2019年04月19日

FC2動画アダルトサイト無断配信事件4−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

FC2動画アダルトサイト無断配信事件4

東京地裁平成31.3.27平成30(ワ)34818発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2019.4.15
*キーワード:発信者情報開示、動画無断配信

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■事案

アダルト動画が無断で動画サイトに掲載されたことから発信者情報開示請求がされた事案

原告:ビデオ映像製作会社
被告:経由プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 特定電気通信該当性
2 開示関係役務提供者該当性
3 権利侵害に係る発信者情報該当性
4 権利侵害の明白性の有無
5 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,経由プロバイダである被告に対し,氏名不詳者がインターネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する動画をアップロードし,原告の公衆送信可能化権を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』
(1頁)

本件各著作物:「小悪魔痴女大乱交」「僕を犯してくれる痴女お姉さん達」
「E−BODY 成瀬心美」

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■判決内容

<争点>

1 特定電気通信該当性

本件動画サイト(FC2コンテンツマーケット アダルト)における別紙侵害動画目録の販売画面URL記載の各ウェブページは、インターネットに接続する環境を有する者であれば誰でも閲覧することが可能であり、当該各ウェブページは不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信である「特定電気通信」に該当すると裁判所は判断しています(10頁)。

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2 開示関係役務提供者該当性

本件各発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、被告は本件発信者情報を保有しているものと認められることから、原告は被告に対して本件発信者情報の開示を求めることができると裁判所は判断しています(10頁以下)。

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3 権利侵害に係る発信者情報該当性

裁判所は、原告が開示を求める発信者情報は権利侵害に係る発信者情報に該当すると判断しています(11頁)。

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4 権利侵害の明白性の有無

(1)本件各著作物の著作権者

本件各著作物の著作権は、CAに帰属し(著作権法29条1項)、CAを吸収合併した原告がこれを承継したと裁判所は判断しています(11頁)。

(2)公衆送信可能化権侵害の成否

氏名不詳者である本件各発信者は、本件各著作物と実質的に同一である本件各動画を本件動画サイトのサーバーにアップロードして公衆に送信し得る状態に置いたと認められ、当該行為について著作権法30条以下の権利制限事由が存在することもうかがわれないことから、本件各発信者が本件各著作物のデータを本件動画サイトにアップロードした行為は、原告の公衆送信可能化権を侵害することが明白であると裁判所は判断。
結論として、原告は、本件各発信者に対して上記侵害行為による損害賠償等を求めることができると裁判所は判断しています(11頁以下)。

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5 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

原告は、本件各発信者に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする損害賠償請求権等を有するが、原告が本件各発信者に対してその権利を行使するためには本件発信者情報の開示が必要であると裁判所は判断。
また、開示すべき発信者情報に関しては、電子メールアドレスの開示も対象となると判断しています。
結論として、原告には被告から本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとしています(12頁)。

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■コメント

アダルト動画のFC2サイトでの無断投稿に対する権利者側からの対応が続いています。

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■過去のブログ記事

・FC2動画アダルトサイト無断配信損害賠償請求事件3
東京地裁平成30.3.28平成29(ワ)19660損害賠償請求事件

・アダルト動画無断配信損害賠償請求事件2
東京地裁平成30.3.16平成29(ワ)29065損害賠償請求事件

・アダルト動画無断配信損害賠償請求事件
東京地裁平成30.1.23平成29(ワ)13897損害賠償請求事件
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2019年04月10日

パンダイラストクッキー事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

パンダイラストクッキー事件

東京地裁平成31.3.13平成30(ワ)27253著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 山田真紀
裁判官 棚橋知子
裁判官 西山芳樹

*裁判所サイト公表 2019.4.3
*キーワード:イラスト、複製、翻案、氏名表示、委託、注意義務

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■事案

焼き菓子やそのパッケージに無断でパンダのイラストが利用された事案

原告:イラストレーター
被告:加工食品製造販売会社ら
補助参加人:パッケージ制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、26条の2、19条、20条

1 侵害論
2 故意過失
3 損害論
4 謝罪広告等の必要性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告らにおいて製造し,又は販売する別紙3被告商品目録記載の商品(以下「被告商品」という。)に記載された別紙2被告イラスト目録記載1及び2の各イラスト(以下,番号順に「被告イラスト1」などといい,これらを一括して「被告イラスト」という。)は,原告の著作した別紙7原告イラスト目録記載のイラスト(以下「本件イラスト」という。)を複製したものであり,被告らによる被告商品の製造又は販売は,本件イラストについての原告の著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を共同して侵害する不法行為であり,被告らには被告イラストの複製及び頒布のおそれがある旨を主張して,被告らに対し,(1)著作権法112条1項に基づき,被告イラストの複製及び頒布の差止め,(2)同条2項に基づき,被告イラストが記載された被告商品の廃棄,(3)民法709条及び719条1項前段に基づき,平成29年9月1日から平成31年2月1日までの著作権等侵害の不法行為による損害賠償金470万円及びこれに対する平成30年9月6日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(4)著作権法115条に基づき,著作者であることを確保し,名誉,声望を回復するための適当な措置として,別紙6謝罪広告目録記載の謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H25.04 原告が本件イラストを制作
H29.11 被告らが被告製品を販売

被告商品:「上野のアイドル 上野あかちゃんパンダ」

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■判決内容

<争点>

1 侵害論

(1)著作権侵害及びそのおそれの有無

本件イラストと被告イラストは、いずれも互いの額を接して向き合う大小2頭のパンダを描いたものであり、2頭のパンダの姿勢、表情、大きさの比などを含めた構成が類似しており、表現上の本質的な特徴が同一であると裁判所は判断。
そして、依拠性についても、その同一性の程度は非常に高いものであることから、被告イラストは本件イラストに依拠して有形的に再製されたものであると推認することができると判断。

結論として、被告商品を製造して本件イラストを複製する被告スマイル―リンクの行為は、原告の複製権(著作権法21条)を侵害し、被告商品を販売して本件イラストを譲渡する被告行為は、原告の譲渡権(26条の2)を侵害すると判断しています(6頁以下)。

また、被告行為が平成29年11月頃から平成30年9月頃まで継続していたことを考慮すれば、被告イルドリシェスには被告商品の販売により原告の本件イラストについての譲渡権を侵害するおそれがあり、被告スマイル―リンクには被告商品の製造及び販売により原告の本件イラストについての複製権及び譲渡権を侵害するおそれがあると裁判所は判断しています。

