2016年11月19日

会員情報管理システム開発事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

会員情報管理システム開発事件

東京地裁平成28.10.21平成27(ワ)20841損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官    広瀬 孝
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2016.11.16
*キーワード:職務著作

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■事案

ソフトウェアの著作者性が争点となった事案

原告:被告元従業員
被告:コンピュータ関連機器販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法15条2項

1 システム開発に関する不当利得返還請求の可否
2 被告の安全配慮義務違反に基づく請求の可否
3 「会員情報管理システム」の著作者は原告か被告か
4 保険金に関する請求の可否
5 原告による訴え提起前の照会に対する開示拒否が不法行為に当たるか

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■事案の概要

『本件は,平成19年9月3日から平成22年5月31日までの間,被告に雇用されていた原告が,被告に対し,(1)原告が被告の従業員として開発に従事したコンピュータシステムないしプログラムである別紙プログラム目録記載2の「知らせますケン」(以下,単に「しらせますケン」という。)及び「会員情報管理システム」について,被告が納入先から得た請負代金及び保守代金を原告に分配していないことが不当利得に当たると主張して,不当利得返還請求権に基づき,(1)主位的に,被告が得た請負代金及び保守費用のうちの原告の寄与分相当額から原告が受領済みの賃金額を控除した額合計1938万6607円及びうち558万3703円に対する平成21年4月1日(被告が「知らせますケン」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から,うち1380万2904円に対する平成22年4月2日(被告が「会員情報管理システム」の報酬金の支払を受けた日の翌日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)予備的に,上記合計額から「会員働者災害補償保険の「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」第14級の9に当たる後遺障害を生じたことから,退職及び退職後2年間の休業を余儀なくされたと主張して,債務不履行に基づく損害賠償請求として休業損害,後遺障害逸失利益及び慰謝料相当額(主位的に合計6286万2435円,予備的に合計4912万0445円)並びにこれに対する催告の後の日である平成27年8月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(請求の趣旨第2項),また,(3)被告の業務として原告が制作したプログラムである「会員情報管理システム」について,その制作時,被告が安全配慮義務を怠っていたために原告に重大な労働災害(過労死)が発生する蓋然性が高い状況にあったこと等に照らすと,著作権法15条2項の適用は権利濫用ないし公序良俗違反に当たるから,職務著作とは認められないと主張して,(1)原告が著作者であり,被告が著作者ではないことの確認を求めるとともに(請求の趣旨第3項),(2)著作者人格権に基づいて別紙「技術目録」記載の文言の使用禁止を求め(請求の趣旨第4項),(4)原告が受領すべき保険金(平成21年2月20日発生の通勤時の事故に関するもの)を被告が取得していると主張して,不当利得返還請求権として被告が得た保険金のうち少なくとも8万1000円及びこれにする平成21年5月28日(被告が保険金を受領した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(請求の趣旨第5項),(5)原告の訴え提起前の照会に対し,被告が契約書等の書面の開示を拒否したことが不法行為に当たると主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として被告及び第三者らに対する照会書等の郵送費用6866円及びこれに対する不法行為の後の日である平成28年4月5日(平成28年3月22日付け請求拡張申立書送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である』(2頁以下)

<経緯>

H20.05 原告が「知らせますケン」開発に従事
H20.09 原告が「会員情報管理システム」開発に従事
H21.02 原告が交通事故で負傷
H22.05 原告退職
H22.06 原告が被告に対して未払賃金等支払を求める訴えを提起(別件訴訟)
H26.08 原告が被告に訴えの提訴予告通知書通知

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■判決内容

<争点>

1 システム開発に関する不当利得返還請求の可否

原告は、被告が取引先から受領した報酬金額に原告の寄与度を乗じた額を原告に返還しなければならないなどとして、システム開発に関する不当利得の返還を主張しました。
この点について、裁判所は、原告は雇用契約(民法623条)に基づいて労働に従事することによって雇用契約の相手方である被告に対する報酬請求権を取得し、被告は原告から労務提供を受けることと引き換えに原告に対する報酬支払債務を負うのであって、労務の提供が雇用契約に基づくものである以上、原告が被告に労務を提供したとしても原告には損失がなく、被告には利得がないとして、原告の主張を認めていません(22頁以下)。

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2 被告の安全配慮義務違反に基づく請求の可否

(略)

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3 「会員情報管理システム」の著作者は原告か被告か

「会員情報管理システム」の著作者について、裁判所は、法人である被告の従業員である原告が被告の発意に基づいてプログラムである「会員情報管理システム」を創作したことについては当事者間に争いがないこと、また、「会員情報管理システム」の著作者に関して、作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがあることはうかがえないと認定。
結論として、「会員情報管理システム」は、著作権法15条2項所定の職務著作に該当し、上記プログラムの著作者は被告であると判断しています。

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4 保険金に関する請求の可否

(略)

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5 原告による訴え提起前の照会に対する開示拒否が不法行為に当たるか

(略)

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■コメント

本人訴訟ということもあって、原告側の主張が整理されていない印象です。
written by ootsukahoumu at 08:17|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年11月17日

EM菌新聞記事事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

EM菌新聞記事事件(控訴審)

知財高裁平成28.11.10平成28(ネ)10050損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 設楽隆一
裁判官    中島基至
裁判官    岡田慎吾

*裁判所サイト公表 2016.11.14
*キーワード:著作物性、複製、翻案

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■事案

有用微生物群(EM)に関する新聞記事が研究者の著作権等を侵害するかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :大学名誉教授
被控訴人(1審被告):新聞社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、20条、115条、民法709条

1 本件被控訴人記載1及び2が控訴人の複製権又は同一性保持権を侵害するか
2 控訴人を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,新聞社である被控訴人に対し,被控訴人が発行する新聞の記事に控訴人の執筆したブログの一部を引用したことが控訴人の複製権(著作権法21条)及び同一性保持権(同法20条)の侵害に当たるとともに,控訴人を取材せずに記事を掲載した行為が不法行為に当たると主張して,(1)民法709条に基づき,慰謝料等の損害賠償金合計352万円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成24年7月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(2)著作権法115条及び人格権に基づき名誉回復措置として謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。
 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件被控訴人記載1及び2が控訴人の複製権又は同一性保持権を侵害するか

控訴審は、著作物性や複製、翻案の意義について言及した上で、本件控訴人記載の著作権侵害の成否を判断。結論として、本件被控訴人記載1及び2は、著作物の複製に当たらず複製権を侵害するものとはならない。また、被控訴人による複製権侵害を前提とする同一性保持権の侵害も認められず、控訴人の著作者人格権を侵害することにもならないと判断しています(4頁以下)。

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2 控訴人を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為が不法行為に当たるか

控訴人を取材せずに本件記事1及び2を掲載した行為は、被控訴人が作成し公表している「朝日新聞記者行動基準」が規定する取材方法に抵触するものとして、被控訴人社内における自律的処理の対象として検討されるのは格別、その態様、記事の内容及び趣旨、控訴人の学者としての社会的地位、本件記事1及び2の掲載により負うこととなった控訴人の負担等を総合考慮すると、本件記事1及び2の掲載行為により控訴人の被った精神的苦痛が社会通念上受忍すべき限度を超えるとまではいい難く、これを不法行為法上違法なものであるということはできないと控訴審は判断しています(6頁以下)。

結論として、控訴人(1審原告)の主張はいずれも認められていません。

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■コメント

原審の棄却の判断が維持されています。

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■過去のブログ記事

2016年05月11日
原審記事
written by ootsukahoumu at 06:39|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年11月11日

音楽CD製造販売業務委託契約事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

音楽CD製造販売業務委託契約事件(控訴審)

知財高裁平成28.11.2平成28(ネ)10029損害賠償等請求控訴事件、同付帯控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    古河謙一
裁判官    鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2016.11.04
*キーワード:業務委託、CD販売、配信、条理、注意義務

