2018年12月03日

ミネソタ多面的人格目録性格検査出版事件−著作権 著作権に基づく差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ミネソタ多面的人格目録性格検査出版事件

東京地裁平成30.11.15平成29(ワ)22922著作権に基づく差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    大下良仁

*裁判所サイト公表 2018.11.27
*キーワード:出版権、依拠、複製

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■事案

質問紙法人格検査の出版物の出版権侵害性が争点となった事案

原告:出版社
被告:出版社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法80条

1 被告による出版権侵害行為の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,質問紙法人格検査(ミネソタ多面的人格目録)の日本語翻訳版につき出版権を有し,被告による書籍等(ハンドブック,質問項目記載の冊子,マークカード及び診断用ソフトウェア)の出版及び頒布が同出版権を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項及び2項に基づき,同書籍等の複製及び頒布の差止め,同書籍等及びその印刷用原版の廃棄をそれぞれ求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

S14 ミネソタ多面的人格目録(MMPI)考案
S25 翻訳日本女子大学版
S28 翻訳九大版
S30 翻訳東大版
S44 原告が旧三京房版を刊行
H05 原告が新日本版を刊行
H29 被告が本件出版物を刊行

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■判決内容

<争点>

1 被告による出版権侵害行為の有無

原告は、本件においてAを著作者とする著作物の出版権侵害を主張しました。

(1)新日本版

原告は、本件出版物の質問票における質問の表現と新日本版の質問票における質問の表現とを比較した上で、その類似性に基づいて上記出版権侵害を主張。
この点について、裁判所は、Bらが新訳を作成した昭和62年から昭和63年当時、新日本版に接し、これを用いてBら新訳を作成することは不可能であった等から、依拠性を否定。
本件出版物は、新日本版を複製したものであるとは認められず、原告主張の出版権侵害は理由がないと判断しています。

(2)旧三京房版

また、原告は、旧三京房版の出版権を根拠として出版権侵害性を主張しましたが、裁判所は、本件出版物が旧三京房版を複製したものであるとは認めていません(7頁以下)。

結論として、原告の主張は認められていません。

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■コメント

ミネソタ多面的人格目録は、130の外国語に翻訳され、90カ国以上で使用されている国際的質問紙法テストのようです。性格検査法に関連する事案としては、YG性格検査に関するものが過去ありました。

written by ootsukahoumu at 06:30|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年11月26日

コスプレ写真発信者情報開示事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コスプレ写真発信者情報開示事件

東京地裁平成30.10.26平成30(ワ)21931発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2018.10.20
*キーワード:発信者情報開示、コスプレ写真

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■事案

コスプレ写真の無断配信に関する発信者情報開示事件

原告:カメラマン
被告:レンタルサーバ事業会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法22条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件各写真の著作物性
2 本件各写真の著作者
3 本件発信者情報開示の必要性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告が運用するレンタルサーバ上のウェブサイト上に掲載された写真は原告が撮影した著作物であるから,これを無断で掲載することが原告の著作権(複製権及び送信可能可権)を侵害することは明らかであるなどと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』

<経緯>

H26.08 本件写真1撮影
H28.03 本件写真2撮影
    「Flickr」に本件各写真掲載
H29.11 本件ウェブページに本件各写真掲載
H30.06 原告申立てによる本件発信者情報消去禁止仮処分決定

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■判決内容

<争点>

1 本件各写真の著作物性

有名な女性コスプレイヤーを被写体とする本件各写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、その著作物性を肯定しています(3頁以下)。

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2 本件各写真の著作者

被告は、「Flickr」の本件アカウントが原告のアカウントであると認め得る証拠はないし、仮にそうであったとしても原告が「Flickr」上に本件各写真のデータを投稿したとの事実以上に原告が本件各写真を撮影したとの事実まで認められるわけではないなどと反論しました。
この点について、裁判所は、

・東京地方裁判所が平成30年6月22日、原告の申立てに基づき被告に対して本件発信者情報の消去を禁ずる旨仮処分を決定
・「Flickr」の本件アカウント「A」の支払いクレジットカードは原告の住所
・本件各写真の機材、撮影日、撮影条件が本件ウェブアルバムに記載
・本件ウェブアルバムに平成30年1月に発信者情報開示請求した旨記載
・本件各写真の撮影者(著作者)が原告以外の者であることをうかがわせる証拠は何もない

といった諸事情を勘案して、原告が本件各写真を撮影した著作者であると認定しています(4頁以下)。

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3 本件発信者情報開示の必要性

(1)著作権侵害の明白性

本件発信者による本件各写真の画像データの入手先が本件アルバム以外に考え難いことからすれば、本件発信者は、本件ウェブアルバムから本件各写真の画像ファイルを複製した上で本件ウェブページに掲載(アップロード)して,上記画像ファイルを送信可能化したものと認められる。

(2)損害賠償請求権の行使のための必要性

本件ウェブページ上の記載からは、誰が本件各写真の画像ファイルを掲載したのかが判然とせず、原告がいまだ被告から本件発信者情報の開示を受けていないことからすれば、原告において本件各写真に係る著作権侵害に基づく損害賠償請求権の行使をするためには、本件発信者情報の開示が必要であると認められる。

結論として、原告は、被告に対してプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができると裁判所は判断しています(5頁以下)。

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■コメント

ウェブ上の写真アルバムサービス「Flickr」に掲載した写真が無断使用された事案です。
自分が撮影した写真であることを証明するのも一苦労であることがよくわかる事案です。
written by ootsukahoumu at 06:00|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年11月05日

陶製傘立てデザイン事件−著作権 意匠権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

陶製傘立てデザイン事件

大阪地裁平成30.10.18平成28(ワ)6539意匠権侵害差止等請求事件PDF
別紙1(原告傘立て1と被告傘立て1の形態対比表)
別紙2(原告傘立て2と被告傘立て2の形態対比表)

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    野上誠一
裁判官    大門宏一郎

*裁判所サイト公表 2018.10.30
*キーワード:ゴミ箱、傘立て、応用美術、著作物性、形態模倣、一般不法行為論

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■事案

陶製傘立てのデザインの著作物性などが争点となった事案

原告:家庭日用品製造販売会社
被告:雑貨品製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、不正競争防止法2条1項3号、意匠法37条

1 被告ごみ箱関係
2 被告傘立て1関係
3 被告傘立て2関係

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■事案の概要

『本件は,家庭日用品の企画,製造,販売等を目的とする株式会社である原告が,雑貨品等の輸入,販売等を目的とする株式会社である被告が,別紙被告製品目録1記載のごみ箱(以下「被告ごみ箱」という。)並びに同目録2記載の傘立て(以下「被告傘立て1」という。)及び同目録3記載の傘立て(以下「被告傘立て2」という。)を輸入,販売したことに関し,以下の各請求をする事案である。』

<経緯>

H17.01 原告傘立て2販売
H19.12 原告傘立て1販売
H20.10 被告傘立て2販売
H24.01 原告ごみ箱販売開始
H24.05 本件意匠設定登録(秘密意匠)
H24.10 被告傘立て1販売
H26.07 被告が被告ごみ箱を輸入、販売
H27.06 意匠公報掲載
H27.10 原告が被告に侵害警告

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■判決内容

<争点>

1 被告ごみ箱関係

(1)本件意匠権侵害行為

被告ごみ箱の意匠は本件意匠に類似する(争いがない)ものであり、被告ごみ箱を販売する行為については、本件意匠権を侵害する行為であると裁判所は判断しています(9頁以下)。
なお、図面が意匠公報に掲載された平成27年6月15日以前に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売1、2)に関しては、本件意匠権侵害について過失があったと認定されていません。

(2)形態模倣の不正競争行為

被告ごみ箱の形態が原告ごみ箱のそれと実質的に同一であり(争いがない)、この形態同一性は依拠の事実も推認させるところ、この推認を覆す事情は認められないとして、被告ごみ箱は原告ごみ箱の形態を模倣した商品であると裁判所は判断。
被告が平成27年1月31日までに被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売1)については、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為に当たると裁判所は判断しています
(10頁以下)。
他方、被告が同年2月1日以降に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2及び3)については、原告ごみ箱が最初に販売された日から3年が経過していることから、同号所定の不正競争行為に当たらないと判断されています(同法19条1項5号イ)。

(3)一般不法行為の成否

被告が平成27年2月1日から同年6月14日までの間に被告ごみ箱を販売した行為(被告ごみ箱販売2)については、不正競争行為に当たらず、また、本件意匠権侵害について過失があったとは認められないことから、原告は被告ごみ箱販売2については、公正な自由競争秩序を著しく害するものであるから一般不法行為を構成すると主張しました。
結論として、裁判所は、原告の主張を認めていません。

