2016年07月28日

小学校学習教材イラスト事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

小学校学習教材イラスト事件

東京地裁平成28.6.23平成26(ワ)14093著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    藤原典子
裁判官    中嶋邦人

別紙1(イラスト類目録)
別紙2(書籍目録、文書目録)
別紙3(謝罪広告目録)
別紙4(複製権侵害(書籍目録部分))

*裁判所サイト公表 2016.7.26
*キーワード:契約、出版、イラスト、改変

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■事案

小学校用学習教材向けに制作されたイラストの取扱いについて使用範囲が争点となった事案

原告:イラストレーター
被告:小学校学習教材出版社ら

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、22条、19条、20条、114条3項

1 本件文書における本件イラスト類の複製又は翻案の有無
2 本件イラスト類の使用についての原告の許諾の範囲
3 同一性保持権侵害の成否
4 原告の損害額
5 差止め及び廃棄請求並びに謝罪広告掲載請求の当否
6 本件イラスト類13の修正に係る請求の当否
7 本件未完成作品に係る請求の当否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告らに対し,(1)原告が被告らの依頼により本件イラスト類を作成し,被告らに提供したことに関して,(1)被告らによる本件書籍及び本件文書への本件イラスト類の使用が原告の許諾の範囲を超えるものであり,原告の著作権(複製権及び翻案権)の侵害に当たるとして,著作権法112条1項及び2項に基づく本件イラスト類の複製等の差止め並びに本件書籍及び本件文書の複製等の差止め及び廃棄と,民法709条,著作権法114条3項に基づく損害賠償金7105万2000円及び遅延損害金の連帯支払,(2)本件書籍及び本件文書の一部において本件イラスト類を改変し,原告の氏名を表示しなかったことが原告の著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害に当たるとして,民法709条,710条に基づく慰謝料280万円及び遅延損害金の連帯支払並びに謝罪広告の掲載,(3)原告のイラストが掲載されていない教材に原告の氏名を表示したことが氏名権侵害の不法行為に当たるとして,民法709条,710条に基づく慰謝料20万円及び遅延損害金の連帯支払,(4)上記(1)〜(3)に係る弁護士費用690万2500円及び遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,(2)原告が被告らの依頼により修正した本件イラスト類13の修正料6万円及び使用料20万円並びに遅延損害金の連帯支払,(3)原告が被告らの依頼により中途まで作成した未完成のイラスト類の製作料(予備的に契約解除による損害賠償金)32万円及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。』(3頁)

<経緯>

H15 被告らが原告にイラスト制作を依頼
H16 イラスト使用条件について話合い
H17 平成17年度教科書改訂
H22 被告らが原告に本件イラスト類13修正を依頼
H23 平成23年度教科書改訂
H24 平成24年度教材への本件イラスト類掲載
H27 平成27年度教科書改訂

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■判決内容

<争点>

1 本件文書における本件イラスト類の複製又は翻案の有無

教材広告宣伝のためのチラシ類である、別紙文書目録記載の各文書(本件文書)に用いられている本件イラスト類4〜6及び11について、原告がこれらに関して著作権及び著作者人格権の侵害を主張したのに対して、被告らは本件文書には本件イラスト類の創作性のある表現が再現されておらず複製又は翻案に当たらず、著作者人格権侵害も成立しない旨主張しました(13頁以下)。
この点について、裁判所は、まず、イラストの著作物性について、吉野ヶ里遺跡の再現想像図といった本件イラスト類4〜6及び11は美術の著作物に当たると判断。
その上で複製又は翻案の成否について検討を加えています。
結論としては、本件文書ではこれらイラスト類が縮小されるなどしており、細部の陰影等の表現は感得できないなどとして、本件文書につき被告らによる著作権(複製権、翻案権)の侵害を認めることはできないと判断しています。
また、著作権侵害があることを前提とする著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)の侵害も認めていません。

