2018年10月10日

フラダンス振付事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

フラダンス振付事件

大阪地裁平成30.9.20平成27(ワ)2570著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
別紙2

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    野上誠一
裁判官    大門宏一郎

*裁判所サイト公表 2018.10.03
*キーワード:フラダンス、振付、舞踏、著作物性、使用許諾

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■事案

フラダンスの振付の著作物性などが争点となった事案

原告:フラダンス指導者
被告:フラダンス教室運営会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項3号、民法651条2項

1 本件振付け6等の著作物性
2 本件各振付けの著作権の譲渡又は永久使用許諾の有無
3 被告が本件各楽曲を演奏し本件各振付けを上演し又は上演させるおそれの有無
4 被告による本件各楽曲及び本件振付け1等に係る著作権侵害行為の有無
5 被告の故意又は過失の有無
6 原告の損害の有無及び額
7 本件解除が原告にとって不利な時期にされたものか及び本件解除についてやむを得ない事由があったか

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■事案の概要

『ハワイに在住するクムフラ(フラダンスの師匠ないし指導者)である原告は,従前,フラダンス教室事業を営む被告と契約を締結し,被告ないし被告が実質的に運営する九州ハワイアン協会(以下「KHA」という。)やその会員に対するフラダンス等の指導助言を行っていたが,両者の契約関係は解消された。本件は,原告が,被告に対して,以下の請求をする事案である。』

『(1)原告は,被告が,被告の会員に対してフラダンスを指導し,又はフラダンスを上演する各施設において,別紙振付け目録記載の各振付け(以下,番号に従って「本件振付け1」のようにいい,これらを総称して「本件各振付け」という。)を被告代表者自らが上演し,会員等に上演させる行為が,原告が有する本件各振付けについての著作権(上演権)を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件各振付けの上演の差止めを請求する(第1の1項)。』

『(2)原告は,被告が,被告の会員に対してフラダンスを指導し,又はフラダンスを上演する各施設において,別紙楽曲目録記載の各楽曲(以下,番号に従って「本件楽曲1」のようにいい,これらを総称して「本件各楽曲」という。)を演奏する行為が,原告が有する本件各楽曲についての著作権を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件各楽曲の演奏の差止めを請求する(第1の2項)。』

『(3)原告は,被告が,本件各振付けを上演し又は被告の会員等に上演させた行為(上記(1))及び本件各楽曲を演奏した行為(上記(2))が,原告の著作権を侵害すると主張して,被告に対し,不法行為に基づき,平成26年11月から平成29年10月までの損害賠償金642万2464円(使用許諾料相当額409万2120円及び弁護士費用233万0344円)の一部として250万3440円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する(第1の3項)。』

『(4)原告は,被告との間で,KHA等が平成26年秋に開催するワークショップ等において被告ないしKHAの会員に対してフラダンス等の指導を行うことを内容とする準委任契約(以下「本件準委任契約」という。)を締結していたところ,被告が同契約を原告に不利な時期に解除したと主張して,被告に対し,民法656条,651条2項本文に基づき,損害賠償金385万1910円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年3月26日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を請求する(第1の4項)。』
(2頁以下)

別紙1:振付け目録6 E Pili Mai(エ・ピリ・マイ)の振付けについて
別紙2:楽曲目録/本件振付け6に関する主張対比表

<経緯>

S63 原告と被告前代表が指導契約(本件コンサルティング契約)締結
H26 本件コンサルティング契約終了

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■判決内容

<争点>

1 本件振付け6等の著作物性

(1)フラダンスの著作物性

ハワイの民族舞踊であるフラダンスの現代フラの著作物性について、人の身体の動作の型を振付けとして表現するフラが、著作権法10条1項3号の「舞踊の著作物」にあたるかどうかに関して、裁判所は、まず、

・既定のハンドモーションを歌詞に合わせて当てはめたにすぎない場合
・同じ楽曲又は他の楽曲での同様の歌詞部分について他の振付けでとられている動作と同じものである場合
・既定のハンドモーションや他の類例と差異が動作の細かな部分や目立たない部分での差異にすぎない場合

には、作者の個性が表れていると認めることはできないと説示。

その上で、フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであり、歌詞に動作を振り付けるに当たっては歌詞の意味を解釈することが前提になり、普通は言葉の通常の意味に従って解釈することになるものの、あくまで著作権法は具体的な表現の創作性を保護するものであるとして、具体的な表現に作者の個性が表れているかどうかを検討すると裁判所は言及。

また、裁判所は、リズムをとりながら流れを作るステップに関して、ステップ自体あるいはハンドモーションと一体として捉えて、当該振付けの動作に作者の個性が表れている場合の可能性に言及。

そして、ひとまとまりの流れの全体について舞踊の著作物性を認めるのが相当であり、また、本件では、原告が楽曲に対する振付けの全体としての著作物性を主張しているとして、振付け全体を対象として検討すべきであると裁判所は説示。
フラダンスに舞踊の著作物性が認められる場合において、その侵害が認められるためには、侵害対象とされたひとまとまりの上演内容に作者の個性が認められる特定の歌詞対応部分の振付けの動作が含まれることが必要なことは当然ではあるものの、それだけでは足りず、作者の個性が表れているとはいえない部分も含めて、当該ひとまとまりの上演内容について、当該フラダンスの一連の流れの動作たる舞踊としての特徴が感得されることを要すると解するのが相当であると判断。

以上の考え方を踏まえ、本件振付け6等の著作物性について個別に検討を加えた結果、裁判所は、本件振付けには、完全に独自な振付けが見られるだけでなく、他の振付けとは異なるアレンジが見られる、として、全体として見た場合に原告の個性が表現されており、全体としての著作物性を認めるのが相当である、などとして、振付け6、11、13、15、17の各振付けの著作物性を肯定しています(15頁以下)。

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2 本件各振付けの著作権の譲渡又は永久使用許諾の有無

本件各振付けについて、被告に対して著作権が譲渡ないし永久使用許諾がされたと認めるに足りる証拠はないと認定されています(111頁)。

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3 被告が本件各楽曲を演奏し本件各振付けを上演し又は上演させるおそれの有無

被告には本件振付け6等を自ら上演し又は会員等に上演させることにより、原告の著作権を侵害するおそれがあると認められています。
これに対して、本件各楽曲及び本件振付け1等については、認められていません。
結論として、原告の本件各振付けの上演等の差止請求及び本件各楽曲の演奏の差止請求は、本件振付け6等の上演等の差止めを求める限度で認められています(111頁以下)。

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4 被告による本件各楽曲及び本件振付け1等に係る著作権侵害行為の有無

本件コンサルティング契約が終了した翌日である平成26年11月1日以降の被告による著作権侵害行為として認められるのは、本件振付け6等(又はその間奏等以外の部分)を自ら上演し又は会員等に上演させた部分であると裁判所は判断しています(113頁以下)。

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5 被告の故意又は過失の有無

振付けに係る著作権侵害行為について、被告に少なくとも過失があると認められています(113頁以下)。

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6 原告の損害の有無及び額

本件振付け6等の使用許諾料相当額について、裁判所は、700ドル(被告が原告の創作した振付け及び作曲した楽曲全般の使用を行う場合の月額使用許諾料相当額)に侵害期間35か月間を乗じた上で原告が創作した振付け及び作曲した楽曲が上演・演奏された回数(726回)に占める本件振付け6等が上演された回数(90回)の割合を乗じた3037ドル(1ドル未満切捨て)と認定しています(114頁以下)。