(2)著作者人格権侵害の有無

被告商品には原告の氏名又はペンネームが表示されていないことから、被告行為は原告の氏名表示権(19条1項)を侵害するものであると裁判所は判断しています(7頁)。

また、被告イラストはパンダの黒く示されている足及び耳について灰色の線で縁取られている部分があり、パンダの目の部分が黒一色で表され、白い部分がないほか、大きい方のパンダの耳の形が半円に近い形であり、2頭の鼻と口を示す線がより太く表されており、本件イラストと相違している部分があるが、これらは原告に無断で変更されていて、原告の意に反して変更されたと認められるとして、被告行為は原告の同一性保持権(20条1項)を侵害するものであると裁判所は判断しています。

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2 故意過失

被告らは加工食品製造販売会社であり、第三者に製造委託していたとしても、受託した補助参加人等に対して被告イラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていたと裁判所は説示。確認を怠った点に注意義務違反があるとして、被告らの過失を認定しています(7頁以下)。

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3 損害論

(1)著作権(複製権、譲渡権)侵害による損害(114条3項)

販売価格550円×販売個数6664個×使用料率5%=183260円

(2)著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害による慰謝料

10万円

(3)弁護士費用相当額損害

4万円

合計42万3260円(8頁以下)

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4 謝罪広告等の必要性

名誉声望回復措置としての謝罪広告の掲載の主張は認められていません(10頁)。

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■コメント

パンダのデザインのデッドコピーの案件で被告側も有効な反論を出せていません。
デザインに加工を加えていることから、同一性保持権侵害にもなっています。
(上:原告イラスト 下:被告商品パッケージ 判決文別紙より)

原告0403パンダイラスト


0403パンダイラスト被告.jpg


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2019年03月18日

自撮り素足写真事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自撮り素足写真事件

東京地裁平成31.2.28平成30(ワ)19731発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    奥 俊彦
裁判官    高桜慎平

*裁判所サイト公表 2019.3.14
*キーワード:発信者情報開示、写真、著作物性

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■事案

自撮り画像がインターネット掲示板に無断転載されたことから発信者情報開示請求された事案

原告:個人
被告:電気通信事業者

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件写真2の著作物性の有無
2 公衆送信権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,自身の両脚を撮影した2枚の写真について著作権及び著作者人格権を有するところ,氏名不詳者により,インターネット上の電子掲示板に,当該2枚の写真を複製した画像のアップロード先であるURLが無断で投稿されたことにより,原告の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)が侵害されたことが明らかであると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項の開示関係役務提供者である被告に対し,同項に基づき,その保有する発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件写真2の著作物性の有無

裁判所は、まず、写真の著作物性(著作権法2条1項1号)の判断基準に言及した上で、本件の写真の著作物性を検討しています(9頁以下)。

本件写真2について、裁判所は、
『フローリング上にスリッパを履いて真っすぐに伸ばした状態の両脚とテーブルの一部を主たる被写体とし,大腿部の上方から足先に向けたアングルで,右斜め前方からの光を取り入れることで陰影を作り出すとともに脚の一部を白っぽく見せ,また,当該光線の白色と,テーブル,スリッパ及びショートパンツの白色とが組み合わさることで,脚全体が白っぽくきれいに映るように撮影されたカラー写真であり,被写体の選択・組合せ,被写体と光線との関係,陰影の付け方,色彩の配合等の総合的な表現において,撮影者の個性が表れているものといえる。』
として、写真の著作物性を肯定しています。

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2 公衆送信権侵害の成否

(1)本質的特徴を感得できるかについて

被告は、本件画像は本件写真を他の写真と合わせて一つの小さい画像として掲載しているにすぎず、本件写真を利用していると思われる部分の大きさはかなり小さく、画像も不鮮明となっているなどとして、本件画像は本件写真2の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないと反論しました。
この点について、裁判所は、結論として、本件画像はこれに接する者が本件写真2の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものであると判断しています。

(2)本件画像アップロードと本件投稿の関係について

問題となった掲示板サービス「たぬピク」は、指定されたメールアドレス宛てに画像を添付したメールを送信すると当該画像がインターネット上にアップロードされたURLが、送信元のメールアドレス宛てに返信され、送信者は当該URLを第三者に送るなどして当該画像を第三者と共有することができるサービスでした。

被告は、氏名不詳者による本件投稿はアップロードされた本件画像ファイルのURLを転記したにすぎず、当該画像ファイルそのものを投稿したものではないから、そもそも本件投稿によって著作権侵害は成立し得ないと反論しました。

この点について、裁判所は、氏名不詳者による本件投稿自体は、URLを書き込む行為にすぎないとしても、本件投稿をした者は本件画像をアップロードし、そのURLを本件掲示板に書き込むことで本件画像のデータが公衆によって受信され得る状態にしたものであるとして、これを全体としてみれば、本件投稿によって原告の本件写真2に係る公衆送信権が侵害されたものということができると判断。公衆送信権侵害性を肯定しています(10頁以下)。

結論として、本件投稿によって原告の本件写真2に係る著作権(公衆送信権)が侵害されたことが明らかであり、また、原告がかかる著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権を行使するためには、被告が保有する別紙発信者情報目録記載の情報(氏名又は名称、住所)が必要であるとして、裁判所は原告の主張を認めています。

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■コメント

画像が直接掲示板に掲載されるのではなくて、画像表示用URLが掲載されるようなシステムの掲示板での画像無断使用の事例です。

判決文別紙に原告の自撮り写真が掲載されていますが、スマホでの自分の素足を撮影しただけのスナップ写真でも、著作物性が認められている点が参考になります。

家族写真といったスナップ写真の著作物性については、東京アウトサイダーズ事件(知財高裁平成19.5.31平成19(ネ)10003等出版差止等請求控訴事件)があり、現在、ほぼこうした創作性のレベルがさほど高くない部類の写真であっても著作物性が否定されることはないところで裁判所の判断が確定されている感がありましたが、最近の著作権判例のなかでは、美術館の外観や館内の写真の著作物性が否定された事例として、一竹辻が花美術館グッズ事件(東京地裁平成30.6.19平成28(ワ)32742著作権侵害差止等請求事件)があり、写真の著作物性判断について、なお留意が必要と思われます。

written by ootsukahoumu at 22:34|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年03月16日

