2017年02月09日

カーナビ地図データ使用許諾契約事件−著作権 使用権料請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

カーナビ地図データ使用許諾契約事件

大阪地裁平成28.11.28平成27(ワ)6363等使用権料請求事件等PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2017.1.27
*キーワード:ライセンス契約、不安の抗弁

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■事案

地図データの使用許諾契約について不安の抗弁の成否などが争点となった事案

原告:カーナビゲーションシステム制作会社
被告:自動車用品製造販売会社

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■結論

第1事件:請求一部認容
第2事件:請求棄却


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■争点

条文 民法620条

1 本件契約における使用権料の額
2 被告による本件契約解除の有効性
3 本件契約解除が有効である場合の原告の未払使用権料支払請求権の存否・被告の既払使用権料返還請求権の存否

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■事案の概要

『第1事件は,原告が被告に対し,原告が使用権あるいは著作権を有する地図データについて,被告との間の有償使用許諾契約に基づき,使用権料1億5500万円(税抜き)の残金5940万円(5500万円とその消費税)及びこれに対する支払期日の翌日である平成27年5月14日から支払済みまで同契約で定める年15%による遅延損害金の支払を請求した事案である。これに対し,被告は,同契約による使用権料について支払済みの1億800万円(1億円とその消費税)を超える額の合意はなく,また,同契約は原告が地図データを提供しなかった債務不履行に基づき解除されたと主張して争っている。
 第2事件は,被告が原告に対し,上記使用許諾契約の解除に基づく原状回復請求権として,支払済み使用権料1億円の返還及びこれに対する同金員受領の日である平成26年6月12日から支払済みまで商事法定利率年6%の割合による利息の支払を請求した事案である。これに対し,原告は,上記解除の有効性を争うとともに,仮に上記解除が有効であるとしても原告は被告に対して使用権料の支払請求権を有する等と主張して争っている。』(2頁)

<経緯>

H26.05 原被告間で使用許諾契約締結
H26.06 被告が1億800万支払い
H26.12 被告が使用権料分割払い、契約変更の要望
H27.02 被告が残金5500万円支払拒絶
H27.02 原告が不安の抗弁を主張
H27.03 被告が契約解除通知
H27.05 被告が原告に対して第2事件提訴
H27.06 原告が被告に対して第1事件提訴

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■判決内容

<争点>

1 本件契約における使用権料の額

本件契約における使用権料について、本件使用権料表には基本使用権料は1億5500万円とすると記載されていました。
裁判所は、原告と被告は本件契約の締結により、本件使用権料表に記載のある1億5500万円の使用権料の額をその使用権料の支払方法等も含めて合意したものと認めるのが相当であると認定しています(18頁以下)。

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2 被告による本件契約解除の有効性

(1)原告の責めに帰すべき債務不履行の有無

原告の責めに帰すべき債務不履行の有無について、裁判所は以下のように判断しています(20頁以下)。

(a)被告の使用権喪失の有無

本件契約における使用権料は、いわゆる年間最低使用料としての実質を有するものであると解するのが相当であり、本件契約第4条においては、何の条件の記載もなく原告が被告に対して本件データについての使用許諾をするものとされ、使用権料の支払がない場合に使用権を失うなどの定めはされていないことからすれば、本件契約において、使用権料の不払又は履行拒絶によって直ちに使用権が喪失ないし失効するとの解除条件が付されていたとは認められない。
被告が使用権料の残金を支払わないことを明確にしたことのみによっては使用権を喪失することはなく、被告は本件契約に基づく本件データの使用権を有していた。

(b)不安の抗弁

被告が使用権料の残金の支払を定められた支払期日に行わない意思を明確にしている以上、被告による支払拒絶の意思は明確にされていたといえる。しかし、使用権料は使用許諾を受けるためだけの対価ではなく、それに満つるまでの複製使用の対価としての性質も有するものであるから、使用権料は、使用権及び個別複製の双方と対価関係にあるものといえるところ、本件契約締結後に被告から使用権料1億5500万円のうち1億円が支払われ、原告が本件データの提供を拒絶する時点での使用権料の充当後残額(税込み)は6988万円余り、提供を拒絶した際に発注されていた3030枚の複製使用料に充当した後でも5974万円余りであったことからすれば、拒絶当時、原告においては、上記3030枚の発注はもちろん、それを超える相当数の発注についても、その対価たる複製使用料について十分な担保を有していたものといえる。
本件契約が被告の業務において不可欠な本件データを継続的に供給するものであったことからすれば、平成27年2月に被告が使用権料の残金を支払うことを明確に拒絶したとしても、原告において、被告に対する本件データの提供義務を履行させることが、著しく当事者間の衡平を欠く状況にあり信義に反するとまでいえるものではなく、原告において不安の抗弁を主張することはできない。

原告が、平成27年2月に被告に対する本件データの提供を拒絶したことは、原告の責めに帰すべき債務不履行であるといえる。

(2)解除事由

原告が被告の複製申請に対して本件データの提供を行うことは、原告の本件契約における債務そのものであるから、これを拒絶することは、本件契約第6条4項(6)に定める「本契約もしくは使用許諾地域等の個別契約上の重大な債務不履行」に該当するといえ、被告は、直ちに本件契約を解除することができるから、被告が原告に対して行った解除の意思表示は、本件契約条項に基づくものとして有効であると裁判所は判断(24頁以下)。

結論として、被告による本件契約解除は有効であると判断しています。

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3 本件契約解除が有効である場合の原告の未払使用権料支払請求権の存否・被告の既払使用権料返還請求権の存否

解除により本件契約が使用許諾期間途中で効力を失った場合に、契約がどのように解消されるかについては明確に定められていないことから、本件契約解除による使用権料の支払義務の帰趨が問題となっています(25頁以下)。

(1)本件契約解除の遡及効の有無について

本件契約には本件契約条項に基づく解除の効力について具体的な定めはないものの、本件契約が被告の行う複製使用申請に対して、原告が本件データを提供するという関係が使用許諾期間において続くという意味で継続的な契約の性質を有し、また、本件契約に基づき相当数の本件データの複製物が原告から被告に提供され、これを使用したカーナビゲーションが第三者に販売されていることを考慮すれば、本件契約条項に基づく解除については民法620条を準用し、将来に向かって効力が生じると解するのが相当であると裁判所は判断しています。