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2 本件イラスト類の使用についての原告の許諾の範囲

小学校6年生向け社会科資料集といった本件書籍への本件イラスト類の使用について、平成23年度以降の使用については原告の許諾がなく、複製権侵害が成立することを被告らは争っていないことから、平成22年度以前の本件書籍への本件イラスト類の使用を原告が許諾していたかどうかが検討されています(15頁以下)。
結論としては、作成を依頼された教材については、準拠する教科書が改訂されるまで翌年度以降も追加の使用料の支払なしに被告らがそのイラスト類を使用することを原告が許諾したものとみることができると裁判所は判断。
ただ、教科書が改訂された平成23年度以降については、許諾があるとは認められないと判断しています。

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3 同一性保持権侵害の成否

原告は、本件書籍に使用された本件イラスト類1〜6について、サイズの変更(縮小)、色の変更及びトリミングを行ったこと、また、本件イラスト類19について、大型ポスターとした上でシールを貼るための丸枠内に別の画像をはめ込んだことが原告の同一性保持権を侵害する旨主張しました(20頁以下)。
この点について、裁判所は、まず、本件イラスト類1〜6について、本件イラスト類の作成に当たっては、学習対象への児童の関心を引いて理解を深めるという教材の目的や、教材の限りある紙面に多数のイラスト等を掲載するという利用態様に照らして、掲載箇所の紙幅等を考慮してサイズや色を変更したり、一部をカットしたりすることが当然に想定されていたとみることができると判断。本件イラスト類1〜6について、上記のようにサイズを変更するなどした被告らの行為は同一性保持権の侵害に当たらないと判断しています。
これに対して、本件イラスト類19については、A4判の理科学習ノートの口絵部分に見開き(ほぼA3判の大きさ)で掲載するものとして原告が被告らの依頼により作成したこと、動植物の四季の変化の様子を1枚に描いたものであり、シールを貼るための円形の枠が十数か所設けられていること、被告らはこれをA1判相当に拡大した上で上記の枠に替えて別の画像をイラスト中に埋め込んで授業で使用できる掲示用資料(ポスター)を作成したと認定。
上記事実関係に照らして、本件イラスト類19に加えられたサイズ及び画像の変更は、学習用教材であることを考慮してもその内容及び程度に照らし原告の意に反する改変というほかないと裁判所は判断。本件イラスト類19については、同一性保持権侵害が成立すると判断しています。

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4 原告の損害額

(1)複製権侵害について(114条3項)

平成17年度43万7500円
平成19年度10万円
平成20年度4万7500円
平成21年度2万3000円
平成23年度107万1000円

合計167万9000円が損害額として認定されています(22頁以下)。

(2)著作者人格権侵害について

同一性保持権侵害について慰謝料10万円、氏名表示権侵害について慰謝料40万円が認定されています(27頁以下)。

(3)氏名権侵害について

イラスト制作者ではないのに、平成23年度及び平成24年度の理科学習ノート・3年生に原告の氏名が掲載された点について、慰謝料5万円が認定されています(28頁以下)。

(4)弁護士費用相当額損害

30万円(29頁)

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5 差止め及び廃棄請求並びに謝罪広告掲載請求の当否

差止め及び廃棄請求並びに謝罪広告掲載請求の当否について、被告らが平成24年度をもって本件イラスト類の使用を取りやめたこと、平成22年度分までの教材は平成23年度の教科書改訂以降、平成23年度及び平成24年度の教材は平成27年度の教科書改訂以降、いずれも教科書に準拠する小学校用の教材であるという性質上、そのままの形では使用できないことが明らかであると裁判所は判断。
被告らが今後本件イラスト類を複製し、又は本件書籍を頒布等するおそれがあるとは認められないとして、原告の差止請求はいずれも理由がないと判断しています(29頁)。
また、被告らの行為により原告の名誉、声望等が害されたことをうかがわせる証拠はないとして、謝罪広告の掲載請求も認めていません。

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6 本件イラスト類13の修正に係る請求の当否

本件イラスト類13の修正料の請求については、1万円が認定されています(29頁以下)。

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7 本件未完成作品に係る請求の当否

本件未完成作品(武士の館、貴族の館及び太閤検地を題材とする作品)に係る請求の当否について、原告と被告らの間に原告が3件のイラストを完成させて、被告らがその代金を支払う旨の契約が締結されたと認められるものの、同契約は平成23年末頃の時点で合意解除されたとみることができ、また、出来高に応じて代金を支払う旨の約定の存在も認められないとして、裁判所は、原告の上記契約に基づく代金の支払請求は理由がないと判断しています(30頁以下)。

