2019年07月22日

アニソンP2P無断送信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アニソンP2P無断送信事件

東京地裁令和1.6.20平成31(ワ)2629発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 田中孝一
裁判官    横山真通
裁判官    奥 俊彦

*裁判所サイト公表 2019.7.17
*キーワード:レコード製作者、P2P、発信者情報開示

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■事案

P2P型ファイル交換共有ソフトShareを利用してアニメソングを送信した者の発信者情報開示を求めた事案

原告:レコード会社ら
被告:プロバイダ事業者

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法96条の2、プロバイダ責任制限法4条

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか
2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

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■事案の概要

『本件は,レコード製作会社である原告らが,自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ,氏名不詳者において,当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置し,インターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信し得る状態にして,原告らの送信可能化権を侵害したことが明らかであると主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記氏名不詳者に係る発信者情報の開示を求める事案である。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 本件各レコードの送信可能化権を侵害されたことが明らかであるか

被告から別紙対象目録の「IPアドレス」欄記載のアイ・ピー・アドレスを割り当てられた氏名不詳者が、インターネットに接続し、それぞれ対応する同目録の「日時」欄の日時頃に本件交換ソフトを介して「ファイル名」欄記載のファイルを公衆からの求めに応じて自動的に送信し得る状態にしたことによって、「原告」欄記載の各原告が有する本件各レコードの送信可能化権(著作権法96条の2)を侵害したことが認められると裁判所は判断しています(4頁以下)。

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2 発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるか

被告は、被告からアイ・ピー・アドレスを割り当てられた氏名不詳者による本件各レコードの送信可能化権侵害との関係において、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、原告らが同侵害に基づく差止請求権や損害賠償請求権を行使するためには、上記氏名不詳者に係る発信者情報(氏名(又は名称)、住所及び電子メールアドレス)の開示を受ける必要があるとして、原告らにはその発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断(5頁)。

結論としてプロバイダ責任制限法4条1項に基づく原告の請求を認容しています。

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■コメント

ソーシャルゲーム発祥の「アイドルマスターシンデレラガールズ」の楽曲「Absolute NIne」やTVアニメ「おしえて!ギャル子ちゃん」主題歌「YPMA☆GIRLS」といった楽曲のP2P利用無断送信の事案となります。
written by ootsukahoumu at 06:37|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年07月19日

「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド鞄形態模倣事件−著作権 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド鞄形態模倣事件

東京地裁令和1.6.18平成29(ワ)31572不正競争行為差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    古川善敬

*裁判所サイト公表 2019.7.16
*キーワード:バッグ、商品等表示、美術の著作物、応用美術論、一般不法行為論

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■事案

バッグなどのデザインの著作物性が争点となった事案

原告:デザイン事務所、ファッションブランド会社
被告:装飾雑貨製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、同2項、10条1項4号、不正競争防止法2条1項1号、3条、4条、5条

1 原告商品の形態は商品等表示に該当するか
2 原告商品の形態は周知ないし著名か
3 被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか
4 原告商品1ないし6に著作物性が認められるか
5 本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否
6 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告らが,三角形のピースを敷き詰めるように配置することなどからなる鞄の形態は,原告イッセイミヤケの著名又は周知の商品等表示であり,被告による上記形態と同一又は類似の商品の販売は不正競争防止法2条1項1号又は2号所定の不正競争行為に該当するとともに,同形態には著作物性が認められるから,被告による上記販売行為は原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害するなどと主張して,被告に対し,(1)原告イッセイミヤケが,不正競争防止法3条1項,2項又は著作権法112条1項,2項に基づき,原告デザイン事務所が著作権法112条1項,2項に基づき,それぞれ上記商品の製造・販売等の差止め及び商品の廃棄を,(2)原告イッセイミヤケが,不正競争防止法4条,5条1項又は民法709条,著作権法114条1項に基づき損害の一部である1億1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成29年10月4日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,(3)原告デザイン事務所が,主位的に不正競争防止法4条又は民法709条(著作権侵害)に基づき,予備的に民法709条(一般不法行為)に基づき損害の一部である7199万5000円及びこれに対する上記(2)と同一の遅延損害金の支払を,(4)原告らが不正競争防止法14条又は著作権法115条に基づき謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

H22.09 原告イッセイミヤケが「BAO BAO ISSEY MIYAKE」ブランド(本件ブランド)展開
H28.09 被告が被告商品を販売

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■判決内容

<争点>

1 原告商品の形態は商品等表示に該当するか

裁判所は、原告商品の形態が商品等表示(不正競争防止法2条1項1号)に該当するかどうかについて、特別顕著性と周知性を検討(29頁以下)。
結論として、原告商品の本件形態1は、特別顕著性と周知性を具備し、商品等表示に該当すると判断しています。

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2 原告商品の形態は周知ないし著名か

裁判所は、原告商品の本件形態1は、遅くとも平成27年の時点で原告イッセイミヤケの出所を示すものとして全国の需要者に広く認識されていたと認めることができると判断しています(40頁)。

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3 被告商品の形態は原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるか

8点の被告商品の形態が原告商品の形態と類似して混同のおそれがあるかについて、裁判所は、原告商品の形態と被告商品の形態は全体として類似すると判断。また、被告商品の形態は原告商品と出所の混同を生じさせると認定しています(40頁以下)。

結論として、被告による被告商品の販売行為は、不正競争法2条1項1号の不正競争行為に該当すると裁判所は判断しています。

そして、被告に対して同法3条1項に基づいて本件形態1を備えた被告商品の各形態のトートバッグ、ショルダーバッグ、リュックサック等の鞄及び袋物並びに携帯用化粧道具入れの譲渡、引き渡し、譲渡又は引き渡しのために展示し、輸入の差止め請求をすることができ、同条2項に基づいて侵害行為を組成した被告商品の廃棄請求が認められています。

また、被告には過失があることから、被告は原告イッセイミヤケに対して同法4条に基づいて侵害行為によって原告イッセイミヤケが受けた損害を賠償する責任を負うことが認められています。

なお、信用回復措置としての謝罪文の掲載の必要性は認められていません。

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4 原告商品1ないし6に著作物性が認められるか

原告商品1ないし6は、ショルダーバッグ、携帯用化粧道具入れ、リュックサック及びトートバッグであり、いずれも物品を持ち運ぶという実用に供される目的で同一の製品が多数製作されたものでしたが、原告らは、原告商品1ないし6の個々の商品のデザインは創作性の程度が高いものであるとして著作物性が認められ、被告商品は原告商品1ないし6を複製ないし翻案したものであるとして、原告らの著作権(複製権又は翻案権)を侵害する旨主張しました(47頁以下)。
裁判所は、この点について応用美術論に言及した上で、原告商品の特徴は著作物性を判断するに当たっては実用目的で使用するためのものといえる特徴の範囲内というべきものであり、原告商品において実用目的で使用するための特徴から離れて、その特徴とは別に美的鑑賞の対象となり得る美的構成を備えた部分を把握することはできないとするのが相当であると判断。
結論として、原告商品1ないし6に著作物性は認められていません。

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5 本件ブランドに係る価値の毀損による損害賠償請求権の存否

原告デザイン事務所は、被告の被告商品販売に係る不正競争行為によって原告デザイン事務所が本件商標を有する本件ブランドの持つ社会的信用やブランドイメージが毀損されたと主張して被告に対して不正競争防止法4条に基づいて損害賠償を請求しましたが、裁判所は認めていません(49頁以下)。
また、原告デザイン事務所は、被告が被告商品の販売により本件ブランドの価値を毀損する行為は一般不法行為に該当すると主張して民法709条に基づく損害賠償を請求しましたが、本件ブランドの価値の棄損により原告デザイン事務所に対する法的利益が棄損されたとは認められないとして、この点についても裁判所は認めていません。