(2)使用権料残金

本件では、被告が原告に対して1か月又は2か月おきに相当量の複製発注をしてきていることに鑑み、解除による事後的な対価的清算としては、使用許諾期間の観点から考えることとし、使用許諾期間1年間のうち被告が使用許諾の利益を享受したと認められる期間に相当する範囲に対応する使用権料は原告が収受でき、それ以後の期間に対応する使用権料は、これを原告は収受できないと考え、このような清算関係に沿うように、被告の使用権料支払義務又は原告の原状回復義務のいずれかを認めることとするのが相当であると裁判所は判断。
1億6740万円(1億5500万円×1.08[税込み])のうち、使用許諾契約の始期である平成26年5月14日から上記平成27年2月4日までの267日に対応する額は、1億2245万4246円(1億6740万円÷365日×267日)となるから、被告の支払った1億800万円を超える1445万4246円については、被告は原告に対して未だ使用権料として支払義務を負っており、他方、被告が原告に支払った1億800万円は、上記1億2245万4246円を超えるものではないから、原告から被告に対して返還する使用権料はないと認定。
結論として、被告は、原告に対して本件契約に基づく使用権料の残金として1445万4246円の支払が認められています。

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■コメント

被告は、自動車が趣味でカー用品などを購入する機会が多い人には名の通った企業です。

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2017年02月04日

雑誌「プレジデント」記事翻案事件(控訴審)−著作権 著作権侵害および名誉侵害行為に対する損害賠償控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

雑誌「プレジデント」記事翻案事件(控訴審)

知財高裁平成29.1.24平成28(ネ)10091著作権侵害および名誉侵害行為に対する損害賠償控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2017.1.27
*キーワード:翻案権、同一性保持権、名誉・声望権

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■事案

雑誌に掲載された記事を要約してウェブサイトに転用されたとして著作権侵害性などが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):映画プロデューサー
被控訴人(1審被告):新聞社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、27条、113条6項

1 翻案権侵害の成否
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉・声望権侵害の成否
4 社会的評価の低下の有無
5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否


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■事案の概要

『本件は,控訴人記事(甲2)の著作者であり,著作権者である控訴人が,被控訴人が運営するウェブサイトに掲載された被控訴人記事(甲1)により,著作権(翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権,名誉・声望権)を侵害され,名誉を毀損されたと主張して,被控訴人に対し,(1)著作権侵害,著作者人格権侵害ないし名誉毀損の不法行為に基づき,損害合計340万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌日)である平成28年2月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)著作権法115条ないし民法723条に基づき,被控訴人のウェブサイトへの謝罪文の掲載を求めた事案である。
 原審は,(a)被控訴人各表現は,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,控訴人各表現と同一性を有するにすぎないから,控訴人各表現を翻案したものではない,(b)被控訴人記事は,控訴人記事を改変したものではないから,同一性保持権の侵害はない,(c)控訴人指摘の被控訴人記事中の表現部分は,被控訴人記事の著者の控訴人記事に対する意見ないし論評又は控訴人記事から受けた印象を記載したものにすぎず,控訴人又は控訴人記事を誹謗中傷するものとは認められないから,名誉・声望権の侵害はない,(d)被控訴人記事が控訴人の社会的評価を低下させる理由として控訴人が主張する点は,控訴人の社会的評価を低下させることの理由とはなり得ないし,被控訴人記事の記載が控訴人の社会的評価を低下させるものとも認められないから,名誉毀損は成立しないなどとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人が,これを不服として控訴した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 翻案権侵害の成否
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉・声望権侵害の成否
4 社会的評価の低下の有無
5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否


控訴審での控訴人の補充主張について、控訴審は認めていません。
結論として、原審の判断が控訴審でも維持されています。

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■コメント

原審の判断が控訴審でも維持されています。
最高裁サイトに公表された平成29年判断の著作権判例として最初の判決となります。

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■過去のブログ記事

2016年09月15日 原審記事
written by ootsukahoumu at 08:31|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2017 

2017年01月28日

宇多田ヒカル「First Love」事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

宇多田ヒカル「First Love」事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.22平成28(ネ)10057損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官    中島基至
裁判官    岡田慎吾

*裁判所サイト公表 2017.1.25
*キーワード:著作者性

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■事案

宇多田ヒカルの楽曲について、共同著作者性が争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):個人
被控訴人(1審被告):宇多田ヒカル

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2号

1 請求の特定
2 通知の合意の成否
3 著作者性

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,控訴人がAOLのチャット機能又はメール機能を使用して被控訴人のスクリーンネームであるA又は同人のメールアドレスであるA@aol.com に文章を伝達するなどして被控訴人の創作に関与したとして,控訴人は宇多田ヒカル名義の編集著作物(CDアルバム「First Love」)及び「誰かの願いが叶うころ」と題する楽曲の歌詞の共同著作者であると主張し,また,控訴人が「B&C」,「はやとちり」及び「Wait & See〜リスク〜」と題する各楽曲の歌詞につき,被控訴人の創作に関与したものの被控訴人が控訴人の氏名を表示せず被控訴人のみが著作者として利益を得るなどしたと主張して,著作権法115条,民法709条等に基づき,別紙控訴人請求目録記載の各請求(当審第1回口頭弁論調書参照)を求めた事案である。
 原審は,控訴人において主張する伝達内容が被控訴人に伝えられたものとは認められないとして,控訴人の各請求をいずれも棄却した。控訴人がこれを不服として控訴した。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 請求の特定
2 通知の合意の成否
3 著作者性

控訴審は、原判決の判断を維持して棄却の判断をしています。

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■コメント

1審原告(控訴人)の説得力のある主張立証もなく、判決文3頁の簡潔な内容となっています。

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■過去のブログ記事

2016年05月21日 原審記事

written by ootsukahoumu at 07:55|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2017年01月26日

ゴーストライター問題イベントキャンセル事件−著作権 損害賠償請求事件(本訴)、著作権使用料請求事件(反訴)判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ゴーストライター問題イベントキャンセル事件

大阪地裁平成28.12.15平成26(ワ)9552等損害賠償請求事件(本訴)、著作権使用料請求事件(反訴)PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    田原美奈子
裁判官    林啓治郎

*裁判所サイト公表 2017.1.23
*キーワード:ゴーストライター、告知義務違反、著作権譲渡、不当利得

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■事案

全ろう聴覚障害であることやゴーストライターによる作曲など虚偽事情によってイベント公演が中止された際の損害などが争われた事案

原告:イベントプロモーター
被告:音楽家

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法121条、民法709条、704条

1 被告による不法行為の成否(本訴)
2 原告の損害額(本訴)
3 被告には本件楽曲に係る損失があるか(反訴)
4 原告の利得額(反訴)