結論として、合計253万9000円の請求が認容されています。

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■コメント

小学生向けの学習教材で使用するイラストの取扱いについて、発注者側の出版社と受注者側のイラスト制作者との間で使用条件などについて契約上齟齬が生じた事案となります。
5年以上に亘る継続的な取引のなかで、イラストの使用条件について問題を先送りにした結果もあったかと思われる事案です。
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2016年07月21日

市議会広報誌「いわで議会だより」事件−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

市議会広報誌「いわで議会だより」事件

大阪高裁平成28.5.20平成28(ネ)25損害賠償請求控訴事件PDF

大阪高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官 山田知司
裁判官    寺本佳子
裁判官    中尾 彰

*裁判所サイト公表 2016.7.14
*キーワード:広報誌、複製、翻案、同意

原審:和歌山地方裁判所平成26年(ワ)第569号 裁判所サイト未掲載

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■事案

議会だより用に提出した原稿が無断改変されたかどうかが争点となった事案

控訴人(一審原告) :岩出市議会議員
被控訴人(一審被告):岩出市

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法21条、27条、国家賠償法1条1項

1 改変に対する控訴人の同意の有無について
2 本件各編集について

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■事案の概要

『原審における本件は,岩出市議会議員である控訴人が,被控訴人に対し,岩出市議会は,控訴人が市議会広報誌「いわで議会だより」用に提出した原稿を,控訴人に無断で編集して上記広報誌に掲載し,控訴人の著作権を侵害したと主張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として,10万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成26年9月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原審は,控訴人の請求を棄却したところ,同人が,10万円の支払請求を棄却した部分を不服として控訴を申し立てた。』(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 改変に対する控訴人の同意の有無について

控訴人は、市議会広報誌「いわで議会だより」用の本件原稿の提出に当たって、控訴人の了解なしに編集が加えられることに同意していない旨主張しました(5頁以下)。
この点について、裁判所は、広報委員会の控訴人に対する本件通知文において、文字数等を具体的に指定した上で、「文字数の超過や写真・タイトル等のスペースが確保されていない場合は,委員会で校正をします。(句読点,段落等の構成も含む。)ので,あらかじめご了承ください。」との記載があることを前提に、控訴人は上記記載のある本件通知文を受け取り、それに対して何らの留保も付することなく広報委員会に原稿を提出しているとして、本件通知文において指定された文字数等の範囲に収めるのに必要で、かつ、原稿の記載の趣旨を変更しない範囲においては、広報委員会が提出原稿の校正を行うことにあらかじめ同意したと認めるのが相当であると判断しています。

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2 本件各編集について

控訴人は、本件各編集は本件原稿を違法に改変するものである旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、本件各編集はいずれも控訴人の同意の範囲内の編集であると認めるのが相当であると判断。本件各編集は本件原稿を違法に改変するものではないと判断しています。

結論として、控訴人(一審原告)の主張は認められていません。

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■コメント

和歌山県岩出市の市議会が発行する議会だよりの原稿編集を巡って、市議会議員と市側とで紛争になっています。
原審同様、原告の主張は認められず、著作権侵害性が否定されています。
市議会での質疑を内容とする簡易な議事録のような発行物の性質上、文字数も制限されており、元原稿はかなり編集が加えられる場面があるかと想像されます。

原告市議は、ブログを書かれておいでで、その記載からしますと、平成26年3月号(第31号)の13頁部分になるかと思います。内容としては、上下水道料金について質問し、上下水道局長と市長が質問に対して答弁をしています。

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■参考サイト

いわで議会だより改ざん・・・・・・著作権侵害|ひろちゃん(尾和弘一)のブログ
議会だより 岩出市
議会だより 岩出市 平成26年3月号(第31号)PDF

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2016年07月19日

歴史小説テレビ番組事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

歴史小説テレビ番組事件(控訴審)

知財高裁平成28.6.29平成27(ネ)10042著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    片岡早苗
裁判官    古庄 研

*裁判所サイト公表 2016.7.7
*キーワード:歴史小説、テレビ、著作物性、翻案、複製、氏名表示権、同一性保持権

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■事案

歴史小説を無断でBSテレビ番組として制作したかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :歴史小説作家(直木賞受賞作家)
被控訴人(一審被告):テレビ・ラジオ番組企画制作会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、19条、20条