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■事案

音楽CD製造販売業務委託契約について債務不履行があったかどうかなどが争点となった事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人(1審被告):衛星放送事業者
被控訴人兼附帯控訴人(1審原告):音楽制作会社

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■結論

控訴棄却、附帯控訴原判決変更

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■争点

条文 著作権法114条2項、114条の5

1 著作隣接権侵害の不法行為の成否
2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否
3 損害額
4 被控訴人の申立て

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■事案の概要

『本件は,被控訴人が,控訴人に対し,(1)本件原盤から複製された本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信により,被控訴人が有する本件原盤についてのレコード製作者の著作隣接権(複製権,貸与権,譲渡権及び送信可能化権)及び本件楽曲についての実演家の著作隣接権(送信可能化権)を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金722万3480円(著作権法114条2項)の支払,(2)本件CDを廃盤にして,被控訴人の本件原盤,ジャケットを含む本件CD及びポスター等の所有権を侵害したことを理由とする,民法709条に基づく損害賠償金839万1174円の支払,(3)民法709条に基づく上記(1)及び(2)に関する弁護士相談料に係る損害賠償金113万3232円の合計1674万7886円及びこれに対する平成23年4月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,前記(1)(1)につき,控訴人が,被控訴人のレコード製作者の著作隣接権を侵害したとして,控訴人に対し,7077円及びうち2000円に対する平成23年4月5日から,うち5077円に対する平成25年3月31日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で損害賠償金の支払を認め,その余の請求をいずれも棄却した。』
『控訴人は,原判決を不服として,控訴を提起した。
被控訴人は,附帯控訴を提起し,原審における1674万7886円及びこれに対する遅延損害金の請求中,前記(1)(1)著作隣接権侵害に係る損害を原審における722万3480円から778万1706円とし,上記請求を,1730万6112円及び遅延損害金の請求に拡張した。』(2頁以下)

『被控訴人代表者及び原審被告タッズらは,いずれも控訴せず,また,被控訴人も,原審被告タッズら及び同Bに対する請求に関しては控訴しなかった。したがって,被控訴人代表者の請求並びに被控訴人の原審被告タッズら及び同Bに対する請求は移審せず,それぞれの控訴期間の満了をもって,確定した。』

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■判決内容

<争点>

1 著作隣接権侵害の不法行為の成否

控訴人は、本件CDのレンタル事業者への販売及び本件楽曲の配信に当たって被控訴人の許諾の有無を確認すべき条理上の注意義務を負うものであるなどとして、結論として、原審同様、控訴人の不法行為責任を肯定しています(13頁以下)。

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2 本件原盤等に対する所有権侵害の不法行為の成否

原審同様、本件廃盤処置により被控訴人の所有権が侵害されて被控訴人主張の損害が発生したとは認められていません(19頁以下)。

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3 損害額

(1)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る複製権及び譲渡権の侵害

4952円(619円×8枚 著作権法114条2項)

(2)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る貸与権の侵害による損害

2000円(250円×8枚 著作権法114条2項)

(3)被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害

配信関係の損害について、控訴審は、控訴人が本件楽曲に係る配信実績及び売上金について十分な調査をして資料を提出しているか、疑問を提示。また、控訴人自身がいまだ把握しきれていない本件楽曲の配信実績が存在する可能性も否定できない旨指摘した上で、被控訴人のレコード製作者としての本件原盤に係る送信可能化権及び実演家としての本件実演に係る送信可能化権の侵害による損害額を立証するために必要な事実を立証することは、当該事実の性質上極めて困難なものといわざるを得ないと判断。
口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて事実審の口頭弁論終結日である平成28年9月28日までの本件楽曲の無断配信の回数は400回と認定。また、配信1回当たり控訴人が受領した金額の平均はおおむね146円と認定しています(著作権法114条の5)。

5万8400円(146円×400回)

被控訴人の損害額は、5万8400円(146円×400回)から支払済みの1万9329円を控除した3万9071円と認定しています。

結論として、合計4万6023円が損害額として認定されています(22頁以下)。

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4 被控訴人の申立て

被控訴人の調査嘱託や文書提出命令の申立てについて、必要性がないなどとしていずれも認められていません(32頁以下)。

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■コメント

原審の判断が基本的に維持されています。損害額については、配信部分について増額の認定になっています。

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■過去のブログ記事

原審記事(2016年06月16日)

written by ootsukahoumu at 07:19|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年11月02日

「知と文明のフォーラム」遺言書事件−著作権 不当利得返還等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「知と文明のフォーラム」遺言書事件

東京地裁平成28.10.25平成27(ワ)31705不当利得返還等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    林 雅子
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.10.27
*キーワード:自筆証書遺言、遺贈、死因贈与契約

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■事案

遺言書などにより著作物の著作権が譲渡されていたかどうかが争点となった事案

原告:フォーラム団体
被告:亡Bの法定相続人

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 民法968条

1 本件文書が自筆証書である遺言書に当たるか
2 亡Bとフォーラムの間で死因贈与契約が締結されたか

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■事案の概要

『本件は,原告が,本件各著作物の著作権を含むB(以下「亡B」という。)の財産につき,これを法定相続により取得したとする被告(亡Bの夫)に対し,主位的に自筆証書(後述の本件文書)による遺言に基づいて遺贈を受けたこと,予備的に死因贈与を受けたことを主張して,不当利得(主位的)又は死因贈与契約(予備的)に基づく3000万円(内金請求)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年12月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払と,本件各著作物に係る著作権を有することの確認を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H18 「知と文明のフォーラム」発足
H18 亡Bが本件文書を作成
H21 亡Bが死亡
H23 原告団体法人設立
H27 被告が原告代表理事を退任

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■判決内容

<争点>

1 本件文書が自筆証書である遺言書に当たるか

亡Bが作成した本件文書について、原告は、本件文書は亡Bの全財産をフォーラムに遺贈する旨を内容としているもので、その全文、日付及び氏名が遺言者である亡Bの自書によるものであり、押印もされていることから遺言書である旨主張しました。
これに対して、亡Bの夫で唯一の法定相続人である被告は、本件文書は単なる下書き、草案程度のものであって、遺言書ではない旨反論しました(6頁以下)。

この点について、裁判所は、

・本件文書の本文は黒インクのペンと鉛筆によって書かれており、複数の加除訂正等の変更箇所があるがこれらの箇所に亡Bの署名押印はない
・平成18年1月30日から4月5日の間に弁護士に遺言書の作成について相談している
・平成24年8月頃、亡Bの著作物を整理していたフォーラムの関係者により他の書類に雑然と紛れ封筒に入っていない状態で発見

といった諸事情を勘案した上で、

・多数の加除訂正等がペン又は鉛筆によって遺言書に求められる方式(民法968条2項)によることなく施されている。このうちペンを用いて記載された部分をみても、亡Bは変更を加えながら文章を作成していると認められ、作成の時点で記載内容が確定していなかった。また、鉛筆によって数行にわたり抹消された部分もある。
・本件文書は亡Bの書斎に置いてあった書類に紛れた状態にあったというが、遺言書という重要な書類の保管方法としては不自然なものである。
・本件文書の作成直後から複数の弁護士に相談をして遺言書の作成について助言を受けており、このような本件文書作成後の事情もこれが遺言書の下書きないし草案であることを裏付けている。

と判断。本件文書は遺言書として完成したものあるとは認められず、自筆証書遺言としての効力を有しないと判断しています。

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2 亡Bとフォーラムの間で死因贈与契約が締結されたか

原告は、フォーラムは亡B及び被告の遺産の受け皿にするために設立されたものであり、亡Bは平成18年1月頃のフォーラム発足当初から自身の遺産をフォーラムに譲り渡す旨何度も発言しており、フォーラムの構成員もそのことを承知していた。本件文書は、フォーラムの了解の下に作成された死因贈与契約を証する書面である旨主張しました(9頁以下)。