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■事案の概要

『(1)本訴
原告が,被告に対し,被告が,全ろうの中自ら作曲したと発表していた楽曲につき,被告の説明が真実であると誤信して当該楽曲を利用する全国公演の実施を求めた原告に対してその実施を許可し,さらに,その後も,被告の説明が虚偽であることを隠して多数回の実施を強く申し入れたことにより,原告が多数の全国公演を実施することとなったが,被告の虚偽説明等が公となり原告が上記公演を実施できなくなったことにより多額の損害を被ったと主張し,不法行為に基づく損害賠償請求として,損害金6131万0956円及びこれに対する不法行為日後の平成26年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』

『(2)反訴
被告が,原告に対し,原告が企画・実施した全国公演において被告が著作権を有する楽曲を利用したのであるから,その利用の対価を支払う義務があることを当然に知りながらこれを支払わないでその使用料相当額の利得を得ており,これにより著作権者である被告が同額の損失を被ったとして,民法704条に基づく不当利得返還請求権として,使用料相当額730万8955円の返還及びこれに対する平成26年2月3日(最終公演日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』(2頁以下)

<経緯>

H08 被告が作曲家P2と知り合う
H10 被告がゲームソフト「バイオハザード」音楽担当
H11 被告がゲームソフト「鬼武者」音楽担当、P2に交響曲作曲依頼
H13 TIME誌が聴覚障害の被告を紹介する記事掲載
H13 被告がP2に交響曲第1番「HIROSHIMA」作曲依頼
H19 被告が自伝を出版
H20 TBSテレビで被告が取り上げられる
H21 テレビ新広島で被告が取り上げられる
H23 日本コロンビアからCD販売
H24 NHKやテレビ朝日で被告が取り上げられる
H24 被告がP2にピアノ作品集作曲依頼
    P2が「ピアノのためのレクイエム・イ短調」作曲
H25 P2が「ピアノ・ソナタ第2番」作曲
H25 「NHKスペシャル 魂の旋律 音を失った作曲家」放映
H25 原被告間で本件交響曲公演、本件ピアノ公演打ち合わせ
H25 被告自伝が文庫化
H26 被告が原告にゴーストライター問題の週刊文春記事を転送
H26 NHKがおわび、P2が謝罪会見
H26 被告とP2が著作権譲渡確認書作成
H26 JASRACが被告との著作権信託契約を解除
H26 原告が本訴提起
H27 被告がP2に訴訟告知

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■判決内容

<争点>

1 被告による不法行為の成否(本訴)

原告は、被告が公表していた本件楽曲が被告自ら作曲した作品であること、被告が全ろうの中で苦労をして絶対音感を頼りに作曲した状況が、いずれも虚偽であって、このような虚偽の説明を前提に原告に本件公演の実施を許可し、さらに公演を増やすよう申し入れるなどして本件公演の実施に深く関与した行為が不法行為である旨主張しました。
これに対して、被告は、原告が主張するいずれの事実も虚偽ではなく、そもそも本件楽曲に関する明確な著作物利用契約まで成立したとはいえないまま本件公演が行われたものであるとして、被告に告知義務違反はないなどと反論しました(25頁以下)。

この点について裁判所は、被告に全ろうといった身体障害の事情での作曲活動といったことがなければ原告は本件公演を企画しなかったであろうし、P2が作曲していたという作曲状況も企画の上で重要な前提事実であると認定。また、原被告間で著作物利用契約も成立していたと判断。
そして、本件公演の企画に対して被告が関与をするに当たり、被告においてこれまで公表していた被告の人物像や作曲状況が事実とは異なることを原告にあらかじめ伝え、その内包されるリスクを告知する義務があったものというべきであると裁判所は判断。
結論として、被告がこの義務に反して事実を告げずに原告が多額の費用を掛けて多数の人が携わることとなる全国公演を行うことを了承し、さらには公演数を増やすように強く申し入れるなどして本件公演の企画に積極的に関与し、それにより原告に本件公演を企画・実施するに至らせた行為は、原告に対する不法行為を構成すると判断しています。

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2 原告の損害額(本訴)

原告の損害額について、裁判所は、損害として損益通算すべきは、(1)実施された公演については、通常得られる利益を超過して得られた利益を通算対象とすべきであり、(2)中止された公演については、売上げがない反面、経費は支出しており、また、同時期に他の公演を企画・実施する機会を逸し、突然の中止であったために他の公演で代替する余裕もなかったと認められるとして、(a)純粋支出となった経費に加え、(b)他の公演を実施していれば通常得られたであろう利益を損害として通算対象とすべきであると判断しています(30頁以下)。

(1)実施された公演による利益

実施された公演から得られた超過的利益があるとは認められず、通算対象とすべき利益は存しない。

(2)本件公演中止による損害

(a)純粋支出となった経費

・返金したチケット返送料 5万8560円
・返送料振込手数料 2万0300円
・プレイガイドへ支払った手数料等 270万6243円
・振込手数料 6988円
・公演中止広告費 21万0000円
・会場費 279万3040円
・広告費 132万2718円

(b)他の公演を実施していれば通常得られたであろう利益

・本件公演中止による逸失利益 4277万5259円

売上予定額9337万1860円−経費額5059万6601円

・本件交響曲公演のプログラムの販売不能による逸失利益 188万5313円

(3)弁護士費用 500万0000円

合計5677万8421円

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3 被告には本件楽曲に係る損失があるか(反訴)

被告は、原告が本件楽曲に係る使用料を支払うことなく実施された本件公演において本件楽曲を演奏させたことについて、使用料相当額の不当利得が成立すると主張しました(37頁以下)。
この点について、裁判所は、前提としてP2から被告への本件楽曲の著作権譲渡を認定しています。
なお、原告は、譲渡契約があるとしてもその実質はゴーストライター契約であって、著作権法121条に反する、あるいは公序良俗に反するもので無効である旨反論しましたが、裁判所は、被告とP2との間で著作権譲渡合意が本件楽曲に関する合意と不可分一体のものとされていたとまでは認められず、また、性質上不可分一体のものとも認められないと判断。そして、著作権法121条は作者名を詐称して複製物を頒布する行為を処罰の対象とするにすぎず、著作権を譲渡することを何ら制約するものではないとして、本件確認書自体が同条に反するものではなく、また、そのことは公序良俗違反についても同様であるとして、被告とP2との間における本件楽曲の著作権譲渡合意は無効とはいえないと判断しています。
結論として、被告には本件楽曲に係る使用料相当額の損失があり、原告による本件楽曲の利用利益の享受という利得は、法律上の原因を欠くものであったと認定しています。

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4 原告の利得額(反訴)

本件における原告の利得額としての使用料相当額は、原告がJASRACに対して支払うべき使用料相当額であると裁判所は判断。
結論として、被告の原告に対する不当利得返還請求として410万6459円の利得額が認定されています