1 著作権(翻案権、複製権)侵害の成否
2 著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)侵害の成否
3 許諾の有無
4 損害発生の有無及びその額

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人が控訴人の著作物である原告各小説を無断で翻案ないし複製して被告各番組を制作して,控訴人が有する著作権(翻案権,複製権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)を侵害したと主張して,被控訴人に対し,著作権法112条1項に基づき,被告各番組の公衆送信及び被告各番組を収録したDVDの複製,頒布の差止めを求めるとともに,民法709条に基づく損害賠償金3200万円及びこれに対する平成25年6月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
 原審は,控訴人の請求のうち,被告番組1−3−1,被告番組2−5−6,被告番組3−4−6,被告番組4侵害認定表現部分及び被告番組5侵害認定表現部分が,それぞれ,控訴人の保有する原告各小説に係る著作権(複製権,翻案権)を侵害すると認めて,被告各番組の公衆送信の差止め,同番組を収録したDVDの複製又は頒布の差止め,及び,30万8659円の損害賠償金(遅延損害金を含む。)の支払について認容し,その余の請求を棄却した。
 控訴人は,損害賠償金の支払が認められなかった部分についてのみ控訴した。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 著作権(翻案権、複製権)侵害の成否

(1)控訴人の主張の変更について

控訴人は、控訴審において原審で主張した著作権侵害のうち、「シークエンスの翻案」の一部について各ストーリーを構成する表現の内容を変更しました。これに対して、被控訴人は、控訴人においてシークエンスの翻案についての選択する記述及び配列を修正することは、時機に後れた攻撃防御方法であって許されないと反論しました。
この点について、控訴審は、変更部分については創作性の有無や類否に関する審理を再び行わなければならないことなどを前提に、変更の時期や2年6か月の審理といった経緯を踏まえ、訴訟完結遅延が明白であるとして、時機に後れた攻撃防御方法と判断。控訴人の変更の主張を却下しています(17頁以下)。

(2)シークエンスの翻案について

被告各番組が、原告各小説のシークエンスのストーリーの翻案に当たるとはいえないと控訴審は判断しています(20頁以下)。

(3)人物設定の翻案について

控訴人は、著作権法で保護する人物設定であるためには、登場人物に具体的な「性格、思想、道徳、経済観念、経歴、境遇、容姿等」を与えればよいのであって、原告小説2の6人の登場人物についての人物設定は、いずれもかかる要件を満たすとして、著作権法で保護されるべきものである旨主張しました(34頁以下)。
この点について、控訴審は、原告小説2の6人の登場人物は、いずれも歴史上の実在の人物であり、具体的な「性格」等を与えるだけでは単なる歴史上の事実か、歴史上の事実等についての見解や歴史観にすぎないから、著作権法の保護の対象となるとはいえないと説示した上で、人物設定の具体的記述における表現の創作性を個別に検討。
結論として、控訴人の主張はいずれも認められていません。

(4)エピソードの翻案について

控訴人は、控訴人が主張する原告各小説の各エピソードは5つのWを備えた個々の行動や出来事を複数組み合わせたものであって、翻案権の保護範囲であるストーリーであると主張しました(41頁以下)。
この点について、控訴審は、原告各小説は歴史小説であり、個々の行動や出来事を複数組み合わせたというだけであれば、単なる歴史上の事実や歴史上の事実等についての見解や歴史観にすぎないこともあるとして、それのみで著作権法の保護の対象となるとはいえないと説示。その上で、各エピソードについて、歴史上の事実又はそれについての見解や歴史観が具体的記述において創作的に表現されたものであるか否かをその事実の選択や配列、歴史上の位置付け等を踏まえて検討しています。
結論として、控訴人の主張はいずれも認められていません。

(5)部分複製について

原審同様、控訴審においても、原告各小説の部分と被告各番組との共通する表現はいずれもありふれたものであるなどととして、控訴人の主張は認められていません(48頁以下)。

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2 著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)侵害の成否
3 許諾の有無
4 損害発生の有無及びその額