この点について、裁判所は、

・本件文書は遺言書の下書きにとどまるものであるから、これにより亡Bが死因贈与の意思を有していたと認めることはできない。
・将来的に遺産を贈与したいという意向を有していたといい得るとしても、フォーラムに死因贈与する旨の確定的な意思表示があったとは認められない。
・亡Bが多額の金融資産と不動産及び本件各著作物の著作権を有しており、原告がその全てを死因贈与により取得したというのであれば、原告は設立後速やかに被告が法人設立時に拠出した2000万円を超える部分の交付など贈与の履行を求めるものと解されるが、本件の証拠上そのような事情はうかがわれない。

といったことから、亡Bとフォーラムの間に死因贈与契約が締結されたとは認められないと判断しています。

結論として、原告の請求は認められていません。

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■コメント

2009年11月25日に亡くなった青木やよひ氏の著作物の著作権の帰属を巡る争いです。生前に作成した文書が要式行為である自筆証書遺言(単独行為である遺贈)にあたらず、また、当事者の合意による死因贈与契約の成立も否定されており、氏及び被告を顕彰する目的を有するフォーラム団体への著作権の帰属は認められていません。
青木やよひ氏の著作としては、女性学やベートーベン研究に関するものなどがあります。
なお、被告となった夫は北沢方邦氏で音楽論、構造主義人類学などの研究者です。

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■参考サイト

一般財団法人 知と文明のフォーラム

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2016年11月01日

BSS−PACKソフト営業秘密事件−著作権 不正競争行為差止請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

BSS−PACKソフト営業秘密事件

東京地裁平成28.10.25平成28(ワ)360等不正競争行為差止請求事件、同承継参加申出事件、プログラム著作権確認請求事件PDF
別紙1(BSS−PACK 中核部(ミドルソフト)営業秘密部プログラム目録)
別紙2(プログラム目録)

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.10.27
*キーワード:プログラム、著作権譲渡契約、営業秘密

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■事案

ソフトウェアの著作権譲渡に伴って営業秘密も移転していたかどうかが争点となった事案

第1事件原告兼第2事件原告:ソフトウェア開発販売会社、代表者
第1事件被告兼第2事件被告:コンピュータ報処理サービス会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法61条2項、不正競争防止法2条1項4号、5号、10号

1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等

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■事案の概要

『第1事件は,原告ソフトウェア部品社が,被告に対し,本件営業秘密部プログラムが第1事件原告の営業秘密に当たるところ,被告がこれを取得して使用し,被告製品を製造して販売したことが不正競争(不正競争防止法2条1項4号又は5号,10号)に当たると主張して,同法3条1項及び2項に基づき被告製品の販売差止め及び廃棄等を求めるとともに,第1事件承継参加人らが,被告に対し,原告ソフトウェア部品社と本件営業秘密部プログラムを共有するに至ったと主張して承継参加を申し出て,上記請求と同趣旨の請求をする事案である。
 第2事件は,原告らが,被告に対し,本件先行ソフトウェア部品プログラムについて,(1)これを創作したことによる著作権,(2)「オリジナルソフトウェア部品」という名称のプログラム(以下「本件オリジナルソフトウェア部品プログラム」という。)を原著作物とする二次的著作物である本件先行ソフトウェア部品プログラムについての原著作者の著作権(以下,上記(1)の著作権と併せて「本件各著作権」という。)を有することの確認を求める事案である』
(3頁)

<経緯>

H02 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK(VAX/VMS版)」開発販売
H09 原告ビーエスエス社が「BSS−PACK」開発販売
H15 被告が被告製品販売
H18 原告ビーエスエス社とサンライズ社が事業継続支援合意、著作権譲渡
H19 サンライズ社から株式会社フロンテックへ著作権譲渡
H21 株式会社フロンテックから被告へ著作権譲渡

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■判決内容

<争点>

1 本件営業秘密部プログラムは原告らの営業秘密であるか等

原告らは、本件営業秘密部プログラムが原告らの営業秘密であり、また、本件各著作権が原告らに帰属する旨主張しました。これに対して被告はこれらに係る権利は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されたことから、第1事件及び第2事件の原告らの請求はいずれも認められない旨主張しました。

この点について、裁判所は、本件合意及びこれに引き続いて締結された本件譲渡契約に関して、

・実質的に原告ビーエスエス社のBSS−PACKに関する事業を従業員ごと他の会社に移転させて、その事業をサンライズ社の支援の下で継続させることを念頭に置いたものである。
・本件譲渡契約の契約書上、譲渡対象については包括的な記載となっており、本件営業秘密部プログラム及び本件先行ソフトウェア部品プログラムを含め明示的に譲渡対象から除かれたプログラムはない。
・原告ビーエスエス社はサンライズ社に対し著作者人格権を行使しないとされた。
・本件登録プログラムについては著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて譲渡された。

といった点から、本件譲渡契約により譲渡されたのは旧BSS−PACKないしBSS−PACKに関するプログラム著作物の全てについての著作権その他の知的財産権であったと解するのが相当であり、本件営業秘密部プログラムについて、原告ビーエスエス社が有していたという営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムに係る著作権も譲渡対象であったと判断。
以上から、(1)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権を原告ビーエスエス社が有していたとしても、(2)本件営業秘密部プログラムについての営業秘密や本件先行ソフトウェア部品プログラムについての本件各著作権は本件譲渡契約によりサンライズ社に譲渡されており、原告らが現時点においてこれを有するということはできず、結論として、原告らの第1事件及び第2事件の請求はいずれも理由がないと判断されています。

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■コメント

対象となったソフトは、販売管理、購買管理、生産管理、財務管理、人事管理などからなる業務領域を網羅する企業基幹業務サポートのための統合業務ERP(Enterprise Resource Planning)情報システムパッケージ製品です。
本件については紛争となるような事案だったのか疑問が残りますが、エスクロウサービスなどにも触れられていて、ソフト開発・販売を巡る融資や金回りの現場の一端に触れる事案としては参考になるかもしれません。

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■参考サイト

株式会社サンライズ・テクノロジー(平成18年4月3日)
『BSS-PACK』ERPビジネスの組織設置のお知らせ

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■「BSS-PACK」関連訴訟

ソフトウェア提供パートナー契約事件
原審記事
控訴審記事

統合業務管理ERPソフト事件
控訴審記事

証書真否確認事件
知財高裁平成27.6.24平成27(ネ)10035証書真否確認請求控訴事件
判決PDF


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2016年10月31日

「エジソンのお箸」幼児用箸事件(控訴審)−著作権 著作権侵害行為差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「エジソンのお箸」幼児用箸事件(控訴審)

知財高裁平成28.10.13平成28(ネ)10059著作権侵害行為差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2016.10.24
*キーワード:著作物性、工業デザイン、応用美術論

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■事案

幼児用箸のデザインの著作物性などが争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :ベビー用品輸入製造販売会社
被控訴人(1審被告):プラスチック製品企画製造販売会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、10条1項4号、6号

1 1審原告各製品に係る著作権侵害(複製権又は翻案権)の成否
2 1審原告図画に係る著作権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,幼児用箸を製造販売する控訴人(1審原告)が,同種製品を製造販売する被控訴人(1審被告)に対し,被控訴人による別紙被控訴人商品目録記載1ないし20の各幼児用箸(被告各商品)の製造販売は,控訴人が有する原判決別紙原告著作物目録1記載の図画(原告図画)及び同別紙原告著作物目録2記載1ないし19の各幼児用箸(原告各製品)に係る各著作権(複製権及び翻案権。ただし,原告各製品のうちキャラクターの図柄及び立体像に関する部分を除く。)を侵害すると主張して,(1)著作権法112条1項・2項に基づき,被告各商品の製造販売の差止め及び廃棄を求めるとともに,(2)平成25年1月から平成27年9月28日(本件訴え提起日)までの間における前記各著作権の侵害を内容とする不法行為に基づく損害賠償請求として,2400万円のうち100万円及びこれに対する不法行為の後の日である同年11月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原判決は,原告図画及び原告各製品のいずれについても著作権(複製権及び翻案権)侵害を認めず,控訴人の請求をいずれも棄却したため,これを不服として控訴人が本件控訴をした。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 1審原告各製品に係る著作権侵害(複製権又は翻案権)の成否
2 1審原告図画に係る著作権侵害の成否