なお、原告デザイン事務所の請求はいずれも棄却されています。

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6 損害論

(1)不正競争防止法5条1項に基づく損害
6506万8000円

(2)弁護士費用相当額損害
 600万円

合計 7106万8000円(50頁以下)。

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■コメント

商標権侵害は認められないものの、バッグなどの形態が類似しており、消費者に誤解を生じさせる商品の販売にあたるとして、不正競争行為性が肯定された事案です。
バッグなどのデザインについて応用美術論として著作権による保護の可能性も有り得ますが、本事案ではデザインの著作物性が認められず、著作権による保護は否定されています。

被告商品については、判決文に画像が掲載されていますが、原告商品はニュース記事掲載の画像からどのようなものであったかが窺うことができます。
画像

(判決文より 被告商品1)

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■参考記事

「バオ バオ」が模倣品裁判に勝訴 損害賠償額は7000万円以上 | WWD JAPAN.com(2019/06/20)

対バルコス社事案
イッセイ ミヤケが「バオ バオ」に類似したバッグの販売等を差し止める仮処分を申し立て(2019/06/14)
written by ootsukahoumu at 01:05|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年07月13日

金魚電話ボックス事件−著作権に基づく差止等請求事件判決−

金魚電話ボックス事件

奈良地裁令和元年7月11日平成30(ワ)466著作権に基づく差止等請求事件
裁判長裁判官 島岡大雄
裁判官    井上直樹
裁判官    植原美也子

*裁判所サイト未公表/個人サイト掲載 2019.7.11
*キーワード:著作物性

金魚電話ボックス問題と「メッセージ」
(ならまち通信社 2019年7月11日更新 作成:松永洋介)
判決文PDF
訴状PDF

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■事案

電話ボックスを金魚水槽にした作品の著作物性が争点となった事案

原告:美術作家
被告:商店街協同組合、地域振興団体代表者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条

1 原告作品の著作物性
2 著作権侵害の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告組合及び「K−Pool Project」代表者である被告●●が制作し,又は展示した別紙被告作品目録記載の美術作品(以下「被告作品」という。)について,被告作品は別紙原告作品目録記載の美術作品(以下「原告作品」という。)を複製したものであって,原告の複製権,同一性保持権及び氏名表示権を侵害している旨主張して,(1)被告組合及び被告●●に対し,著作権法114条1項に基づき,被告作品の制作の差止めを求めるとともに,(2)被告組合に対し,同条2項に基づき,被告作品を構成する水槽及び公衆電話機の廃棄を求め,また,(3)被告組合及び被告●●に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として330万円(同条3項による使用料相当額100万円,同一性保持権及び氏名表示権の各侵害による慰謝料100万円ずつと弁護士費用30万円との合計)及びこれに対する被告作品の設置日である平成26年2月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。』(2頁)

<経緯>

H12.12 原告が原告作品制作
H23.10 京都造形芸大の学生らが被告作品制作
H26.02 被告らが被告作品設置、管理

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■判決内容

<争点>

1 原告作品の著作物性

裁判所は、まず著作物性の意義(著作権法2条1項1号)に言及した上で、原告作品の基本的な特徴を検討。

(1)公衆電話ボックス様の造形物を水槽に仕立て、金魚を泳がせている点
(2)受話器部分を利用して気泡を出す仕組みの点

が特徴点であるが、いずれもアイデアの範疇であると判断しています(8頁以下)。
これに対して、公衆電話ボックス様の造形物の色・形状、内部に設置された公衆電話機の種類・色・配置等の具体的な表現においては創作性を認め得るとして、争点2において原告作品と被告作品の対比において検討をしています(9頁以下)。

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2 著作権侵害の有無

原告作品と被告作品の共通点としては、

(1)造作物内部に二段の棚板が設置され、その上段に公衆電話機が設置されている点
(2)同受話器が水中に浮かんでいる点

が認められるが、(1)は一般的なもので創作性がなく、(2)の点のみでは被告作品から原告作品を直接感得することができない、として、結論として被告作品による原告作品の著作権侵害性が否定されています。

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■コメント

個人が開設しているサイトに本事案の経緯や訴訟資料が掲載されています。
訴状に掲載されている画像を見るとカラーであるため、作品の相違が良くわかります。
原告ボックス

(訴状より 原告作品)
被告ボックス

(被告作品)



個人的には、政策的価値判断として、既製品(レディメイド)の転用作品についてはデッドコピーに限って保護を検討していくということで(あるいは、調整弁として依拠性を厳密に判断するなど)、地裁の棄却の結論は(理論構成はともかくとして)理解できます。

原告作品がパブリックアートとして設置される環境と密接に関係することもあるでしょうし、環境保全のメッセージが含まれているとすれば、こうした点が作品性を考える際の視点になるとしても、そうした関係性や思想は著作権での保護を超えたところにあります。
マルセル・デュシャンのレディ・メイドを想起する時、著作権で保護する具体的な表現を越えたところに真の意味、価値があると思われ、そこで作家さんがどう社会にインパクトを与えるか、が勝負なのかな、と思います(その意味では充分、本作品はインパクトがあったのではないでしょうか)。
written by ootsukahoumu at 10:10|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年06月24日

任天堂マリカー事件(控訴審 中間判決)−著作権 不正競争行為差止等請求控訴事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

任天堂マリカー事件(控訴審 中間判決)

知財高裁令和1.5.30平成30(ネ)10081等不正競争行為差止等請求控訴事件等PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    佐野 信
裁判官    熊谷大輔

*裁判所サイト公表 2019.6.17
*キーワード:マリオ、キャラクター、ドメイン、不正競争行為、著名性、著名表示冒用行為、権利の濫用

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■事案

公道カート営業で「マリオカート」標章の使用やコスチューム提供などの不正競争行為性が争点となった事案の控訴審の中間判決

控訴人・被控訴人・反訴被告(1審原告):任天堂
控訴人・被控訴人・反訴原告(1審被告):自動車レンタル会社
被控訴人(1審被告):1審被告会社代表取締役

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■結論

本訴請求認容、反訴請求却下

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■争点

条文 不正競争防止法2条1項2号、13号、5条

1 STREET KART店舗において本件レンタル事業が実施され被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか
2 富士河口湖店及び六本木店において現在被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか
3 一審被告会社が平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか
4 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか
5 登録商標の抗弁の成否
6 本件宣伝行為及び本件貸与行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか
7 本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか
8 一審被告Yに対する損害賠償請求の可否
9 一審原告の損害額
10 反訴請求の可否

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■事案の概要

『本件は,一審原告が,一審被告会社による(1)一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告文字表示(原告文字表示マリオカート及び原告文字表示マリカー)と類似する被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が,不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に,(2)一審原告が著作権を有する原告表現物と類似する部分を含む本件各写真及び本件各動画を作成してインターネット上のウェブサイトへアップロードする本件掲載行為が,一審原告の著作権(複製権又は翻案権,自動公衆送信権及び送信可能化権)侵害に,(3)一審原告の周知又は著名な商品等表示である原告表現物又は原告立体像と類似する商品等表示である被告標章第2を使用する行為である本件宣伝行為(本件掲載行為,従業員のコスチューム着用行為及び店舗における人形の設置行為からなる行為)が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に,(4)一審原告の特定商品等表示である原告文字表示と類似する本件各ドメイン名の使用が,不競法2条1項13号の不正競争行為に,(5)原告表現物の複製物又は翻案物である本件各コスチュームを利用者に貸与する本件貸与行為が,一審原告の著作権(貸与権)侵害に,それぞれ該当すると主張し,一審被告らに対して以下の各請求をした事案である。(以下略)』

『原判決は,要旨,以下のアーキのとおり判断し,前記(1)の各請求について,被告標章第1の使用差止め及び同抹消(外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシについてのものを除く。),被告標章第2の使用差止め,本件各動画のデータ廃棄,本件各ドメイン名の使用差止め(外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する場合を除く。)並びに一審被告会社に対する損害金1000万円及びこれに対する不正競争行為の最終日である平成30年3月31日から支払済みまでの年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求をいずれも棄却した。
(以下略)』