スピードラーニング販促DVD事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

スピードラーニング販促DVD事件

東京地裁平成31.2.28平成29(ワ)16958損害賠償請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2019.3.11
*キーワード:販促用DVD、映画、複製、翻案、編集著作物、同一性保持権

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■事案

英会話教材用販促DVDの内容の複製、翻案などが争点となった事案

原告:英会話教材製造販売会社
被告:英会話教材製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、27条、12条、20条、114条3項

1 映画の著作物としての複製権、翻案権侵害の有無
2 編集著作物としての複製権、翻案権侵害の有無
3 言語の著作物としての複製権、翻案権及び譲渡権侵害の有無
4 同一性保持権侵害の有無
5 損害の有無及び額
6 原告の請求の権利濫用該当性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告による別紙被告DVD目録記載のパッケージ内のDVD(以下「被告DVD」という。)の作成,配布等が,主位的には,映画の著作物又は編集著作物である,別紙原告DVD目録記載のパッケージ内のDVD(以下「原告DVD」という。)に関して原告が有する複製権及び翻案権並びに同一性保持権を侵害すると主張し,予備的には,言語の著作物である,原告DVDのスクリプト部分(音声で流れる言語の部分)に関して原告が有する複製権,翻案権及び譲渡権並びに同一性保持権を侵害すると主張して,被告に対し,民法709条に基づく損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H20.09 原告が原告DVDを配布
H26.06 被告が被告教材「スピードイングリッシュ」を販売、被告DVD配布
H27.03 原被告間キャッチフレーズ事件訴訟棄却判決
H29.05 原告が本件提訴

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■判決内容

<争点>

1 映画の著作物としての複製権、翻案権侵害の有無

裁判所は、まず複製(著作権法21条、2条1項15号)、翻案(27条)の意義について言及した上で、被告DVDの内容と原告DVDの内容を検討(24頁以下)。

(1)イントロダクション
(2)受講者インタビュー
(3)商品紹介
(4)商品特徴
(5)開発者等インタビュー
(6)エンディング
(7)上記事項の全体的な構成

(1)ないし(6)の要素の一部について、原告DVDの表現上の本質的特徴を被告DVDから直接感得することができるとして複製性を肯定。
依拠性、翻案性も肯定しています。

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2 編集著作物としての複製権、翻案権侵害の有無

原告は、イントロダクションなどの標題によって区切られた部分を一つの素材として、その選択と配列について創作性を有するとして、編集著作物(12条1項)に関する侵害を主張しましたが、裁判所は認めていません(38頁以下)。

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3 言語の著作物としての複製権、翻案権及び譲渡権侵害の有無

原告は、予備的に原告DVDに含まれるスクリプト部分の言語の著作物を侵害する旨主張しました。
この点について、裁判所は、共通するスクリプトは事実を述べるものか、英会話教材の宣伝、紹介用の動画においてありふれたものということができ、その順序にも表現上の創作性があるとは認められないとして、原告の主張を認めていません(39頁)。

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4 同一性保持権侵害の有無

被告DVDは原告DVDの複数の項目について、原告DVDの表現に改変を加えて制作されたものと認められ、その制作は原告DVDについて、その著作者が有する著作者人格権(同一性保持権)を侵害したと認められると裁判所は判断しています(39頁)。

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5 損害の有無及び額

(1)翻案権の侵害による損害額(著作権法114条3項)

裁判所は、被告DVDを制作した被告の故意又は過失を認定した上で、まず、翻案権の侵害による損害額(114条3項)を検討しています(39頁以下)。
被告DVDのみが販売された事実は認められないものの、被告DVDは被告商品を顧客が継続的に購入するための重要な役割を果たすことが期待されており、このような性質、被告DVDが原告商品と競合する被告商品の宣伝であること、広告のためのものであること、原告DVDと被告DVDで共通する創作的な表現の内容や量その他の諸般の事情に照らして、原告が受けるべき金員の額は被告DVD1枚当たり1000円であると認めることが相当であると判断。

1000(円)×215(枚)×=21万5000円

上記計算式で損害額を認定しています。

(2)同一性保持権の侵害による損害額

同一性保持権の侵害が問題となる被告の改変の内容及び程度、本件訴訟に表れたその他一切の事情を総合的に勘案して、同一性保持権の侵害によって原告に生じた無形的損害に係る損害額は、10万円と認めるのが相当であると裁判所は判断しています(41頁)。

(3)弁護士費用相当損害額

5万円。

合計36万5000円

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6 原告の請求の権利濫用該当性

被告は、原告が平成29年5月まで被告DVDの製造、販売の差止めを求めず、同月、本件訴訟を提起して損害賠償を請求することは、権利の濫用に該当すると主張しましたが、裁判所は認めていません(42頁以下)。

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■コメント

英会話教材の購入を検討している顧客に対して頒布される販促用DVD(映画の著作物、言語の著作物)の内容の構成が類似し、また画像の一部は同一であったりと(別紙1参照)、著作権侵害の可能性は否定できないものの、同じ英会話教材販促用といった目的のDVDとして、どこまでの類似が認められるか、参考になる事例です。
ウェブサイト上のタブメニュー配置や広告用文章の無断複製等が争点となったデータSOS事件(知財高裁平成23.5.26平成23(ネ)10006損害賠償等請求控訴事件)とともに広告営業活動上の表現の在り方について参考になります。

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■過去のブログ記事

英会話教材広告キャッチフレーズ事件(控訴審)
知財高裁平成27.11.10平成27(ネ)10049著作権侵害差止等請求控訴事件
控訴審
東京地裁平成27.3.20平成26(ワ)21237著作権侵害差止等請求事件
原審
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2019年03月07日

「なびシリーズ」業務提携契約事件−著作権 損害賠償等請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「なびシリーズ」業務提携契約事件

東京地裁平成31.2.15平成29(ワ)10909損害賠償等請求事件(本訴)、平成29(ワ)35131損害賠償請求反訴事件(反訴)PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    遠山敦士