原審の判断を維持して棄却の判断をしています(2頁以下)。

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■コメント

幼児用の練習箸のデザインについて、著作権法では保護されないことが原審同様、控訴審でも確認されています。

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■過去のブログ記事

原審記事

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2016年10月27日

ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ライブバー「X.Y.Z.→A」音楽使用料事件(控訴審)

知財高裁平成28.10.19平成28(ネ)10041著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
別紙(1)(別紙1から3)
別紙(2)(別紙4 使用料相当損害金一覧)

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    古河謙一
裁判官    鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2016.10.20
*キーワード:音楽著作権、使用料、契約、カラオケ法理、損害論

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■事案

ジャスラックの契約形態等に対する不信を理由に使用料金額等を争った事案の控訴審

控訴人兼被控訴人(1審原告):音楽著作権管理団体
被控訴人兼控訴人(1審被告):ライブハウス経営者、ロックバンドドラマー

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 著作権法22条、民法1条3項

1 1審被告らの演奏主体性
2 オリジナル曲の演奏による著作権侵害の成否
3 1審被告らの故意又は過失の有無
4 1審原告による許諾の有無
5 権利濫用等の抗弁の成否
6 差止請求の適法性及び差止めの必要性
7 将来請求の可否
8 損害ないし損失発生の有無及びその額

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■事案の概要

『本件は,著作権等管理事業者である1審原告が,1審被告らに対し,原判決別紙1店舗目録記載の店舗(本件店舗。なお,同目録(1)の店舗は本件店舗6階部分であり,同目録(2)の店舗は本件店舗5階部分である。)を1審被告らが共同経営しているところ,1審被告らが1審原告との間で利用許諾契約を締結しないまま同店内でライブを開催し,1審原告が管理する著作物を演奏(歌唱を含む。)させていることが,1審原告の有する著作権(演奏権)侵害に当たると主張して,(1)上記著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを求め,(2)主位的に著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的に悪意の受益者に対する不当利得返還請求として,連帯して,1)平成21年5月23日(本件店舗の開設日)から平成27年10月31日までの使用料相当額560万2787円,2)弁護士費用56万0277円及び3)上記使用料相当額について平成27年10月31日までに生じた確定遅延損害金又は利息金87万2455円の合計703万5519円及びうち616万3064円(上記1)と2)の合計額)に対する同年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息金の支払を求めるとともに,4)平成27年11月1日から上記著作物の使用終了に至るまで,連帯して,使用料相当額月6万3504円の支払を求めた事案である。
 原判決は,1審被告らが1審原告の管理する著作物の演奏主体に当たると判断して,(1)上記著作物の演奏・歌唱による使用の差止めを認め,(2)著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求又は悪意の受益者に対する不当利得返還請求について,1審被告らに対し,連帯して,1)平成21年5月23日から平成27年10月31日までの使用料相当損害金又は不当利得金203万0513円,2)弁護士費用40万円,3)上記1)の使用料相当額について平成27年10月31日までに生じた確定遅延損害金又は利息金30万6858円,4)上記1)と2)の合計額243万0513円に対する同年11月1日以降の遅延損害金又は利息金,5)同日から平成28年2月10日(原審口頭弁論終結日)までの使用料相当損害金又は不当利得金9万3899円の支払を求める限度で認容し,平成28年2月10日までのその余の請求を棄却するとともに,(3)同月11日以降の使用料相当損害金等請求は,将来請求の訴えの要件を欠くとして,却下した。
 そこで,1審原告及び1審被告らが,それぞれ敗訴部分を不服として控訴したものである。なお,1審原告は,当審における金員支払請求において弁護士費用相当額の請求を拡張し,1審被告らに対し,連帯して,1)平成21年5月23日(本件店舗の開設日)から平成28年3月31日までの使用料相当額592万0307円及び本判決別紙1の元本欄記載の各金員に対する起算日欄記載の各日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金又は利息の,2)弁護士費用59万2029円及びこれに対する平成28年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,3)平成28年4月1日から上記著作物の使用終了に至るまで,連帯して,使用料相当額月6万3504円の支払を求めるものである。』

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■判決内容

<争点>

1 1審被告らの演奏主体性

控訴審においても原審同様、クラブキャッツアイ事件、ロクラク2事件の最高裁判決を踏まえ、結論として1審被告らが本件店舗における1審原告管理著作物の演奏主体(著作権侵害主体)であると認められています(14頁以下)。

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2 オリジナル曲の演奏による著作権侵害の成否

著作権信託契約上、演奏者が1審原告に著作権管理を信託した楽曲を、演奏者が演奏する場合であっても1審原告の許諾を得ない楽曲の演奏が1審原告の著作権侵害に当たることは明らかであり、1審原告には使用料相当額の損害の発生が認められるとして、著作権侵害の不法行為が成立すると判断しています(19頁以下)。

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3 1審被告らの故意又は過失の有無

1審被告らは、本件店舗を開いた後は1審原告に著作権料を支払わなければならないことを認識しており、著作権侵害主体であることの認識があったことは明らかであって、1審被告らには著作権侵害の故意又は過失があったというほかないと判断しています(20頁以下)。

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4 1審原告による許諾の有無

本件調停の過程においても1審原告と1審被告ら又は1審被告Y1との間で、1審原告管理著作物の利用に関して利用条件等の契約の重要部分について意思が合致したとはいえないなどとして、結論としては、一審原告の許諾があったとは認められていません(21頁以下)。

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5 権利濫用等の抗弁の成否

1審原告が1審被告らに対し包括的契約の締結を強要した事実を認めるに足りないなどとして、結論としては権利濫用や信義則違反の抗弁を認めていません(23頁以下)。

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6 差止請求の適法性及び差止めの必要性

1審原告の1審被告らに対する差止請求には理由があると判断されています(25頁以下)。

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7 将来請求の可否

口頭弁論終結日以降の損害賠償請求権の成否及びその額を一義的に明確に認定することは、本件では困難であるなどとして、本件の損害賠償請求権は将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格を有さず、一審被告らに対する金員支払請求のうち、口頭弁論終結日の翌日である平成28年9月13日以降に生ずべき損害賠償金の支払を求める部分は不適法である、と判断しています(28頁以下)。

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8 損害ないし損失発生の有無及びその額

(1)演奏回数

1ライブ当たりの1審原告管理著作物の演奏曲数は、本件店舗の5階部分と6階部分の双方を利用している場合の5階部分については12曲、主たる演奏会場(上記場合の6階部分又はいずれか一方のみを利用している場合)については13曲と判断されています(29頁以下)。

(2)使用料

1曲当たりの使用料は140円(税抜)と認定されています。

・使用料相当損害金又は不当利得金:496万5101円
・弁護士費用:50万円
合計 546万5101円

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■コメント

ジャスラック対ファンキー末吉氏(ライブバー)の事案の控訴審です。
損害論について、原審では被告側の主張を取り入れていましたが、控訴審ではJASRAC側の資料を重視して増額の認定となっています。

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■過去のブログ記事

原審記事 

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■参考サイト

JASRACプレスリリース 2016年10月20日
「ライブハウスの経営者らに対する訴訟の知財高裁判決について」
プレスリリース

written by ootsukahoumu at 06:48|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年10月24日

「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件(控訴審)−著作権 印税等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件(控訴審)