700×35×(90÷726)≒3,037

そして、1ドル109.7円で日本円に換算して、33万3158円(1円未満切捨て)を認定しています。

3,037×109.7≒333,158

そのほか、弁護士費用相当額損害として10万円が認定されています。

結論として、原告の著作権侵害に基づく損害賠償請求は43万3158円と判断されています。

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7 本件解除が原告にとって不利な時期にされたものか及び本件解除についてやむを得ない事由があったか

被告による本件解除は「不利な時期」にされたものであるものの、「やむを得ない事由」があったと認めるのが相当であると裁判所は判断。
原告の民法651条2項本文に基づく損害賠償請求は認められていません(122頁以下)。

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■コメント

バレエにしろ日本舞踊にしろ、型のあるものについては既存の型と切り離せない部分があり(型自体の表現であっても細かくみれば千差万別でしょうし)、新作の舞踏に創作性を広く認めれば、反面として先人のアイデアなどの特定個人による独占に繋がりかねず、他人の新しい創作の幅を狭めることにもなるので、裁判所も政策的価値判断からより良いバランスを求めて苦心していることが判決文から伺えます(16頁以下参照)。

フラでのハンドモーションがいわば手話のようなものとすれば、手話自体に著作物性を認めないのと同じ思考になるかと考えられますが、動作に選択の幅があり、また舞踏全体の表現として見た結果として創作者の個性が表れていれば、著作物性を認めると裁判所は示しています。

書面よりもビデオ、録画ビデオよりも生の実演のほうが感銘力がありますが、法廷で検証として原告の教え子が踊る中、原告が解説を行ったそうです。
フラダンス振付けに「著作権」、判決読んだら色々画期的。「歌詞と動作の連動」も評価ー弁護士ドットコム(2018年09月24日 13時02分記事)

原告側弁護活動が効果的だったと思われるところです。

なお、舞踏の著作物性に関する過去の判例としては、以下のようなものがあります。

(1)ファッションショー映像事件(控訴審)
知財高裁平成26.8.28平成25(ネ)10068損害賠償請求控訴事件
関連記事
判決文PDF

舞台上の一定の位置でモデルが決めるポーズの振り付けの著作物性などが争点となった事案

(2)「Shall we ダンス?」振付事件
東京地裁平成24.2.28平成20(ワ)9300損害賠償請求事件
関連記事
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社交ダンスの振付の著作物性などが争点となった事案

(3)手あそび歌出版差止事件
東京地裁平成21.8.28平成20(ワ)4692出版差止等請求事件
関連記事
判決文PDF

幼児のお遊戯である「手あそび歌」が収録されたDVD付書籍の複製権侵害性などが争われた事案

(4)日本舞踊家元事件
福岡高裁平成14.12.26平成11(ネ)358著作権確認等請求控訴事件
判決文PDF
福岡地裁小倉支部平成11.3.23平成7(ワ)240、1126

日本舞踊の振付の著作物性が争点となった事案

(5)バレエ作品振付事件(ベジャール「アダージェット」事件)
東京地裁平成10.11.20平成8(ワ)19539損害賠償等請求事件

バレエの振付の著作物性が争点となった事案

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2018年10月06日

「壁ドン」イラスト無断使用事件(別件)−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「壁ドン」イラスト無断使用事件(別件)

東京地裁平成30.9.13平成30(ワ)12524損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2018.10.3
*キーワード:壁ドン、イラスト、送信可能化権、損害論

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■事案

イラストが無断でサイトに転載された事案

原告:イラストレーター
被告:ウェブサイト運営者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条、114条3項

1 本件各イラストの著作権者が原告であるか否か
2 原告が許可していたか
3 被告が本件記事の投稿について不法行為責任を負うか
4 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,原告が著作権を有するイラスト3点を被告がその運営するウェブサイトに掲載した行為は上記各イラストについての原告の送信可能化権(著作権法23条1項)を侵害するものであると主張して,送信可能化権侵害の不法行為に基づき,著作権法114条3項により損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H22.12 原告が集英社第11回ウルトラ漫画賞受賞
H26.07 Bツイッターアカウントにイラスト3点(本件各イラスト)掲載
H26.08 本件サイトで本件記事中に本件各イラスト転載
H29.06 原告が被告に削除と9万円支払い請求
H29.10 原告が東京簡裁に提訴。30万支払い和解に代わる決定。被告が異議申し立て
H30.04 東京地裁に移送

本件サイト:「ニュースちゃんねる」
本件記事:「【壁ドン】男子必見!「色々な壁ドン」をご紹介(※画像あり)」

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■判決内容

<争点>

1 本件各イラストの著作権者が原告であるか否か

本件各イラストの著作権者は原告であると裁判所は認定しています(8頁)。

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2 原告が許可していたか

被告は、本件各イラストを原告がツイッター上に公開したことによって、ツイッター利用規約に基づいて第三者による公表等を許可したことになる、として被告の行為は原告の著作権を侵害しないと反論しましたが、裁判所は認めていません(8頁以下)。

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3 被告が本件記事の投稿について不法行為責任を負うか

被告は、本件サイトのサポートを行っているだけであり、本件記事等の作成や投稿を一切行っていないと反論しました。
この点について、裁判所は、被告は形式的にも実質的にも本件サイトの運営において重要な役割を担っていたとして、本件記事の投稿等について、共同不法行為に基づく法的責任を負うと判断。被告の反論を認めていません(9頁以下)。

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4 損害論

イラスト1点につき1年当たりの使用料3万円×3点×掲載期間3年分の合計27万円と弁護士費用相当額損害3万円の合計30万円が損害額として認定されています(10頁以下)。

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■コメント

「壁ドン」イラスト無断掲載訴訟ですが、同一原告による「ガールズVIPまとめ」サイトに掲載された別案件があります。別訴でも30万円の損害額が認定されています。

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■過去のブログ記事

「壁ドン」イラスト無断使用事件
東京地裁平成30.6.7平成29(ワ)39658損害賠償請求事件
2018年07月09日記事
written by ootsukahoumu at 06:46|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年09月19日

5tion専属契約報酬未払い事件− 報酬金支払等請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

5tion専属契約報酬未払い事件

東京地裁平成30.8.30平成28(ワ)6073等報酬金支払等請求事件(本訴)過払報酬金返還請求事件(反訴)PDF
別紙1
別紙2

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    奥 俊彦
裁判官    高桜慎平

*裁判所サイト公表 2018.9.12
*キーワード:専属契約、マネジメント契約、債務不履行

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■事案

K-POPアイドルグループが専属事務所との間で報酬支払いなどを巡って紛争になった事案

本訴原告・反訴被告:グループアーティスト4名
本訴被告・反訴原告:芸能マネジメント会社

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■結論

本訴請求一部認容、反訴請求棄却

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■争点

条文 民法415条

1 報酬1及び報酬2の算定において収益から経費を控除すべきか
2 報酬2における原告らへの分配の割合
3 平成27年3月の被告による公演開催義務違反の有無
4 報酬1ないし報酬3における売上、経費及び既払金の額
5 報酬1ないし報酬3の支払時期
6 未払報酬額ないし過払報酬額