(4) 差止請求及び廃棄請求並びに謝罪広告請求の可否

被告が被告ごみ箱を販売するおそれを否定することはできないとして、被告ごみ箱の差止請求については、その販売及び広告宣伝の差止めの限りで裁判所は認めています。
また、被告は被告ごみ箱の在庫を保有していると考えられることから、その廃棄請求が認められています。
なお、謝罪広告請求は認められていません。

(5)損害論

・本件意匠権侵害(被告ごみ箱販売3)による損害額 2万3488円
・不正競争行為(被告ごみ箱販売1)による損害額 2万3028円
・弁護士費用相当損害額 各5000円(合計1万円)

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2 被告傘立て1関係

(1)不正競争行為による損害の発生の有無

原告傘立て1は平成19年12月に販売が開始されており、原告は不正競争防止法19条1項5号イの規定を踏まえて、3年間である平成22年12月までの間に被告が被告傘立て1を販売したと主張しました。
しかし、被告が平成22年12月までの間に被告傘立て1を販売したとは認められないと裁判所は判断、この点についての原告の損害の発生を認めていません(15頁以下)。

(2)著作物性の有無

原告傘立て1の美術の著作物性(著作権法2条2項)について、裁判所は、基本的形状が実用的機能に基づく形態であること、また、タイルが壁面に格子状に貼付されたデザインは、壁状のものによく見られる形状であって、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとはいえない、としてこれを否定しています(16頁以下)。

(3)一般不法行為論

被告が被告傘立て1を販売した行為については、不正競争行為に当たらず、また、著作権侵害行為にも当たらないことから、原告は被告傘立て1を販売する行為についても公正な自由競争秩序を著しく害するものであるから、一般不法行為を構成すると主張しました。
結論としては、裁判所は原告の主張を認めていません。

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3 被告傘立て2関係

(1) 不正競争行為による損害の発生の有無

原告傘立て2は平成17年1月に販売が開始されており、原告は不正競争防止法19条1項5号イの規定を踏まえて被告が平成20年1月までの間に被告傘立て2を販売したと主張しました。
しかし、被告が平成20年1月までの間に被告傘立て2を販売したとは認められないとして、裁判所は原告の損害の発生を認めていません(17頁以下)。

(2)著作物性の有無

原告傘立て2についても、円弧状に凹没する環状凹条が多数かつ水平にわたって上下方向に等間隔に連続して形成され、全体として略蛇腹形状とされている外周面のデザインについて、筒状ないし管状のものによく見られる形状であって、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとはいえないなどとして、美術の著作物としての著作物性を裁判所は認めていません(18頁)。

(3)一般不法行為論

原告傘立て2に関する一般不法行為論も認められていません。

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■コメント

工業デザインの範疇になる傘立てのデザインの著作物性が争点の1つとなった事案ですが、1点ものの陶製製品でもない限り、円筒、あるいは長方形の一般的な形状の傘立てで、著作権法での保護は難しい印象です。
written by ootsukahoumu at 07:13|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年11月02日

任天堂マリカー事件−不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

任天堂マリカー事件

東京地裁平成30.9.27平成29(ワ)6293不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2018.10.24
*キーワード:コスプレ衣装、マリオ、キャラクター、ドメイン、不正競争行為、権利の濫用

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■事案

公道カートでマリオのコスチュームを提供するなどした点の不正競争行為性が争点となった事案

原告:任天堂
被告:自動車レンタル会社、代表者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項1号、2号、13号、3条、5条

1 被告会社が平成28年6月24日以降、本件各行為を行ったか否か
2 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか否か
3 登録商標の抗弁の成否
4 使用差止及び抹消請求の可否及び範囲
5 被告標章第2を使用する本件宣伝行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか否か
6 使用差止及び抹消・廃棄請求の可否及び範囲
7 本件ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争に該当するか否か
8 使用差止及び登録抹消請求の可否及び範囲
9 複製又は翻案の差止請求の可否及び範囲
10 本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか否か
11 本件各コスチュームが原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか否か
12 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告会社による(1)原告の周知又は著名な商品等表示である文字表示である「マリオカート」及び「マリカー」(以下,これらを併せて「原告文字表示」という。)と類似する別紙被告標章目録第1記載の各標章(以下「被告標章第1」という。)の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競争に,(2)原告が著作権を有する別紙原告表現物目録記載の各表現物(以下「原告表現物」という。)と類似する部分を含む別紙掲載写真目録記載の各写真(以下「本件各写真」という。)及び同投稿動画目録記載の各動画(以下「本件各動画」という。)を作成(以下「本件制作行為」という。)してインターネット上のサイトへアップロードする行為(以下,この掲載及びアップロード行為を「本件掲載行為」という。)が原告の著作権(複製権又は翻案権,公衆送信権等)侵害に,(3)原告の周知又は著名な商品等表示である原告表現物又は別紙原告商品等表示目録記載の商品等表示(以下「原告立体像」という。)と類似する表示である別紙被告標章目録第2記載の各標章(コスチューム及び人形,以下「被告標章第2」といい,同目録記載の標章を「被告標章第2のい1」等と特定する。)を使用する行為である本件掲載行為,従業員のコスチューム着用行為及び店舗における人形の設置行為(以下,併せて「本件宣伝行為」という。)が不競法2条1項1号及び2号の不正競争に,(4)原告の特定商品等表示である原告文字表示と類似する別紙ドメイン名目録記載の各ドメイン名(以下「本件各ドメイン名」という。)の使用が同項13号の不正競争に,(5)原告表現物の複製物又は翻案物である別紙貸与物目録記載の各コスチューム(以下「本件各コスチューム」という。)を貸与する行為(以下「本件貸与行為」という。)が原告の著作権(貸与権)侵害に,各該当すると主張して,被告会社に対し,前記各不正競争該当行為(前記(1),(3)及び(4))につき不競法3条1項及び2項に基づき,著作権侵害該当行為(前記(2)及び(5))につき著作権法112条1項及び2項に基づき,前記(1)につき被告標章第1の使用差止め,同抹消及び商号登記の抹消を(請求の趣旨第1ないし3項),前記(2)につき原告表現物の複製又は翻案及び複製物等の自動公衆送信等の各差止め並びに本件各写真及び本件各動画の削除及びデータ廃棄を(請求の趣旨第4,5,7及び8項),前記(3)につき被告標章第2の使用差止め並びに本件各写真及び本件各動画の削除及びデータ廃棄を(請求の趣旨第6ないし8項),前記(4)につき本件各ドメイン名の使用差止め及び同ドメイン名の一部の登録抹消を(請求の趣旨第9及び10項),前記(5)につき本件貸与行為の差止めを(請求の趣旨第11項),被告らに対し,前記各不正競争該当行為(前記(1),(3)及び(4))につき不競法4条,5条3項1号及び4号に基づき,著作権侵害行為(前記(2)及び(5))につき民法709条及び著作権法114条3項に基づき,損害賠償として1000万円(一部請求)及びこれに対する不法行為後の日である平成29年3月18日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(3頁以下)

<経緯>

H04.08 原告が「スーパーマリオカート」発売
H27.06 被告会社が公道カートレンタル事業開始
H28.06 被告会社が「マリカー」商標登録(5860284)
H30.03 被告会社が商号「株式会社マリカー」を変更

被告標章目録第1
1 マリカー
2 MariCar
3 MARICAR
4 maricar

被告標章目録第2
「マリオ」「ルイージ」「ヨッシー」「クッパ」のコスチューム等

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■判決内容

<争点>

1 被告会社が平成28年6月24日以降、本件各行為を行ったか否か

被告会社が平成28年6月24日以降、被告標章第1の4の使用、本件制作行為、本件掲載行為を含めた本件宣伝行為、本件ドメイン名1、3及び4の使用並びに本件貸与行為(併せて「本件各行為」という)を行ったかどうかについて、裁判所は、被告会社は平成28年6月24日以降も引き続き、自らが全国に本件レンタル事業に係るサービスを提供する店舗を拡大し、同店舗を運営する有限責任事業者組合を立ち上げるなどして各店舗において自社の定めた規約に従ったサービスを提供させているということができるとして、その関与の程度の強さから本件レンタル事業に主体的に関与し、少なくとも関係団体と共同して本件レンタル事業を実施していると認めるのが相当であると認定しています(39頁以下)。

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2 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか否か

(1)本件レンタル事業の需要者

本件レンタル事業の需要者は、観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人であり、海外から日本を訪れる者と日本国内に住んでいる者が含まれ、日本語を解しない者も含まれるが、日本語を解する者も当然に含まれると認定されています(44頁以下)。