知財高裁平成28.10.19平成28(ネ)10049印税等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    柵木澄子
裁判官    片瀬 亮

*裁判所サイト公表 2016.10.20
*キーワード:出版契約、印税支払時期

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■事案

ビジネス辞典の編著者が印税未払いを理由として出版社を訴えた事案の控訴審

控訴人(一審原告) :個人
被控訴人(一審被告):出版社

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 民法415条、民法709条

1 印税額及び支払時期
2 不法行為の成否及び損害額

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■事案の概要

『本件は,被控訴人から出版された本件書籍の編著者である控訴人が,被控訴人との間の本件契約に基づく印税が未払であるなどと主張し,被控訴人に対し,(1)本件契約に基づく印税の一部140万円及びこれに対する支払日である平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)不法行為に基づく損害賠償金1080万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めるとともに,(3)本件契約17条に係る文言についての控訴人の解釈が正しいことを認めるよう求め,また(4)本件契約18条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について,本件契約が定める保存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める事案である。
 原審は,控訴人の請求のうち,上記(3)及び(4)に係る訴えを却下し,その余をいずれも棄却した。
 そこで,控訴人が,原判決中の控訴人の請求を棄却した部分のうち,(1)本件契約に基づく印税の一部140万円及びこれに対する平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,(2)不法行為に基づく損害賠償金500万円及びこれに対する平成27年9月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において,控訴した(原判決が控訴人の請求に係る訴えを却下した部分(主文第1項)は不服の対象とされていない。)。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 印税額及び支払時期

(1)平成28年4月4日(発行日から2年後)以前に発生した印税額

控訴人(一審原告)は、本件書籍が増刷されたと主張しましたが、控訴審は認めていません(6頁以下)。
また、本件書籍の初刷部数は1000冊で、平成28年4月4日時点における本件書籍の在庫数は604冊であり、本件書籍の発行日から平成28年4月4日以前の本件書籍の市場への出荷数は396冊。
本体価格7000円に出荷数を乗じたものの20%に相当する金額が印税となることから、印税額は55万4400円であると控訴審は認定しています。

(2)平成28年4月5日以降に発生した印税額

平成28年4月5日以降の本件書籍の市場への出荷数は、同年7月22日までに出荷された10冊にとどまり、その印税額は1万4000円であると認定されています。

(3)支払時期について

平成28年4月4日(発行日から2年後)以前に発生した印税の支払時期は、本件契約17条2.1の規定により、同年5月16日であると認定。
平成28年4月5日以降に発生した印税の支払時期に関しては契約上明示されていないものの、同日以降同年7月22日までの印税1万4000円の支払時期は、同日から相当期間経過後であると認定。

結論としては、それぞれの印税について、被控訴人は支払義務を負うものの、受領拒絶があり履行遅滞の責任については負わないと判断されています。

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2 不法行為の成否及び損害額

被控訴人が本件書籍の店頭実売部数を過少報告し、正確な印税額の開示について必要な協力をしなかったとの事実を認めるに足りる証拠はないと控訴審は判断。控訴人の不法行為に関する主張を認めていません(10頁)。

結論として、本件契約に基づく印税56万8400円の支払を求める限度において控訴人の主張が認められています。

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■コメント

原審では、履行期到来済みの債権の存在は認められないと判断されて原告の印税支払い請求が認められていませんでしたが、控訴審では時間の経過があり(一審の口頭弁論終結日は平成28年2月25日。控訴審は平成28年9月21日)、履行期到来が認定されています。
増刷部分の原告の主張は原審、控訴審ともに認められておらず、実質的には原告敗訴の内容です。

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■過去のブログ記事

原審記事
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2016年10月20日

サプリ会員登録サイトHTML制作事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

サプリ会員登録サイトHTML制作事件

東京地裁平成28.9.29平成27(ワ)5619損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    村井美喜子

*裁判所サイト公表 2016.10.18
*キーワード:サイト制作、HTML、創作性

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■事案

連鎖販売取引に関する通販管理システムのサイトのHTML部分の創作性が争点となった事案

原告:ソフト開発会社
被告:サプリ製造販売会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件プログラムの著作物性及び著作者

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■事案の概要

『本件は,原告が,通販管理システムの作成を被告から委託されて,同システムを機能させるためのコンピュータプログラムを作成し,被告に利用させていたところ,被告が利用契約の終了後も,上記プログラムを違法に複製し上記システムの利用を継続している旨主張して,被告に対し,上記プログラムの著作権(複製権)侵害に基づき,損害賠償金1896万4000円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成27年4月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H20.05 原被告間で通販管理システム利用覚書締結
H20.10 被告が原告作成の本件プログラムを利用
H21.10 覚書更新
H23.01 被告がライオンハートにサイト制作発注
H23.02 原告従業員Aと被告従業員D、ラインハート担当者Bが連絡
H25.07 被告が原告に契約不更新通知
H25.10 原被告間の契約終了

本件商品:ナチュラルメディスンギンコ

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■判決内容

<争点>

1 本件プログラムの著作物性及び著作者

原告は、通販管理システム(本件プログラム)のうち本件HTMLの著作権侵害について、被告から本件HTMLの制作を委託されて原告従業員Aが創作性を発揮して本件HTMLを制作したと主張しました。
これに対して被告は、そもそも原告に対して本件HTMLの制作を委託してはおらず、被告ないし被告が発注したシステム制作会社のライオンハートが本件HTMLを制作したものであると反論しました(12頁以下)。

本件HTML制作に際しての原告の役割について、裁判所は、被告の新規会員登録に関するホームページにおける記載内容は、被告の事業運営の一環として当然に被告が自ら決定したものと認められ、そこにおける文字の大きさ、配列や図柄などについても、被告従業員DがAに対して、本件画面に記載すべき文章の内容や文字の大きさ、配列等について細かく指示していたこと、ライオンハートが原告に対してデザインのデータ等をメールで送信していたと認定。
本件HTML制作に際しての原告(従業員A)の役割は、基本的に、被告に指示されたとおりの内容・形式で、かつライオンハートから送信されたデザイン等を用いて、本件HTMLを制作することであったと判断。
そして、原告従業員Aの具体的な作業を踏まえ、本件において、原告従業員Aが、本件HTML制作に一定程度関与した事実は認められるものの、基本的には、被告に指示されたとおりの内容・形式の文章を挿入し、かつライオンハートから送信されたデザイン等を利用した上で、ほぼ一義的に定まるタグを用いてHTMLを作成したにすぎないと認められ、それ以上に、Aがどのように創作性を発揮したかについては具体的主張もなく、そのような事実を認めるに足りる証拠もないと判断。
結論として、本件HTMLについて、原告従業員Aが創作的表現を作成したことを認めるに足りず、原告が本件HTMLの著作者であるとはいえないとしています(また、本件プログラムについても、原告従業員が創作的表現を作成したことを認めるに足りる証拠はないとしています)。

以上から、原告の請求は認められていません。

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■コメント

サイトシステム構築について複数の業者が制作に関与していることから、業者1社との契約が終了した場合に、それ以降のサイトシステムの利用や権利関係が不明確になった事案となります。
オンライン会員登録部分について、発注側が提出した内容・形式の文章、デザインで指示通りHTMLを記述しても、よほどのことがない限り新たな創作性はHTML制作者側に生じないという点が確認されています。

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2016年10月13日

Twitterアイコン画像事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

Twitterアイコン画像事件

東京地裁平成28.9.15平成27(ワ)17928発信者情報開示請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    藤原典子