『一審原告は,原判決のうち,(1)外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシにおける被告標章第1の使用の差止請求並びに外国語のみで表記されたウェブサイト及びチラシからの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分,(2)本件各ドメイン名を外国語のみで記載されたウェブサイトのために使用する行為の差止請求及び本件ドメイン名2の登録抹消請求を棄却した部分,(3)一審被告Yに対する損害賠償請求を棄却した部分を不服として控訴を提起するとともに,損害賠償請求の金額を1000万円から5000万円に増額し,併せて遅延損害金の起算日を平成30年3月31日に繰り下げた。』

『他方,一審被告会社は,一審被告会社の敗訴部分を不服として控訴を提起するとともに,反訴を提起し,一審被告会社が別紙コスチューム目録記載のコスチュームを着用した人物の写真又は映像を公衆送信する行為について,一審原告が,別紙反訴被告表現物目録1ー4記載の表現物に関する複製権及び公衆送信権に基づき,これを差し止める権利を有しないことの確認を求めたが,一審原告は,同反訴の提起については同意しない旨述べた。』

『原判決のうち,本件写真1の作成・アップロードが不正競争行為又は著作権(複製権,翻案権,自動公衆送信権,送信可能化権)侵害に該当しないとした部分,カート車両以外の自動車,自転車及び軽車両からの被告標章第1の抹消請求を棄却した部分,一審被告会社の商号登記の抹消登記手続請求を棄却した部分,本件各写真及び本件各動画の削除並びに本件各写真のデータの廃棄請求を棄却した部分,本件ドメイン名4の登録抹消請求を棄却した部分並びに原告表現物の複製又は翻案及び複製物又は翻案物の自動公衆送信,送信可能化の差止請求を棄却した部分は,当審における審理判断の対象となっていない。』
(3頁以下)

〈原審目録より〉
被告標章目録第1
1 マリカー
2 MariCar
3 MARICAR
4 maricar

被告標章目録第2
「マリオ」「ルイージ」「ヨッシー」「クッパ」のコスチューム等

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■判決内容

<争点>

1 STREET KART店舗において本件レンタル事業が実施され被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームの使用がされているか

控訴審は、被告標章第1の2乃至4のいずれかがSTREET KART店舗のうち、品川第2号店と横浜店を除く各店舗において使用されていたものと認められ、STREET KART店舗とMariCAR店舗の一体性から、品川第2号店及び横浜店においても使用されていたものと推認することができると判断しています(71頁以下)。

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2 富士河口湖店及び六本木店において現在被告標章第1及び被告標章第2のコスチュームが使用されているか

富士河口湖店では、被告標章第1の3、4を使用しており、六本木店は被告標章第1の4を使用していると認定されています(77頁以下)。

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3 一審被告会社が平成27年6月4日の設立時から現在まで自ら又は関係団体と共同して本件各店舗において本件レンタル事業を実施し、自ら又は関係団体と共同して被告標章第1の使用行為、本件制作行為、本件宣伝行為、本件各ドメイン名の使用行為並びに本件貸与行為を行ったのか

設立時から現在までの一審被告会社による本件レンタル事業の実施やそれに伴う被告標章第1及び被告標章第2の使用について、控訴審は、一審被告会社は平成28年6月24日以降も自ら又は少なくとも関係団体と共同して本件レンタル事業を実施しており、自ら又は関係団体と共同して後記認定の不正競争行為を行っていると判断しています(79頁以下)。

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4 被告標章第1の営業上の使用行為及び商号としての使用行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか

(1)本件需要者

本件需要者は、日本において観光の体験等として公道カートを運転してみたい一般人、とりわけ比較的若年の成年層であり、原判決の口頭弁論終結前の時点において、一審被告らのいうところの訪日外国人(外国人旅行者、在日米軍関係者、在日大使館員など)に限られることはなく、日本人も需要者であったと控訴審は判断しています(86頁以下)。

(2)原告文字表示及び「MARIO KART」表示の周知性・著名性

控訴審は、「MARIO KART」表示は日本の国内外の本件需要者の間で、また、原告文字表示マリオカートは日本国内の本件需要者の間でそれぞれ著名であったと判断。
原告文字表示マリオカート及び「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否に関し、まず、原告文字表示マリオカートについて、外観、称呼に関しては一定程度似ており、観念の点でも同一の観念が生じると判断。日本国内の本件需要者との関係で原告文字表示マリオカートと被告文字表示第1の1(マリカー)は類似していると判断しています(89頁以下)。
次に、「MARIO KART」表示と被告標章第1との類否に関し、外観、称呼に関しては一定程度似ており、観念の点でも同一の観念が生じると判断。日本国内外の本件需要者全てとの関係で「MARIO KART」表示と被告標章第1の2乃至4は類似していると判断しています。

結論として、2条1項2号の成立を肯定しています。

『原告文字表示マリオカートは著名であって,被告標章第1の1の需要者である日本国内の本件需要者との関係で被告標章第1の1と類似しており,「MARIO KART」表示は著名であって,被告標章第1の2〜4の需要者である日本国内外の本件需要者との関係で被告標章第1の2〜4と類似するものである。
 また,前記第2の2(4),第3の1〜3で認定した一審被告会社が単独又は関連団体と共同で行っている被告標章第1の使用行為は,いずれも被告標章第1を,自己がしている本件レンタル事業という役務を表示するものとして使用するものといえる。
 そして,不競法2条1項2号は,著名表示をフリーライドやダイリューションから保護するために設けられた規定であって,混同のおそれが不要とされているものであるから,一審被告らが主張するような打ち消し表示の存在や本件各コスチュームの使用割合が低いこと(ただし,この点についての一審被告らの主張を採用できないことは,後記6(2)エのとおりである。)といった事情は,何ら不正競争行為の成立を妨げるものではない。
 したがって,その余の点について判断するまでもなく,自ら又は関係団体と共同して被告標章第1を前記第2の2(4),第3の1〜3で認定したとおり使用する一審被告会社の行為は,外国語のみで記載されたウェブサイト等で用いることも含めて不正競争行為に該当するものである。』(99頁)

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5 登録商標の抗弁の成否

一審被告らは、一審被告会社は「マリカー」の標準文字からなる本件商標を有しており、「マリカー」という標章を使用する正当な権限を有するから、仮に被告標章第1の使用行為が不正競争行為に該当するとしても差止請求や損害賠償請求は認められない旨主張しましたが、控訴審は権利の濫用として一審被告らのこれらの主張を認めていません(100頁以下)。

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6 本件宣伝行為及び本件貸与行為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為に該当するか

控訴審は、原告表現物(原告表現物マリオ、原告表現物ルイージ、原告表現物ヨッシー及び原告表現物クッパ)の著名性を認定した上で、本件写真2及び3のサイト掲載、各動画のYouTubeへのアップロード、本件貸与行為、本件マリオ人形の使用行為、従業員によるコスチュームの着用行為といった各行為の2条1項2号該当性を肯定しています(101頁以下)。

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7 本件各ドメイン名の使用行為が不競法2条1項13号の不正競争行為に該当するか

控訴審は、一審被告会社は不正の利益を得る目的をもって、一審原告の特定商品等表示である原告文字表示及び「MARIO KART」表示と類似する本件各ドメイン名を使用したと認められることから、同行為は不競法2条1項13号所定の不正競争行為に該当し、一審原告の営業上の利益を害するものであると判断しています(119頁以下)。

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8 一審被告Yに対する損害賠償請求の可否

一審被告Yは、取締役として会社が不正競争行為を行わないようにする義務があり、一審被告Yにはそのような義務に違反した点について悪意又は少なくとも重過失があることから、一審被告Yは会社法429条1項に基づく責任を負うと控訴審は判断しています(121頁以下)。