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■事案の概要

『本件は,原告らが,エンターテイメント事業を行う被告との間でマネジメント委託等を内容とする専属契約及び附属合意(以下,併せて「本件契約」という。)を平成25年8月に締結し,グループ名「5tion」としてアーティスト活動をしていたところ,被告が本件契約に定められた報酬を支払わず,また,本件契約に定められた公演を開催しなかったことにより報酬を得られなかったと主張して,被告に対し,本件契約に基づく未払報酬請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求として,原告Aにおいて,847万9821円及びこれに対する本件契約終了以後である平成27年8月5日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を,原告Bにおいて,916万3409円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を,原告Cにおいて,872万3600円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を,原告Dにおいて,916万3409円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める(本訴請求)のに対し,被告が,原告らに支払った報酬が過払いであったと主張して,原告らに対し,不当利得返還請求として,それぞれ236万8765円及びこれに対する不当利得発生後である平成28年9月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(反訴請求)事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H13.12 5tionが韓国で結成
H25.08 原告らが被告と専属契約締結
H27.08 専属契約終了

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■判決内容

<争点>

1 報酬1及び報酬2の算定において収益から経費を控除すべきか

結論として、裁判所は、附属合意書1項及び2項における分配の対象となる収益とは、専属契約書10条で定められているように収入から経費を控除した金額をいうものと解すべきであるとして、報酬1及び報酬2の算定においては、収益から経費を控除すべきものと認めるのが相当であると判断しています(33頁以下)。

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2 報酬2における原告らへの分配の割合

裁判所は、報酬2における原告らへの分配割合は70%であると判断しています(36頁以下)。

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3 平成27年3月の被告による公演開催義務違反の有無

原告らは、被告が附属合意書8項において、原告らに対してSHOW BOXにおける公演を1か月当たり(最低でも)10回以上開催する義務を負っているにもかかわらず、平成27年3月はSHOW BOXにおける公演は一切開催されなかったため公演開催義務に違反していると主張しました。
この点について、裁判所は、被告が契約上公演開催義務を負っているとは認められないと判断。
原告の主張を容れていません。

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4 報酬1ないし報酬3における売上、経費及び既払金の額

報酬1ないし報酬3における売上、経費及び既払金の額の認定について、裁判所は、まず、売上及び既払金に関しては、明細書が存在する期間については明細書記載の金額を採用し、明細書が存在しない期間ないし活動内容については、原告らが主張する限りで被告及びスーパーリッチ社の総勘定元帳記載の金額を採用すると判断。
次に、経費に関しては、裁判所は、被告及びスーパーリッチ社の総勘定元帳記載の金額を採用すると判断しています。
結論として、別紙1ないし3の内容を認定しています(38頁以下)。

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5 報酬1ないし報酬3の支払時期

報酬1ないし報酬3の支払時期について、専属契約書及び附属合意書には何ら定めがなく、原告らは月ごとであると主張し、被告は契約終了時であると主張しました。裁判所は、原告らと被告との間では報酬の支払時期について、概ね月ごとに支払う旨の合意があったと認定。原告の主張を認めています(41頁以下)。

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6 未払報酬額ないし過払報酬額

結論として、裁判所は、報酬1ないし報酬3における未払報酬額の合計は一人当たり329万6597円と認定。原告個々人の既払い部分を控除して未払報酬額を認定しています(44頁以下)。

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■コメント

争点を見ると、芸能人と事務所の間の専属契約書の規定がそもそも曖昧な部分もあったようです。
グループ名でネット検索すると、メンバー脱退・加入や事務所との紛争など、いくつか記事が出てきます。

written by ootsukahoumu at 03:39|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年09月01日

沖国大ヘリ墜落事故映像無断使用事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等本訴請求等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

沖国大ヘリ墜落事故映像無断使用事件(控訴審)

知財高裁平成30.8.23平成30(ネ)10023著作権侵害差止等本訴請求、損害賠償反訴請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    寺田利彦
裁判官    間明宏充

*裁判所サイト公表 2018.8.24
*キーワード:引用、出所明示、権利濫用

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■事案

沖縄国際大学に米軍ヘリコプターが墜落した事故に関する映像を無断で映画に使用した事案の控訴審

控訴人(1審本訴被告・反訴原告) :映像制作会社
被控訴人(1審本訴原告・反訴被告):テレビ放送会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法32条、48条1項、114条3項、民法1条3項

(原審争点)
1 差止め及び削除を求める請求は特定されているか
2 本件部分は「まだ公表されていないもの」(著作権法18条)に当たるか
3 本件映画に原告の名称を表示していないことは「その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って」(19条2項)されたものといえるか
4 著作権の行使に対する引用(32条1項)の抗弁は成立するか
5 原告による著作権及び著作者人格権の行使は権利の濫用に当たり許されないか
6 原告が受けた損害の額
7 差止め、本件各映像の削除及び謝罪広告の掲載の各必要性が認められるか
8 原告が被告からの本件各映像の利用許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は被告に対する不法行為を構成するか
9 原告が被告との交渉内容を秘匿したまま本件事件を提起した事実を自社の放送波で放送すると共に自社のウェブサイトに掲載しマスコミ各社に同内容のリリースを配布した行為は被告に対する不法行為を構成するか


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■事案の概要

1 本訴
『本訴事件は,原判決別紙1著作物目録記載1ないし4の各映像(本件映像1ないし4,併せて本件各映像)の著作者及び著作権者である被控訴人が,控訴人が被控訴人の許諾なく本件各映像を使用して製作した原判決別紙3映画目録記載の映画(本件映画)につき,(1)控訴人が本件映画を上映する行為は本件各映像につき被控訴人が有する上映権(著作権法22条の2)を侵害する,(2)控訴人が本件映画を記録したDVDを販売する行為は本件各映像につき被控訴人が有する頒布権(著作権法26条1項)を侵害する,(3)控訴人が本件映画の上映に際して被控訴人の名称を表示しなかったことは本件各映像につき被控訴人が有する氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害する,(4)本件映像2のうち原判決別紙2−2「著作物目録の著作物2」の(11)ないし(16)の部分(約8秒。同別紙に「未公表部分」との記載のあるもの)及び本件映像4のうち原判決別紙2−4「著作物目録の著作物4」の(1)ないし(4)の部分(約5秒。同別紙に「未公表部分」との記載のあるもの)は,公表されていない著作物であったから,控訴人が上記各部分の映像を使用した本件映画を上映したことは,上記各部分につき被控訴人が有する公表権(著作権法18条1項)を侵害するなどと主張して,控訴人に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,本件各映像を含む本件映画の上映,公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布の差止めを,(2)同条2項に基づき,本件映画を記録した媒体及び本件各映像を記録した媒体からの本件各映像の削除を,(3)著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金111万0160円及びこれに対する不法行為の日以後である平成27年6月21日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,(4)著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金300万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成27年6月21日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,(5)著作権法115条に基づき,原判決別紙4謝罪広告要領記載の要領による原判決別紙5謝罪広告内容記載の謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。』

2 反訴
『反訴事件は,控訴人が,(1)本件映画での本件各映像の使用につき,被控訴人が,控訴人による二度の許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は,共同の取引拒絶又は単独の取引拒絶として私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に違反し,控訴人に対する不法行為を構成するとして,被控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金1392万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成28年4月5日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)被控訴人が,本件各映像に係る控訴人との交渉内容を秘匿したまま,本訴事件を提起した旨を自社の放送波を通じて放送し,ウェブサイトに同内容を掲載し,マスコミにリリースした行為は,控訴人に対する不法行為を構成するとして,被控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金558万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成28年4月5日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。』