(2)原告文字表示の周知性

「マリカー」は、遅くとも平成8年12月13日発行のゲーム雑誌「ファミマガ64」において、「マリオカート」の略称として「今や遅しと手ぐすね引いて『マリカー』を待っているファンに贈る徹底ガイド。」、「プレイに必要な『マリカー』のすべてを解説するぞ。」という形で使用された等から、原告文字表示マリカーは、広く知られていたゲームシリーズである「マリオカート」を意味する原告の商品等表示であると認定されています。

なお、原告文字表示マリカーは「マリカー」という日本語の表示であり、日本語を解しない者の間では原告の商品等表示として広く知られていたとは認められていません。

(3)被告標章第1と原告文字表示との類否

被告標章第1のうち被告標章第1の1(マリカー)は、原告文字表示マリカーと外観、称呼が同一であるとして、同一の標章と判断されています。
また、被告標章第1のうち被告標章第1の2ないし4( MariCar、MARICAR、maricar)は、いずれも大文字と小文字のアルファベットから構成されており、原告文字表示マリカーとは外観において異なるものの、称呼はどちらも「マリカー」であり同一であるなどと判断。
結論として、裁判所は、被告標章第1は原告文字表示マリカーと同一若しくは類似の標章と判断しています。

(4)混同を生じさせるおそれの有無

本件レンタル事業において使用された場合、被告標章第1は周知性が認められる原告文字表示マリカーと類似している上、両者の商品ないし役務の間には強い関連性が認められることから、これに接した日本全国の需要者に対して原告文字表示マリカーを連想させ、その営業が原告又は原告と関係があると誤信させると裁判所は判断しています。

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3 登録商標の抗弁の成否

被告らは、被告会社は「マリカー」の標準文字からなる本件商標を有しており、「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから、不競法3条1項に基づく差止請求は認められない旨主張しました(55頁以下)。
この点について、裁判所は、被告標章第1を使用する被告会社の行為は不正競争行為となるところ、諸事情を考えると、原告に対して被告会社が本件商標に係る権利を有すると主張することは権利の濫用として許されないというべきであると判断しています。
結論として、裁判所は、被告の商標登録の抗弁を認めていません。

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4 使用差止及び抹消請求の可否及び範囲


(1)被告標章第1の使用差止及び抹消請求

被告会社は、被告標章第1の使用行為を継続する可能性があり、原告は被告会社の使用行為により事業活動に対する信用等の営業上の利益が侵害され、又は侵害されるおそれがあると裁判所は判断。
結論として、裁判所は、原告は被告会社に対して不競法3条1項に基づいて営業上の施設及び活動において被告標章第1を使用してはならないことを求めることができ、また、原告は同条2項に基づいて侵害行為の停止又は予防に必要な行為として営業上の施設、ウェブサイトを含む広告宣伝物及びカート車両から被告標章第1を抹消することを求めることができると判断しています(56頁以下)。

なお、原告文字表示マリカーは、日本語を解しない者の間では周知性が認められないとの判断を前提に、裁判所は、外国語のみで記載されたウェブサイト及びチラシにおける被告標章第1の使用についての差止及び抹消請求は認めていません。

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5 被告標章第2を使用する本件宣伝行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するか否か

(1)原告表現物の周知性

原告表現物マリオ等は、日本全国の者の間で、また、外国に在住して日本を訪問する者の間でも原告の商品等表示として広く認識されていたと裁判所は認定しています(57頁以下)。

(2)原告表現物と本件宣伝行為との類否

結論としては、被告会社が被告標章第2を使用して行った本件宣伝行為(本件写真1の表示を除く)は、原告の周知の商品等表示と類似する標章を商品等表示として使用しているものであり、これに接した需要者に対して被告会社と原告との間に原告と同一の商品化事業を営むグループに属する関係又は原告から使用許諾を受けている関係が存するものと誤信させるものと裁判所は判断。
被告標章第2を使用する本件宣伝行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当すると判断しています。

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6 使用差止及び抹消・廃棄請求の可否及び範囲

被告会社に対する被告標章第2を営業上の施設及び活動において使用することの差止めを裁判所は認めています。被告会社は、

・標章が使用された本件写真2及び3を同社が運営するウェブサイトに掲載すること
・本件各動画を動画共有サービスに掲載すること
・従業員に被告標章第2の1ないし10のコスチュームを着用させること
・店舗内に同目録記載11の人形を設置すること
・営業活動において上記標章である各コスチュームを貸与という形で使用すること

など、被告標章第2の各標章を営業上の施設及び活動において使用することが禁止されています(74頁以下)。

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7 本件ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争に該当するか否か

被告会社は、本件レンタル事業の宣伝行為のために不正の利益を得る目的をもって原告の特定商品等表示である原告文字表示マリカーと類似する本件各ドメイン名を使用したと認められるとして、同行為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当すると裁判所は判断しています(76頁以下)。

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8 使用差止及び登録抹消請求の可否及び範囲

被告会社は、本件各ドメイン名の使用行為を継続する可能性が高いというべきであり、原告は使用行為により事業活動に対する信用等の営業上の利益が侵害され、又は侵害されるおそれがあると認められると裁判所は判断。
結論として、原告は被告会社に対して不競法3条1項に基づき、本件各ドメイン名の使用の差止めを求めることができると判断されています(78頁以下)。

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9 複製又は翻案の差止請求の可否及び範囲

著作権法に基づく原告表現物の複製又は翻案の差止請求並びに本件写真等の抹消及び廃棄請求の可否について、裁判所は、差止めの対象となる行為が具体的に特定されておらず、差止めの必要性を認めるに足りる立証がないとして、この点についての原告の請求を認めていません(79頁以下)。

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10 本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか否か

本件各写真及び本件各動画が原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか否かについては、「これらが複製物又は翻案物に当たることを前提とする請求である請求の趣旨第4項,第5項に係る請求が前記3(1)の理由により認められないため,判断するに及ばない。」とされています(80頁)。

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11 本件各コスチュームが原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか否か

不競法に基づく請求の趣旨第6項に係る請求には被告会社がこれらのコスチュームを使用(貸与)することの禁止を求める請求が含まれると解され、この部分は請求の趣旨第11項に係る請求と選択的併合の関係に立つと裁判所は判断。
不競法に基づき被告会社がこれらのコスチュームの貸与をすることが禁止されることによって請求の趣旨第11項に係る請求について判断をするに及ばなくなるとして、本件各コスチュームが原告表現物の複製物又は翻案物に当たるか否か(争点11)は判断するには及ばないとしています(80頁)。

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12 損害論

被告会社について、不競法5条3項1号、4号に基づく損害として、1026万4609円を認定。
原告の請求額全額(1000万円)が認容されています(80頁以下)。

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■コメント

2015年10月に渋谷109のそばで見かけた際のマリオ風のコスプレは、3年後の2018年10月に原宿で見かけた公道カートの様子のものとほぼ同じものでした。
今年10月のカートの車体には、「MariCar.com MariCarは任天堂ゲーム「マリオカート」とは無関係です」との記載があることが読み取れます。
20151030マリカー任天堂マリオ

20181006マリカーマリオカート原宿

ファンやメディアの間から自然発生的に生じた愛称などで、企業側としては商品化、商品での使用を考えていない場合、企業が商標権を取得していないことがあるわけで、こうした場合は、行為規制法である不正競争防止法の出番となります。

キャラクターコスチュームの著作物性については、不正競争防止法上の請求との選択的併合関係などを理由に裁判所は判断を回避しています。

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■関連記事

マリカー判決、コスプレ著作権「パンドラの箱」はなぜ開かなかったのか? 福井弁護士が判決文を読み解く
弁護士ドットコム 2018年11月01日10時11分

written by ootsukahoumu at 03:56|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年10月22日

生長の家「万物調和六章経」書籍事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

生長の家「万物調和六章経」書籍事件(控訴審)

知財高裁平成30.10.9平成29(ネ)10101著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    高橋 彩
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2018.10.16
*キーワード:著作権譲渡、黙示の承諾、解除の有効性、権利の濫用

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■事案

生長の家創始者谷口雅春氏(故人)の著作「大調和の神示」の使用許諾の成否などが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :公益財団法人、出版社
被控訴人(1審被告):宗教法人、宗教法人代表者