*裁判所サイト公表 2019.3.6
*キーワード:業務提携契約、レベニューシェア、債務不履行、プログラム、複製

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■事案

ウェブサービスの業務提携契約上の収益分配金未払いなどが争点となった事案

本訴原告・反訴被告:IT個人事業者
本訴被告・反訴原告:IT事業社

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■結論

本訴請求一部認容、反訴請求棄却

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■争点

条文 著作権法21条、民法415条

1 未払収益分配金の有無及びその額
2 プログラム著作権の複製権侵害の成否
3 債務不履行及びプログラム著作権侵害による損害の有無及びその額
4 プログラム消去による不法行為の成否(反訴)

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■事案の概要

『本訴は,原告が,ポータルサイトの開発,運営の事業を共同で営んでいた被告に対し,(1)被告が経費を過大に計上するなどして原被告間の契約に基づく収益の分配をしなかったことから,平成29年3月31日をもって同契約を解除したとして,未払収益分配金1183万6621円(平成28年4月分から平成29年3月分まで)及び同契約の解除に伴う損害賠償金(逸失利益)の一部である4000万円の支払を求めるとともに,上記未払収益分配金のうち1033万2313円(平成28年4月分から平成29年2月分まで)及び逸失利益4000万円の合計5033万2313円に対する訴状送達の日の翌日である平成29年4月23日から支払済みまで,上記未払収益分配金のうち150万4308円(平成29年3月分)に対する平成29年5月1日(その支払期限の翌日)から支払済みまでいずれも商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)被告が,同事業の運営に必要なプログラムであり,原告がプログラム著作権を有するプログラムを無断で複製したとして,著作権侵害に対する損害賠償金(使用料相当損害金)として96万1697円(以上合計5279万8318円)の支払を求めるとともに,同損害賠償金に対する不法行為日(継続的不法行為の最終日)である平成29年4月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

『反訴は,被告が,原告に対し,原告が上記プログラムを被告に無断で消去したと主張して不法行為に基づく損害賠償金871万7812円及びこれに対する不法行為日である平成29年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H18,03 原告とBが共同で「なびシリーズ」運営開始
H19.11 Bが被告会社設立
H21.01 原被告間で本件業務契約作成
H28.11 原告が被告に未払収益分配金の支払催告
H29.03 原告が契約解除の意思表示
H29.04 原告が本件プログラムの稼働停止、被告が再稼働

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■判決内容

<争点>

1 未払収益分配金の有無及びその額

裁判所は、まず、収益分配に関する合意の内容について検討。本件業務契約にいう「経費」は本件事業に必要な経費を意味し、原告と被告との間には少なくとも同事業の経費として計上することに疑義があるものについては、同契約当事者間の協議により相手方の同意を得なければならない旨の合意が存在したと認めるのが相当であると判断。
その上で、収益から差し引く個別経費(役員報酬、業務委託費、車両の減価償却費、企業保険、地代家賃、修繕費、事務消耗品費、通信交通費、租税公課、接待交際費など)について検討。
被告が本件業務契約に基づかずに各経費(マネタイズパートナーのコンサルティング費用以外)を算入したことにより、本来分配すべき金員を理由もなく減額し、その分、本来原告が分配を受けるべき金員を支払わなかったとして、原告は被告に対して未払収益分配金の支払を求めることができると判断。
結論として、原告は、被告に対して平成28年4月分から平成29年3月分までの未払収益分配金として1148万2957円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めることができるとしています(18頁以下)。

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2 プログラム著作権の複製権侵害の成否

裁判所は、「なびシリーズ」の運営に必要なシステムの開発を行ったのは原告であり、また、本件業務契約書第3項にはプログラムの所有権は原告に帰属する旨の規定が置かれていることから、本件プログラムのプログラム著作権は原告に帰属すると判断。
その上で、原告が本件業務契約を解除後、「なびシリーズ」プログラムを停止した後に、被告が「なびシリーズ」プログラムのバックアップから原告が著作権を有するプログラムを原告に無断で「なびシリーズ」サーバに複製し、平成29年4月1日から同月23日までの間、これを認識しつつプログラムを再稼働させていたとして、被告の同行為は本件プログラムのプログラム著作権の侵害となると判断しています(25頁)。

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3 債務不履行及びプログラム著作権侵害による損害の有無及びその額

(1)債務不履行に基づく損害賠償(逸失利益)

被告は原告に対して本件業務契約に基づく収益分配金の支払義務を履行しなかったため、原告による債務不履行を理由とする同契約の解除は有効であると裁判所は判断。
本件解除の直前である平成28年4月から平成29年3月までの収益分配金を基礎に2年間分3039万7348円を損害額として認定しています(26頁以下)。

(2)プログラム著作権の複製権侵害による損害賠償金

年間の使用料相当損害金としては、本件事業から生じる年間収益金4024万1514円の1%として、当該年間使用料相当額のうち23日分の相当額2万5357円を損害額として認定しています。

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4 プログラム消去による不法行為の成否(反訴)

本件プログラムのプログラム著作権は原告にあることから、被告に対する同プログラムの使用許諾が本件業務契約の解除により平成29年3月31日をもって終了しており、原告が同年4月1日に自らが管理する本件プログラムを停止したとしても、それは正当な権利行使にすぎず、同行為が不法行為を構成するということはできないと裁判所は判断。被告の主張を認めていません(27頁以下)。

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■コメント

電話帳的な情報、事業者情報を取り扱うウェブサービスの運営に関して、業務提携関係のなかで広告収入などの分配金の未精算部分の収益から差し引く経費の解釈などが争点となった事案です。
レベニューシェア契約書や収益分配規定のある契約書の中には、収益から差し引く経費が具体的に記載されておらず、協議事項になっていることがよくあることなので、事例として参考になります。
written by ootsukahoumu at 07:05|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年03月04日

BSS−PACK著作権譲渡契約錯誤事件−著作権 プログラム著作権確認請求並びに著作権侵害差止請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

BSS−PACK著作権譲渡契約錯誤事件

東京地裁平成31.2.5平成30(ワ)13092プログラム著作権確認請求並びに著作権侵害差止請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    横山真通
裁判官    奥 俊彦

*裁判所サイト公表 2019.2.25
*キーワード:著作権譲渡、錯誤無効

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■事案

ソフトウェアの著作権譲渡契約の錯誤無効の成否が争点となった事案

原告:ソフトウェア開発会社、代表取締役ら
被告:ソフトウェア開発会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法95条