『原判決は,本訴請求については,差止請求及び削除請求の全部と,損害賠償請求の一部を認容し,その余(損害賠償請求の残部と謝罪広告掲載請求)をいずれも棄却し,反訴請求については,その請求を全部棄却した。
 これに対し,自己の敗訴部分に不服のある控訴人が本件控訴をした。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

控訴審は、本訴請求について原判決が認容した限度で認容し、その余をいずれも棄却。また、反訴請求についてもその請求を全部棄却するのが相当であるとしています(20頁以下)。
(控訴審で控訴人が付加した主張の点についても、いずれも裁判所は容れていません。)

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■コメント

原審の判断が控訴審でも維持されています。
なお、著作権の行使に対する引用の抗弁の争点について、出所明示義務(48条1項1号)と32条の関係に関して、控訴審でも絶対音感事件控訴審の判断を是認しています。

『控訴人が何ら出所を明示することなく被控訴人が著作権を有する本件各映像を本件映画に引用して利用したことについては,(単に著作権法48条1項1号違反になるというにとどまらず)その方法や態様において「公正な慣行」に合致しないとみるのが相当であり,かかる引用は著作権法32条1項が規定する適法な引用には当たらない。よって,これと同旨をいう原判決の認定判断に誤りがあるとは認められない。』(25頁)

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■過去のブログ記事

2018年03月08日記事 原審記事
written by ootsukahoumu at 10:21|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年08月27日

「Resonant Heart」音源無断配信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「Resonant Heart」音源無断配信事件

東京地裁平成30.7.19平成30(ワ)6484発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    横山真通
裁判官    高桜慎平

*裁判所サイト公表 2018.8.10
*キーワード:発信者情報開示、送信可能化権、P2P、share

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■事案

内田真礼「Resonant Heart」音源などをP2P型ファイル交換ソフトShareを介して無断配信した者の発信者情報開示が請求された事案

原告:レコード会社ら
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか
2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

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■事案の概要

『本件は,レコード製作会社である原告らが,自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ,氏名不詳者において,当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置し,インターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信し得る状態にして,原告らの送信可能化権を侵害したと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記氏名不詳者に係る発信者情報の開示を求める事案である。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか

監視システムにより発見された楽曲ファイルについて、原告らによって本件レコードに録音された楽曲を複製した音楽が記録されていることが確認されたといった経緯を踏まえ、裁判所は、原告らの本件レコードの送信可能化権が氏名不詳者により侵害されたことを認定しています(4頁以下)。

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2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

原告らが差止請求権や損害賠償請求権を行使するためには、電子メールアドレスを含め氏名不詳者に係る発信者情報の開示を受ける必要があり、原告らにはその発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断しています(7頁以下)。

結論として、発信者情報目録記載の事項について開示請求が認容されています。

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■コメント

プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会によりP2P型ファイル交換ソフトを利用した者のIPアドレス等を特定する方法として信頼性があると認定されたクロスワープ社のシステム「P2P FINDER」により監視、発見された楽曲ファイルの発信者情報開示の事案となります。


written by ootsukahoumu at 07:33|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月19日

新冷蔵庫システム開発契約事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

新冷蔵庫システム開発契約事件

東京地裁平成30.6.21平成29(ワ)32433損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    佐藤雅浩
裁判官    大下良仁

*裁判所サイト公表 2018.7.17
*キーワード:ソフトウェア開発委託契約

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■事案

ソフトウェア開発業務委託契約の条項の解釈を巡る紛争

原告:物流倉庫等システムソフトウェア開発会社
被告:食品類卸売会社、システム開発会社、原告元従業員

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■結論

請求棄却

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■争点

1 本件共通環境設定プログラムの著作権侵害の有無
2 被告マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無
3 不当利得返還請求権の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告マルイチ産商に対してソフトウェア開発委託契約に基づき原告が著作権を有するプログラムの使用を許諾していたところ,被告らが違法に同プログラムの複製又は翻案を行い,また,上記委託契約が終了したにもかかわらず,被告マルイチ産商がプログラムの使用を継続し,複製又は翻案していると主張して,被告らに対し,次の請求をする事案である。』
(3頁)

<経緯>

H20 原告と被告マルイチ産商がソフトウェア開発委託基本契約締結
   被告マルイチ産商が原告に「新冷蔵庫・社内受発注システム」発注
H21 原告が本件新冷蔵庫等システム及び本件共通環境設定プログラムを納入
   原告と被告マルイチ産商が本件新冷蔵庫等システムに関する保守管理契約締結
H25 本件保守契約解約
H26 本件基本契約終了

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 本件共通環境設定プログラムの著作権侵害の有無

(1)本件新冷蔵庫等システムの移行に伴う本件共通環境設定プログラムの複製権又は翻案権侵害の有無

本件新冷蔵庫等システムを使用する際に必要となるデータベース接続等のプログラム一般に共通する機能をまとめたプログラム(本件共通環境設定プログラム)について、裁判所は、そのEXEファイル及びDLLファイルは、本件新冷蔵庫等システムに実装されて一体として機能するプログラムであり、原告が本件基本契約及び本件個別契約に基づいて被告マルイチ産商から委託され、作成したコンピュータプログラムであるから、本件基本契約2条における「成果物」であると認定。
そして、当該プログラムが従前から原告が有し、その著作権が原告に帰属するものであっても必要な範囲で複製又は翻案をすることが本件基本契約21条3項(2)で許諾されており、サーバの老朽化等の理由により新サーバにコンピュータプログラムを移行することは必要な事項であると判断。
被告らは本件新冷蔵庫等システムのサーバ移行の際に本件共通環境設定プログラムのEXEファイル及びDLLファイルを複製したと認められるものの、本件新冷蔵庫等システムのサーバ移行のために同システムに実装され一体として機能する本件共通環境設定プログラムのEXEファイル及びDLLファイルを複製することは、本件基本契約の条項によって許諾されていると裁判所は判断。
結論として、本件共通環境設定プログラムの複製権侵害は成立しないと判断しています(22頁以下)。

(2)本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの保守管理業務に伴う複製権又は翻案権侵害

原告は、被告マルイチ産商と被告テクニカルパートナーがコンピュータ保守管理のための人材派遣契約を締結し、被告テクニカルパートナーらが保守管理業務を実施し、本件基本契約が終了後も保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案を行ったと主張しました(26頁以下)。
この点について、裁判所は、保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案が行われた事実を認めるに足りる証拠はなく、また、本件基本契約26条(契約終了後の権利義務)の解釈から、原告の主張を認めていません。

(3)本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの使用によるみなし侵害

本件共通環境設定プログラムのソースコード、EXEファイル及びDLLファイルは、いずれも「成果物」であり、被告マルイチ産商はこれらのデータファイルの複製物の所有権を取得しており、本件共通環境設定プログラムの複製物を本件基本契約19条により使用することができると裁判所は判断。
本件について、みなし侵害(著作権法113条2項)は成立しないと判断しています(28頁)。

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2 被告マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無

被告マルイチ産商は、本件基本契約終了後も本件共通環境設定プログラムを使用することができることから、被告マルイチ産商が本件共通環境設定プログラムの使用を停止し、廃棄する債務を負うことはなく、その使用が債務不履行となることはないと裁判所は判断しています(28頁以下)。

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3 不当利得返還請求権の有無

被告マルイチ産商が、法律上の原因なくして本件共通環境設定プログラムの使用料相当額の利得を得て、原告に同額の損失を与えたとはいえず、被告マルイチ産商の使用について不当利得が成立することはないと裁判所は判断しています(28頁以下)。