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■コメント

興業イベントについて、中止された14公演の損害額の認定の点が参考になる事案です。
音楽家新垣隆氏が2014年2月6日、記者会見を開いて佐村河内守氏のゴーストライターを18年間に亘り担当していたことを公表、お茶の間を賑わせる話題となりました。その際、フィギュアスケート高橋大輔選手がソチオリンピックのプログラムで自分の楽曲を使用するのも憚られる、といった内容が印象に残っています。
当時、原告のサモンプロモーションはいち早くチケット払戻しなどのプレスリリースを告知し、また、2014年に本件提訴をしました(「<佐村河内氏>代作で全国ツアー中止 6100万円賠償提訴」毎日新聞2014年11月25日10時45分配信)。
JASRACは「佐村河内守氏の作品について 2014年2月5日プレスリリース」で楽曲の取扱いについて注意喚起。また、音楽CDを制作販売した日本コロンビアも「関係各位 2014年2月7日 佐村河内守氏につきまして」として出荷停止、販売中止などについてプレスリリースを公表していました。

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2017年01月18日

ヱヴァンゲリヲン予告映像無断配信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ヱヴァンゲリヲン予告映像無断配信事件

東京地裁平成28.12.20平成28(ワ)31972発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    林 雅子

*裁判所サイト公表 2017.1.13
*キーワード:動画配信サイト、発信者情報開示、複製、公衆送信

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■事案

アニメ映画「ヱヴァンゲリヲン」の予告映像を無断でYouTubeで配信されたことから発信者情報開示請求が行われた事案

原告:映像制作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が被告に対し,氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上の動画共有サイトに動画を掲載したことにより原告の著作権(複製権及び公衆送信権)が侵害されたと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求めた事案である。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

氏名不詳者が平成28年、被告からインターネットプロトコルアドレスの割当てを受けてインターネットに接続し、インターネット上の動画共有サイト「YouTube」に別紙投稿動画目録記載の動画(本件動画)を投稿し、本件動画を不特定多数の者が閲覧することができる状態に置きました。
この点について、裁判所は、原告が本件予告映像の著作権者であること、本件動画は本件予告映像を複製したものであることが認められるとして、本件氏名不詳者による本件動画の投稿は本件予告映像に係る原告の複製権及び公衆送信権の侵害に当たると判断。
本件予告映像に係る複製権及び公衆送信権を制限する事由が存在することはうかがわれないとして、本件動画の投稿により本件予告映像に係る原告の複製権及び公衆送信権が侵害されたことは明らかであると判断しています(3頁)。

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2 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

原告は、本件氏名不詳者に対して本件予告映像の複製権及び公衆送信権侵害を理由とする損害賠償請求権等を行使することができるところ、原告が本件氏名不詳者の氏名や住所等を覚知することは困難であると考えられることから、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断。
結論として、別紙発信者情報目録記載の各情報(IPアドレスに関する、氏名又は名称、住所、電子メールアドレス)の開示請求が認容されています(3頁以下)。

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■コメント

原告は庵野秀明監督が代表を務めるアニメ制作会社となります。本件映像は、アニメ映画である「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のDVD内に収録されていた次回予定作品の予告映像でした。

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2017年01月16日

「性犯罪被害にあうということ」映画化事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「性犯罪被害にあうということ」映画化事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.26平成27(ネ)10123著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2017.1.12
*キーワード:映画、原作小説、映画化合意、翻案権、同一性保持権、名誉権

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■事案

性犯罪被害に関するノンフィクション小説の映画化にあたって合意の有無などが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審被告):テレビディレクター兼プロデューサー
被控訴人(1審原告):ノンフィクション小説著者

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 著作権法22条、27条、20条、112条

1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額

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■事案の概要

『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)(1)控訴人の製作に係る別紙物件目録(原判決添付の別紙物件目録と同一であるから,これを引用する。)記載の映画(本件映画)は,被控訴人の執筆に係る本件各著作物の複製物又は二次的著作物(翻案物)であると主張して,本件各著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,翻案権)及び本件各著作物の二次的著作物について被控訴人が有する著作権(複製権,上映権,公衆送信権〔自動公衆送信の場合にあっては,送信可能化権を含む。〕及び頒布権),並びに本件各著作物について被控訴人が有する著作者人格権(同一性保持権)に基づき,本件映画の上映,複製,公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布(本件映画の上映等)の差止め(著作権法112条1項)を求めるとともに,本件映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物(本件映画のマスターテープ等)の廃棄(同条2項)を求め,(2)本件映画は,被控訴人の人格権としての名誉権又は名誉感情を侵害するとして,同人格権に基づき,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(3)本件映画製作の前に控訴人・被控訴人間に成立した本件各著作物不使用の合意に基づいて,本件映画の上映等の差止めを求めるとともに,本件映画のマスターテープ等の廃棄を求め,(2)著作者人格権(同一性保持権)侵害(本件各著作物を被控訴人の意に反して改変されたこと)の不法行為による損害賠償金400万円(慰謝料300万円と弁護士費用100万円の合計)及びこれに対する不法行為の後である平成26年5月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(3)債務不履行(控訴人が被控訴人との本件各著作物不使用の合意に違反して本件映画を製作したこと)による損害賠償金(精神的苦痛に対する慰謝料)100万円及びこれに対する平成26年12月27日(同月26日付け訴えの変更申立書(2)の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である(なお,被控訴人は,上記(2)及び(3)の請求について,仮執行宣言を申し立てた。)。』

『原審は,(1)(1)(a)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度(ただし,著作者人格権に基づく差止請求は,本件映画の複製の差止めを求める限度)で認容し,(b)著作権及び著作者人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙エピソード別対比表3,4,6及び7の本件映画欄に記載の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)(a)人格権に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙侵害認定表現目録1及び2の(1)〜(3)に記載の表現を含む本件映画の上映等(ただし,本件映画の複製を除く。)の差止めを求める限度で認容し,(b)人格権に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,これを棄却し,(3)(a)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画の上映等の差止請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画の上映等の差止めを求める限度で認容し,(b)本件各著作物不使用の合意に基づく本件映画のマスターテープ等の廃棄請求については,原判決別紙確定稿対比表の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む本件映画のマスターテープ等の廃棄を求める限度で認容し,(2)著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求については,55万円(慰謝料50万円と弁護士費用5万円)及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,(3)本件各著作物不使用の合意違反の債務不履行に基づく損害賠償請求については,これを棄却した。
 原判決に対し,控訴人のみが控訴を提起した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作権(翻案権・複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否
3 人格権としての名誉権及び名誉感情の侵害の成否
4 本件各著作物の場面・台詞不使用の合意の成否
5 本件映画の上映等の差止請求及び本件映画のマスターテープ等の廃棄請求の当否
6 損害発生の有無及びその額