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、民法1条3項

1 本件著作物の著作権の帰属
2 黙示の許諾の有無
3 解約の有効性
4 控訴人光明思想社の出版権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,(1)控訴人事業団が,同控訴人は,言語の著作物である「大調和の神示」(「『七つの燈薹の點燈者』の神示」あるいは「『七つの灯台の点灯者』の神示」という題号のときもある。)(本件著作物)の著作権を有するところ,被控訴人らによる原判決別紙書籍目録記載1及び2の各書籍(本件各書籍)の出版が控訴人事業団の著作権(複製権)を侵害する旨主張して,被控訴人らに対し,(1)著作権法112条1項及び2項に基づく本件各書籍の複製,頒布又は販売の申出の差止め及び廃棄(世界聖典普及協会,日本教文社及び被控訴人生長の家教化部の保管するものを含む。),(2)不法行為に基づく損害賠償金160万円及びこれに対する不法行為の日以後である訴状送達日の翌日(被控訴人生長の家につき平成27年11月19日,被控訴人Yにつき同月15日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(2)控訴人光明思想社が,同控訴人は,「生命の實相」及び「甘露の法雨」の出版権(各著作物につき,別々の出版権設定契約に基づくもの。)を有するところ,被控訴人らによる本件各書籍の出版が控訴人光明思想社の上記各出版権を侵害する旨主張して,被控訴人らに対し,(1)著作権法112条1項に基づく本件各書籍の複製の差止め,(2)不法行為に基づく損害賠償金100万円及びこれに対する不法行為の日以後である上記訴状送達日の翌日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求めた事案である。』

『原判決は,控訴人らの請求をいずれも棄却したため,これを不服とする控訴人らが控訴した。
 当審において,控訴人光明思想社は,控訴人光明思想社が本件著作物の出版権(上記1(2)の出版権設定契約とは別の出版権設定契約に基づくもの。)を有するところ,被控訴人らによる本件各書籍の出版が控訴人光明思想社の上記出版権を侵害する旨主張して,上記1(2)(1)及び(2)と同様の差止め及び損害賠償を求める請求を追加した(3つの出版権に基づく請求の併合形態は選択的併合)。』
(2頁以下)

<経緯>

H29.9 原審口頭弁論終結
H30.3 控訴人光明思想社と控訴人事業団が出版権設定契約、登録
H30.6 控訴審第1回口頭弁論期日

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■判決内容

<争点>

1 本件著作物の著作権の帰属

Aが執筆した本件著作物について、Aが本件寄附行為により控訴人事業団に「生命の實相」の著作権を移転しており、その素材である本件著作物の著作権も控訴人事業団に移転しているとして本件著作物の著作権は控訴人事業団に帰属すると控訴審は判断しています(16頁以下)。

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2 黙示の許諾の有無

Aにおいて、寄附行為により本件著作物の著作権を控訴人事業団に移転した後も本件著作物については、A自身やAの意向に基づいて設立される生長の家の宗教法人に無償で使用させることを当初から想定していたと認めるのが相当であるなどとして、本件寄附行為当時及びその後の経過に照らして、被控訴人生長の家の設立時から、遅くとも「聖光録(生長の家家族必携)」が発行された昭和28年1月1日までの間には、控訴人事業団は被控訴人生長の家に対して本件著作物を無償で個別の承諾なく使用することを、少なくとも黙示に許諾したものというべきであると控訴審は判断しています(17頁以下)。

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3 解約の有効性

黙示の許諾による本件使用許諾の合意を解約するためには、これを是認するに足りる正当な理由が必要であるところ、控訴審は、控訴人らが主張するいずれの解約の意思表示の時点においても本件使用許諾の合意を解約することを是認するに足りる正当な理由があるとは認められないと判断。解約の有効性を否定しています(20頁以下)。

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4 控訴人光明思想社の出版権侵害の成否

(1)時機に後れた攻撃防御方法の却下について

被控訴人らは、控訴人光明思想社による、(1)「生命の實相」及び「甘露の法雨」の対抗要件具備、(2)本件著作物についての出版権設定及び対抗要件具備の主張について、民事訴訟法157条に該当すると主張しました。
この点について、上記主張に係る事実はいずれも原審口頭弁論終結日(平成29年9月29日)より後のものであり、控訴審第1回口頭弁論期日に主張したことをもって同条の「時機に後れた」ものとはいえないと控訴審は判断しています(26頁)。

(2)「生命の實相」及び「甘露の法雨」の出版権侵害について

控訴人光明思想社は、被控訴人生長の家による本件各書籍の出版は「生命の實相」及び「甘露の法雨」の出版権を侵害すると主張しました。
この点について、控訴審は、「生命の實相」及び「甘露の法雨」と本件各書籍は題号のみならず内容も異なる書籍であり、「生命の實相」及び「甘露の法雨」を原作のまま複製したものということはできないとして、本件各書籍の出版は「生命の實相」及び「甘露の法雨」の出版権を侵害するものではないと判断。
これらの著作物の出版権に基づく控訴人光明思想社の請求は理由がないと判断しています(26頁)。

(3)本件著作物の出版権侵害について

1.出版権設定、登録

控訴人光明思想社は、平成30年3月22日までに控訴人事業団から本件著作物に係る出版権の設定を受け、その旨の出版権設定登録をしました。

2.出版権侵害性

そうすると、本件各書籍には本件著作物の本文が全部収録されており、本件各書籍の出版は本件出版権を侵害することになると控訴審は判断しています。

3.権利濫用の成否

もっとも、本件出版権の設定契約締結に関して、被控訴人生長の家が原審において控訴人事業団から本件著作物の使用許諾を受けていた旨並びに本件著作物と「生命の實相」及び「甘露の法雨」は別個の著作物である旨の主張をしたことから、これを受けて控訴人らが原審の口頭弁論終結日より後において、出版権設定契約をした上でその設定登録をしたという経過を踏まえ、控訴人事業団は、本件訴訟において本件使用許諾の解約が認められなかった場合に備えて被控訴人生長の家による本件使用許諾に基づく本件著作物の使用を妨げる目的で新たに本件出版権を設定したことが明らかであると控訴審は判断。
また、控訴人光明思想社は、控訴人事業団及び被控訴人生長の家が当事者となった過去の複数の訴訟において、共同原告ないし共同被告となって控訴人事業団とおおむね同じ主張をして被控訴人生長の家と対立しており、本件訴訟においても訴え提起の当初から控訴人事業団の共同原告として同一の訴訟代理人に委任し、同一の主張をして訴訟を追行していたことから、控訴人光明思想社においても上記と同様の目的をもって、本件出版権の設定契約をしたと推認することができると控訴審は判断。
以上に加えて、控訴人光明思想社が、本件出版権の設定契約までに「生命の實相」及び「甘露の法雨」と別個に本件著作物を独立して出版していた事情はうかがわれないことも勘案して、控訴人光明思想社による被控訴人生長の家に対する本件出版権の行使は権利の濫用として許されないと控訴審は判断(26頁以下)。

控訴人光明思想社の本件著作物の出版権侵害に関する請求は認められていません。

結論として、控訴人らの控訴はいずれも棄却され、また、控訴人光明思想社の控訴審における追加請求も棄却されています。

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■コメント

原審の棄却判断が控訴審でも維持されていますが、原審口頭弁論終結日後に著作権者と出版社が出版権設定契約、登録手続をすることで先行する使用許諾関係を劣後させようとした点は、権利の濫用としてその主張が認められていません。

なお、本事案の論点からは逸れますが、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会「著作物等のライセンス契約に係る制度の在り方に関するワーキングチーム」では当然対抗制度導入の是非について議論がされています。未登録の出版権と著作権譲渡が抵触する場合との調整をどう考えるかといった出版権独自の検討課題が指摘されています。

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■過去のブログ記事

2017年12月11日 原審記事

written by ootsukahoumu at 07:31|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年10月16日

緊縛写真Twitter無断使用事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

緊縛写真Twitter無断使用事件

東京地裁平成30.9.24平成29(ワ)41277損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    奥 俊彦
裁判官    高櫻慎平

*裁判所サイト公表 2018.10.12
*キーワード:写真、著作物性、無断使用、Twitter、プライバシー権、肖像権

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■事案

写真を無断でTwitterに掲載された事案

原告:個人
被告:個人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、23条、114条3項、民法710条

1 著作権侵害の成否
2 プライバシー権侵害の成否
3 肖像権侵害の成否
4 故意・過失の有無
5 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告において原告が被写体となっている写真1点(訴状別紙原告写真目録記載の写真。以下「本件写真」という。)を原告に無断で複製してインターネット上の短文投稿サイトTwitter(以下「ツイッター」という。)上にアップロードした行為が,原告の当該写真に係る著作権(複製権及び公衆送信権),肖像権及びプライバシー権を侵害すると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として,著作権法114条3項による使用料相当額12万1500円,慰謝料200万円及び弁護士費用20万円の合計232万1500円及びこれに対する不法行為後である平成29年12月16日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H25.06 原告と訴外Cが本件写真を創作
H28.05 原告が「D」アカウントでTwitter登録
H29.10 CのTwitterに本件写真掲載
    被告が自己のTwitterに本件写真掲載