争点2乃至4について、原審の判断が控訴審でも維持されています。
結論として、控訴は棄却されています。

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■コメント

控訴審でも原審の判断が維持されていて、損害額の認定に変更は生じていません。

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■過去のブログ記事

2015年03月09日 原審記事

written by ootsukahoumu at 07:19|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年07月14日

「aiko」音楽原盤グヌーテラ送信発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「aiko」音楽原盤グヌーテラ送信発信者情報開示請求事件

東京地裁平成28.6.23発信者情報開示請求事件PDF
別紙

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官    萩原孝基
裁判官    中嶋邦人

*裁判所サイト公表 2016.7.7
*キーワード:発信者情報開示請求、送信可能化権

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■事案

グヌーテラファイル交換ソフトやそれと互換性のあるソフトウェアを利用して音楽原盤の無断送信可能化した点についてプロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報開示請求の可否が争点となった事案

原告:レコード会社ら4社
被告:インターネット接続プロバイダ事業者

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■結論

請求認容

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■争点

条文 プロバイダ責任制限法4条、著作権法96条の2

1 明らかな著作権侵害の有無
2 開示を受けるべき正当な理由の有無

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■事案の概要

『本件は,レコード製作会社である原告らが,一般利用者に対してインターネット接続プロバイダ事業等を行っている被告に対し,原告らが送信可能化権を有するレコードに収録された楽曲を氏名不詳者が無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信し得る状態にすることにより,原告らの送信可能化権が侵害されたと主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である。』(4頁)

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■判決内容

<争点>

1 明らかな著作権侵害の有無

裁判所は、インターネット接続サービスを利用して本件IPアドレスの割当てを受けてインターネットに接続していた者(本件各契約者)が、Gnutella及びこれと互換性のあるソフトウェアのネットワークを介して各音楽ファイルを多数の者に対し送信可能な状態にしており、本件において、著作権法102条1項により準用される同法30条以下に定める著作隣接権の制限事由が存在することはうかがわれないことから、本件各契約者が各原告の本件各レコードに係る送信可能化権(同法96条の2)を侵害したことが明らかであると判断しています(4頁)。

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2 開示を受けるべき正当な理由の有無

各原告は、本件各契約者に対して著作隣接権侵害を理由に損害賠償請求権等を行使することができるが、本件各契約者の氏名、住所等を覚知する手段が他にあるとうかがわれないことから、本件発信者情報を有し、この情報に関してプロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たる被告に対して、その開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断。
結論として、各原告の本件各契約者の氏名、住所及び電子メールアドレスについての開示請求が認められています(4頁)。

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■コメント

aikoやいきものがかり、安室奈美恵、嵐のCDを違法にアップロードしていた事案となります。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成26.6.25平成26(ワ)3570発信者情報開示請求事件
音楽原盤グヌーテラ送信発信者情報開示請求事件


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■追記(2016.07.26)


aiko「ひとりよがり」発信者情報開示請求事件(対朝日ネット)
東京地裁平成28.7.19平成28(ワ)14508発信者情報開示請求事件
判決文PDF
written by ootsukahoumu at 06:37|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年07月11日

フリーペーパー写真事件−著作権 売掛金請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

フリーペーパー写真事件

知財高裁平成28.6.23平成28(ネ)10026売掛金請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    寺田利彦

*裁判所サイト公表 2016.6.29
*キーワード:写真、複製、公衆送信、氏名表示権

原審:水戸地方裁判所龍ケ崎支部平成27年(ワ)第24号(裁判所サイト未登載)

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■事案

写真の使用範囲について、フリーペーパーを越えてウェブ使用まで許諾していたかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :カメラマン
被控訴人(一審被告):冊子発行人