1 本件譲渡契約の全部又は一部が錯誤無効となるか否か
2 非登録プログラムに係るサンライズ社の履行請求権の消滅時効の成否等

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■事案の概要

『本件は,別紙対象プログラム目録記載1及び2の各プログラムにつき著作権を有すると主張する原告らが,(1)主位的には上記各プログラムの全てにつき著作権を有することの確認を,予備的には上記各プログラムのうち,後記1(2)ウの登録済みプログラムに係るものを除いた残部(以下「非登録プログラム」という。)につき著作権を有することの確認を求めるとともに(前記第1の1),(2)被告において被告製品を販売する行為が,原告らの上記著作権を侵害すると主張して,著作権法112条1項,2項に基づき,被告に対し,被告製品の販売差止め・廃棄等を求める(前記第1の2ないし5)事案である。』
(2頁)

<経緯>

H02 原告ビーエスエス社が「旧BSS−PACK」開発、販売
H09 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK」開発、販売
H15 被告が被告製品を販売
H18 原告ビーエスエス社がサンライズ社と本件合意、本件譲渡契約締結
H28 前件第1事件及び前件第2事件の各請求棄却

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■判決内容

<争点>

1 本件譲渡契約の全部又は一部が錯誤無効となるか否か

本件譲渡契約において、登録済みプログラム及び非登録プログラムについての全ての権利が著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて譲渡の対象とされたと裁判所は認定。
原告らは、本件譲渡契約の締結当時において、原告ビーエスエス社が非登録プログラムの著作権を譲渡する認識・意思を欠いていたことを前提として、本件譲渡契約に係る意思表示には要素の錯誤があったとして本件譲渡契約の全部又は一部の無効、また、本件譲渡契約締結の動機に係る錯誤の主張をしました。
しかし、裁判所は、結論として原告らの主張を認めていません(12頁以下)。

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2 非登録プログラムに係るサンライズ社の履行請求権の消滅時効の成否等

非登録プログラムについての著作権は遅くとも平成18年4月末日までに原告ビービーエス社からサンライズ社に移転したものであるとして、その履行請求権の消滅時効などを問題にする余地はないと裁判所は判断。原告らの主張を認めていません(13頁以下)。

結論として、登録・非登録を問わず別紙確認対象プログラム目録記載のすべてのプログラムの著作権が本件譲渡契約の成立によって原告ビーエスエス社からサンライズ社に移転し、原告ビーエスエス社は上記著作権を喪失したものと裁判所は判断。
原告らの本件各請求は認められていません。

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■コメント

「BSS−PACK」については過去、いくつか判決が出されています。

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■過去のブログ記事

・BSS−PACKソフト営業秘密事件
東京地裁平成28.10.25平成28(ワ)360等不正競争行為差止請求事件、
同承継参加申出事件、プログラム著作権確認請求事件
(平成28年(ワ)第360号、2943号 不正競争行為差止請求事件,同承継参加申出事件
平成28年(ワ)第4961号 プログラム著作権確認請求事件)
前件第1事件

知財高裁平成29.4.27平成28(ネ)10107不正競争行為差止、
プログラム著作権確認各請求控訴事件
(前件第1事件 前件第2事件)
控訴審

・統合業務管理ERPソフト事件
知財高裁平成26.10.30平成26(ネ)10042著作権侵害差止等請求控訴事件
控訴審

・ソフトウェア提供パートナー契約事件(控訴審)
知財高裁26.8.27平成25(ネ)10085損害賠償、同中間確認各請求控訴事件
控訴審

written by ootsukahoumu at 02:24|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年02月22日

タイ式ヨガ指導書監修事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

タイ式ヨガ指導書監修事件(控訴審)

知財高裁平成31.1.31平成30(ネ)10066損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    森岡礼子
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2019.02.15
*キーワード:著作者、推定、監修、時機に後れた攻撃防御方法

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■事案

タイ式ヨガ(ルーシーダットン)指導書の監修者の著作者性が争点となった事案

控訴人(1審原告) :個人
被控訴人(1審被告):フィットネスプログラム開発会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条2項、14条、19条、民訴法157条1項

1 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて
2 被侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の著者であると偽られない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権の主張について

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人が,その管理しているウェブサイトにおいて,書籍2冊(以下「本件各書籍」と総称する。)を控訴人以外の者の著作物である旨表示したことは,本件各書籍の著作者である控訴人の著作者人格権(氏名表示権)の侵害に当たると主張し,民法709条に基づく損害賠償請求として,慰謝料100万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成30年1月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原判決は,氏名表示権は,著作者が原作品に,又は著作物の公衆への提供,提示に際し,著作者名を表示するか否か,表示するとすれば実名を表示するか変名を表示するかを決定する権利であるところ,被控訴人のホームページにおいて,本件各書籍の公衆への提供,提示がされているとはいえないから,その余の点を判断するまでもなく,控訴人の請求には理由がないとして,控訴人の請求を棄却したため,控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。』
(2頁)

<経緯>

H18 原告が本件書籍1の出版をビッグスに持ちかける
H19 原告が本件書籍2の出版契約を山海堂と行う
H20 山海堂破産
H29 東京簡裁に本件提起
H30 東京地裁に移送

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■判決内容

<争点>

1 時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てについて

被侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の著者であると偽られない利益」として控訴審において初めて主張することは「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」(民訴法157条1項)に該当すると裁判所は判断。
もっとも、訴訟の完結を遅延させることとなると認めるに足りる事情があったとはいえないとして、時機に後れた攻撃防御方法の却下の申立てを認めていません(15頁以下)。

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2 被侵害利益を「インターネット上で自己の書籍著作物について第三者の著者であると偽られない利益」とする不法行為に基づく損害賠償請求権の主張について

(1)本件書籍1

奥書に「監修 控訴人」とあるが、「著(者)」又は「著作(者)」の記載はない本件書籍1について、裁判所は、

・本件書籍1の奥付には控訴人以外の多くの個人又は団体の名が様々な立場から本件書籍1の成立に関与したものとして記載されている
・「監修」が「書籍の著述や編集を監督すること」(広辞苑第7版)を意味することからすると、本件書籍1が編集著作物であるとしても、その編集著作物の著作者が控訴人であると推定すること(著作権法14条)はできない
・控訴人が本件書籍1について素材の選択又は配列によって創作性を発揮したものと認めるに足りる主張・立証はない