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の成否

本件写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、

『本件写真は,民家風の建物の畳敷きの室内において,鞭を持って座っている男性の正面に,女性が縄で緊縛された状態で柱に吊るされている状況が撮影されたものであるところ,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,被写体と光線との関係,陰影の付け方,部分の強調,背景等の総合的な表現に撮影者等の個性が表れており,創作性が認められ,著作物に当たる。』
(6頁以下)

と判断しています。
その上で、著作権侵害性について、裁判所は、本件写真が訴外Cと原告が共同して創作したものであり、また、訴外Cから本件写真の著作権が原告に譲渡されていたと認定。
被告が原告に無断で自己のTwitter上に本件写真を複製した上でアップロードした行為は、原告の複製権及び公衆送信権を侵害すると判断しています。

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2 プライバシー権侵害の成否

本件写真が緊縛写真であり、裁判所は、被写体の女性においてはその内容に照らして、一般人の感受性を基準にすれば、公開を欲しないものといえるとして、このような写真を本人の許諾なく公開することはプライバシー権を侵害し得るものであると判断。
もっとも、本件写真のみからは被写体の向き等により被写体の女性が原告であると同定することはできないものであるものの、原告と被告が知り合いであったこと等から原告及び被告のツイッター仲間からすれば、被告のツイッター上に掲載された本件写真の被写体の女性が原告であると同定することは可能であると裁判所は判断。
結論として、被告による原告のプライバシー権侵害を肯定しています(8頁以下)。

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3 肖像権侵害の成否

さらに裁判所は、

『肖像権と呼ぶかは別として,人は,自己の容ぼう,姿態を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益を有すると解される(最高裁平成17年11月10日第一小法廷判決・民集59巻9号2428頁参照)ところ,本件写真は,原告の姿態が撮影されたものであり,前記(1)のとおり,被写体の女性において,その内容に照らして公開を欲しないものというべきであり,また,前記(2)のとおり,被写体の女性が原告であるとの同定も可能であるから,原告の意に反してこれをツイッター上にアップロードすること(本件被告行為)は,原告の上記人格的利益を違法に侵害する』

と判断。
裁判所は被告による原告の肖像権(人格的利益)侵害を肯定しています(9頁)。

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4 故意・過失の有無

裁判所は、原告の公開を欲しないであろう写真を暴露するために本件被告行為を行ったものといえるとして、プライバシー権及び人格的利益の侵害について被告は故意を有していたものと認められるし、また、著作権侵害についても少なくとも過失が認められると判断しています(9頁以下)。

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5 損害論

裁判所は、損害論について、以下のように認定しています(10頁以下)。

(1)著作権侵害による損害(著作権法114条3項)

12万1500円

(2)プライバシー権、人格的利益の侵害による慰謝料

30万円

(3)弁護士費用相当額損害

5万

合計47万1500円

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■コメント

著作権侵害論については大きな論点とはなっておらず、プライバシー権侵害論や損害論が参考になるところです。
written by ootsukahoumu at 06:50|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年10月10日

フラダンス振付事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

フラダンス振付事件

大阪地裁平成30.9.20平成27(ワ)2570著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
別紙2

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    野上誠一
裁判官    大門宏一郎

*裁判所サイト公表 2018.10.03
*キーワード:フラダンス、振付、舞踏、著作物性、使用許諾

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■事案

フラダンスの振付の著作物性などが争点となった事案

原告:フラダンス指導者
被告:フラダンス教室運営会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、10条1項3号、民法651条2項

1 本件振付け6等の著作物性
2 本件各振付けの著作権の譲渡又は永久使用許諾の有無
3 被告が本件各楽曲を演奏し本件各振付けを上演し又は上演させるおそれの有無
4 被告による本件各楽曲及び本件振付け1等に係る著作権侵害行為の有無
5 被告の故意又は過失の有無
6 原告の損害の有無及び額
7 本件解除が原告にとって不利な時期にされたものか及び本件解除についてやむを得ない事由があったか

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■事案の概要

『ハワイに在住するクムフラ(フラダンスの師匠ないし指導者)である原告は,従前,フラダンス教室事業を営む被告と契約を締結し,被告ないし被告が実質的に運営する九州ハワイアン協会(以下「KHA」という。)やその会員に対するフラダンス等の指導助言を行っていたが,両者の契約関係は解消された。本件は,原告が,被告に対して,以下の請求をする事案である。』

『(1)原告は,被告が,被告の会員に対してフラダンスを指導し,又はフラダンスを上演する各施設において,別紙振付け目録記載の各振付け(以下,番号に従って「本件振付け1」のようにいい,これらを総称して「本件各振付け」という。)を被告代表者自らが上演し,会員等に上演させる行為が,原告が有する本件各振付けについての著作権(上演権)を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件各振付けの上演の差止めを請求する(第1の1項)。』

『(2)原告は,被告が,被告の会員に対してフラダンスを指導し,又はフラダンスを上演する各施設において,別紙楽曲目録記載の各楽曲(以下,番号に従って「本件楽曲1」のようにいい,これらを総称して「本件各楽曲」という。)を演奏する行為が,原告が有する本件各楽曲についての著作権を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件各楽曲の演奏の差止めを請求する(第1の2項)。』

『(3)原告は,被告が,本件各振付けを上演し又は被告の会員等に上演させた行為(上記(1))及び本件各楽曲を演奏した行為(上記(2))が,原告の著作権を侵害すると主張して,被告に対し,不法行為に基づき,平成26年11月から平成29年10月までの損害賠償金642万2464円(使用許諾料相当額409万2120円及び弁護士費用233万0344円)の一部として250万3440円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する(第1の3項)。』

『(4)原告は,被告との間で,KHA等が平成26年秋に開催するワークショップ等において被告ないしKHAの会員に対してフラダンス等の指導を行うことを内容とする準委任契約(以下「本件準委任契約」という。)を締結していたところ,被告が同契約を原告に不利な時期に解除したと主張して,被告に対し,民法656条,651条2項本文に基づき,損害賠償金385万1910円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年3月26日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を請求する(第1の4項)。』
(2頁以下)

別紙1:振付け目録6 E Pili Mai(エ・ピリ・マイ)の振付けについて
別紙2:楽曲目録/本件振付け6に関する主張対比表

<経緯>

S63 原告と被告前代表が指導契約(本件コンサルティング契約)締結
H26 本件コンサルティング契約終了

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■判決内容

<争点>

1 本件振付け6等の著作物性

(1)フラダンスの著作物性

ハワイの民族舞踊であるフラダンスの現代フラの著作物性について、人の身体の動作の型を振付けとして表現するフラが、著作権法10条1項3号の「舞踊の著作物」にあたるかどうかに関して、裁判所は、まず、

・既定のハンドモーションを歌詞に合わせて当てはめたにすぎない場合
・同じ楽曲又は他の楽曲での同様の歌詞部分について他の振付けでとられている動作と同じものである場合
・既定のハンドモーションや他の類例と差異が動作の細かな部分や目立たない部分での差異にすぎない場合

には、作者の個性が表れていると認めることはできないと説示。

その上で、フラダンスのハンドモーションが歌詞を表現するものであり、歌詞に動作を振り付けるに当たっては歌詞の意味を解釈することが前提になり、普通は言葉の通常の意味に従って解釈することになるものの、あくまで著作権法は具体的な表現の創作性を保護するものであるとして、具体的な表現に作者の個性が表れているかどうかを検討すると裁判所は言及。

また、裁判所は、リズムをとりながら流れを作るステップに関して、ステップ自体あるいはハンドモーションと一体として捉えて、当該振付けの動作に作者の個性が表れている場合の可能性に言及。

そして、ひとまとまりの流れの全体について舞踊の著作物性を認めるのが相当であり、また、本件では、原告が楽曲に対する振付けの全体としての著作物性を主張しているとして、振付け全体を対象として検討すべきであると裁判所は説示。
フラダンスに舞踊の著作物性が認められる場合において、その侵害が認められるためには、侵害対象とされたひとまとまりの上演内容に作者の個性が認められる特定の歌詞対応部分の振付けの動作が含まれることが必要なことは当然ではあるものの、それだけでは足りず、作者の個性が表れているとはいえない部分も含めて、当該ひとまとまりの上演内容について、当該フラダンスの一連の流れの動作たる舞踊としての特徴が感得されることを要すると解するのが相当であると判断。