[判決主文]

『1 原判決主文第1項ないし第4項を次のとおり変更する。
(1)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(2)控訴人は,別紙人格権侵害認定表現目録記載1ないし4に記載の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(3)控訴人は,別紙合意に基づく差止一覧記載の赤色部分,緑色部分及び水色部分の表現を含む別紙物件目録記載の映画を上映し,複製し,公衆送信し,送信可能化し,又は同映画の複製物を頒布してはならない。
(4)控訴人は,別紙翻案権侵害認定表現目録記載1ないし7の表現を含む別紙物件目録記載の映画のマスターテープ又はマスターデータ及びこれらの複製物を廃棄せよ。
(5)控訴人は,被控訴人に対し,55万円及びこれに対する平成26年5月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(6)被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。』

[判断理由]略

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■コメント

実質敗訴の一審被告プロデューサー側だけが控訴しました。差止めの対象の点などを除いて大筋で原判決の結論が維持されているといえます。
なお、51頁以下に別紙が添付されていて内容が詳細に分かり参考になります。
51頁に「翻案権侵害認定表現目録」、52頁以下に「エピソード別対比表」、61頁に「人格権侵害認定表現目録」、62頁以下に「合意に基づく差止一覧」、137頁以下に「控訴人確定稿対比表」、212頁以下には「合意に基づく差止一覧についての補足説明」があります。

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■過去のブログ記事

2015年11月09日 原審記事
原判決PDF
原審別紙

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2017年01月10日

コミュニティFM「リスラジ」事件(控訴審)−著作権 地位確認請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

コミュニティFM「リスラジ」事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.22平成28(ネ)10072地位確認請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2017.1.5
*キーワード:利用許諾契約、利用許諾契約約款、放送、配信、サイマル放送、ザッピング機能

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■事案

コミュニティFMがサイマル放送(ラジオ番組を地上波放送と同時にインターネット配信すること)でザッピング機能を提供した点がレコード協会との間の契約更新拒絶事由にあたるかどうかなどが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):コミュニティFMラジオ局運営会社27社
被控訴人(1審被告):日本レコード協会

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権等管理事業法16条、独禁法19条、民法90条

1 被控訴人の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か
2 被控訴人の本件更新拒絶は信義則に反し無効か
3 被控訴人の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か
4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

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■事案の概要

『本件は,コミュニティ放送を行う放送局(FMラジオ局)を運営する控訴人ら(一審原告ら)が,被控訴人(一審被告)に対し,被控訴人による本件更新拒絶(控訴人らがそれぞれラジオ音楽番組をスマートフォン及びパソコン向け無料配信サービス「Listen Radio」〔リスラジ〕においてインターネット配信〔本件各音楽番組配信〕しているのは,被控訴人が管理するレコード〔管理レコード〕の利用に関する,控訴人らと被控訴人との間の利用許諾契約〔本件利用許諾契約〕に基づく使用料規程〔本件使用料規程〕の細則〔本件使用料規程細則〕の適用基準に違反するとして,本件利用許諾契約の更新を拒絶した行為)は,著作権等管理事業法(管理事業法)16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独禁法)所定の不公正な取引方法に該当し,又は信義則に反するから,私法上無効であると主張して,本件利用許諾契約に基づき,(1)主位的に,本件使用料規程細則第3条に定める使用料を支払うことにより,被控訴人による著作隣接権管理に係る商業用レコード(被控訴人の管理レコード)を録音したコミュニティ放送番組をインターネット上で同時に配信することを目的として,被控訴人の管理レコードを複製及び送信可能化する方法で利用することができる契約上の地位にあることの確認を求め,(2)予備的に,本件使用料規程「第3節1(2)本表」(本件使用料規程本則)に定める使用料(本件使用料規程細則第3条に定める使用料よりも高額である。)を支払うことにより,上記契約上の地位にあることの確認を求める事案である。
 原判決は,本件更新拒絶について,控訴人らの主張(管理事業法16条所定の正当な理由のない利用の許諾の拒否,独禁法所定の不公正な取引方法,信義則違反)をいずれも認めず,控訴人らの請求を棄却したため,これを不服として控訴人らが控訴した。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 被控訴人の本件更新拒絶は管理事業法16条にいう「正当な理由がなく」利用の許諾を拒んでいるものとして無効(民法90条)か

控訴人らは、控訴審において、本件各音楽番組が控訴人らの「自主制作番組」に該当するかどうかについてさらに主張を重ねましたが、本件各音楽番組は株式会社エムティアイ(MTI)の発意と責任の下で制作されていると認めるのが合理的であり、およそ控訴人らの主体的な関与の下で制作されたものとはいえないと控訴審は判断、本件各音楽番組の自主制作番組性が否定されています(26頁以下)。
結論として、控訴人らの主張は認められていません。

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2 被控訴人の本件更新拒絶は信義則に反し無効か

控訴人らは、本件各音楽番組とミュージックバードが制作しコミュニティ放送事業者に供給している音楽番組とで不当に取扱いを異にしており、控訴人らに対してのみ本件更新拒絶により本件各音楽番組のサイマル配信を認めておらず、かかる取扱いが信義則に反するとして、本件更新拒絶は信義則に反し無効である旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(35頁以下)。

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3 被控訴人の本件更新拒絶は「共同の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項1号イ又は同項6号イ、一般指定1項)又は「その他の取引拒絶」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定2項)に該当するため無効(民法90条)か

控訴人らは、被控訴人の圧倒的市場支配力に照らせば強度の公正競争阻害性を生じさせるとして、独禁法上の「共同の取引拒絶」又は「その他の取引拒絶」に該当する旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(36頁)。

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4 「取引条件等の差別的取扱い」(独禁法19条、2条9項6号イ、一般指定4項)に該当するため無効(民法90条)か

控訴人らは、本件更新拒絶はリスラジの「おすすめ番組まとめ」チャンネルに参加しているコミュニティ放送局だけを差別的に取り扱うために行われたものであり、取引条件等の差別的取扱いに該当するため無効(民法90条)である旨主張しましたが、控訴審は控訴人らの主張を認めていません(36頁以下)。

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■コメント

原審の棄却の判断が控訴審でも維持されています。控訴審は1回の口頭弁論だけで結審したと伺っています。

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■過去のブログ記事

2016年06月20日 原審記事
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2017年01月07日