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9 一審原告の損害額

一審被告会社は、一審原告に対して不競法4条に基づいて一審原告の請求に係る一審被告会社が設立された平成27年6月4日から平成30年10月31日までの間に一審原告に生じた損害を賠償する責任を負い、一審被告Yは、悪意又は重過失による任務懈怠が認められ、一審被告会社と連帯して上記損害を賠償する責任を負うと控訴審は判断しています(123頁以下)。

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10 反訴請求の可否

一審原告の反訴の同意がなく、結論として、一審被告会社の反訴の提起は不適法であると控訴審は判断しています(民訴法300条1項 124頁)。

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■コメント

不正競争防止法上の侵害論についての中間判決となります。原審と大きく異なる点として、不正競争防止法2条1項1号(商品等主体混同惹起行為)ではなく、2号(著名表示冒用行為)の成立が認められています。
なお、損害論(数額の点)はこれからとなります。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成30.9.27平成29(ワ)6293不正競争行為差止等請求事件
原審記事
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2019年06月21日

新冷蔵庫システム開発契約事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

新冷蔵庫システム開発契約事件(控訴審)

知財高裁令和1.6.6平成30(ネ)10052損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    眞鍋美穂子
裁判官    熊谷大輔

*裁判所サイト公表 2019.6.13
*キーワード:ソフトウェア開発委託契約、保守管理、複製、翻案

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■事案

ソフトウェア開発業務委託契約の条項の解釈を巡る紛争の控訴審

控訴人(1審原告) :物流倉庫等システムソフトウェア開発会社
被控訴人(1審被告):食品類卸売会社、システム開発会社、原告元従業員

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■結論

控訴棄却

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■争点

1 本件ソースコードの成果物該当性
2 本件基本契約終了前の本件ソースコードの複製・翻案
3 本件基本契約の終了後に控訴人の許諾なく本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することが本件基本契約によって許されるか
4 本件基本契約終了後の本件ソースコードの使用によるみなし侵害(著作権法113条2項又はその類推適用)の有無
5 被控訴人マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無
6 不当利得返還請求権の有無

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■事案の概要

『ア 主位的請求
控訴人は,(1)被控訴人らは,本件基本契約の終了(平成26年9月17日)前の平成25年11月27日,本件新冷蔵庫等システムのサーバ移行に際し,本件共通環境設定プログラムのソースコード(以下「本件ソースコード」という。)を複製・翻案してその複製権又は翻案権を侵害し,上記本件基本契約の終了後,本件共通環境設定プログラムのダイナミックリンクライブラリ形式のファイル(以下「DLLファイル」という。),エグゼファイル(以下「EXEファイル」という。)及び本件ソースコード(以下,単に「本件共通環境設定プログラム」というときには,上記DLLファイル,EXEファイル及び本件ソースコードを併せたものを指すこととする。)を複製・翻案して本件共通環境設定プログラムの複製権又は翻案権を侵害し(主位的請求原因1),又は(2)上記本件基本契約の終了後,被控訴人マルイチ産商が本件共通環境設定プログラムの使用を継続したことが,著作権法113条2項又はその類推適用により,本件共通環境設定プログラムの著作権を侵害するものとみなされる(主位的請求原因2。なお,主位的請求原因1,2は選択的請求原因と解される。)と主張し,民法709条,719条1 項前段及び著作権法114条3項に基づく損害賠償請求として,1620万円(平成26年9月17日から平成29年9月16日まで1か月当たり45万円の使用料の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日(被控訴人マルイチ産商,被控訴人Y1及び被控訴人Y2につき平成29年10月15日,被控訴人テクニカルパートナーにつき同月16日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払並びに平成29年9月17日から被控訴人マルイチ産商が原判決別紙プログラムの使用を停止するまでの間1か月45万円の使用料相当額の支払を求めるとともに,同法112条1項及び2項に基づき,被控訴人マルイチ産商に対し,原判決別紙プログラムの使用の差止め及び原判決別紙プログラムのソースコードの廃棄を求めた。』

『イ 予備的請求
控訴人は,被控訴人マルイチ産商は,本件基本契約又は条理に基づき,原判決別紙プログラムの使用を停止し,本件ソースコードを廃棄する債務を負うところ,被控訴人マルイチ産商が原判決別紙プログラムの使用を継続していることが,上記債務の不履行に当たり,又は原判決別紙プログラムの使用料相当額の支払を免れていることが不当利得に当たると主張し,被控訴人マルイチ産商に対し,債務不履行に基づく損害賠償請求(予備的請求原因1)又は不当利得に基づく利得金返還請求(予備的請求原因2。なお,予備的請求原因1,2は選択的請求原因と解される。)として,1620万円(前記の合計額)及びこれに対する平成29年10月15日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払並びに同年9月17日から被控訴人マルイチ産商が原判決別紙プログラムの使用を停止するまでの間1か月当たり45万円の使用料相当額の支払を求めるとともに,本件基本契約又は条理に基づく債務の履行請求として(予備的請求原因1),被控訴人マルイチ産商に対し,原判決別紙プログラムの使用の差止め及び原判決別紙プログラムのソースコードの廃棄を求めた。』

『原判決は,(1)本件ソースコードが本件基本契約の終了前に複製又は翻案されたこと及び本件基本契約の終了後に本件共通環境設定プログラムが複製又は翻案されたことを認めるに足りる証拠はなく,(2)仮に,これらの複製又は翻案がされたとしても,本件共通環境設定プログラムは,本件基本契約で規定された「成果物」に該当し,本件基本契約の終了前及び終了後において,被控訴人マルイチ産商は,本件基本契約に基づき本件共通環境設定プログラムを使用するために必要な範囲で本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案して利用することができたから,複製権又は翻案権の侵害は成立しないとし,さらに,(3)被控訴人マルイチ産商が,本件共通環境設定プログラムの複製物の所有権を取得しているから,本件共通環境設定プログラムを使用することができ,その使用による著作権法113条2項のみなし侵害も成立せず,(4)被控訴人マルイチ産商は,本件基本契約終了後も本件共通環境設定プログラムを使用することができるから,その使用が債務不履行に当たらず,不当利得も成立しないとして,控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した。』

『控訴人は,控訴を提起するとともに,当審において,前記(1)ア(2)の主位的請求原因2を撤回し,同請求原因を予備的請求の請求原因3(予備的請求原因1ー3はいずれも選択的請求原因である。また,控訴人は当審において,予備的請求原因3のみなし侵害の主張の対象を本件ソースコードとした。)として追加する訴えの変更をするとともに,前記(1)ア(1)の主位的請求原因における被控訴人テクニカルパートナーの責任を民法715条1項に基づくものとした。』
(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件ソースコードの成果物該当性

控訴審は、本件ソースコードは本件基本契約にいう「成果物」に該当すると判断しています(20頁以下)。

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2 本件基本契約終了前の本件ソースコードの複製・翻案

本件基本契約21条3項(2)は、控訴人が従前からその著作権を有していた「成果物」についても被控訴人マルイチ産商が自ら使用するために必要な範囲で著作権法に基づく利用を無償でできると規定しており、旧サーバから新サーバへの移行に伴って本件ソースコードを複製したり、新サーバ移行に必要な限度で翻案したりすることは、自ら使用するために必要な範囲に該当するものといえると控訴審は判断。
また、仮に、控訴人が主張するとおり旧サーバから新サーバへの移行に伴って本件ソースコードが複製又は翻案されたとしても、それが複製権又は翻案権の侵害となることはないと判断しています(22頁)。

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3 本件基本契約の終了後に控訴人の許諾なく本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することが本件基本契約によって許されるか

本件基本契約26条から、本件基本契約の更新しない旨の意思表示による終了後も本件基本契約21条3項(2)は有効であり、被控訴人マルイチ産商は21条3項(2)に基づいて本件共通環境設定プログラムについて自ら使用するために必要な範囲内で著作権法に基づく利用を無償ですることができたと控訴審は判断。