以上の考え方を踏まえ、本件振付け6等の著作物性について個別に検討を加えた結果、裁判所は、本件振付けには、完全に独自な振付けが見られるだけでなく、他の振付けとは異なるアレンジが見られる、として、全体として見た場合に原告の個性が表現されており、全体としての著作物性を認めるのが相当である、などとして、振付け6、11、13、15、17の各振付けの著作物性を肯定しています(15頁以下)。

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2 本件各振付けの著作権の譲渡又は永久使用許諾の有無

本件各振付けについて、被告に対して著作権が譲渡ないし永久使用許諾がされたと認めるに足りる証拠はないと認定されています(111頁)。

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3 被告が本件各楽曲を演奏し本件各振付けを上演し又は上演させるおそれの有無

被告には本件振付け6等を自ら上演し又は会員等に上演させることにより、原告の著作権を侵害するおそれがあると認められています。
これに対して、本件各楽曲及び本件振付け1等については、認められていません。
結論として、原告の本件各振付けの上演等の差止請求及び本件各楽曲の演奏の差止請求は、本件振付け6等の上演等の差止めを求める限度で認められています(111頁以下)。

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4 被告による本件各楽曲及び本件振付け1等に係る著作権侵害行為の有無

本件コンサルティング契約が終了した翌日である平成26年11月1日以降の被告による著作権侵害行為として認められるのは、本件振付け6等(又はその間奏等以外の部分)を自ら上演し又は会員等に上演させた部分であると裁判所は判断しています(113頁以下)。

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5 被告の故意又は過失の有無

振付けに係る著作権侵害行為について、被告に少なくとも過失があると認められています(113頁以下)。

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6 原告の損害の有無及び額

本件振付け6等の使用許諾料相当額について、裁判所は、700ドル(被告が原告の創作した振付け及び作曲した楽曲全般の使用を行う場合の月額使用許諾料相当額)に侵害期間35か月間を乗じた上で原告が創作した振付け及び作曲した楽曲が上演・演奏された回数(726回)に占める本件振付け6等が上演された回数(90回)の割合を乗じた3037ドル(1ドル未満切捨て)と認定しています(114頁以下)。

700×35×(90÷726)≒3,037

そして、1ドル109.7円で日本円に換算して、33万3158円(1円未満切捨て)を認定しています。

3,037×109.7≒333,158

そのほか、弁護士費用相当額損害として10万円が認定されています。

結論として、原告の著作権侵害に基づく損害賠償請求は43万3158円と判断されています。

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7 本件解除が原告にとって不利な時期にされたものか及び本件解除についてやむを得ない事由があったか

被告による本件解除は「不利な時期」にされたものであるものの、「やむを得ない事由」があったと認めるのが相当であると裁判所は判断。
原告の民法651条2項本文に基づく損害賠償請求は認められていません(122頁以下)。

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■コメント

バレエにしろ日本舞踊にしろ、型のあるものについては既存の型と切り離せない部分があり(型自体の表現であっても細かくみれば千差万別でしょうし)、新作の舞踏に創作性を広く認めれば、反面として先人のアイデアなどの特定個人による独占に繋がりかねず、他人の新しい創作の幅を狭めることにもなるので、裁判所も政策的価値判断からより良いバランスを求めて苦心していることが判決文から伺えます(16頁以下参照)。

フラでのハンドモーションがいわば手話のようなものとすれば、手話自体に著作物性を認めないのと同じ思考になるかと考えられますが、動作に選択の幅があり、また舞踏全体の表現として見た結果として創作者の個性が表れていれば、著作物性を認めると裁判所は示しています。

書面よりもビデオ、録画ビデオよりも生の実演のほうが感銘力がありますが、法廷で検証として原告の教え子が踊る中、原告が解説を行ったそうです。
フラダンス振付けに「著作権」、判決読んだら色々画期的。「歌詞と動作の連動」も評価ー弁護士ドットコム(2018年09月24日 13時02分記事)

原告側弁護活動が効果的だったと思われるところです。

なお、舞踏の著作物性に関する過去の判例としては、以下のようなものがあります。

(1)ファッションショー映像事件(控訴審)
知財高裁平成26.8.28平成25(ネ)10068損害賠償請求控訴事件
関連記事
判決文PDF

舞台上の一定の位置でモデルが決めるポーズの振り付けの著作物性などが争点となった事案

(2)「Shall we ダンス?」振付事件
東京地裁平成24.2.28平成20(ワ)9300損害賠償請求事件
関連記事
判決文PDF

社交ダンスの振付の著作物性などが争点となった事案

(3)手あそび歌出版差止事件
東京地裁平成21.8.28平成20(ワ)4692出版差止等請求事件
関連記事
判決文PDF

幼児のお遊戯である「手あそび歌」が収録されたDVD付書籍の複製権侵害性などが争われた事案

(4)日本舞踊家元事件
福岡高裁平成14.12.26平成11(ネ)358著作権確認等請求控訴事件
判決文PDF
福岡地裁小倉支部平成11.3.23平成7(ワ)240、1126

日本舞踊の振付の著作物性が争点となった事案

(5)バレエ作品振付事件(ベジャール「アダージェット」事件)
東京地裁平成10.11.20平成8(ワ)19539損害賠償等請求事件

バレエの振付の著作物性が争点となった事案

written by ootsukahoumu at 06:24|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年10月06日

「壁ドン」イラスト無断使用事件(別件)−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「壁ドン」イラスト無断使用事件(別件)

東京地裁平成30.9.13平成30(ワ)12524損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2018.10.3
*キーワード:壁ドン、イラスト、送信可能化権、損害論

   --------------------

■事案

イラストが無断でサイトに転載された事案

原告:イラストレーター
被告:ウェブサイト運営者

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条、114条3項

1 本件各イラストの著作権者が原告であるか否か
2 原告が許可していたか
3 被告が本件記事の投稿について不法行為責任を負うか
4 損害論

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,原告が著作権を有するイラスト3点を被告がその運営するウェブサイトに掲載した行為は上記各イラストについての原告の送信可能化権(著作権法23条1項)を侵害するものであると主張して,送信可能化権侵害の不法行為に基づき,著作権法114条3項により損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H22.12 原告が集英社第11回ウルトラ漫画賞受賞
H26.07 Bツイッターアカウントにイラスト3点(本件各イラスト)掲載
H26.08 本件サイトで本件記事中に本件各イラスト転載
H29.06 原告が被告に削除と9万円支払い請求
H29.10 原告が東京簡裁に提訴。30万支払い和解に代わる決定。被告が異議申し立て
H30.04 東京地裁に移送

本件サイト:「ニュースちゃんねる」
本件記事:「【壁ドン】男子必見!「色々な壁ドン」をご紹介(※画像あり)」

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■判決内容

<争点>

1 本件各イラストの著作権者が原告であるか否か

本件各イラストの著作権者は原告であると裁判所は認定しています(8頁)。

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2 原告が許可していたか

被告は、本件各イラストを原告がツイッター上に公開したことによって、ツイッター利用規約に基づいて第三者による公表等を許可したことになる、として被告の行為は原告の著作権を侵害しないと反論しましたが、裁判所は認めていません(8頁以下)。

   --------------------

3 被告が本件記事の投稿について不法行為責任を負うか

被告は、本件サイトのサポートを行っているだけであり、本件記事等の作成や投稿を一切行っていないと反論しました。
この点について、裁判所は、被告は形式的にも実質的にも本件サイトの運営において重要な役割を担っていたとして、本件記事の投稿等について、共同不法行為に基づく法的責任を負うと判断。被告の反論を認めていません(9頁以下)。

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4 損害論

イラスト1点につき1年当たりの使用料3万円×3点×掲載期間3年分の合計27万円と弁護士費用相当額損害3万円の合計30万円が損害額として認定されています(10頁以下)。

   --------------------

■コメント

「壁ドン」イラスト無断掲載訴訟ですが、同一原告による「ガールズVIPまとめ」サイトに掲載された別案件があります。別訴でも30万円の損害額が認定されています。

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■過去のブログ記事

「壁ドン」イラスト無断使用事件
東京地裁平成30.6.7平成29(ワ)39658損害賠償請求事件
2018年07月09日記事
written by ootsukahoumu at 06:46|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年09月19日