カラオケ音源動画配信事件−著作権 著作隣接権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

カラオケ音源動画配信事件

東京地裁平成28.12.20平成28(ワ)34083著作隣接権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    林 雅子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2017.1.5
*キーワード:カラオケ、レコード製作者、動画、送信可能化、差止めの必要性

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■事案

カラオケ音源を使用して歌唱している場面を撮影してYouTubeで動画配信した事案

原告:業務用通信カラオケ機器製造販売会社
被告:個人

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法96条の2、112条

1 本件動画の送信可能化の差止めの肯否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,被告が原告の作成したカラオケ音源を用いてカラオケ歌唱を行っている様子を自ら動画撮影した動画の電磁的記録をインターネット上の動画共有サイトにアップロードした行為が,原告の上記カラオケ音源に係る送信可能化権(著作権法96条の2)の侵害に当たると主張して,同法112条1項及び2項に基づく上記動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の消去を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H28.08 原告がカラオケ用音源(本件DAM音源)作成
H28.09 被告が本件動画をYouTubeにアップロード

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■判決内容

<争点>

1 本件動画の送信可能化の差止めの肯否

被告は、カラオケ店舗において業務用通信カラオケ機器DAMの端末を利用してカラオケ歌唱を行い、その際に自身が歌唱する様子を動画撮影して本件DAM音源の音が記録された動画をインターネット上の動画共有サイトであるYouTubeにアップロードしました。
原告は、本件行為は原告の本件DAM音源に係る送信可能化権を侵害する行為に当たり、本件動画は既にYouTube上から削除されているものの、被告が他の動画共有サービスを用いるなどして本件動画の電磁的記録を送信可能化する可能性があること、被告による原告の送信可能化権侵害を防ぐためには被告が管理する本件動画の電磁的記録を消去する必要があるとして、被告に対して本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求めました。
対して、被告は、自主的に本件動画をYouTube上から削除したこと、また、そもそも本件動画は主として被告自身の歌唱の様子を撮影したものであって原告の利益を明確に侵害したとはいい難いものであるとして、差止請求等の訴訟を提起することは適切でなく原告は被告に連絡をとって被告が自主的に削除する機会を与えるべきであった旨反論しました。
この点について、裁判所は、本件動画がYouTube上から現時点では削除されているとしても、本件動画の電磁的記録が被告の有する記録媒体から消去されたことはうかがわれないとして、原告の上記請求について差止め等の必要性を欠くとみることは相当でないと判断。
本件行為は本件DAM音源に係る原告の送信可能化権の侵害に当たることから、原告は被告に対し本件動画の送信可能化の差止め及びその電磁的記録の記録媒体からの消去を求めることができると判断しています(3頁)。

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■コメント

カラオケ音源を使用して歌唱しているシーンを自撮りして動画配信した事案となります。
動画サイトからすぐに削除したようですが、内容や態様が看過できないものだったのか、差止めやデータ消去の必要が認められています。
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2017年01月05日

ゴルフクラブシャフトデザイン事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ゴルフクラブシャフトデザイン事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.21平成28(ネ)10054著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2016.12.28
*キーワード:工業デザイン、応用美術論、著作物性

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■事案

ゴルフシャフトのデザインやそのデザインを利用したカタログ表紙のデザインの著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :グラフィックデザイナー
被控訴人(1審被告):ゴルフ用品製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、10条1項4号

1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性
2 本件カタログデザインの著作物性
3 被告シャフトによる翻案権及び二次的著作物の譲渡権並びに同一性保持権侵害の有無

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,(1)別紙被告シャフト目録(原判決別紙被告シャフト目録記載の各シャフトに,それぞれデザインを記載したもの)記載1〜83の被告シャフトが,主位的には,控訴人の著作物である本件シャフトデザインの翻案に当たり,予備的には,控訴人の著作物である本件原画の翻案に当たるから,被控訴人の被告シャフト製造,販売行為が,控訴人の著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)を侵害し,(2)被告シャフトの製造は,主位的には,控訴人の意に反して本件シャフトデザインを改変してなされたものであり,予備的には,控訴人の意に反して本件原画を改変してなされたものであるから,控訴人の著作者人格権(同一性保持権)を侵害し,(3)別紙被告カタログ目録(原判決別紙被告カタログ目録記載の各カタログに,それぞれデザインを記載したもの)記載1及び2の被告カタログの製作は,控訴人の意に反して,控訴人の著作物である本件カタログデザインを改変してなされたものであるから,控訴人の著作者人格権(同一性保持権)を侵害しているとして,(1)被告シャフト5〜8による著作権(翻案権,二次的著作物の譲渡権)侵害につき民法703条,704条に基づく使用料相当額の不当利得金5400万円及びこれに対する不当利得日である平成19年6月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の返還,(2)被告シャフト及び被告カタログによる著作者人格権(同一性保持権)侵害につき民法709条に基づく慰謝料850万円の内金425万円及びこれに対する不法行為の後である平成27年8月18日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払,(3)被告シャフト及び被告カタログによる著作者人格権(同一性保持権)侵害につき著作権法112条1項に基づく被告シャフト及び被告カタログの製造及び頒布の差止め並びに同条2項に基づく廃棄,並びに,(4)被告シャフトによる著作者人格権(同一性保持権)侵害につき,同法115条に基づく謝罪広告の掲載を求めた事案である。
 原判決は,本件シャフトデザイン,本件原画及び本件カタログデザインは,いずれも,著作権法上の著作物に当たらないとして,控訴人の請求を全部棄却した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性

控訴審は、応用美術の著作物性(美術の著作物 著作権法10条1項4号)の意義について言及した上で、本件シャフトデザイン及び本件原画の著作物性について検討しています(24頁以下)。
結論として、ありふれたものであるなどとして、本件シャフトデザイン等には創作的な表現は認められず、著作物性を認めていません。

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2 本件カタログデザインの著作物性

控訴審は、本件カタログデザインの著作物性について、特段の工夫が見られず平凡であるとして、本件カタログデザインには本件シャフトデザイン等より更に創作的な表現はなく、著作物性は認められないと判断しています(36頁以下)。

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3 被告シャフトによる翻案権及び二次的著作物の譲渡権並びに同一性保持権侵害の有無

控訴審は、念のため、として、仮に本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとした場合において、被告シャフトが本件シャフトデザイン等を翻案したものであり、被控訴人が控訴人の著作権(翻案権、二次的著作物の譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害したといえるかについて検討しています(37頁以下)。
結論としては、仮に本件シャフトデザイン等に著作物性が認められるとしても、被告シャフトは本件シャフトデザイン等の表現上の本質的特徴を直接感得できるものではないとして、仮に被告シャフトに創作性がある場合には別個の著作物であることとなると判断。被控訴人による被告シャフト製造、頒布が本件シャフトデザイン等に係る控訴人の著作権(翻案権、二次的著作物の譲渡権)を侵害したとは認められないと判断しています。