などとして、著作者が控訴人であると認めていません(16頁以下)。

(2)本件書籍2

奥書に「監修者 控訴人」とあるが、「著(者)」又は「著作(者)」若しくは「編(者)」又は「編集
(者)」の記載はない本件書籍2についても、裁判所は、著作者が控訴人であると認めていません。

結論として、控訴人の主張する被侵害利益はその根拠を欠くとして、控訴人の主張を認めていません。

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■コメント

監修者としての表記のある人物が著作者かどうかが争点となりました。
監修者は、著者、執筆者、編著者といった表記と違い、14条の著作者推定の外にあるということで、本件は先例として参考になります。

written by ootsukahoumu at 06:29|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年02月18日

コンタクトレンズ販売チラシ事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コンタクトレンズ販売チラシ事件

大阪地裁平成31.1.24平成29(ワ)6322損害賠償請求事件PDF
別紙1
別紙2

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    野上誠一
裁判官    大門宏一郎

*裁判所サイト公表 2019.2.14
*キーワード:チラシ、著作物性、競業避止義務違反

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■事案

コンタクトレンズ販売用のチラシの著作物性などが争点となった事案

原告:コンタクトレンズ販売会社
被告:コンタクトレンズ販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件チラシの著作物性
2 従業員の引抜きによる不法行為の成否
3 被告の競業避止義務違反性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,(1)著作権(複製権及び翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)侵害の不法行為及び違法な従業員の引抜きに係る不法行為に基づく各損害の賠償並びにこれらに対する不法行為の後である平成29年8月18日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(2)競業避止義務違反の債務不履行若しくは不法行為又は違法な競業行為に係る不法行為に基づく損害の一部550万円の賠償及びこれに対する請求(訴状送達)の日の翌日である平成29年8月18日から支払済みまで商事法定利率である年6分(不法行為に基づく損害賠償請求については,不法行為の後である同日から支払済みまで民法所定の年5分)の割合による遅延損害金の支払を請求した事案である。
 なお,原告は当初,本件を別件訴訟(当庁平成28年(ワ)第10854号営業行為差止等請求事件)における反訴として提起したが,その後,当該反訴を別訴として取り扱うことを希望したため,これを独立の訴えとして取り扱うこととした。そして,その後,本件の口頭弁論から顧客情報等の不正取得に関する損害賠償請求についての口頭弁論を分離した。』
(1頁以下)

<経緯>

H25.10 P1が被告取締役就任
H26.02 被告が原告に販売店運営を委託
H27.01 P1が原告代取就任
H28.01 P1が被告取締役解任
H28.04 原被告間の契約解除

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■判決内容

<争点>

1 本件チラシの著作物性

1.本件チラシ中の表現3点の創作性について

コンタクトレンズ販売用チラシの著作物性について、原告は、

(1)「検査時間 受信代金」といった宣伝文句(キャッチフレーズ)部分
(2)「コンタクトレンズの買い方比較」という表
(3)「なぜ検査なしで購入できるの?」箇所の説明文言

の3点について、創作性があるとして、本件チラシに著作物性があると主張しました(17頁以下)。
この点について、裁判所は、ありふれた表現方法であったり、表現方法に工夫が見られないなどとして、いずれについての創作性を否定。
結論として、本件チラシに著作物性を認めていません。

2.各表現の組み合わせによる著作物性について

原告は、上記(1)ないし(3)等の組み合わせ自体に著作物性があると主張しました(20頁以下)。
しかし、裁判所は、結論として、これらの組み合わせについて著作物性を否定。原告の主張を認めていません。

以上から、裁判所は、被告の行為に著作権、著作者人格権侵害は成立せず、原告の不法行為に基づく損害賠償請求には理由がないと判断しています。

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2 従業員の引抜きによる不法行為の成否

従業員の引抜きによる不法行為の成否について、被告が自ら又は第三者を通じて社会通念上自由競争の範囲を逸脱した勧誘行為をしたとは認められず、被告が不法行為責任を負うとはいえないと裁判所は判断しています(21頁以下)。

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3 被告の競業避止義務違反性

被告が競業避止義務を負っていたとは認定されず、また、被告の関係者による勧誘行為の違法性も認定されないことから、裁判所は、原告の主張を認めていません(29頁以下)。

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■コメント

コンタクトレンズ販売用チラシの著作物性が争点となりましたが、ほぼデッドコピーのチラシではあるものの、内容的にはキャッチコピー、図表、画像、クーポンなど、よくあるパーツから構成されているチラシとなります(別紙1参照)。
原被告とも取引関係者でしたが、似たような店舗名で同じビルの同じ階にあって、似たようなチラシの利用ですから、不正競争防止法の観点も問題になりますが、この点は別訴の営業行為差止等請求事件(大阪地裁平成28年(ワ)第10854号)で扱っているのかもしれません。
written by ootsukahoumu at 06:41|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年01月28日

システムマニュアル事件−著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

システムマニュアル事件

東京地裁平成30.12.26平成30(ワ)6943損害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 山田真紀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    棚橋知子

*裁判所サイト公表 2019.1.22
*キーワード:マニュアル、著作物性

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■事案

システムのマニュアルの著作物性が争点となった事案

原告:個人
被告:システム開発会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件マニュアルの著作物性の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙物件目録記載1のマニュアル(以下「本件マニュアル」という。)を作成した原告が,本件マニュアルは著作物であり,自ら著作権を有するとし,被告において,本件マニュアルをシンハラ語及び英語に翻訳し,本件マニュアルの内容を削除し,変形し,又は追加し,著作者としての原告の氏名を誤って表示した別紙物件目録記載2のマニュアル(以下「被告マニュアル」という。)を作成したことは,本件マニュアルについての原告の翻案権,同一性保持権及び氏名表示権を侵害する旨を主張して,(1)著作権法112条1項に基づき,被告マニュアルの複製の差止めを求めるとともに,(2)民法709条の著作権及び著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づく損害賠償金2660万円のうち2500万円の支払を求める事案である(なお,原告は,損害の内訳として後記のとおり主張するところ,その合計額は2660万円であり,一部請求として2660万円のうち2500万円を請求するものと解される。)。』
(1頁以下)