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■コメント

ソフトウェア開発業務委託基本契約書の条項については、判決文5頁以下に記載があります。
成果物の著作権の帰属について、例えば、新規成果物は共有だが持分の処分以外は自由に使える規定になっています(21条)。また、本契約が合意の解約により終了した場合や解除により終了した場合も著作権の帰属に関する規定は効力が存続するものとされています(26条)。
ソフトウェア開発業務委託契約に基づいて納品されたシステムの保守管理契約が解約された後に、保守管理を担当したのが別会社に在籍する開発会社の元従業員ということも紛争の背景に、もしかしたらあったのかもしれません。ただ、この点については営業秘密に関する不正競争防止法の論点や一般不法行為論が争点にはなっていないので、なんとも言えないところです。
written by ootsukahoumu at 08:04|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月17日

一竹辻が花美術館グッズ事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

一竹辻が花美術館グッズ事件

東京地裁平成30.6.19平成28(ワ)32742著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
別紙2
別紙3
別紙4

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    高櫻慎平
裁判官    広鹵人

*裁判所サイト公表 2018.7.12
*キーワード:写真、著作物性、事業譲渡、美術館グッズ、権利濫用

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■事案

故久保田一竹の着物作品の著作権承継者らが美術館で販売する商品等の複製権侵害性などを争点とした事案

原告:遺族、辻が花染制作会社
被告:美術館運営会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、47条、32条1項、民法1条3項、112条、114条

1 著作物性の有無(制作工程写真、美術館写真、制作工程文章及び旧HPコンテンツについて)
2 著作権及び著作者人格権の主体
3 複製等の成否
4 明示又は黙示による利用許諾の有無
5 権利濫用の有無
6 著作権法47条の抗弁の成否
7 著作権法32条1項の抗弁の成否
8 損害額等
9 消滅時効の成否
10 差止めの必要性

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■事案の概要

『本件は,原告らが,故久保田一竹(以下「故一竹」という。)が開発した「一竹辻が花」という独自の染色技術を用いた創作着物作品や,その制作工程に関する文章及び写真等について著作権及び著作者人格権を有している(具体的には,原告Aが,後記一竹作品,制作工程写真及び美術館写真の著作権を有するとともに,後記制作工程文章及び旧HPコンテンツの著作権及び著作者人格権を有し,原告工房が,後記工房作品の著作権及び著作者人格権を有する。)ところ,久保田一竹美術館(以下「一竹美術館」という。)を経営する被告が,同美術館において販売している商品等に原告らに無断で上記着物作品等を複製等したことにより,原告らの著作権(複製権,譲渡権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権等)を侵害したと主張して,(1)原告Aにおいて,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,別紙「被告配布物目録」1ないし5,7,8,10ないし12記載の各配布物の複製・頒布の差止め,及び被告のウェブサイトにおける別紙「被告HP目録」記載の各文章の自動公衆送信等の差止めを求めるとともに,民法709条及び著作権法114条1項ないし3項に基づき,損害賠償金2765万4034円及びこれに対する不法行為後である平成28年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,また,(2)原告工房において,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,別紙「被告配布物目録」6及び9記載の各配布物の複製・頒布の差止めを求めるとともに,民法709条及び著作権法114条1項ないし3項に基づき,損害賠償金125万6783円及びこれに対する不法行為後である平成28年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

S35 久保田一竹が「一竹辻が花」染色技術で着物作品創作
H06 原告工房が主体となり一竹美術館設立
H15 一竹死去、原告Aが着物作品の著作権を単独相続
H22 原告工房が民事再生手続開始決定
H24 訴外ICFが一竹美術館の土地等を取得

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■判決内容

<争点>

1 著作物性の有無(制作工程写真、美術館写真、制作工程文章及び旧HPコンテンツについて)

(1)制作工程写真及び美術館写真の著作物性

故一竹による「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影した制作工程写真12点について、いずれも個性が表れないものであるとして、その著作物性を否定しています。
また、一竹美術館の外観又は内部を撮影した美術館写真2点についても、個性が表れないものであるとして、その著作物性を否定しています(43頁以下)。

(2)制作工程文章の著作物性

「辻が花染」の各制作工程を説明した文章について、その著作物性が肯定されています(44頁以下)。

(3)旧HPコンテンツの著作物性

旧HPコンテンツについて、その著作物性が肯定されています(45頁)。

   --------------------

2 著作権及び著作者人格権の主体

(1)制作工程文章の著作権及び著作者人格権の主体

制作工程文章は原告Aが作成したものであり、原告Aが著作権及び著作者人格権を有していると裁判所は認定しています(45頁以下)。

(2)旧HPコンテンツの著作権及び著作者人格権の主体

旧HPコンテンツは原告Aが作成したものであり、原告Aが著作権及び著作者人格権を有していると裁判所は認定しています(46頁以下)。

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3 複製等の成否

(1)制作工程文章について

裁判所は、まず、複製及び翻案の意義について言及した上で、被告作品集の制作工程に関する文章と制作工程文章の表現上の本質的な特徴の同一性について検討。
両者を比較対照した結論として、被告作品集の当該部分は、全体として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができると裁判所は判断。
複製ないし翻案にあたるとして、複製権ないし翻案権侵害、また、同一性保持権侵害を認めています(47頁以下)。

(2)旧HPコンテンツについて

被告作品集、被告パンフレット、被告特別割引券、被告HPの各文章と旧HPコンテンツの同一性について検討。
複製権ないし翻案権を侵害し、また、同一性保持権の侵害が認められるもの、あるいは、翻案権及び同一性保持権侵害が認められるもの、さらには、複製権及び公衆送信権を侵害するものがそれぞれ認められています(48頁以下)。

(3)著作権法113条6項所定の著作者人格権侵害について

原告Aは、「わさび」「石鹸」という日常品に一竹作品を縮小してラベルとして貼り付けるという被告の行為について、故一竹の名誉・声望を害するとして、著作者人格権侵害とみなされる旨主張しましたが、原告Aは一竹作品の著作者ではなく著作者人格権を有しないとして、裁判所は原告Aの主張を認めていません(50頁)。

   --------------------

4 明示又は黙示による利用許諾の有無

(1)明示の利用許諾の有無

被告は、原告工房の再生計画案、原告工房及び訴外一竹辻が花と被告との不動産等売買等契約書及び附属合意書の内容に照らせば、原告らは着物(一竹作品及び工房作品)の引渡し日以降に、訴外ICFが着物を撮影する方法によって、着物の著作物を複製することを許諾し、かつ、美術館の運営に必要な範囲で利用することを明示的に許諾したと主張しました(50頁以下)。
この点について、裁判所は、契約締結の主体は訴外ICFであり、訴外ICFから一竹美術館を買い受けた被告が当然に利用許諾を受けることにはならないと判断。また、条項を検討しても、原告らが訴外ICFに対して一竹作品及び工房作品の著作権について明示的に利用許諾したことを認めるに足りないと判断。
明示の利用許諾の存在が否定されています。