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■結論

原判決変更

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■争点

条文 著作権法21条、19条、20条、114条3項

1 複製権侵害、公衆送信権侵害の成否
2 同一性保持権侵害、氏名表示権侵害の成否
3 損害の発生及び額

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,被控訴人に対し,(1)被控訴人が,控訴人の著作物である写真48点(ただし,別紙において「原告撮影」と特定された写真50点の元となる各写真を指す。かき氷の写真3点はいずれも同一の写真をトリミングしたものであるため,元となる写真は全48点となる。以下,これらの各写真を「本件各写真」という。)を使用して作成した小冊子「ARCH」(以下「本件冊子」という。)を,控訴人の許諾を得ることなく電子データ化し,これを被控訴人が管理運営する特定非営利活動法人ちゃんみよTVのホームページに掲載した行為(以下,被控訴人が作成した本件冊子の電子データを「本件電子データ」,本件電子データを掲載した前記ホームページを「本件ホームページ」,本件電子データを作成して本件ホームページに掲載した被控訴人の行為を「本件ホームページ掲載行為」という。)は,控訴人が有する本件各写真の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害する,(2)本件冊子において,被控訴人が,控訴人に無断で本件各写真の一部をトリミングし,本件冊子の2頁に「カメラマンX’」と表示した行為は,控訴人が有する本件各写真の著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)を侵害すると主張して,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金814万2800円(著作権侵害による財産的損害314万2800円,著作者人格権侵害による精神的損害500万円)及びこれに対する平成26年11月1日(不法行為の後の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である(なお,控訴人は,著作者人格権侵害の態様として,公表権侵害も主張していたが,当審の口頭弁論期日において,かかる主張は撤回した。)。
 原審は,控訴人の請求を全部棄却したので,控訴人が,控訴の趣旨記載の裁判を求めて控訴した。』

<経緯>

H26.06 原被告間で撮影契約締結
H26.07 本件冊子発行
H26.08 被控訴人が本件冊子のPDFをホームページに掲載
H26.09 被控訴人が撮影料3万円振込。控訴人が29万円支払要求
     控訴人が本件契約解除通知
H26.12 控訴人が民事調停申立

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■判決内容

<争点>

1 複製権侵害、公衆送信権侵害の成否

控訴人撮影の写真の使用範囲について、控訴審は、本件冊子を越えて本件ホームページ掲載についても明示の許諾はむろん、黙示の許諾があったとは認められないとした上で、被控訴人の過失、行為の違法性を肯定。著作権侵害性を認定しています(8頁以下)。

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2 同一性保持権侵害、氏名表示権侵害の成否

控訴人は、本件冊子において、控訴人に無断で本件各写真50点中33点の写真がトリミングされ、また、本件冊子2頁に「カメラマン X’」と控訴人の氏名が表示されたと主張しました(13頁以下)。
この点について、控訴審は、控訴人は本件冊子の作成中、「冊子のデザイン」や「写真の使い方(トリミング)」等に疑問を感じて被控訴人にクレームを付けたものの、最終的には本件冊子の発行を承諾していること、また、発行日当日に自ら本件冊子を受け取り、その内容を確認した上で被控訴人に対し撮影料を請求する意思がある旨を伝えたこと、の各事実が認められ、その撮影料を請求したメッセージの文面からしても、何ら写真がトリミングされたことや氏名表示の態様について抗議の意思は示されていないと認定。
控訴人は、本件冊子の発行前にその校正刷りを確認し、本件各写真50点中、控訴人が主張する33点の写真がトリミングされている事実やその氏名表示の態様を具体的に認識し把握した上であえて本件冊子の発行を承諾したものと認めるのが相当であると判断。
結論として、控訴人が主張する写真のトリミングや氏名表示の点については、控訴人の同意があったというべきであるとして、控訴人が有する本件各写真の同一性保持権及び氏名表示権を侵害するものとは認められないとしています。

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3 損害の発生及び額

本件著作権侵害に基づく使用料相当額(著作権法114条3項)として5万円が認定されています(14頁以下)。

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■コメント

控訴人と被控訴人との間で本件ホームページ掲載行為以前から本件冊子の編集方針(写真の使い方)や本件各写真の撮影料の支払を巡って争いが生じており(11頁参照)、民事調停申し立て、そして訴訟にまで至った事案となります。
地域活性化の一環として地域の祭り(牛久かっぱ祭り)で配布することを念頭に作成されたフリーペーパー向けにボランティアワークとして無償で撮り下ろした写真について、紙媒体を越えてウェブで利用されたということで原審全部棄却の判断から一転、控訴審では侵害性が一部肯定されています。

