の取扱いについて、被告社員Aは積極的
な対応をとっていませんでした。
『平成14年4月当時,原告は,既に,本件イラストをキャラクター的に使用していたものであるから,Aがその使用の中止を求めたとすれば,原告は,その宣伝広告の方法を根本から見直す必要があり,当然,そのことによって原告に生じる損害の補償問題や,それがこじれた場合の取引関係の解消の問題が生じることになり,被告として補償に応じるのか否かを真剣に検討せざるを得ない状況になる。しかしながら,Aが,このような点まで十分考慮し,以後責任を負えないことを明確に伝え,本件イラストの使用中止を強く求めることをうかがわせる状況を認めるに足りる証拠はないものである。C前訴が提起された後においても,C前訴の提起後の原告による使用は原告の自己責任である旨を伝える内容証明を原告に送付したり,被告の担当役員がD社長と面談して,上記の旨を伝えたことがうかがわれないことは,AがCからの苦情につき,明確な態度を採らなかったことをうかがわせるものである。』
(23頁以下)
結論として、被告は原告に対する連絡義務(先行行為
による通知義務)を果たしていないとされています。
3.被告の責に帰すべき事由(過失)
『被告にCが著作者であるとの認識がなかったとしても,広告代理店である被告として,自己の履行補助者の立場にあるゼル社に製作過程等を確認するなどして,著作権法上問題が生じないように権利処理を行う義務を有していたことは当然であるところ,被告がこの義務を履行していないことは明らかである。』
(25頁以下)
裁判所は、広告代理店として著作権法上の権利処理を行
う義務があることを明確に示しています。
3 損害および過失相殺
1.C前訴での和解金
Cと原告が別訴で和解をしていて和解金が1200万円(著
作権侵害800万円、慰謝料400万円)となっていましたが、
この1200万円が被告の債務不履行行為と相当因果関係が
ある損害と判断されています。
(26頁以下)
2.パッケージ廃棄、差替費用など
パッケージの廃棄、差替費用として発生した1979万円余
りの費用が損害として認定されています。
また、原告とCとの訴訟についての弁護士費用420万円も
損害として認定されています。
(27頁)
3.過失相殺
原告がCからの苦情を知った平成15年10月以降について
は、原告にも損害拡大防止が期待されていたとして結論
的には過失割合を原告:被告=4:6と認定しています。
(28頁以下)
結論としては、本訴の弁護士費用とあわせて3000万円余
りが損害額として認められました。
■コメント
被告の広告代理店は、交通広告に実績がある総合広
告代理業社で、戦前からの歴史のある会社です。
広告代理店の担当者は、イラストの使用中止をクラ
イアント先に強く求めることが長年の取引がある大
口取引先に対して出来なかったのかもしれません。
こと著作権侵害事案においては、書籍出版社の責任
にみられるように、取次業、仲介業社に注意義務違
反が認められ易い昨今の状況があるかもしれません。
広告代理店が著作権管理について末端の下請け先ま
で工程管理しなければならないと説示された点は重
要です。
ところで、下請けのデザイナーさんとデザイン製作
会社の間では、イラストの使用範囲を自動車雑誌用
の広告までと考えていたようです(8頁以下参照)。
なお、イラストの作成対価は25万円でした。
パッケージなどの他の媒体での二次使用は別途協議、
イラスト(キャラクター)の髪型や体型、衣装の色
彩を変更する場合はデザイナーさんに話を通せ、勝
手にやるな、ということだったと思われます。
昨年の「おりがみあそび」イラスト事件でもそうで
すが、筋を通さないと末端の制作者さんは黙っては
いません。
とはいえ、エンジンスターター用の遠隔リモコンを
手に持つミニスカートの女性の後ろ姿のイラストだ
けで4桁、5桁の損害賠償をデザイナーさんから請求
されたら正直なところ、ちょっとどうかな?という
感じですが、これがキャラクター展開(「スターボ
ねえちゃん」)していたとなると話が違うのかもし
れません。
■参考判例
・イラスト使用関係で広告代理店の責任が争点となった事例
恐竜イラスト事件(原審)
東京地裁平成10.10.26平成8(ワ)3385損害賠償請求事件
日本ユニ著作権センター/判例全文・1998-10-26
・イラストの無断改変について出版社に責任が認められた事例
「おりがみあそび」イラスト事件
東京地裁平成19.11.16平成19(ワ)4822損害賠償等請求事件PDF
■参考サイト
原告会社製品
リモコンエンジンスターター[STARBOシリーズ]|サンヨーテクニカ
スターボRS-1500パッケージデザイン
isshiy's room エンジンスターター・スターボ装着
■参考文献
斉藤博ほか「シンポジウム 広告と著作権・著作隣接権」
『著作権研究』21号(1995)71頁以下
■追記(08.5.7)
企業法務戦士の雑感 5月7日記事
■[企業法務][知財]「スターボねえちゃん」をめぐる騒動の果てに。
*企業法務戦士の雑感さんの記事にイラストレーターさんの
訴状のリンクの紹介があります。
訴状
参考サイト
著作権その可能性の中心(弁護士 柳原敏夫先生)
陳述書(1)
*イラストレーターさんの原告側陳述書も掲載されています。
2008年04月15日
カフェ+スタジオ「nipapo」(深沢)
写真館とカフェのコラボ、広告写真家のかたが
プロデュースしたお店だそうです。
むかいには、30年来の歴史がある小林写真館がありますが、
場所柄、こちらはDog Photoがウリになりそうです。
nipapo Photo Studio + Cafe & Meal|TOP

nipapo
東京都世田谷区深沢6-3-14
Café&Meal
12:00〜0:00月曜定休
レンタルスペース
10:00〜19:00
フォトスタジオ
11:00〜19:00
プロデュースしたお店だそうです。
むかいには、30年来の歴史がある小林写真館がありますが、
場所柄、こちらはDog Photoがウリになりそうです。
nipapo Photo Studio + Cafe & Meal|TOP

nipapo
東京都世田谷区深沢6-3-14
Café&Meal
12:00〜0:00月曜定休
レンタルスペース
10:00〜19:00
フォトスタジオ
11:00〜19:00












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