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■コメント

ゴルフシャフトのデザインやそのデザインを利用したカタログ表紙のデザインの著作物性について、控訴審でもそれらの著作物性が否定され、原審の棄却の結論が維持されています。

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■過去のブログ記事

2016年05月30日 原審記事

written by ootsukahoumu at 07:09|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年12月30日

ツイキャス無断ライブ配信事件−著作権 著作権侵害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ツイキャス無断ライブ配信事件

東京地裁平成28.12.15平成28(ワ)11697著作権侵害賠償等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    林 雅子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.12.27
*キーワード:動画配信、公表権、時事の事件の報道、名誉声望侵害行為

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■事案

講演を無断でツイキャスでライブ動画配信した事案

原告:宗教法人元職員ら
被告:著述家

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法18条、41条、23条、113条6項

1 本件配信による公表権侵害の成否
2 本件配信の「時事の事件の報道」該当性
3 本件コメントによる原告Aの名誉又は声望の毀損の有無
4 損害額

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■事案の概要

『本件は,原告ら4名による講演を被告がインターネット上で配信したことに関し,(1)原告らが被告に対し,原告らそれぞれの著作物である上記講演中の各原告の口述部分に係る公表権及び公衆送信権が侵害されたと主張して,不法行為(民法709条)に基づく損害賠償金として原告A及び原告Bにつき各550万円,原告C及び原告Dにつき各110万円並びにこれらに対する不法行為の日である平成27年12月12日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)原告Aが被告に対し,上記配信は原告Aの名誉又は声望を害する方法で行われたと主張して,著作権法115条に基づく名誉回復措置として謝罪広告の掲載をそれぞれ求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H27.12 第3回真理講演会開催
     被告が講演をツイキャスでネット動画配信
     被告が25件のコメントを投稿

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■判決内容

<争点>

1 本件配信による公表権侵害の成否

原告らは、本件配信はライブ配信であり、本件講演が原告らによる口述と同時に配信されるため本件配信の時点では本件講演は未公表であった旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、本件講演会は定員86名の会場で行われ、対象者が限定されておらず、事前に申込みをすれば誰でも参加することができるものであったとして、本件講演は不特定又は多数の者に対して行われたものであり、原告らの口述により公衆に提示され公表されたと判断。原告の本件配信による公表権侵害(著作権法18条)の主張を認めていません。

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2 本件配信の「時事の事件の報道」該当性

被告は、言語の著作物である本件講演をインターネット上の配信サイトで無断配信しており、被告の行為は本件講演に係る各原告の公衆送信権(23条)を侵害する行為に該当すると裁判所は認定。
これに対して、被告は、本件配信は「時事の事件の報道」(41条)に該当するため、原告らの著作権が制限され公衆送信権侵害は成立しない旨主張しました。
この点について、裁判所は、本件講演それ自体が同条にいう「時事の事件」に当たるとみることは困難であること、さらに、同条は時事の事件を報道する場合には当該事件を構成する著作物等を「報道の目的上正当な範囲内」において「当該事件の報道に伴って利用する」限りにおいて、当該著作物についての著作権を制限する旨の規定であるところ、本件配信は,約3時間にわたり本件講演の全部を本件コメントを付して配信するものであり、同条により許される著作物の利用に当たらないことは明らかであると判断。
結論として、本件配信は、上記公衆送信権を侵害すると判断しています(7頁)。

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3 本件コメントによる原告Aの名誉又は声望の毀損の有無

被告が本件配信の際に原告Aに関して、「ラスボス・Aは,この後3時から」「ラスボス登場」などのコメントを投稿したことが原告Aの名誉又は声望を毀損する方法で行われたものにあたり、著作者人格権を侵害する行為とみなされるかどうか(113条6項)について、裁判所は、 結論として、被告による本件講演の利用の方法が原告Aの名誉又は声望を害するものであったと認めることはできないと判断。名誉回復措置に関する謝罪広告掲載の請求(115条)を認めていません(7頁以下)。

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4 損害額

被告による公衆送信権侵害の点について、以下のように損害額を認定しています(8頁以下)。

(1)財産的損害

原告A、B 各6万円
原告C 1万円
原告D 3000円

(2)弁護士費用相当額損害

原告A、B 各1万円
原告C 2000円
原告D 1000円

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■コメント

講演会を無断でツイキャス(http://twitcasting.tv/)でライブ動画配信した事案となります。
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2016年12月22日

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件 抗告審)−著作権 保全異議申立決定に対する保全抗告事件決定(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

著作権判例百選編集事件(保全異議申立事件 抗告審)

知財高裁平成28.11.11平成28(ラ)10009保全異議申立決定に対する保全抗告事件決定PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    杉浦正樹
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2016.11.25
*キーワード:編集著作者、著作者の推定、覆滅

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■事案

著作権判例百選の編者が出版社との間で編集著作者性などを巡って争われた事案の抗告審

抗告人:出版社
相手方:研究者

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■結論

原決定取消し、仮処分決定取消し、仮処分命令申立て却下

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■争点

条文 著作権法14条

1 著作者性

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■事案の概要

『相手方は,「相手方は,編集著作物たる著作権判例百選[第4版](本件著作物)の共同著作者の一人であるところ,抗告人が発行しようとしている著作権判例百選[第5版](本件雑誌)は本件著作物を翻案したものであるから,本件著作物の著作権を侵害する。」などと主張して,本件著作物の翻案権並びに二次的著作物の利用に関する原著作物の著作者の権利を介して有する複製権,譲渡権及び貸与権,又は著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)に基づく差止請求権(本件差止請求権)を被保全権利として,抗告人による本件雑誌の複製・頒布等を差し止める旨の仮処分命令を求める申立て(本件仮処分申立て)をした。 これに対し,東京地方裁判所は,平成27年10月26日,この申立てを認める仮処分決定(本件仮処分決定)をした。これを不服とした抗告人が保全異議を申し立てたが,原決定は,平成28年4月7日,本件仮処分決定を認可した。
 本件は,この原決定を不服とした抗告人が,原決定及び本件仮処分決定の取消し並びに本件仮処分申立ての却下を求めた事案である。』(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作者性

(1)著作者性の推定

抗告審は、相手方(大学教授)の編集著作者性について、本件著作物には相手方の氏名を含む本件著作物編者らの氏名が編集著作者名として通常の方法により表示されているとして、相手方については著作者の推定(法14条)が及ぶと判断しています(24頁以下)。