(2)黙示の利用許諾の有無

原告らが被告による著作権利用を黙示的に許諾していたとは認められていません(53頁以下)。

(3)旧HPコンテンツの利用許諾の有無

旧HPコンテンツに関する明示的又は黙示的な利用許諾があったことを認めるに足りる証拠はないと判断されています(53頁以下)。

   --------------------

5 権利濫用の有無

被告は、原告らは訴外Cによる美術館と展示品等の一括購入により十二分に利益を受けており、また、訴外Cが継続的に美術館への資金援助を行っているにもかかわらず、原告らは付属合意書において約した美術館経営等への協力を行わず、著作権侵害を主張して本訴による差止請求及び損害賠償請求を行っているおり、本訴請求は利益の実質的な二重取りであって、権利濫用に当たる旨主張しましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(54頁以下)。

   --------------------

6 著作権法47条の抗弁の成否

被告は、被告小冊子、被告パンフレット及び被告特別割引券が著作権法47条の「小冊子」に当たると主張しましたが、結論としては、いずれも小冊子に当たらないと判断されています(55頁以下)。

   --------------------

7 著作権法32条1項の抗弁の成否

被告は、被告小冊子、被告パンフレット、被告特別割引券、被告展示案内チラシ、被告イベント案内チラシ及び被告Facebookへの投稿における一竹作品等の複製は、著作権法32条1項の「引用」に当たると主張しました(56頁以下)。
この点について、裁判所は、いずれも一竹美術館の顧客誘引目的に作成されたものであり、それらにおける一竹作品等の利用は引用にあたらないと判断しています。

   --------------------

8 損害額等

裁判所は、被告の過失を認定した上で、以下のように被告による各商品の販売等に関して原告らの損害額を認定しています(57頁以下)。

(1)被告作品集(114条1項、慰謝料)

原告A 547万5421円
原告工房 40万5465円

(2)被告小冊子(114条1項)

原告A 104万7623円

(3)被告絵葉書(114条2項)

原告A 462万2203円

(4)被告一筆箋(114条2項)

原告A 合計126万8600円

(5)被告ハンカチ(114条2項)

原告A 合計15万5240円

(6)被告カレンダー(114条3項)

原告A 34万9807円
原告工房 6万3291円

(7)被告クリアファイル(114条3項)

原告A 24万5744円

(8)被告わさびチューブ(114条3項)

原告A 5万3462円

(9)被告石鹸(114条3項)

原告A 6万8040円
原告工房  8424円

(10)被告シール(114条3項)

原告工房 5000円

(11)被告入場券(114条3項)

原告A 3万5700円

(12)被告しおり(114条3項)

原告A 8500円

(13)被告ポスター(114条3項)

原告A 3万7500円

(14)被告パンフレット(114条3項、慰謝料)

原告A 7万6214円
原告工房  6485円

(15)被告特別割引券(114条3項、慰謝料)

原告A 17万0800円

(16)被告展示案内チラシ(114条3項)

原告A 12万2400円

(17)被告イベント案内チラシ(114条3項)

原告A  7万1400円
原告工房 3万5700円

(18)被告 Facebook への投稿(114条3項)

原告A 18万7500円
原告工房 6万3750円

(19)被告HPへの掲載(114条3項)

原告A 15万9000円

(20)弁護士費用相当額損害

原告A 140万円
原告工房 10万円

(合計)
原告A 合計1555万5154円
原告工房合計  68万8115円

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9 消滅時効の成否

平成28年3月28日、原告Aから被告への通知より3年前の平成25年3月28日以前の損害賠償請求権について、時効消滅していると被告は主張しましたが、裁判所は認めていません(79頁)。

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10 差止めの必要性

主文第1項ないし第3項掲記の差止めの必要が認められています(79頁以下)。

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■コメント

山梨県南都留郡富士河口湖町に所在する久保田一竹美術館が舞台の事案。
久保田一竹美術館 ITCHIKU KUBOTA ART MUSEUM

美術館の運営会社が経営難となり、美術館の不動産や着物作品などの所有権を第三者に譲渡したものの、美術館の展示作品の著作権利用について、著作権者と事前に明確な取り決めがされていなかった(51頁以下参照)ことから紛争になった事案となります。
そもそも、譲渡の対象に美術館の「事業」が含まれていたのかどうかという点で、両者の認識に齟齬があります(33頁参照)。
損害額算定の対象となった著作権の利用態様をみてもわかるように、美術館運営引き継ぎにあたっては、権利処理について十分な事前協議が必要になることが分かります。

いずれにしても、本当に当初から作品の著作権の取扱いに関して、黙示的にでも何らかの取り決めが認定できなかったのかどうか、原審の判断の行方について知財高裁の判断を注視したいと思います。

なお、制作過程や美術館を撮影した写真について、その著作物性が否定されており、別紙2に掲載されています。スナップ写真のレベルですが、著作物性を否定した原審の判断については、疑問が残ります。
written by ootsukahoumu at 06:17|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月11日

消防支援車警告シール事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

消防支援車警告シール事件(控訴審)

知財高裁平成30.6.20平成29(ネ)10103等損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    佐野 信
裁判官    熊谷大輔

*裁判所サイト公表 2018.7.4
*キーワード:プログラム、説明書、ステッカー、シール、著作物性、編集著作物性、一般不法行為論

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■事案

消防支援車のプログラムやタッチパネル画面、説明書、警告シールなどの著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人(1審原告):自動車部品製造会社
被控訴人兼附帯控訴人、被控訴人(1審被告):自動車部品製造会社、電子機器製造会社

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■結論

本件控訴棄却、本件附帯控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、12条1項、民法709条

1 不当な価格での入札による原告の利益の侵害の有無
2 資料流用による原告の利益の侵害の有無
3 1審原告車両の形態等の模倣による1審原告の利益の侵害
4 1審原告タッチパネル画面、1審原告説明書又は1審原告警告シールの利用による1審原告の利益の侵害
5 1審原告プログラム(1)についての著作権侵害の有無
6 1審原告プログラム(2)についての著作権侵害の有無
7 1審原告タッチパネル画面についての著作権侵害の有無
8 1審原告説明書についての著作権侵害の有無
9 1審原告警告シールについての著作権侵害の有無
10 1審被告らの故意過失及び関連共同の有無
11 1審原告の損害額


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■事案の概要

『本件は,キャンピングカー及び特殊車両等の製造等を行っている控訴人が,消防庁における消防用特殊車両の製造に係る一般競争入札に参加して落札し,自ら上記車両を製造し,これを消防庁に納入した被控訴人トノックス及びその製造に関与した被控訴人マルチデバイスに対し,被控訴人トノックスは,不当に安い金額で上記落札をしたほか,上記車両の製造に当たり控訴人から提供を受けた資料を流用し,また,被控訴人らは,上記車両の製造に当たって,控訴人が著作権を有する制御プログラム,タッチパネル画面,取扱説明書及び警告用のシールを複製,翻案したと主張して,主位的に,上記一連の行為は不法行為を構成するとして,不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,719条1項前段)として,予備的に,上記各著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,719条1項前段,著作権法114条1項又は3項)として,損害金4億6750万円及びこれに対する不法行為の日又はその後の日である平成25年2月13日(被控訴人トノックスが上記車両を消防庁に納車した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。』
『原審は,上記警告用シールの著作権侵害による不法行為に基づく請求のうち,被控訴人トノックスに対して12万7000円及びこれに対する上記平成25年2月13日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求を認容し,その余の請求をいずれも棄却したところ,控訴人が本件控訴を,被控訴人トノックスが本件附帯控訴をそれぞれ提起した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

各争点について、結論としては、原審の判断を維持しています。

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■コメント

原審の判断が維持されていて、警告シールについてだけ著作権侵害と損害が肯定されています。

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■過去のブログ記事

2017年12月25日
原審記事
written by ootsukahoumu at 06:21|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月09日