そして、保守管理のために本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することは自己使用のために必要な範囲でされるものといえるとして、本件基本契約終了後に控訴人が主張するように被控訴人らが保守管理業務の一環として本件共通環境設定プログラムを複製又は翻案することがあったとしても、それについて複製権又は翻案権の侵害となることはないというべきであると控訴審は判断しています(22頁以下)。

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4 本件基本契約終了後の本件ソースコードの使用によるみなし侵害(著作権法113条2項又はその類推適用)の有無

本件ソースコードについて、本件基本契約の終了の前後を問わず被控訴人マルイチ産商が自己の利用する範囲内で複製又は翻案することができることから、被控訴人マルイチ産商が著作権を侵害した行為によって作成された複製物を使用しているとは認められないと控訴審は判断。控訴人の主張を認めていません(25頁)。

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5 被控訴人マルイチ産商の本件共通環境設定プログラムの使用を停止し廃棄する債務の有無
6 不当利得返還請求権の有無

本件基本契約の終了後も被控訴人マルイチ産商は本件共通環境設定プログラムを使用することができたことから、控訴人の主張するような債務や条理の存在を認めることはできず、その使用が不当利得となることもないと控訴審は判断。控訴人のこの点についての主張も認めていません(25頁)。

結論として、控訴審は控訴人の主張を認めていません。

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■コメント

ソフトウェア開発業務委託基本契約書の条項の解釈、また事実認定が問題となった事案ですが、控訴審でも原判決の判断が維持され、また、控訴審での新たな主張についても棄却の判断となっています。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成30.6.21平成29(ワ)32433損害賠償等請求事件
原審記事
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2019年06月19日

「でんちゅ〜」飲食店用注文管理システム事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「でんちゅ〜」飲食店用注文管理システム事件

大阪地裁令和1.5.21平成28(ワ)11067著作権侵害差止請求事件PDF
別紙1

*裁判所サイト公表 2019.6.11
*キーワード:プログラム、著作物性

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■事案

飲食店向け注文管理システムの共同開発にあたり著作権の帰属などが争点となった事案

原告:システムエンジニア
被告:経営コンサル会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項10号の2

1 原告プログラムの著作物性

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■事案の概要

『本件は,被告が飲食店等に対して頒布している「でんちゅ〜」という名称の「コンピュータ及びタブレット上で動作する注文管理及び商品管理のために利用されるソフトウェア」(以下「でんちゅ〜」という。)に係るプログラム(以下「被告プログラム」という。)は,以前,原告が開発したプログラム(以下「原告プログラム」という。)を複製又は翻案した物であるから,「でんちゅ〜」を制作し,被告プログラムを複製,販売,頒布する被告の行為は,原告の,原告プログラムについての著作権(複製権,翻案権ないし譲渡権)を侵害する旨を主張し,著作権法112条1項に基づき,被告プログラムの複製,販売,頒布の各差止めを,同条2項に基づき,同プログラムの廃棄を求める事案である。』
(1頁以下)

「でんちゅ〜」:飲食店用注文管理システム

<経緯>

H23 原告起業
H23 被告会社設立
H23 被告代表者が特開2013−3812
H24 原被告間雇用契約
H27 原告退職

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■判決内容

<争点>

1 原告プログラムの著作物性

裁判所は、プログラムの著作物性について、「プログラムに著作物性があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要するといわなければならない」
として、溶銑運搬列車制御プログラム事件(知財高裁平成24年1月25日判決平成21(ネ)10024著作権確認等請求控訴事件)に言及した上で、ソースコードに創作性が認められるというためには定型の指令やありふれた指令の組合せを超えた、独創性のあるプログラム全体の構造や処理手順、構成を備える部分があることが必要であり、原告は原告プログラムの具体的記述の中のどの部分にこれが認められるかを主張立証する必要があるところ、具体的にどの指令の組合せに選択の幅があり、いかなる記述がプログラム制作者である原告の個性の発現であるのかを具体的に主張立証していないとして、原告プログラムの著作物性を否定。

結論として、そのほかの争点を判断することなく、棄却の判断をしています(22頁以下)。

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■コメント

原告には代理人が就いていますが、著作物性に関する立証が尽くされていないとして、棄却の判断を受けています。

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■参考判例

溶銑運搬列車制御プログラム事件(控訴審)
知財高裁平成24年1月25日判決平成21(ネ)10024著作権確認等請求控訴事件
判決文PDF
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2019年06月18日

猫イラスト家紋Tシャツ販売事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

猫イラスト家紋Tシャツ販売事件

大阪地裁平成31.4.18平成28(ワ)8552著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1(原告イラスト目録)
別紙2(被告イラスト目録)

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 谷 有恒
裁判官    野上誠一
裁判官    島村陽子

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:イラスト、著作物性、応用美術、複製、翻案、依拠性、同一性保持権、氏名表示権

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■事案

猫のイラストを無断複製、翻案してTシャツなどを製造販売した事案

原告:デザイナー
被告:繊維製品製造販売会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条2項、19条、20条、21条、23条、112条、114条3項、115条

1 原告イラストの著作物性
2 被告イラストは原告イラストを複製又は翻案したものか等
3 原告の同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無
4 差止請求や謝罪文の掲載請求等の成否
5 損害額

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■事案の概要

『本件は,別紙「原告イラスト目録」記載のイラスト(以下「原告イラスト」という。)をデザインした原告が,別紙「被告イラスト目録」記載の各イラスト(以下,各イラストを同別紙の番号により「被告イラスト1」などといい,各イラストをまとめて「被告イラスト」という。)の一部が描かれたTシャツ等を製造販売している被告に対し,(1)被告イラストは,原告イラストを複製又は翻案したものであり,上記Tシャツ等の製造は原告の複製権又は翻案権を侵害すること,(2)上記Tシャツ等の写真を被告が運営するホームページにアップロードしたのは,原告の公衆送信権を侵害すること,(3)さらに被告が原告イラストを複製又は翻案し,原告の氏名を表示することなく上記Tシャツ等を製造等したのは,原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害することを主張して,(a)著作権法112条1項に基づき,被告イラストを複製,翻案又は公衆送信することの差止め,(b)同条2項に基づき,被告イラストを使用した別紙「被告物品目録」記載の各物品の廃棄並びに被告イラストに関する画像データ及び被告が運営するホームページの被告イラストが掲載された上記各物品の表示の削除,(c)著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づき,原告の損害の一部である1000万円の賠償及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成28年9月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(d)著作権法115条に基づき,謝罪文の掲載を請求する事案である。』

<経緯>

H23 原告が原告イラスト制作、Tシャツ販売
H26 被告が被告商品を製造、販売

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■判決内容

<争点>

1 原告イラストの著作物性

原告イラストについて、裁判所は、以下の表現上の特徴を有するものであり、これらはありふれたものということはできず創作性が認められるとして、原告イラストは原告がこれを作成した時点で美術の著作物として創作されたものと判断しています(14頁以下)。

*原告イラストの表現上の特徴(15頁)

(1)全体が一個のマークであるかのような印象を与える
(2)機械的な真円ではなく、猫がきれいに丸まっているという基本的な印象を維持しつつも柔らかく自然な印象を与える
(3)上半分の猫を描いた部分と下半分の抽象的な紋様の部分とがうまく一体化している

なお、被告は原告イラストがTシャツ販売を目的としたイラスト原案であり、実用目的の観点から応用美術に属すると反論しましたが、裁判所はこの点についての被告の主張を認めていません。

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2 被告イラストは原告イラストを複製又は翻案したものか等

(1)原告イラストと被告イラストの類似性(16頁以下)

(ア)被告イラスト1ないし4

各被告イラストは原告イラストを有形的に再製したものと認定。

(イ)被告イラスト5ないし8

各被告イラストは原告イラストを有形的に再製したものと認定。

(ウ)被告イラスト9ないし12

各被告イラストは原告イラストの表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ一部を変更したものと認定。