5tion専属契約報酬未払い事件− 報酬金支払等請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

5tion専属契約報酬未払い事件

東京地裁平成30.8.30平成28(ワ)6073等報酬金支払等請求事件(本訴)過払報酬金返還請求事件(反訴)PDF
別紙1
別紙2

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    奥 俊彦
裁判官    高桜慎平

*裁判所サイト公表 2018.9.12
*キーワード:専属契約、マネジメント契約、債務不履行

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■事案

K-POPアイドルグループが専属事務所との間で報酬支払いなどを巡って紛争になった事案

本訴原告・反訴被告:グループアーティスト4名
本訴被告・反訴原告:芸能マネジメント会社

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■結論

本訴請求一部認容、反訴請求棄却

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■争点

条文 民法415条

1 報酬1及び報酬2の算定において収益から経費を控除すべきか
2 報酬2における原告らへの分配の割合
3 平成27年3月の被告による公演開催義務違反の有無
4 報酬1ないし報酬3における売上、経費及び既払金の額
5 報酬1ないし報酬3の支払時期
6 未払報酬額ないし過払報酬額

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告らが,エンターテイメント事業を行う被告との間でマネジメント委託等を内容とする専属契約及び附属合意(以下,併せて「本件契約」という。)を平成25年8月に締結し,グループ名「5tion」としてアーティスト活動をしていたところ,被告が本件契約に定められた報酬を支払わず,また,本件契約に定められた公演を開催しなかったことにより報酬を得られなかったと主張して,被告に対し,本件契約に基づく未払報酬請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求として,原告Aにおいて,847万9821円及びこれに対する本件契約終了以後である平成27年8月5日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を,原告Bにおいて,916万3409円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を,原告Cにおいて,872万3600円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を,原告Dにおいて,916万3409円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求める(本訴請求)のに対し,被告が,原告らに支払った報酬が過払いであったと主張して,原告らに対し,不当利得返還請求として,それぞれ236万8765円及びこれに対する不当利得発生後である平成28年9月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(反訴請求)事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H13.12 5tionが韓国で結成
H25.08 原告らが被告と専属契約締結
H27.08 専属契約終了

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■判決内容

<争点>

1 報酬1及び報酬2の算定において収益から経費を控除すべきか

結論として、裁判所は、附属合意書1項及び2項における分配の対象となる収益とは、専属契約書10条で定められているように収入から経費を控除した金額をいうものと解すべきであるとして、報酬1及び報酬2の算定においては、収益から経費を控除すべきものと認めるのが相当であると判断しています(33頁以下)。

   --------------------

2 報酬2における原告らへの分配の割合

裁判所は、報酬2における原告らへの分配割合は70%であると判断しています(36頁以下)。

   --------------------

3 平成27年3月の被告による公演開催義務違反の有無

原告らは、被告が附属合意書8項において、原告らに対してSHOW BOXにおける公演を1か月当たり(最低でも)10回以上開催する義務を負っているにもかかわらず、平成27年3月はSHOW BOXにおける公演は一切開催されなかったため公演開催義務に違反していると主張しました。
この点について、裁判所は、被告が契約上公演開催義務を負っているとは認められないと判断。
原告の主張を容れていません。

   --------------------

4 報酬1ないし報酬3における売上、経費及び既払金の額

報酬1ないし報酬3における売上、経費及び既払金の額の認定について、裁判所は、まず、売上及び既払金に関しては、明細書が存在する期間については明細書記載の金額を採用し、明細書が存在しない期間ないし活動内容については、原告らが主張する限りで被告及びスーパーリッチ社の総勘定元帳記載の金額を採用すると判断。
次に、経費に関しては、裁判所は、被告及びスーパーリッチ社の総勘定元帳記載の金額を採用すると判断しています。
結論として、別紙1ないし3の内容を認定しています(38頁以下)。

   --------------------

5 報酬1ないし報酬3の支払時期

報酬1ないし報酬3の支払時期について、専属契約書及び附属合意書には何ら定めがなく、原告らは月ごとであると主張し、被告は契約終了時であると主張しました。裁判所は、原告らと被告との間では報酬の支払時期について、概ね月ごとに支払う旨の合意があったと認定。原告の主張を認めています(41頁以下)。

   --------------------

6 未払報酬額ないし過払報酬額

結論として、裁判所は、報酬1ないし報酬3における未払報酬額の合計は一人当たり329万6597円と認定。原告個々人の既払い部分を控除して未払報酬額を認定しています(44頁以下)。

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■コメント

争点を見ると、芸能人と事務所の間の専属契約書の規定がそもそも曖昧な部分もあったようです。
グループ名でネット検索すると、メンバー脱退・加入や事務所との紛争など、いくつか記事が出てきます。

written by ootsukahoumu at 03:39|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年09月01日

沖国大ヘリ墜落事故映像無断使用事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等本訴請求等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

沖国大ヘリ墜落事故映像無断使用事件(控訴審)

知財高裁平成30.8.23平成30(ネ)10023著作権侵害差止等本訴請求、損害賠償反訴請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    寺田利彦
裁判官    間明宏充

*裁判所サイト公表 2018.8.24
*キーワード:引用、出所明示、権利濫用

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■事案

沖縄国際大学に米軍ヘリコプターが墜落した事故に関する映像を無断で映画に使用した事案の控訴審

控訴人(1審本訴被告・反訴原告) :映像制作会社
被控訴人(1審本訴原告・反訴被告):テレビ放送会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法32条、48条1項、114条3項、民法1条3項

(原審争点)
1 差止め及び削除を求める請求は特定されているか
2 本件部分は「まだ公表されていないもの」(著作権法18条)に当たるか
3 本件映画に原告の名称を表示していないことは「その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って」(19条2項)されたものといえるか
4 著作権の行使に対する引用(32条1項)の抗弁は成立するか
5 原告による著作権及び著作者人格権の行使は権利の濫用に当たり許されないか
6 原告が受けた損害の額
7 差止め、本件各映像の削除及び謝罪広告の掲載の各必要性が認められるか
8 原告が被告からの本件各映像の利用許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は被告に対する不法行為を構成するか
9 原告が被告との交渉内容を秘匿したまま本件事件を提起した事実を自社の放送波で放送すると共に自社のウェブサイトに掲載しマスコミ各社に同内容のリリースを配布した行為は被告に対する不法行為を構成するか


   --------------------

■事案の概要

1 本訴
『本訴事件は,原判決別紙1著作物目録記載1ないし4の各映像(本件映像1ないし4,併せて本件各映像)の著作者及び著作権者である被控訴人が,控訴人が被控訴人の許諾なく本件各映像を使用して製作した原判決別紙3映画目録記載の映画(本件映画)につき,(1)控訴人が本件映画を上映する行為は本件各映像につき被控訴人が有する上映権(著作権法22条の2)を侵害する,(2)控訴人が本件映画を記録したDVDを販売する行為は本件各映像につき被控訴人が有する頒布権(著作権法26条1項)を侵害する,(3)控訴人が本件映画の上映に際して被控訴人の名称を表示しなかったことは本件各映像につき被控訴人が有する氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害する,(4)本件映像2のうち原判決別紙2−2「著作物目録の著作物2」の(11)ないし(16)の部分(約8秒。同別紙に「未公表部分」との記載のあるもの)及び本件映像4のうち原判決別紙2−4「著作物目録の著作物4」の(1)ないし(4)の部分(約5秒。同別紙に「未公表部分」との記載のあるもの)は,公表されていない著作物であったから,控訴人が上記各部分の映像を使用した本件映画を上映したことは,上記各部分につき被控訴人が有する公表権(著作権法18条1項)を侵害するなどと主張して,控訴人に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,本件各映像を含む本件映画の上映,公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布の差止めを,(2)同条2項に基づき,本件映画を記録した媒体及び本件各映像を記録した媒体からの本件各映像の削除を,(3)著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金111万0160円及びこれに対する不法行為の日以後である平成27年6月21日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,(4)著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金300万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成27年6月21日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,(5)著作権法115条に基づき,原判決別紙4謝罪広告要領記載の要領による原判決別紙5謝罪広告内容記載の謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。』

2 反訴
『反訴事件は,控訴人が,(1)本件映画での本件各映像の使用につき,被控訴人が,控訴人による二度の許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は,共同の取引拒絶又は単独の取引拒絶として私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)に違反し,控訴人に対する不法行為を構成するとして,被控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金1392万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成28年4月5日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)被控訴人が,本件各映像に係る控訴人との交渉内容を秘匿したまま,本訴事件を提起した旨を自社の放送波を通じて放送し,ウェブサイトに同内容を掲載し,マスコミにリリースした行為は,控訴人に対する不法行為を構成するとして,被控訴人に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金558万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成28年4月5日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。』