*裁判所サイト公表 2016.10.11
*キーワード:写真、発信者情報開示、複製、公衆送信

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■事案

Twitterのアイコン画像に無断で写真が使用されたとして発信者情報開示請求がされた事案

原告:写真家
被告:Twitter日本法人、米国法人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 被告ツイッタージャパンの発信者情報保有の有無
2 本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性
3 最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性
4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,インターネット上の短文投稿サイト「ツイッター」において,原告の著作物である別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)が,(1)氏名不詳者により無断でアカウントのプロフィール画像として用いられ,その後当該アカウントのタイムライン及びツイート(投稿)にも表示されたこと,(2)氏名不詳者により無断で画像付きツイートの一部として用いられ,当該氏名不詳者のアカウントのタイムラインにも表示されたこと,(3)氏名不詳者らにより無断で上記(2)のツイートのリツイート(その意味は後述する。)がされ,当該氏名不詳者らのアカウントのタイムラインに表示されたことにより,原告の著作権(複製権,公衆送信権等)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権等)が侵害されたと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記(1)〜(3)のそれぞれについて,主位的に,各氏名不詳者が当該アカウントにログインした際の発信者情報であってそのうちIPアドレス等については本判決確定の日の正午時点で最も新しいもの(別紙発信者情報目録(第1)),予備的に,上記各ツイート等がされた際の発信者情報(同目録(第2))の開示を求めた事案である。』(2頁)

<経緯>

H21.06 原告がウェブサイトに本件写真を掲載
     氏名不詳者らがツイッターにプロフィール画像等に使用

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■判決内容

<争点>

1 被告ツイッタージャパンの発信者情報保有の有無

原告は、被告米国ツイッター社に加え、被告ツイッタージャパンに対しても発信者情報の開示を求めました(13頁以下)。
これに対して被告ツイッタージャパンは、ツイッターの管理・運営に全く関与しておらずプロバイダ責任制限法4条1項にいう開示関係役務提供者に当たらないし、原告が開示を求める情報を保有していないと反論しました。
裁判所は、ツイッタージャパンはツイッターを運営する者ではなく、ツイッターの利用についてユーザーと契約を締結する当事者でもないとして、本件の関係各証拠上、同被告がユーザーの特定に関する情報を保有していることや、発信者情報を開示する権限を有していることはうかがわれないと判断。結論として、原告の被告ツイッタージャパンに対する請求はいずれも理由がないとしています。

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2 本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性

本件写真の画像がリツイートした本件アカウント3〜5のタイムラインに表示されるのは、本件リツイート行為により同タイムラインのURLにリンク先である流通情報(ツイッターのツイート画像ファイル保存URLに本件写真の画像ファイルに自動的に保存・表示されている)のURLへのインラインリンクが自動的に設定され、同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接画像ファイルのデータが送信されるためであり、流通情報の各URLに流通情報のデータは一切送信されず同URLからユーザーの端末への同データの送信も行われないと裁判所は評価。
本件リツイート行為は、それ自体として上記データを送信し、又はこれを送信可能化するものでなく、公衆送信(著作権法2条1項7号の2、9号の4及び9号の5、23条1項)に当たることはないと判断しています。
結論として、本件リツイート行為による著作権等の侵害の明白性(プロバイダ責任制限法4条1項1号)を否定しています(14頁以下)。

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3 最新のログイン時IPアドレス等の発信者情報該当性

本件アカウント1における本件プロフィール画像設定行為及び本件アカウント2における本件ツイート行為2は、いずれも原告の公衆送信権の侵害に当たると裁判所は判断しています(16頁以下)。

■別紙 発信者情報目録(第1)

1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス
4 使用アカウントにログインした際のIPアドレスのうち、本判決確定の日の正午時点(日本標準時)で最も新しいもの
5 使用アカウントにログインした際の携帯電話端末又はPHS端末からのインターネット接続サービス利用者識別符号のうち、本判決確定の日の正午時点(日本標準時)で最も新しいもの
6 使用アカウントにログインした際のSIMカード識別番号のうち、本判決確定の日の正午時点(日本標準時)で最も新しいもの
7 上記第4項のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備

原告は、本件アカウント1及び2について、主位的に別紙発信者情報目録(第1)の、予備的に同(第2)の各記載1〜7の情報の開示を求めましたが、このうち上記各目録記載1、2、5、6の情報については、被告米国ツイッター社が保有しているとは認められないことから、これら情報の開示を求める原告の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないと裁判所は判断しています。
各目録記載3の電子メールアドレスについては、同被告が保有を認めているところであるとして、原告の同被告に対する主位的請求は理由があると判断。
もっとも、原告が開示を求める最新のログイン時IPアドレス等は、本件において侵害情報が発信された上記各行為と無関係であることが明らかであり、プロバイダ責任制限法省令4号及び7号のいずれにも当たらないというべきであるとして、目録(第1)記載4及び7についての原告の被告米国ツイッター社に対する主位的請求は理由がないと判断しています。

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4 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無

原告は、本件アカウント1及び2に本件写真を表示させた者に対し著作権侵害を理由に損害賠償請求権等を行使することができるものの、上記の者の特定に資する情報を知る手段が他にあることはうかがわれないとして、発信者情報の開示を受けるべき正当な理由(プロバイダ責任制限法4条1項2号)があると裁判所は判断しています(19頁)。

結論として、原告の請求は本件アカウント1及び2に対応する電子メールアドレスの開示を求める限度で理由があると判断されています。

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■コメント

SNSのツイッターに無断で写真家の写真をアイコンやツイートに使用したり、リツイートに使用された事案です。
リツイート行為の公衆送信権侵害性に関する裁判所の判断が参考になります。
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2016年10月07日

スマホ用ケースデザイン事件−著作権 販売差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

スマホ用ケースデザイン事件

東京地裁平成28.9.28平成27(ワ)482販売差止等請求事件PDF
別紙1
別紙2
別紙3

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    鈴木千帆
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2016.10.03
*キーワード:複製権、公衆送信権、氏名表示権、同一性保持権、独占的利用権、債権侵害、損害論

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■事案

スマホ用ケースのデザイン図柄の複製権侵害や独占的利用権侵害の有無が争点となった事案

原告:スマホ用ケース販売会社、アーティストら4名
被告:日用品販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法19条、20条、21条、23条、114条3項、1項

1 本件各著作物の著作者及び著作権者
2 原告会社は本件各著作物について独占的利用権を有するか
3 被告が被告各商品を製造し販売した行為は本件各作物についての著作権〔複製権、譲渡権〕又は独占的利用権を侵害する行為に当たるか
4 被告は被告各商品を撮影した写真データを本件各ウェブサイト上にアップロードしたか、また、同行為が本件各著作権〔公衆送信権〕を侵害する行為に当たるか
5 被告の行為が原告A、原告B、原告C及び原告Dの著作者人格権〔氏名表示権、同一性保持権〕を侵害する行為に当たるか
6 原告会社は本件著作物5ないし同28の2の各著作権者に代位して差止請求権及び廃棄請求権を代位行使できるか
7 差止め及び廃棄の必要性が認められるか
8 原告らが受けた損害の額