<経緯>

H26.01 被告が手書き文章データ入力システム「ピースエントリーシステム」(本件システム)開発
    原告が本件システムの操作方法に関するマニュアルを作成

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■判決内容

<争点>

1 本件マニュアルの著作物性の有無

本件マニュアルは、以下のような体裁のものでした。

・本件システムの機能や操作方法を説明することを目的とするもの
・総頁数は158頁
・各頁は本件システムの操作の際に表示される画面を取り込んだ画像がその大部分を占めている
・同画像に添えられている本件コメントは1行ないし5行程度
・本件コメントは、本件マニュアルの前記作成目的に従い、本件システムの操作の際に表示される画面の内容を説明し、同画面に関連する本件システムの機能を説明し又は同画面に関連する本件システムの操作について説明するもの

裁判所は、本件マニュアルの著作物性(著作権法2条1項1号)について、本件マニュアルは、本件システムの機能や操作といった客観的事実を説明することを目的として作成されたものであり、その性質により機能や操作方法を分かりやすく一般的に用いられるありふれた表現で示すことが求められることから表現の選択の幅は狭いと説示。
本件コメントでは、当該説明において他の表現を用いることは想定し難いことなどから、本件コメントに原告の個性が表現されているとはいえないと判断。本件マニュアルの著作物性を否定しています(6頁)。

結論として、原告の主張を認めていません。

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■コメント

本件システムは、紙のアナログ情報にある個人情報などのセキュリティに配慮しながらデジタルへの入力手作業を効率的に行うシステムのようです。

written by ootsukahoumu at 07:10|この記事のURL知財判決速報2018 

2019年01月15日

ASKA未公表楽曲事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ASKA未公表楽曲事件

東京地裁平成30.12.11平成29(ワ)27374損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    横山真通
裁判官    高桜慎平

*裁判所サイト公表 2019.1.8
*キーワード:公表権、黙示の承諾、時事の事件の報道、引用、違法性阻却

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■事案

未公表楽曲の無断公表が時事の事件の報道などに該当するかどうかが争点となった事案

原告:歌手
被告:テレビ局、芸能レポーター

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法18条、41条、32条、114条3項

1 本件楽曲は未公表の著作物であったか
2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか
3 被告らによる公衆送信行為は時事の事件の報道のための利用に当たるか
4 被告らによる公衆送信行為は引用に当たるか
5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか
6 被告レポーターは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか
7 故意・過失の存否
8 損害論

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■事案の概要

『本件は,作曲等の音楽活動を行う原告が,被告讀賣テレビの放送番組に出演していた被告Bにおいて原告の創作した未発表の楽曲の一部を原告の許諾なく同番組内で再生したことにより,被告らが共同して上記楽曲に係る原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)を侵害したと主張して,被告らに対し,民法719条(共同不法行為)及び著作権法(以下「法」という。)114条3項に基づき,損害賠償金3307万0400円及びこれに対する不法行為後である平成28年11月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H26.09 原告が覚せい剤取締法違反等罪で有罪判決
H27.09 原告が本件楽曲を創作
H27.12 原告が被告レポーターに本件楽曲の録音データをメール送信
H28.11 被告テレビ局の生放送番組で被告レポーターが本件録音データを再生

本件楽曲:「1964to2020東京Olympic」

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■判決内容

<争点>

1 本件楽曲は未公表の著作物であったか

被告らは、原告が芸能リポーターである被告Bに対して本件録音データを提供したことが公衆に提示したものと同視し得るとして、本件楽曲は本件番組内で放送された時点で「著作物でまだ公表されていないもの」(著作権法18条1項)には当たらない旨主張しました(15頁)。
しかし、裁判所は、被告B個人は「公衆」にはあたらず、本件楽曲は、被告Bが本件番組内で本件録音データを再生した時点より前には公衆に提供又は提示されていなかったとして、未公表の著作物であると判断しています。

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2 公衆送信及び公表につき黙示の許諾があったか

被告らは、原告は音楽活動を再開したことが被告レポーターによってテレビ放送等で告知されることを期待して本件録音データを提供したものであるから、本件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したというべきであると主張しました(15頁以下)。
しかし、裁判所は、原告は本件楽曲を聴いた被告レポーターの感想等を聞くために被告レポーターに対して本件録音データを提供したにすぎないとして、原告が本件録音データを提供したことをもって本件楽曲を公衆送信ないし公表することを黙示に許諾したとは認められないと判断。被告らの主張を認めていません。

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3 被告らによる公衆送信行為は時事の事件の報道のための利用に当たるか

被告らは、本件楽曲の利用が時事の事件の報道(41条)に当たる旨主張しました(16頁以下)。
しかし、裁判所は、本件楽曲が警視庁が原告に対する覚せい剤使用の疑いで逮捕状を請求する予定であるという時事の事件の主題となるものではなく、また、かかる時事の事件と直接の関連性を有するものでもないとして、本件楽曲が「当該事件を構成」する著作物に当たるとは認めていません。
さらに、放送内容に照らすと、本件番組中における原告の音楽活動に関する部分が「原告が有罪判決後の執行猶予期間中に音楽活動を行い更生に向けた活動をしていたこと」という「時事の事件の報道」にも当たるとはいえないと判断。被告らの主張を認めていません。

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4 被告らによる公衆送信行為は引用に当たるか

本件番組の放送時において本件楽曲は未公表の著作物であったと認められることから、被告らによる本件楽曲の公衆送信行為は、32条1項所定の引用には当たらないと裁判所は判断しています(19頁)。

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5 正当業務行為等により公表権侵害の違法性が阻却されるか

被告らは本件楽曲の公表が、41条の趣旨の準用、正当業務行為その他の事由により違法性が阻却される旨主張しました(19頁以下)。
しかし、裁判所は、本件番組では原告の音楽活動にごく簡単に触れたに止まり、それに係る具体的な事実の紹介がないことなどから、結論として被告らの主張を認めていません。

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6 被告レポーターは公衆送信権及び公表権の侵害主体となるか

被告レポーターは、被告テレビ局による放送の履行補助者にすぎなかった旨主張しましたが、裁判所は、被告らは共同して原告が本件楽曲につき有する公衆送信権及び公表権を侵害したものと判断しています(20頁)。

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7 故意・過失の存否

被告らは、放送番組中において楽曲を再生し放送する場合には著作権や著作者人格権の侵害がないように十分注意すべき高度の注意義務を負っているところ、原告が本件楽曲を公衆送信及び公表することを黙示に許諾したとは認められないにもかかわらず、その認識を欠いて本件楽曲を公衆送信及び公表することが許されると誤信した点などにおいて、少なくとも過失があったと裁判所は認めています(20頁以下)。