『原判決は,本訴請求については,差止請求及び削除請求の全部と,損害賠償請求の一部を認容し,その余(損害賠償請求の残部と謝罪広告掲載請求)をいずれも棄却し,反訴請求については,その請求を全部棄却した。
 これに対し,自己の敗訴部分に不服のある控訴人が本件控訴をした。』
(2頁以下)

   --------------------

■判決内容

<争点>

控訴審は、本訴請求について原判決が認容した限度で認容し、その余をいずれも棄却。また、反訴請求についてもその請求を全部棄却するのが相当であるとしています(20頁以下)。
(控訴審で控訴人が付加した主張の点についても、いずれも裁判所は容れていません。)

   --------------------

■コメント

原審の判断が控訴審でも維持されています。
なお、著作権の行使に対する引用の抗弁の争点について、出所明示義務(48条1項1号)と32条の関係に関して、控訴審でも絶対音感事件控訴審の判断を是認しています。

『控訴人が何ら出所を明示することなく被控訴人が著作権を有する本件各映像を本件映画に引用して利用したことについては,(単に著作権法48条1項1号違反になるというにとどまらず)その方法や態様において「公正な慣行」に合致しないとみるのが相当であり,かかる引用は著作権法32条1項が規定する適法な引用には当たらない。よって,これと同旨をいう原判決の認定判断に誤りがあるとは認められない。』(25頁)

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■過去のブログ記事

2018年03月08日記事 原審記事
written by ootsukahoumu at 10:21|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年08月27日

「Resonant Heart」音源無断配信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「Resonant Heart」音源無断配信事件

東京地裁平成30.7.19平成30(ワ)6484発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    横山真通
裁判官    高桜慎平

*裁判所サイト公表 2018.8.10
*キーワード:発信者情報開示、送信可能化権、P2P、share

   --------------------

■事案

内田真礼「Resonant Heart」音源などをP2P型ファイル交換ソフトShareを介して無断配信した者の発信者情報開示が請求された事案

原告:レコード会社ら
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか
2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

   --------------------

■事案の概要

『本件は,レコード製作会社である原告らが,自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ,氏名不詳者において,当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置し,インターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信し得る状態にして,原告らの送信可能化権を侵害したと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記氏名不詳者に係る発信者情報の開示を求める事案である。』
(2頁)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか

監視システムにより発見された楽曲ファイルについて、原告らによって本件レコードに録音された楽曲を複製した音楽が記録されていることが確認されたといった経緯を踏まえ、裁判所は、原告らの本件レコードの送信可能化権が氏名不詳者により侵害されたことを認定しています(4頁以下)。

   --------------------

2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

原告らが差止請求権や損害賠償請求権を行使するためには、電子メールアドレスを含め氏名不詳者に係る発信者情報の開示を受ける必要があり、原告らにはその発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断しています(7頁以下)。

結論として、発信者情報目録記載の事項について開示請求が認容されています。

   --------------------

■コメント

プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会によりP2P型ファイル交換ソフトを利用した者のIPアドレス等を特定する方法として信頼性があると認定されたクロスワープ社のシステム「P2P FINDER」により監視、発見された楽曲ファイルの発信者情報開示の事案となります。


written by ootsukahoumu at 07:33|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月19日

新冷蔵庫システム開発契約事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

新冷蔵庫システム開発契約事件

東京地裁平成30.6.21平成29(ワ)32433損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    佐藤雅浩
裁判官    大下良仁

*裁判所サイト公表 2018.7.17
*キーワード:ソフトウェア開発委託契約

   --------------------

■事案

ソフトウェア開発業務委託契約の条項の解釈を巡る紛争

原告:物流倉庫等システムソフトウェア開発会社
被告:食品類卸売会社、システム開発会社、原告元従業員

   --------------------

■結論

請求棄却

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■争点

1 本件共通環境設定プログラムの著作権侵害の有無
2 被告マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無
3 不当利得返還請求権の有無

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告が,被告マルイチ産商に対してソフトウェア開発委託契約に基づき原告が著作権を有するプログラムの使用を許諾していたところ,被告らが違法に同プログラムの複製又は翻案を行い,また,上記委託契約が終了したにもかかわらず,被告マルイチ産商がプログラムの使用を継続し,複製又は翻案していると主張して,被告らに対し,次の請求をする事案である。』
(3頁)

<経緯>

H20 原告と被告マルイチ産商がソフトウェア開発委託基本契約締結
   被告マルイチ産商が原告に「新冷蔵庫・社内受発注システム」発注
H21 原告が本件新冷蔵庫等システム及び本件共通環境設定プログラムを納入
   原告と被告マルイチ産商が本件新冷蔵庫等システムに関する保守管理契約締結
H25 本件保守契約解約
H26 本件基本契約終了

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 本件共通環境設定プログラムの著作権侵害の有無

(1)本件新冷蔵庫等システムの移行に伴う本件共通環境設定プログラムの複製権又は翻案権侵害の有無

本件新冷蔵庫等システムを使用する際に必要となるデータベース接続等のプログラム一般に共通する機能をまとめたプログラム(本件共通環境設定プログラム)について、裁判所は、そのEXEファイル及びDLLファイルは、本件新冷蔵庫等システムに実装されて一体として機能するプログラムであり、原告が本件基本契約及び本件個別契約に基づいて被告マルイチ産商から委託され、作成したコンピュータプログラムであるから、本件基本契約2条における「成果物」であると認定。
そして、当該プログラムが従前から原告が有し、その著作権が原告に帰属するものであっても必要な範囲で複製又は翻案をすることが本件基本契約21条3項(2)で許諾されており、サーバの老朽化等の理由により新サーバにコンピュータプログラムを移行することは必要な事項であると判断。
被告らは本件新冷蔵庫等システムのサーバ移行の際に本件共通環境設定プログラムのEXEファイル及びDLLファイルを複製したと認められるものの、本件新冷蔵庫等システムのサーバ移行のために同システムに実装され一体として機能する本件共通環境設定プログラムのEXEファイル及びDLLファイルを複製することは、本件基本契約の条項によって許諾されていると裁判所は判断。
結論として、本件共通環境設定プログラムの複製権侵害は成立しないと判断しています(22頁以下)。

(2)本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの保守管理業務に伴う複製権又は翻案権侵害

原告は、被告マルイチ産商と被告テクニカルパートナーがコンピュータ保守管理のための人材派遣契約を締結し、被告テクニカルパートナーらが保守管理業務を実施し、本件基本契約が終了後も保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案を行ったと主張しました(26頁以下)。
この点について、裁判所は、保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムの複製又は翻案が行われた事実を認めるに足りる証拠はなく、また、本件基本契約26条(契約終了後の権利義務)の解釈から、原告の主張を認めていません。

(3)本件基本契約終了後の本件共通環境設定プログラムの使用によるみなし侵害

本件共通環境設定プログラムのソースコード、EXEファイル及びDLLファイルは、いずれも「成果物」であり、被告マルイチ産商はこれらのデータファイルの複製物の所有権を取得しており、本件共通環境設定プログラムの複製物を本件基本契約19条により使用することができると裁判所は判断。
本件について、みなし侵害(著作権法113条2項)は成立しないと判断しています(28頁)。

   --------------------

2 被告マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無

被告マルイチ産商は、本件基本契約終了後も本件共通環境設定プログラムを使用することができることから、被告マルイチ産商が本件共通環境設定プログラムの使用を停止し、廃棄する債務を負うことはなく、その使用が債務不履行となることはないと裁判所は判断しています(28頁以下)。

   --------------------

3 不当利得返還請求権の有無

被告マルイチ産商が、法律上の原因なくして本件共通環境設定プログラムの使用料相当額の利得を得て、原告に同額の損失を与えたとはいえず、被告マルイチ産商の使用について不当利得が成立することはないと裁判所は判断しています(28頁以下)。

   --------------------

■コメント

ソフトウェア開発業務委託基本契約書の条項については、判決文5頁以下に記載があります。
成果物の著作権の帰属について、例えば、新規成果物は共有だが持分の処分以外は自由に使える規定になっています(21条)。また、本契約が合意の解約により終了した場合や解除により終了した場合も著作権の帰属に関する規定は効力が存続するものとされています(26条)。
ソフトウェア開発業務委託契約に基づいて納品されたシステムの保守管理契約が解約された後に、保守管理を担当したのが別会社に在籍する開発会社の元従業員ということも紛争の背景に、もしかしたらあったのかもしれません。ただ、この点については営業秘密に関する不正競争防止法の論点や一般不法行為論が争点にはなっていないので、なんとも言えないところです。
written by ootsukahoumu at 08:04|この記事のURL知財判決速報2018