(エ)被告イラスト13ないし16

各被告イラストは原告イラストを有形的に再製したものと認定。

(オ)被告イラスト17ないし20

原告イラストの表現上の特徴との共通点がみられず、各被告イラストは原告イラストを有形的に再製したものとは認められず、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持していると認めることもできないと認定。

(2)被告デザイナー又は被告の依拠性(19頁以下)

依拠性について、裁判所は、各被告イラストは表現上の本質的な特徴部分において原告イラストに類似又は酷似しているということができ、特に被告イラスト1については原告イラストを見ずにこれをデザインしたということが実際上考え難いといえる程に似ていると判断。原告イラストと各被告イラストとが類似又は酷似していることに照らして、そのようなイラストを作成した被告と契約をしているデザイナー(被告デザイナー)が原告イラストを参照してこれに依拠して各被告イラストを作成した事実が推認されると判断しています(19頁以下)。
また、仮に被告が被告商品を製造販売した際に原告イラストの存在を認識していなかったとしても、被告は被告デザイナーから原告イラストに依拠して作成された上記各被告イラストの提供を受けて、これを付して被告商品を製造販売していたことから、被告の依拠性も認められると裁判所は判断しています。

結論として、被告の過失を認定した上で、一部のイラストを除き、複製権、翻案権、公衆送信権の侵害性が肯定されています。

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3 原告の同一性保持権及び氏名表示権の侵害の有無

被告は、原告イラストを改変した被告イラスト1ないし3、5ないし12、15及び16を付した被告商品を製造し、被告が運営するホームページに被告商品の写真をアップロードした上に、その際に原告の氏名や原告が使用していたデザイナー名を表示しなかったことから、原告イラストについての原告の同一性保持権及び氏名表示権を侵害したものと裁判所は判断しています(21頁)。

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4 差止請求や謝罪文の掲載請求等の成否

被告イラスト1ないし16について、原告による複製、翻案及び公衆送信の差止請求が認められています(21頁以下)。
また、被告イラスト1ないし3、5ないし12、15及び16を用いた被告商品の廃棄請求、イラストに関する画像データの削除請求も認められています。
なお、信用回復措置(115条)としての謝罪文の掲載請求は認められていません。

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5 損害額

(1)114条3項に基づく損害(23頁以下)

合計122万3570円

計算式:販売店への販売数(返品数を含む)×小売価格×使用料率2〜5%

(2)著作者人格権侵害による慰謝料(29頁)

30万円

(3)弁護士費用相当額損害(29頁以下)

15万円

以上、合計167万3570円

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■コメント

原告のデザインがプリントされたTシャツ販売サイトを見てみると、とても楽しい図柄の商品が並んでいます
pokka poka t-shirt - デザインTシャツマーケット/Hoimi(ホイミ))。

デザインの盗用での紛争で裁判ともなれば、被告はデザインの著作物性から争うのが常套ではあるものの、明らかな類似性がある事案にあっては、被告側の反論として著作物性から争うというのは原作品をいっそう貶めることになり、さらには、被告もありふれたデザインで商売をしていたと公に自ら認めてしまう訳で、被告側の企業倫理、経営理念としてそうした争点の立て方はどうなのか、ということは常々感じるところではあります。

別紙があるので、どのようなデザインであるか対比することができます。
被告イラスト17乃至20については原告イラストの翻案性が否定されています。肯定されてもおかしくはない、微妙な部分ですが、著作権による保護の範囲が広がり過ぎても他者の新たな創作性の幅を狭めかねないので線引きの判断が難しいところです。いずれにしても、本事案の一連のイラストのバリエーションは複製、翻案を考えるにあたって参考になります。

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2019年06月17日

アダルトビデオ海賊版発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アダルトビデオ海賊版発信者情報開示請求事件

東京地裁平成31.4.17平成30(ワ)38035発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 山田真紀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    棚橋知子

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:発信者情報開示請求、アダルトビデオ、海賊版

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■事案

海賊版アダルトビデオについて発信者情報開示請求がされた事案

原告:映像製作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 原告は本件著作物の著作権を有するか
2 本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたか
3 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか

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■事案の概要

『本件は,別紙2著作物目録記載の動画(以下「本件著作物」という。)の著作権者であるとする原告が,氏名不詳者(以下「本件発信者」という。)において,被告の提供するインターネット接続サービスを利用して,インターネット上のウェブサイトに別紙3動画目録記載の動画(以下「本件動画」という。)をアップロードしたことについて,本件動画は本件著作物の一部と実質的に同一であり,このアップロードにより原告の本件著作物についての送信可能化権が侵害されたことが明らかであって,当該権利の侵害に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告の保有する別紙1発信者情報目録記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』

著作物:「轟沈アクメ 脳髄から狂わせて 蒼井そら」

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■判決内容

<争点>

1 原告は本件著作物の著作権を有するか

本件著作物の著作権を取得した株式会社CAを吸収合併して同著作権を承継取得した原告は、本件著作物の著作権を有すると裁判所は判断しています(4頁以下)。

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2 本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたか

被告は、本件動画と本件著作物はタイトル及び動画の長さが異なりその同一性は明らかではないとして、本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたか否かについては明らかではないと反論しました。
この点について、裁判所は、タイトル及び動画の長さの相違は、本件動画についての本件アップロードにより本件著作物の一部が送信可能化されたという認定を左右するものではないとして、被告の反論を認めていません(5頁)。

結論として、原告は、本件発信者による本件アップロードによって本件著作物について送信可能化権を侵害されたことが明らかであると裁判所は判断しています。

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3 本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由はあるか

原告は、本件発信者に対して送信可能化権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有することが認められ、その行使のために被告が保有する本件アップロードに係る本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものと裁判所は判断しています(5頁以下)。

結論として、原告の請求が認められいます。

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■コメント

アダルトビデオ会社による海賊版対策が続いています。

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■過去のブログ記事

FC2動画アダルトサイト無断配信事件4
東京地裁平成31.3.27平成30(ワ)34818発信者情報開示請求事件
記事
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2019年06月15日

池田名誉会長写真発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

池田名誉会長写真発信者情報開示請求事件

東京地裁平成31.4.10平成30(ワ)38052発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    今野智紀
裁判官    遠山敦士

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:写真、職務著作、引用、依拠性、発信者情報開示

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■事案

写真のネットでの無断使用に関する発信者情報開示事件

原告:宗教法人
被告:プロバイダら

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法15条、32条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 原告が本件各写真の著作権者かどうか
2 依拠性の有無
3 引用の成否
4 発信者情報開示を受けるべき正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,経由プロバイダである被告らに対し,氏名不詳者が,インターネット上のウェブサイトに原告が著作権を有する写真を掲載し,原告の公衆送信権を侵害したことが明らかであるとして,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,上記著作権侵害行為に係る別紙発信者情報目録1及び2記載の発信者情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

本件写真1:原告のC名誉会長と同夫人が原告会員を激励している様子を原告職員Aが撮影した写真
本件写真2:スピーチ中のC名誉会長を原告職員Dが撮影した写真

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■判決内容

<争点>

1 原告が本件各写真の著作権者かどうか

原告の聖教新聞社の職員であったA及びDが、原告の業務として本件各写真を撮影したこと、本件写真1は聖教新聞社が平成30年8月22日付けで発行した聖教新聞に、本件写真2は同社が同年9月1日付で発行したグラフSGI9月号38頁に、それぞれ原告名義で公表されたこと、原告の就業規則には「職員が職務上の行為として著作した著作物の著作権は、法人に帰属する。」と規定されていることから、裁判所は、本件各写真は原告の発意に基づき原告の業務に従事する者が職務上作成する著作物であり、原告が自己の著作の名義の下に公表するものであって、原告の就業規則に別段の定めもないことから、原告が著作者としてその著作権を有すると判断しています(著作権法15条1項 6頁)。