(2)推定の覆滅

次に、著作者性の推定の覆滅の可否について検討されています。
著作者の意義(著作権法2条1項2号)、編集著作物の意義(12条1項)について言及した上で、

『本件のように共同編集著作物の著作者の認定が問題となる場合,例えば,素材の選択,配列は一定の編集方針に従って行われるものであるから,編集方針を決定することは,素材の選択,配列を行うことと密接不可分の関係にあって素材の選択,配列の創作性に寄与するものということができる。そうである以上,編集方針を決定した者も,当該編集著作物の著作者となり得るというべきである。
 他方,編集に関するそれ以外の行為として,編集方針や素材の選択,配列について相談を受け,意見を述べることや,他人の行った編集方針の決定,素材の選択,配列を消極的に容認することは,いずれも直接創作に携わる行為とはいい難いことから,これらの行為をしたにとどまる者は当該編集著作物の著作者とはなり得ないというべきである。』(46頁)

として、当該行為の具体的内容を踏まえながら、

『さらに,当該行為者の当該著作物作成過程における地位,権限,当該行為のされた時期,状況等に鑑みて理解,把握される当該行為の当該著作物作成過程における意味ないし位置付けをも考慮して判断されるべきである。』(47頁)

と当該行為の背景事情なども斟酌する旨説示。

そして、

『少なくとも本件著作物の編集に当たり中心的役割を果たしたB教授,その編集過程で内容面につき意見を述べるにとどまらず,作業の進め方等についても編集開始当初からE及びB教授にしばしば助言等を与えることを通じて重要な役割を果たしたというべきA教授及び抗告人担当者であるEとの間では,相手方につき,本件著作物の編集方針及び内容を決定する実質的権限を与えず,又は著しく制限することを相互に了解していた上,相手方も,抗告人から「編者」への就任を求められ,これを受諾したものの,実質的には抗告人等のそのような意図を正しく理解し,少なくとも表向きはこれに異議を唱えなかったことから,この点については,相手方と,本件著作物の編集過程に関与した主要な関係者との間に共通認識が形成されていた』

『これらの事情を総合的に考慮すると,本件著作物の編集過程において,相手方は,その「編者」の一人とされてはいたものの,実質的にはむしろアイデアの提供や助言を期待されるにとどまるいわばアドバイザーの地位に置かれ,相手方自身もこれに沿った関与を行ったにとどまるものと理解するのが,本件著作物の編集過程全体の実態に適すると思われる。』

として、相手方はアドバイザーの地位にすぎないと認定。
結論として、14条による推定にもかかわらず、相手方をもって本件著作物の著作者ということはできないと判断しています。

以上から、相手方は本件著作物の著作者ではなく、著作権及び著作者人格権を有しないとして、抗告人に対する被保全権利である本件差止請求権は認められず、相手方による本件仮処分申立ては理由を欠くものとして却下され、これを認めた本件仮処分決定及びこれを認可した原決定はいずれも取り消され、本件仮処分申立ては却下されています。

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■コメント

抗告審では一転、著作者の推定の覆滅が認められ、大学教授は著作者ではないと判断されました。
著作者の推定を認めた点は原審と同様の判断でしたが、抗告審では詳細な認定を行い、異なる結果となっています。

12月中旬には発売されて手元に百選第5版が届きました。多くの方々の思いが詰まった1冊として今まで以上に丁寧に取扱いたいと思います。

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■過去のブログ記事

2016年04月25日
原審記事

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■著作者の推定に関連する判例

「高速道路パノラマ地図」事件 東京地裁昭和39年11月26日判決
「地球儀用世界地図」事件 東京地裁昭和44年5月31日判決、東京高裁昭和46年2月2日判決
「現代世界総図」事件 東京地裁昭和54年3月30日判決
ミュージカル脚本著作権存在確認等請求事件 東京地裁平成16年3月19日判決
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/446/010446_hanrei.pdf
(以上、「著作権実務提要1」参照)
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2016年12月19日

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件(控訴審)−著作権 楽曲演奏禁止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「バシッとキメたいそう」楽曲類否事件(控訴審)

知財高裁平成28.12.8平成28(ネ)10067楽曲演奏禁止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    杉浦正樹

*裁判所サイト公表 2016.12.16
*キーワード:複製、翻案、依拠性

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■事案

コンペ作品である楽曲の類否が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :作曲家
被控訴人(1審被告):作曲家

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条

1 控訴人楽曲と被控訴人楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

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■事案の概要

『控訴人は,甲12及び乙15に収録された音源に係る楽曲(以下「原告楽曲」という。)の著作者であるところ,原審において,一審被告Y(被控訴人),一審被告A(被告A)及び一審被告株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(被告SME)が原告楽曲に依拠してこれに類似した甲13及び乙4に収録された音源に係る楽曲(以下「被告楽曲」という。)を制作したこと,一審被告テレビせとうち株式会社(被告TSC)がこれをテレビ番組内で放送したこと及び一審被告株式会社ソニー・ミュージックダイレクト(被告SMD)がこれを収録したDVD等を販売したことが,控訴人の著作権(複製権又は編曲権)及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害しているとして,被控訴人らに対し,(1)著作権法112条に基づき,別紙楽譜目録記載1(控訴人が被告楽曲の旋律を表す楽譜であると主張するもの)の楽曲の演奏,複製等及びこれを録音又は録画したCD,DVD等の複製,販売等の禁止を求めるとともに,(2)不法行為に基づく損害賠償金(被控訴人,被告A及び被告SMEに対し9000万円,被告TSCに対し7000万円,被告SMDに対し6000万円)及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求めた。
 原判決は,被告楽曲が原告楽曲を複製又は翻案したものに当たるとはいえず,控訴人の著作権及び著作者人格権が侵害されたとは認められないとして,控訴人の被控訴人らに対する請求をいずれも棄却した。
 そこで,控訴人は,原判決中,控訴人の被控訴人に対する上記(1)の請求を棄却した部分を不服として,本件控訴を提起した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 控訴人楽曲と被控訴人楽曲の同一性ないし類似性及び依拠性

控訴審も被控訴人楽曲が控訴人楽曲を複製又は翻案したものであるとは認めず、被控訴人が控訴人楽曲に係る著作権及び著作者人格権を侵害しているとはいえないとして、控訴人の被控訴人に対する請求には理由がないと判断しています(4頁以下)。

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■コメント

原審の判断を控訴審でも維持しています。

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■過去のブログ記事

2016年06月14日
原審記事


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