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■事案の概要

『本件は,別紙2著作物目録記載の各絵画(以下,個別には,同目録の番号に対応して「本件著作物1の1」などといい,同目録記載の各絵画を総称して「本件各著作物」と,それらの著作権を総称して「本件各著作権」という。)に関し,本件著作物1の1及び同1の2の著作者であり,それらの著作権を有すると主張する原告A,本件著作物2の1ないし同2の6の著作者であり,それらの著作権を有すると主張する原告B,本件著作物3の1ないし同3の6の著作者であり,それらの著作権を有すると主張する原告C,本件著作物4の1ないし同4の3の著作者であり,それらの著作権を有すると主張する原告D,及び本件各著作物について,それらの著作権者から独占的に利用することの許諾を受けた(以下,当該許諾に基づく権利を「独占的利用権」という。)と主張する原告会社が,別紙1被告商品目録記載の各スマートフォン用ケース(以下,個別には,同目録の番号に対応して「被告商品1−00396」などといい,また,同目録記載1の各商品を併せて「被告商品1」と,同目録記載2の各商品を併せて「被告商品2」と,同目録記載3の各商品を併せて「被告商品3」と,同目録記載4の各商品を併せて「被告商品4」と,同目録記載5の各商品を併せて「被告商品5」という。なお,同目録記載の各商品を総称して「被告各商品」ということがある。)に印刷された図柄は本件各著作物の複製物であるから,被告が被告各商品を製造及び譲渡する行為は本件各著作権(複製権,譲渡権)を侵害する行為であり,被告が被告各商品を撮影した写真データをウェブサイトにアップロードする行為は本件各著作権(公衆送信権)を侵害する行為であるほか,被告の上記行為は原告会社が有する本件各著作物の独占的利用権を侵害する行為であり,また,被告の上記各行為のうち,本件著作物1の1及び同1の2に係るものは同著作物についての原告Aの著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害する行為,本件著作物2の1ないし同2の6に係るものは同著作物についての原告Bの著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害する行為,本件著作物3の1ないし同3の6に係るものは同著作物についての原告Cの著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害する行為,本件著作物4の1ないし同4の3に係るものについては同著作物についての原告Dの著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害する行為であるなどと主張して,1原告A,原告B,原告C及び原告Dが,著作権法112条1項に基づき,前記第1の1ないし4の各(1)及び(2)のとおり,被告商品1ないし同4の複製及び譲渡の差止め並びに被告商品1ないし同4を撮影した写真データの送信可能化及び自動公衆送信の差止めを求め,また,同条2項に基づき,前記第1の1ないし4の各(3)のとおり,被告商品1ないし同4の製造に用いる原版データ,製造済み商品及び商品を撮影した写真データの各廃棄を求め,2原告会社が,本件著作物5ないし同28の2の各著作権者に代位して差止請求権及び廃棄請求権を行使するとして,前記第1の5の(1)及び(2)のとおり,被告商品5の複製及び譲渡の差止め並びに被告商品5を撮影した写真データの送信可能化及び自動公衆送信の差止めを求め,前記第1の5の(3)のとおり,被告商品5の製造に用いる原版データ,製造済み商品及び商品を撮影した写真データの各廃棄を求め,3原告A,原告B,原告C及び原告Dが,著作権及び著作者人格権の各不法行為による各損害賠償請求権に基づき,前記第1の1ないし4の各(4)のとおり,被告に対し,損害賠償金(請求額は,原告Aにつき75万0600円〔著作権侵害による逸失利益600円,無形損害(著作権侵害と著作者人格権侵害を選択的に主張するものと解される。原告B,原告C及び原告Dについても同様。)60万円及び弁護士費用15万円の合計〕,原告Bにつき196万9200円〔著作権侵害による逸失利益1万9200円,無形損害180万円及び弁護士費用15万円の合計〕,原告Cにつき197万7000円〔著作権侵害による逸失利益2万7000円,無形損害180万円及び弁護士費用15万円の合計〕,原告Dにつき105万2400円〔著作権侵害による逸失利益2400円,無形損害90万円及び弁護士費用15万円の合計〕)及びこれに対する平成27年9月6日(本件訴状送達の日の翌日)を起算日とする民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,4原告会社が,本件各著作物についての独占的利用権の侵害を理由とする不法行為による損害賠償請求権に基づき,前記第1の5の(4)のとおり,被告に対し,損害賠償金113万4108円(独占的利用権の侵害による逸失利益83万4108円及び弁護士費用30万円の合計)及びこれに対する平成27年9月6日(本件訴状送達の日の翌日)を起算日とする民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』

<経緯>

H24.08 原告会社代表者が販売開始
H24.10 原告会社設立
H25.06 被告各商品販売開始
H25.07 原告会社が被告に販売停止通告

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■判決内容

<争点>

1 本件各著作物の著作者及び著作権者

まず、スマートフォン用ケースに使用された図柄である本件各著作物の著作者及び著作権者は、アーティストである原告A乃至Dであると裁判所は認定しています(18頁以下)。

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2 原告会社は本件各著作物について独占的利用権を有するか

原告A乃至Dに関する本件著作物1の1ないし同4の3については、原告会社が立証をせず、原告アーティストらから原告会社に対する独占的利用権の付与は認定されていません(20頁以下)。その他の本件著作物については、一部を除き、アーティストである著作権者らから原告会社への独占的利用権の付与が認定されています。

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3 被告が被告各商品を製造し販売した行為は本件各作物についての著作権〔複製権、譲渡権〕又は独占的利用権を侵害する行為に当たるか

(1)著作権(複製権、譲渡権)の侵害について

被告が一覧表中「被告商品」欄記載のスマートフォン用ケースを製造し販売した行為は、それぞれ対応する「アーティスト」欄記載のアーティストが有する「本件著作物」欄記載の著作物の著作権(複製権及び譲渡権)を侵害する行為であることは明らかであると裁判所は認定しています(34頁)。

(2)独占的利用権の侵害について

原告会社が本件著作物5ないし同28の2(ただし、同11、同12の1、同12の2、同15、同16、同17、同21の1、同21の2を除く)について独占的利用権を有していると認定され、原告会社が被告に対し販売等の停止などを求めた日以降の被告の販売等の行為については、被告の主観的要件として故意又は重過失の存在が認定され、独占的利用権を侵害する不法行為が成立すると裁判所は判断しています(34頁以下)。

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4 被告は被告各商品を撮影した写真データを本件各ウェブサイト上にアップロードしたか、また、同行為が本件各著作権〔公衆送信権〕を侵害する行為に当たるか

被告は、平成26年から平成27年頃に本件各著作物をスマートフォン用ケースに印刷したもの(被告各商品)の画像データ(別紙1被告商品目録掲載の画像データ)を作成した上、楽天やヤフーといったショッピングサイトなどの本件各ウェブサイトにアップロードした事実が認められると裁判所は認定。
被告が本件各著作物の複製物である被告各商品を撮影した写真のデータを本件各ウェブサイトにアップロードした行為は、本件各著作物の著作権者が有する著作権(公衆送信権)を侵害する行為に当たると裁判所は判断しています(35頁以下)。

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5 被告の行為が原告A、原告B、原告C及び原告Dの著作者人格権〔氏名表示権、同一性保持権〕を侵害する行為に当たるか

アップロード並びに被告各商品の製造及び販売に際して、本件各著作物の著作者の氏名又は雅名を表示しなかった事実が認められるとして、裁判所は、被告による上記行為は原告A乃至Dの氏名表示権を侵害する行為であると判断しています(36頁以下)。
もっとも、原告アーティストらが、他の事業者に対して同様な態様でのデザインの利用許諾をしていることから、被告がこれらの著作物を利用してスマートフォン用ケースの画像データを作成したこと、また、スマートフォン用ケースを製造して販売したことが著作者の意に反する切除その他の改変に当たるものとは認められず、同一性保持権が侵害されたものとは認められないと裁判所は判断しています。

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6 原告会社は本件著作物5ないし同28の2の各著作権者に代位して差止請求権及び廃棄請求権を代位行使できるか

契約書案の内容からすると、債権者代位権(民法423条)の法意を用いて各著作権者が有する差止請求権及び廃棄請求権を原告会社が代位行使することができるものと認めることは困難であると裁判所は判断しています(37頁以下)。

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7 差止め及び廃棄の必要性が認められるか

被告が被告各商品を製造、譲渡し、また、被告各商品のデータを送信可能化するおそれがあるとして、被告による被告商品1ないし同4の製造及び譲渡並びに同商品を撮影した写真データの送信可能化(自動公衆送信を含む)を差し止めるとともに、侵害の予防のために必要な措置として同商品の製造に用いる原版データ、製造済みの商品及び商品を撮影した写真データを破棄させる必要があると裁判所は判断しています(38頁以下)。

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8 原告らが受けた損害の額

(1)原告A

逸失利益1個×500円 慰謝料1万円 弁護士費用3万円 合計4万500円(39頁以下)