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2 依拠性の有無

被告エヌ・ティ・ティは、本件記事1の写真は記事に掲載された類似の写真に依拠したものであり、本件写真1に依拠していないと主張しました。
この点について、裁判所は、本件写真1は、平成30年8月22日付け聖教新聞に掲載されたこと、同月23日に投稿された記事には、「昨日の写真がどうも臭いと思っていたら…」との記載があること、投稿者の記事に掲載された写真と本件写真1は実質的に同一のものであることが認められることから、記事の投稿者は本件写真1に依拠して記事に本件写真1と実質的に同一な写真を掲載したものと認めるのが相当であると判断。被告の主張を認めていません(7頁)。

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3 引用の成否

被告エヌ・ティ・ティは、本件記事1において本件写真1を掲載したことが適法な引用(32条1項)にあたる可能性があるとして、権利侵害の明白性が認められないと主張しましたが、裁判所は引用にあたらないと判断。本件発信者1が本件記事1に本件写真1を掲載したことによって原告の著作権(送信可能化権)が侵害されたことは明らかであると判断しています(7頁以下)。

結論として、原告は本件発信者1に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有しており、その権利を行使するために本件発信者情報の開示が必要であること、そして、本件記事1の投稿に際し、本件発信者1に対してインターネット接続サービスを提供した被告エヌ・ティ・ティは、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、被告エヌ・ティ・ティは本件発信者情報を保有しているものと認められると裁判所は判断。
原告には被告エヌ・ティ・ティから本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断しています。

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4 発信者情報開示を受けるべき正当な理由の有無

本件発信者2が本件記事2に本件写真2を掲載したことによって、原告の著作権(送信可能化権)が侵害されたことは明らかであるとして、原告は件発信者2に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有し、その権利を行使するためには本件発信者情報の開示が必要であると裁判所は判断。
本件記事2の投稿に際し本件発信者2に対してインターネット接続サービスを提供した被告ソニーネットワークは、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、被告ソニーネットワークは本件発信者情報を保有しているものと認められると裁判所は判断。
原告には被告ソニーネットワークから本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断しています(8頁以下)。

結論として、原告の主張はいずれも認められています。
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■コメント

創価学会池田名誉会長の画像のネットでの無断使用に関する発信者情報開示事件です。
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2019年06月14日

ブライダル映像事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ブライダル映像事件

大阪地裁平成31.3.25平成30(ワ)2082著作権侵害差止等請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    野上誠一
裁判官    大門宏一郎

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:映画の著作権、ブライダル、映画製作者、音楽著作権使用料

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■事案

ブライダル映像製作に関して撮影者と発注元との間で紛争となった事案

原告:映像製作事業者
被告:映像企画制作会社、挙式者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法29条、18条、19条、20条

1 被告Beeは著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取得したか
2 著作者人格権侵害のおそれの有無
3 原告のその他の主張について

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■事案の概要

『本件は,原告が,自己が著作権及び著作者人格権を有する別紙被告らビデオコンテンツ目録記載の著作物について,被告らが複製,頒布するおそれがあると主張して,被告らに対し,(1)著作権(複製権,頒布権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権,公表権)に基づき,同目録記載の著作物の複製,頒布の差止めを求める(著作権法112条1項)とともに,(2)同目録記載の著作物の廃棄を求めた(同条2項)事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H20 被告Beeがホテルから婚礼等のビデオ撮影について受注
H26 被告Beeが原告に撮影を発注
H26 原告が被告P2、P3の挙式披露宴を撮影
H27 原告が被告P4、P5の挙式披露宴を撮影
H29 原告がジャスラックから使用料411万円請求を受ける
H29 被告Beeが原告を提訴(福岡地方裁判所小倉支部)、原告が反訴

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■判決内容

<争点>

1 被告Beeは著作権法29条1項により本件ビデオの著作権を取得したか

原告が撮影、編集した本件記録ビデオについて、裁判所は映画の著作物(2条3項、10条1項7号)であるとした上で、原告が著作者であるが(16条)、著作権の帰属については、被告Beeが全体としての婚礼ビデオの製作業務を統括していたこと、ビデオを完成させて納品するのも被告Beeであり、ビデオ内容の最終的決定は被告Beeがしたことなどから、裁判所は、本件記録ビデオの製作に発意と責任を有する者は被告Beeであり、被告Beeは「映画製作者」(29条1項)に当たると認めるのが相当であると判断。
そして、原告は被告Beeから委託を受けて原告撮影ビデオの撮影をしており、被告Beeに対して本件記録ビデオの製作に参加することを約束したものといえることから、29条1項により本件記録ビデオの著作権は被告Beeに帰属し、原告は著作権を有しないと裁判所は判断しています(10頁以下)。

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2 著作者人格権侵害のおそれの有無

同一性保持権について、裁判所は、本件記録ビデオは原告撮影ビデオを編集したものであるが、原告は被告Beeが原告撮影ビデオを適宜編集することを承諾していたと認められることから、本件記録ビデオは原告の同一性保持権を侵害して製作されたものではないと判断。
また、仮に、被告らが本件記録ビデオを複製、頒布するとしても意に反する改変を行うことにはならないとして、同一性保持権の侵害は生じないと裁判所は判断しています(13頁以下)。
また、氏名表示権、公表権について、被告らに侵害するおそれがあるとは認められていません。

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3 原告のその他の主張について

原告は、本件において本件ビデオに収録された楽曲の著作権使用料を被告Beeが負担することとなっていたにもかかわらず、被告Beeがそれを支払っていない結果として、本件ビデオは楽曲を違法に使用したものであると主張しました。
この点について、裁判所は、仮に原告の主張の通りであるとしても、そのことが原告の著作権の有無や被告らの侵害行為のおそれの有無に影響を及ぼすものではないとして、著作権の帰属や著作者人格権に関する判断を左右するものではないと裁判所は判断しています(14頁)。

結論として、原告の請求は認められていません。

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■コメント

ブライダル映像に音楽を利用していましたが、ジャスラックとの権利処理がされておらず、後日高額な請求を受けたことも紛争の一因のようです。
原告は発注先である被告会社のほか、ビデオ撮影した新郎新婦4組についても被告としており、新郎新婦としては晴れの舞台の記録映像について、思いがけない紛争に巻き込まれることになり、ブライダル映像制作に携わる者として、どうしてこうした対応に出たのか(ジャスラック対応のためか)、状況がよく理解できないところです。
written by ootsukahoumu at 07:38|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年06月13日

水尾ゆずの里映像事件(控訴審)−著作権 映像著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

水尾ゆずの里映像事件(控訴審)

大阪高裁平成31.3.14平成30(ネ)1709映像著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田陽三
裁判官    中尾 彰
裁判官    三井教匡

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:映画、著作権の帰属、組合、合有、使用許諾

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■事案

京都市右京区嵯峨水尾地域の振興にあたって製作された映像等の取扱いに関する事案

控訴人(1審原告) :放送番組企画制作会社
被控訴人(1審被告):食品製造販売会社、元代表取締役P1

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、23条

1 本件各ゆずの里映像の著作権の帰属
2 本件各ゆずの里映像等の著作権の譲渡の有無
3 本件各ゆずの里映像等の使用許諾の有無
4 本件貴船神社映像の複製、使用の有無
5 本件P4さん映像の複製、使用の有無
6 本件P4さん映像の使用許諾の有無

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人らに対し,原判決別紙著作権目録(以下「本件目録」という。)記載一の1から9まで,同二及び同三の各映像(DVDに記録された映画)並びに同四の1及び2の各写真(以下,併せて「本件各著作物」という。)について,控訴人が著作権を有しているとした上で,被控訴人らが被控訴人会社のウェブサイトに掲載(公衆送信)するなどして控訴人の著作権を侵害していると主張して,著作権法112条に基づく本件各著作物の複製,使用の差止め,不法行為に基づく損害賠償金1406万7000円及び平成22年5月1日(不法行為の日)から使用の中止及び著作物の廃棄まで月1万円の割合による金員(ただし,月20万円の割合による金員の一部)の支払を求めている事案である。
 原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したが,これを不服とした控訴人が控訴を提起した。