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8 損害論

損害論として、裁判所は以下のとおり認定しています(22頁以下)。

(1)使用料相当額損害(114条3項) 6万4000円

(2)公表権侵害による慰謝料 100万円

(3)弁護士費用相当額損害 11万円

合計117万4000円

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■コメント

覚醒剤事犯で有罪となったシンガーソングライターのASKAが、生放送テレビ番組「情報ライブミヤネ屋」で未公表の楽曲が再生されたとして、芸能レポーターとテレビ局に対して慰謝料等を請求した事案です。

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2018年12月03日

ミネソタ多面的人格目録性格検査出版事件−著作権 著作権に基づく差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ミネソタ多面的人格目録性格検査出版事件

東京地裁平成30.11.15平成29(ワ)22922著作権に基づく差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    大下良仁

*裁判所サイト公表 2018.11.27
*キーワード:出版権、依拠、複製

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■事案

質問紙法人格検査の出版物の出版権侵害性が争点となった事案

原告:出版社
被告:出版社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法80条

1 被告による出版権侵害行為の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,質問紙法人格検査(ミネソタ多面的人格目録)の日本語翻訳版につき出版権を有し,被告による書籍等(ハンドブック,質問項目記載の冊子,マークカード及び診断用ソフトウェア)の出版及び頒布が同出版権を侵害すると主張して,被告に対し,著作権法112条1項及び2項に基づき,同書籍等の複製及び頒布の差止め,同書籍等及びその印刷用原版の廃棄をそれぞれ求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

S14 ミネソタ多面的人格目録(MMPI)考案
S25 翻訳日本女子大学版
S28 翻訳九大版
S30 翻訳東大版
S44 原告が旧三京房版を刊行
H05 原告が新日本版を刊行
H29 被告が本件出版物を刊行

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■判決内容

<争点>

1 被告による出版権侵害行為の有無

原告は、本件においてAを著作者とする著作物の出版権侵害を主張しました。

(1)新日本版

原告は、本件出版物の質問票における質問の表現と新日本版の質問票における質問の表現とを比較した上で、その類似性に基づいて上記出版権侵害を主張。
この点について、裁判所は、Bらが新訳を作成した昭和62年から昭和63年当時、新日本版に接し、これを用いてBら新訳を作成することは不可能であった等から、依拠性を否定。
本件出版物は、新日本版を複製したものであるとは認められず、原告主張の出版権侵害は理由がないと判断しています。

(2)旧三京房版

また、原告は、旧三京房版の出版権を根拠として出版権侵害性を主張しましたが、裁判所は、本件出版物が旧三京房版を複製したものであるとは認めていません(7頁以下)。

結論として、原告の主張は認められていません。

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■コメント

ミネソタ多面的人格目録は、130の外国語に翻訳され、90カ国以上で使用されている国際的質問紙法テストのようです。性格検査法に関連する事案としては、YG性格検査に関するものが過去ありました。

written by ootsukahoumu at 06:30|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年11月26日

コスプレ写真発信者情報開示事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コスプレ写真発信者情報開示事件

東京地裁平成30.10.26平成30(ワ)21931発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2018.10.20
*キーワード:発信者情報開示、コスプレ写真

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■事案

コスプレ写真の無断配信に関する発信者情報開示事件

原告:カメラマン
被告:レンタルサーバ事業会社

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法22条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 本件各写真の著作物性
2 本件各写真の著作者
3 本件発信者情報開示の必要性

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告が運用するレンタルサーバ上のウェブサイト上に掲載された写真は原告が撮影した著作物であるから,これを無断で掲載することが原告の著作権(複製権及び送信可能可権)を侵害することは明らかであるなどと主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』

<経緯>

H26.08 本件写真1撮影
H28.03 本件写真2撮影
    「Flickr」に本件各写真掲載
H29.11 本件ウェブページに本件各写真掲載
H30.06 原告申立てによる本件発信者情報消去禁止仮処分決定

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■判決内容

<争点>

1 本件各写真の著作物性

有名な女性コスプレイヤーを被写体とする本件各写真の著作物性(著作権法2条1項1号)について、裁判所は、その著作物性を肯定しています(3頁以下)。

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2 本件各写真の著作者

被告は、「Flickr」の本件アカウントが原告のアカウントであると認め得る証拠はないし、仮にそうであったとしても原告が「Flickr」上に本件各写真のデータを投稿したとの事実以上に原告が本件各写真を撮影したとの事実まで認められるわけではないなどと反論しました。
この点について、裁判所は、

・東京地方裁判所が平成30年6月22日、原告の申立てに基づき被告に対して本件発信者情報の消去を禁ずる旨仮処分を決定
・「Flickr」の本件アカウント「A」の支払いクレジットカードは原告の住所
・本件各写真の機材、撮影日、撮影条件が本件ウェブアルバムに記載
・本件ウェブアルバムに平成30年1月に発信者情報開示請求した旨記載
・本件各写真の撮影者(著作者)が原告以外の者であることをうかがわせる証拠は何もない

といった諸事情を勘案して、原告が本件各写真を撮影した著作者であると認定しています(4頁以下)。

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3 本件発信者情報開示の必要性

(1)著作権侵害の明白性

本件発信者による本件各写真の画像データの入手先が本件アルバム以外に考え難いことからすれば、本件発信者は、本件ウェブアルバムから本件各写真の画像ファイルを複製した上で本件ウェブページに掲載(アップロード)して,上記画像ファイルを送信可能化したものと認められる。

(2)損害賠償請求権の行使のための必要性

本件ウェブページ上の記載からは、誰が本件各写真の画像ファイルを掲載したのかが判然とせず、原告がいまだ被告から本件発信者情報の開示を受けていないことからすれば、原告において本件各写真に係る著作権侵害に基づく損害賠償請求権の行使をするためには、本件発信者情報の開示が必要であると認められる。

結論として、原告は、被告に対してプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができると裁判所は判断しています(5頁以下)。

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■コメント

ウェブ上の写真アルバムサービス「Flickr」に掲載した写真が無断使用された事案です。
自分が撮影した写真であることを証明するのも一苦労であることがよくわかる事案です。
written by ootsukahoumu at 06:00|この記事のURL知財判決速報2018