「壁ドン」イラスト無断使用事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「壁ドン」イラスト無断使用事件

東京地裁平成30.6.7 平成29(ワ)39658 損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    大下良仁

*裁判所サイト公表 2018.7.2
*キーワード:イラスト、損害論

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■事案

サイトでイラストを無断で使用したとして損害額などが争点となった事案

原告:イラストレーター
被告:インターネットメディア事業会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条、114条3項

1 原告は被告が本件各イラストを本件サイトに掲載することを許諾していたか
2 損害額

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,被告が運営するウェブサイト(以下「本件サイト」という。)に,原告が著作権を有するイラスト3点(以下「本件各イラスト」と総称する。)を掲載した行為が送信可能化権(著作権法23条1項)の侵害に当たると主張して,民法709条及び著作権法114条3項に基づき,損害賠償金99万円及びこれに対する不法行為日(本件各イラストを掲載した日)である平成26年7月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H26.07 被告が本件各イラストを本件サイトに掲載
H29.06 被告が掲載取り止め

本件サイト:「ガールズVIPまとめ」

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■判決内容

<争点>

1 原告は被告が本件各イラストを本件サイトに掲載することを許諾していたか

被告は、原告のツイッター上の言動から、原告は被告が本件各イラストを掲載することを許諾していたと反論しましたが、裁判所は、当該コメントによって、原告が被告による本件各イラストを本件サイトに掲載することを許諾していたと認めることはできず、他に原告が被告による本件各イラストの掲載を許諾していた事実を認めるに足りる証拠はないとして、被告の主張を認めていません(6頁)。

結論として、被告は原告が著作権を有する本件各イラストを本件サイト上に掲載することによって、本件各イラストに係る送信可能化権(著作権法23条1項)を故意又は過失により侵害したと判断されています。

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2 損害額

・著作権法114条3項に基づく損害
合計27万円(1年当たりの使用料3万円×3点×3年分)

・弁護士費用相当額損害額
3万円

合計30万円が損害額として認定されています(7頁以下)。

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■コメント

いわゆるまとめサイトでのイラストの無断使用の事案ですが、被告のサイトを見る限り、他所から引っ張ってきたコンテンツばかりで、独自コンテンツがあるのかもはっきりせずで、どのような態様で3年間に亘ってイラストを使用していたのかが、判決文からもよく分からない案件です。
written by ootsukahoumu at 06:37|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月06日

ClariS「ヒトリゴト」無断配信発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ClariS「ヒトリゴト」無断配信発信者情報開示請求事件

東京地裁平成30.6.15平成30(ワ)5939発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2018.6.29
*キーワード:プロバイダ責任制限法、送信可能化権、レコード製作者

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■事案

レコード製作会社6社が音源の無断配信者の情報開示をプロバイダに請求した事案

原告:レコード製作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙対象目録に係る各レコードの送信可能化権を有すると主張する原告らが,氏名不詳者が上記各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動公衆送信し得る状態にした行為により上記送信可能化権を侵害されたことが明らかであり,権利の侵害に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,経由プロバイダである被告に対し,上記発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

本件各発信者は、本件各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置した上で被告の提供するインターネット接続サービスを利用し、同ファイルを自動的に送信し得る状態に置いたとの事実が認められると裁判所は判断。
裁判所は、同行為によって原告らが有する本件各レコードの送信可能化権が侵害されたことが明らかであると判断しています(3頁)。

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2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

原告らは、本件各発信者に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有するところ、原告らが本件各発信者に対してその権利を行使するためには本件各発信者情報の開示が必要である。
そして、本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、本件各発信者情報を保有しているものと認められると裁判所は判断。
裁判所は、原告らの被告に対する本件各発信者情報開示を認めています。

なお、開示すべき発信者情報について、被告は電子メールアドレスの開示を受ける必要はないと主張しましたが、プロバイダ責任制限法4条1項に係る総務省令においては、電子メールアドレスも侵害情報の発信者の特定に資する情報として規定されている上、転居などの事情によって本件発信者の実際の住所が被告が本件発信者の住所として保有しているものと異なる可能性もあることに照らすと、電子メールアドレスの開示が不要ということはできないと判断。
結論として、原告らには被告から本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断しています(3頁以下)。

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■コメント

レコード会社6社のClariS「ヒトリゴト」や水樹奈々「TESTAMENT」といった音源をファイル交換共有ソフトウェアであるShare互換ソフトウェアで送信可能化した事案となります。
written by ootsukahoumu at 06:49|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年06月28日

「トムとジェリー」DVD無許諾販売事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「トムとジェリー」DVD無許諾販売事件

東京地裁平成30.5.31平成28(ワ)20852著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    高桜慎平
裁判官    広鹵人

*裁判所サイト公表 2018.6.12
*キーワード:共同事業合意書、過失、限界利益、侵害者利益相当額、著作権使用料相当額

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■事案

アニメDVDに関する共同事業合意書の確認に関して過失の有無などが争点になった事案

原告:映像ソフト販売会社ら
被告:映像制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法113条1項1号、114条2項

1 著作権侵害の有無
2 過失の有無
3 損害額(著作権法114条2項)
4 不当利得額(著作権使用料相当額)

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■事案の概要

『本件は,別紙原告ら著作物目録記載の「トムとジェリー」の各アニメーション作品(以下「本件アニメーション作品」という。)の日本語台詞原稿(以下「本件著作物」という。)の著作権を各2分の1の割合で共有する原告らが,本件著作物(台詞原稿)を実演した音声を収録した別紙被告商品目録記載の各DVD商品(以下,まとめて「被告商品」という。)を製造,販売,輸入する被告の行為が著作権侵害(製造につき複製権侵害,販売につき譲渡権侵害,輸入につき著作権法113条1項1号の著作権侵害とみなされる行為)に当たると主張して,被告に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,被告商品の輸入,製造及び販売の差止めを求めるとともに,(2)提訴の3年前の日である平成25年6月24日以降の販売分につき民法709条,著作権法114条2項に基づき,損害賠償金4179万6000円及びこれに対する平成28年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,また,(3)それより前である平成25年6月23日までの販売分につき民法703条に基づき,不当利得金(著作権使用料相当額)715万9228円及びこれに対する平成28年10月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。』
(3頁)

<経緯>

H22 原告らがコンテンツ提供契約締結
   原告アートステーションが台詞原稿、日本語字幕及び日本語音声収録原盤を制作
H23 被告商品販売
H24 原告らが被告に対して警告書通知
H24 被告代理人が原告ら代理人にFAX送信
   被告代理人が原告ら代理人と面談し共同事業合意書等を説明
H27 原被告らが別作品の許諾合意(使用料率10%)
H28 原告らが本訴提起

被告商品目録
1 「15のおはなし トムとジェリー ドタバタ大作戦」
2 「15のおはなし トムとジェリー わくわくランド」
3 「たのしいアニメ 100本立て DVD3枚組」

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の有無

被告は、原告らに無断で韓国において原告商品に収録された本件アニメーション作品の日本語音声をその映像とともに複製して被告商品を製造し、日本国内で頒布する目的で輸入して、これを販売していると裁判所は認定。
原告商品に収録された本件アニメーション作品の日本語音声を複製することは本件著作物(台詞原稿)を複製にあたり、被告は国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとしたならば複製権侵害となるべき行為によって作成された物である被告商品を輸入していることから、上記輸入行為は原告らの著作権を侵害する行為とみなされる(著作権法113条1項1号)と判断。
また、被告商品を国内で販売する行為は原告らの譲渡権(同法26条の2)を侵害すると判断。
結論として、被告は本件被告行為により原告らの著作権を侵害していると判断されています(20頁)。