<経緯>

H20 被控訴人会社創業100周年記念パーティー開催
H21 P1P2P3によりゆず姫有限責任事業組合成立
H22 控訴人代表者P3が本件ゆずの里映像等を制作
   被控訴人会社の通販サイトで本件ゆずの里映像等を掲載
H25 P3が貴船神社映像を作成、控訴人が映像DVDを製作
H25 P3が本件P4さん映像作成、被控訴人会社のウェブサイトに掲載

原審:京都地方裁判所平成28年(ワ)第2247号

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■判決内容

<争点>

1 本件各ゆずの里映像の著作権の帰属

映画を収めたDVDは、第5版以降には本件組合の名称がDVDの表面及び記録された映像に表示されており、また、第7版には「製作著作 ゆず姫有限責任事業組合」と記載されていました。
この点から、裁判所は、本件各ゆずの里映像のうち本件各ゆずの里映像の第5版以降は、本件組合が企画しその責任をもって製作したものであり、P3はその著作者としてその製作に参加したものということができると判断。
本件各ゆずの里映像のうち、第5版以降に係る著作権については、本件組合の組合員に合有的に帰属すると判断しています。
また、第1版から第4版にかかる著作権についても、その習作的内容や経緯から、本件組合の成立に従い、組合員に合有的に帰属するよう了解されていたものと認めるのが相当であると判断しています(15頁以下)。

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2 本件各ゆずの里映像等の著作権の譲渡の有無

被控訴人らは、仮に本件各ゆずの里映像に関する著作権が控訴人に帰属するとしても、控訴人が被控訴人P1に対して本件各写真を含めて本件各ゆずの里映像等の著作権を譲渡したと主張しました。
この点について、裁判所は、何らの対価を得ることもなく控訴人が本件各ゆずの里映像等の著作権を他に譲渡するとは考えられず、これを認めるに足りる証拠もないとして被控訴人らの主張を認めていません(16頁)。

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3 本件各ゆずの里映像等の使用許諾の有無

仮に、本件各ゆずの里映像にかかる著作権が控訴人に帰属するとしても、通販サイトを含めて使用することが当然予定されていたとして、控訴人は被控訴人らに対して本件ゆずの里映像等の使用を許諾したと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(16頁以下)。
結論として、本件各ゆずの里映像等に係る著作権が控訴人に帰属するとしても、被控訴人らが控訴人の著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています。

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4 本件貴船神社映像の複製、使用の有無

P3が本件貴船神社映像を製作し、控訴人が映像を記録したDVDを製作したこと、控訴人はDVDを被控訴人らに交付し、貴船神社奉賛会において試写されたことが認められるものの、被控訴人らが本件貴船神社映像を複製し、もしくは公衆送信などにより使用したことを認めるに足りる証拠はなく、被控訴人らが本件貴船神社映像に係る著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています(18頁)。

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5 本件P4さん映像の複製、使用の有無

P3は、被控訴人会社の依頼に基づいて本件P4さん映像の素材となる映像を撮影し、これを編集して中国語ウェブサイト用の本件P4さん映像を作成し、控訴人は映像を記録したDVDを製作し、平成25年1月28日頃、被控訴人P1に対してこれを納品したことから(完成版の日付は同年2月15日)、その後、被控訴人会社が、本件P4さん映像をその目的の範囲内で複製し、もしくは公衆送信などにより使用したことが裁判所において認定されています(19頁)。

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6 本件P4さん映像の使用許諾の有無

被控訴人会社は、控訴人から本件P4さん映像を記録したDVDを受領し、中国用ホームページ映像製作一式として18万円を支払ったことが認められることから、少なくとも前記争点5の使用を控訴人が許諾していると裁判所は判断(19頁)。
結論として、被控訴人らが本件P4さん映像に係る著作権を侵害したということはできないと裁判所は判断しています。

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■コメント

地域振興のために製作された映像の取扱いについて関係者間で紛争となった事案となります。
written by ootsukahoumu at 05:07|この記事のURL知財判決速報2019 

2019年06月12日

「フォントロム」タイプフェイス事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「フォントロム」タイプフェイス事件

東京地裁平成31.2.28平成29(ワ)27741損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    横山真通
裁判官    奥 俊彦

*裁判所サイト公表 2019.ーー
*キーワード:タイプフェイス、著作物性、利用許諾契約

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■事案

映画パンフレットなどに利用されたタイプフェイスの著作物性が争点となった事案

原告:広告制作会社
被告:映画製作配給会社

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 本件タイプフェイスの著作物性の有無
2 ライセンス(利用許諾)の抗弁の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,自ら制作した別紙・タイプフェイス目録1及び2記載の各タイプフェイス(以下「本件タイプフェイス」という。)につき著作権を有するところ,被告において配給上映した映画の予告編やパンフレット,ポスター,ポストカード,Tシャツ等に本件タイプフェイスの一部の文字を無断で利用したことが,上記著作権(支分権としては複製権の主張と解される。)の侵害に当たると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金400万円(966万2000円の一部請求)及びこれに対する不法行為後の平成29年1月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

本件映画:映画「ジギー・スターダスト−Ziggy Stardust And The Spiders From Mars−」

<経緯>

S48 デヴィッド・ボウイ出演の映画がイギリスで製作
H11 デジタローグ社が「フォントパビリオン」販売
H13 Aが「フォントパビリオン」購入
H14 原告がDEX社とデータ提供基本契約締結
   DEX社が「フォントロム」販売
H29 被告が本件映画を製作配給上映
   Aがパンフレット、Tシャツ等を制作
H29 被告が本件提訴

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■判決内容

<争点>

1 本件タイプフェイスの著作物性の有無

裁判所は、本件タイプフェイスの著作物性(著作権法2条1項1号)について、印刷用書体ゴナU事件最高裁判決(最高裁平成10(受)332平成12年9月7日第一小判決)に言及した上で、被告によって利用された文字に限って検討を行っています。
結論として、本件タイプフェイスは独創性を備えているということはできず、また、それ自体が美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているということもできないとして、著作物に当たると認めることはできないと判断しています(9頁以下)。

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2 ライセンス(利用許諾)の抗弁の成否

争点1で本件タイプフェイスの著作物性が否定されたことから、原告の主張は認められていませんが、被告のライセンスの抗弁について、念のため検討がされています(11頁以下)。
この点について、裁判所は、Aは自ら「フォントパビリオン」を正規に購入してこれに収録されていた本件フォントを使用して本件パンフレット等を制作したものであり、「フォントパビリオン」内に記録された本件フォントに係る説明書のファイルには「使用の制限はとくにありません」と明記されていたことからすれば、「フォントパビリオン」を正規に購入した者が本件フォントにより表示される本件タイプフェイスを利用することは何ら制限されていなかったものということができると認定。
結論として、被告がデザイナーであるAを通じてした本件タイプフェイスの利用は、本件タイプフェイスの制作者が許諾した範囲内の行為であって、ライセンスの抗弁が成立するものと認めるのが相当であると裁判所は判断しています(11頁以下)。

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■コメント

本件タイプフェイスの制作者(著作者)が認定されておらず、経緯がいまひとつはっきりしない部分がありますが、いずれにしても(争点としては傍論ですが)フォントパッケージの購入の有無という事実認定がポイントとなった事案です。
なお、判決文末尾の別紙に掲載されたタイプフェイスをみてみると、個々の文字に著作物性を認めるのは難しい印象です。
written by ootsukahoumu at 06:49|この記事のURL知財判決速報2019