(2)原告B

逸失利益32個×500円=1万6000円 慰謝料5万円 弁護士費用3万円 合計9万6000円

(3)原告C

逸失利益45個×500円=2万2500円 慰謝料7万円 弁護士費用3万円 合計12万2500円

(4)原告D

逸失利益4個×500円=2000円 慰謝料1万円 弁護士費用3万円 合計4万2000円

*原告A乃至Dにつき114条3項

(5)原告会社

原告会社が本件著作物5ないし同28の2(一部除外)について独占的利用権を有していたものと認められ、日本国内において事実上、これらの著作物の複製物を譲渡することによる利益を独占的に享受しうる地位にあり、その限りで著作物を複製する権利を専有する著作権者と同等の立場にあること、また、原告会社は現実に上記著作物を利用したスマートフォン用ケースを販売していたことから、裁判所は、原告会社の受けた損害の額の算定に際して、著作権法114条1項を類推適用することができると判断。
結論として、以下の損害額を認定しています。

・譲渡数量228個×単位数量当たりの利益額1958円=44万6424円
・弁護士費用15万
合計 59万6424円

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■コメント

被告は最新UV印刷機で立体印刷をしてオリジナルのアイフォンケースなどを1個から制作するサービスを提供していました。もっとも、プリントするデザインは第三者のもので無断使用のものが含まれていました。スマホ用のケースのデザイン図柄については、別紙1を見ると様々なものがあることが分かります。
損害額の算定にあたって、契約上の独占的利用権限を侵害された場合(債権侵害)に著作権法114条1項の類推適用を裁判所が認めている点が参考になります。

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2016年09月15日

雑誌「プレジデント」記事翻案事件−著作権 著作権侵害および名誉侵害行為に対する損害賠償事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

雑誌「プレジデント」記事翻案事件

東京地裁平成28.8.19平成28(ワ)3218著作権侵害および名誉侵害行為に対する損害賠償事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 東海林 保
裁判官    古谷健二郎
裁判官    広瀬 孝

*裁判所サイト公表 2016.9.12
*キーワード:翻案権、同一性保持権、名誉・声望権

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■事案

雑誌に掲載された記事を要約してウェブサイトに転用されたとして著作権侵害性などが争点となった事案

原告:映画プロデューサー
被告:新聞社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、27条、113条6項

1 翻案権侵害の成否
2 同一性保持権侵害の成否
3 名誉・声望権侵害の成否
4 社会的評価の低下の有無
5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告の運営するウェブサイト上の記事により著作権(翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権,名誉・声望権)を侵害され,また名誉を毀損されたと主張して,被告に対し,(1)著作権侵害,著作者人格権侵害ないし名誉毀損の不法行為に基づき,損害合計340万円及びこれに対する不法行為の後の日(本訴状送達の日の翌日)である平成28年2月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,(2)著作権法115条ないし民法723条に基づき,被告のウェブサイトへの謝罪文の掲載を求めた事案である。』(1頁以下)

<経緯>

H27.02 雑誌「プレジデント」に原告記事掲載
H27.11 被告運営のウェブサイトに被告記事掲載

原告記事:「なぜ東京国際映画祭は世界で無名なのか」
     『プレジデント』2015年11月2日号

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■判決内容

<争点>

1 翻案権侵害の成否

裁判所は、著作物の翻案(著作権法27条)の意義について言及した上で、原告と被告の具体的な表現について検討を加えています(8頁以下)。
原告は、被告各表現が原告各表現と同一性を有する部分として、

(1)映画産業の国際発展を妨げている利権構造批判
(2)東京国際映画祭の事業費、事業委託先及びその関係
(3)映画産業の既得権益たる社会的集団を「映画村」と表現し、その状態を「独占」と表現したこと
(4)平成26年の映画祭事業費と委託費の割合
(5)既得権益を構成する企業名
(6)東京国際映画祭とクールジャパン政策の連携

等を挙げました。

しかし、このうち(3)以外は原告の思想、感情又はアイデア、事実又は事件など、表現それ自体でない部分についての同一性を主張するものにすぎないと判断。
また、(3)のうち「独占」との表現は一般用語であり表現上の創作性はなく、さらに、「映画村」との表現についても、ある特定の限られた分野又は共通の利害関係を有する一定の社会的集団を「○○村」と表現することは経験則上一般にみられるありふれた表現であると裁判所は判断。
結論として、いずれの表現についても被告各表現は、表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告各表現と同一性を有するにすぎず、表現上の本質的な特徴の同一性を維持したものとは認められないとして、被告各表現が原告各表現を翻案したものであるということはできないと判断しています。

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2 同一性保持権侵害の成否

争点1の通り、被告各表現が原告各表現の表現上の本質的な特徴の同一性を維持したものとは認められないことから、被告記事は原告記事の表現上の本質的特徴を直接感得することができない別個の著作物であって、原告記事を改変したものということはできないと裁判所は判断。
結論として、被告記事によって原告記事に係る原告の同一性保持権が侵害されたということはできないと判断しています(10頁)。

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3 名誉・声望権侵害の成否

原告は、被告記事の中に「それにもかかわらず、未だ東京国際映画祭は批判の格好の的になっており、映画祭に対する厳しい批判は毎年の恒例行事のようなものになっている。そして、今回それを行ったのが映画プロデューサーの甲であった」として原告記事を紹介していることが、日本の映画産業発展のための生産的議論にすることを目的とした原告の意図と著しく異なる意図を持つものとして受け取られる可能性があることを理由として、原告の名誉・声望権を侵害すると主張しました。

この点について、裁判所は、著作権法113条6項の「名誉又は声望を害する方法」とは、単なる主観的な名誉感情の低下ではなく、客観的な社会的、外部的評価の低下をもたらすような行為をいい、対象となる著作物に対する意見ないし論評などは、それが誹謗中傷にわたるものでない限り、「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するとはいえないというべきであると説示。
そして、原告が指摘する被告記事の上記表現部分は、被告記事の著者の原告記事に対する意見ないし論評又は原告記事から受けた印象を記載したものにすぎず、原告又は原告記事を誹謗中傷するものとは認められないとして、たとえ、被告記事の表現によって、原告の意図と著しく異なる意図を持つものとして受け取られる可能性があるとしても、そのことをもって、原告の「名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」と認めることは相当でないと判断。
結論として、被告記事によって原告記事に係る原告の名誉・声望権が侵害されたということはできないと判断しています(10頁以下)。

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4 社会的評価の低下の有無

原告は、被告記事の記載が原告の社会的評価を低下させるものであると主張し、その理由として(1)被告記事には原告が「東京国際映画祭と日本映画全般のがっかりするような国際的な地位」と述べた旨の記載があるが、原告記事にはそのような表現、論述は一切存在しないこと、また、(2)被告は大幅な要約を行ったこと、の2点を挙げました。
この点について、裁判所は、被告記事の記載が原告の社会的評価を低下させるものであるかどうかは被告記事それ自体についての一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきことになるところ、原告記事に同様の表現、論述が存在しないとか、被告記事がこれを大幅に要約したなどという事情は被告記事の記載が原告の社会的評価を低下させるものであることの理由とはなり得ないと判断。
結論として、被告記事が原告の社会的評価を低下させるものであるとの原告の主張は理由がなく、被告記事による名誉毀損は成立しないと判断しています(11頁以下)。

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5 真実性の抗弁ないし公正な論評の抗弁の成否

結論としては、被告記事に名誉毀損としての違法性があるということはできず、原告の名誉毀損に基づく請求は理由がないと裁判所は判断しています(12頁以下)。

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■コメント

被告新聞社が運営する英語ニュースサイトでの記載が問題となった事案です。本人訴訟となりますが、別紙にある著作物対比表をみると表現部分の内容が良く分かります。著作権侵害性や名誉毀損についていずれも原告の主張は認められていません。
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