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2 過失の有無

被告は、平成24年10月に原告らから被告商品1及び2の製造・販売について原告らの著作権を侵害する旨の警告を受けていましたが、被告代理人から同年12月に原告ら代理人に対して、被告商品1及び2の製造・販売は訴外メディアジャパンの有効な使用許諾に基づくもので著作権侵害に当たらない旨の説明を訴外メディアジャパンから受けており、その説明内容が概ね信用できると認識していることを一方的に説明しているのみで、原告らないし原告ら代理人が被告の説明に納得して上記警告を撤回したとか、あるいは、被告商品1及び2の製造・販売が著作権侵害に当たらないことを確認したなどといった事情はなく、単に本訴提起に至るまで被告に対して著作権侵害を更に主張しなかったというにすぎないと裁判所は経緯等を認定。
さらに、共同事業合意書には両代表者の記名のみで押印がないことや原告アートステーション代表者の訴外A宛てメールでは共同事業合意書が未締結である旨記載されている点も認定。
被告がビデオ・映画等の制作・配給・販売・賃貸並びに輸出入業務等を業としており、被告商品の輸入・販売に際して高度の注意義務を負担していることも勘案して、被告商品の輸入・販売を継続した被告には著作権侵害について過失があると認めています(20頁以下)。

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3 損害額(著作権法114条2項)

著作権侵害に基づく著作権法114条2項(侵害者の利益に相当する損害)による原告らの損害は、各原告につき、62万4357円と認定されています(23頁以下)。

ア 被告商品1及び2
(929枚+889枚)×248.53円=45万1827円
各原告につき,22万5913円
イ 被告商品3
8572枚×332.91円×0.24=68万4889円
各原告につき、34万2444円
ウ 弁護士費用
各原告につき、5万6000円
エ 合計
各原告につき、62万4357円

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4 不当利得額(著作権使用料相当額)

原告らの不当利得額(使用料相当損害額)は、各原告につき、52万5938円と認定されています(27頁以下)。

ア 被告商品1及び2
(2678枚+2619枚)×50円=26万4850円
イ 被告商品3
3万3462枚×98円×0.24=78万7026円
ウ 合計 105万1876円
各原告につき、52万5938円

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■コメント

株式会社メディアジャパンと有限会社アートステーションとの間の共同事業合意書の成立は別訴で否定されていますが、共同事業合意書の成否が定かではない時期の販売部分が、結果として無許諾利用となった事案となります。

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■過去のブログ記事

保護期間が満了したアニメ映画「トムとジェリー」に日本語吹き替え音声を付したDVDの制作を巡って共同事業契約の成否が争われた事案の控訴審

知財高裁平成28.2.17平成27(ネ)10115著作権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件
控訴人兼附帯被控訴人 株式会社メディアジャパン
被控訴人兼附帯控訴人 有限会社アートステーションら

2016年02月26日記事
「トムとジェリー」格安DVD事件(控訴審)
written by ootsukahoumu at 07:38|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年06月20日

かっぱえびせんキャッチフレーズ事件−著作権 著作者人格権確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

かっぱえびせんキャッチフレーズ事件

東京地裁平成30.3.26平成29(ワ)25465著作者人格権確認等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2018.ー.ー
*キーワード:確認の利益、キャッチフレーズ

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■事案

広告キャッチフレーズの制作者の事実の確認等を巡って争われた事案

原告:個人
被告:食品会社

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■結論

請求却下、棄却

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■争点

条文 民法709条

1 原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴えは適法か
2 被告は原告に対し原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であるとの事実を被告の社内報に掲載する旨を約したか
3 本件番組の放送及び本件新聞記事の掲載につき被告に名誉毀損の不法行為が成立するか
4 被告が本件各書面を原告に送付した行為につき侮辱の不法行為が成立するか

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■事案の概要

『本件は,原告が,(1)被告が製造し販売するスナック菓子「かっぱえびせん」の広告用に昭和39年に制作されたテレビコマーシャル(以下「本件CM」という。)は,当時株式会社大広(以下「大広」という。)の放送制作部に所属していた原告が制作したものであるとして,被告に対し,原告が本件CMを制作した事実の確認を求め,(2)被告は,原告との間で,原告がかっぱえびせんのキャッチフレーズである「やめられない,とまらない」のフレーズ(以下「本件キャッチフレーズ」という。)を考えた本人であるとの事実を被告の社内報に掲載することを約したのにこれを行っていないとして,被告に対し,被告の社内報及びホームページへの上記事実を記載した記事の掲載を求め,(3)被告は,毎日新聞及び日本テレビをして本件キャッチフレーズが被告の社内会議にて誕生した旨を報道させ,原告の名誉を毀損したとして,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金7500万円の支払を求め,(4)被告は,原告に対して複数の書面を送付し,原告を侮辱したとして,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金7500万円の支払を求めた事案である。』
(2頁)

<経緯>

H23 かっぱえびせん由来のテレビ再現ドラマ放送
H24 被告が原告に原告作成書面を返送
H26 被告と原告代表が面会
H28 かっぱえびせん由来の新聞記事掲載

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■判決内容

<争点>

1 原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴えは適法か

本件訴えのうち、原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴えは不適法であると裁判所は判断しています(8頁以下)。

なお、付言として、仮に原告が本件CMを制作した事実ではなくて、原告が本件CMにつき著作権ないし著作者人格権を有することの確認を求めているとしても、被告はアストロミュージックから許諾を受けて本件キャッチフレーズを使用しているにとどまり、本件CMについて被告が著作権ないし著作者人格権を有するなどとは主張していないことから、原告が有する権利又は法律上の地位に存する危険又は不安を除去するために本件CMの著作権ないし著作者人格権の存否につき被告との間で確認判決を得ることが必要かつ適切であるとは認め難いと裁判所は判断。この場合も確認の利益を欠くものとして不適法であると判断しています(8頁以下)。

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2 被告は原告に対し原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であるとの事実を被告の社内報に掲載する旨を約したか

被告の社内報及びホームページに原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であるとの事実を掲載することを求める原告の請求は認められていません(9頁以下)。

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3 本件番組の放送及び本件新聞記事の掲載につき被告に名誉毀損の不法行為が成立するか

本件番組及び本件新聞記事の内容が原告の社会的評価を低下させるものと認めることはできないとして、被告による名誉毀損を原因とする原告の請求は認められていません(10頁)。

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4 被告が本件各書面を原告に送付した行為につき侮辱の不法行為が成立するか

被告の書面での表現行為が社会生活上許される限度を超えた侮辱行為であると認めることはできないとして、被告による侮辱を原因とする原告の請求は認められていません(10頁以下)。

結論として、原告が本件CMを制作した事実の確認を求める部分は不適法であるからこれを却下することとし,その余の請求にはいずれも理由10
がないからこれらを棄却

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■コメント

原告は、「やめられない、とまらない、かっぱえびせん」のキャッチフレーズを制作したのは自分であると主張しましたが、本人訴訟ということもあり、主張立証が尽くされていません。
written by ootsukahoumu at 12:11|この記事のURL知財判決速報2018