紙媒体の冊子をそのままPDFにしてウェブで利用することは、現状の雑誌広告写真の利用態様(改変無しの媒体変換については、包括許諾)からすると、広告現場感覚としては通常で、侵害性肯定の点は、ウェブ利用前から紛争状態であったという本件での事例判断かと考えられます。
いずれにしても、判決文を読む限り、ボランティアでの冊子発行ということで、なれ合いのなかでフリーペーパーを制作しており、発行者側にも著作物の利用について脇が甘く、また、写真家も29万円(交通費など地元での撮影だとすれば経費もさほど掛かってはいないと思われますが)の撮影料を請求している点も含めプロ(どの程度著名なかたか分かりませんが)としては理解が得られない対応で、5万程度の損害額認定は落としどころとしては納得感があります。
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2016年07月08日

JAXAスペースプレーンイラスト事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

JAXAスペースプレーンイラスト事件(控訴審)

知財高裁平成28.6.27平成28(ネ)10005著作権侵害差止等請求控訴事件PDF
知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中村 恭
裁判官    森岡礼子

*裁判所サイト公表 2016.7.01
*キーワード:イラスト、著作物性、二次的著作物性、契約

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■事案

宇宙輸送システム「スペースプレーン」イラストの著作物性が争点となった事案の控訴審

(一審原告):イラストレーター
(一審被告):JAXA、出版社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条1項11号、11条

1 本件イラストの原著作物性
2 本件イラストの二次的著作物性

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■事案の概要

『本件は,本件イラストの著作権を有すると主張する控訴人が,(1)被控訴人JAXAが本件イラストのサイズを変更して展示用パネルを制作し,展示した行為,(2)被控訴人JAXAが本件イラストを被控訴人JAXAのウェブサイトに掲載した行為,(3)被控訴人JAXAが本件イラストの複製物を被控訴人小学館に交付し,被控訴人小学館が,同複製物を用いて本件イラストの掲載された被控訴人各書籍を出版した行為が,それぞれ,控訴人の著作権(前記(1)の行為につき複製権,翻案権,前記(2)の行為につき公衆送信権,前記(3)の行為につき複製権,翻案権,譲渡権)及び著作者人格権(前記(1)〜(3)の行為につき氏名表示権,同一性保持権)を侵害すると主張して(なお,控訴人は,前記(3)の行為は,被告らの共同不法行為に当たると主張している。),(1)著作権法112条1項に基づき,被控訴人らに対して本件イラストの複製又は翻案の差止めを求め(前記第1の2),被控訴人JAXAに対して本件イラストの自動公衆送信の差止めを求め(前記第1の4),被控訴人小学館に対して被控訴人各書籍の複製,頒布の差止めを求め(前記第1の5),(2)同条2項に基づき,被控訴人JAXAに対して前記展示用パネル,本件イラストが描かれたポジフィルム,その他印刷用フィルム等及び本件イラストの電子データが格納された記憶媒体の廃棄を求め(前記第1の3),被控訴人小学館に対して被控訴人各書籍,本件イラストが描かれたポジフィルム,その他印刷用フィルム等及び本件イラストの電子データが格納された記憶媒体の廃棄を求め(前記第1の6),(3)著作権及び著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,被控訴人らに対して連帯して損害賠償金301万9460円((1)被控訴人書籍1に係る前記行為(3)による損害29万9775円(著作権法114条3項),(2)被控訴人書籍2に係る前記行為(3)による損害29万9775円(同項),(3)慰謝料200万円,(4)弁護士費用41万9910円)及びうち271万9685円(前記(1),(3)及び(4))に対する不法行為後である平成13年12月1日(被控訴人書籍1が発行された日)から,うち29万9775円(前記(2))に対する不法行為後である平成17年7月20日(被控訴人書籍2が発行された日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(前記第1の7),被控訴人JAXAに対して損害賠償金159万9550円((1)前記行為(2)による損害29万9775円(同項),(2)前記行為(1)による損害29万9775円(同項),(3)慰謝料100万円)及びうち29万9775円(前記(1))に対する不法行為後である平成13年12月1日(本件イラストがウェブサイトに掲載された日)から,うち129万9775円(前記(2)及び(3))に対する不法行為後である平成15年10月30日(前記展示用パネルが制作された日)から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(前記第1の8),(4)著作者人格権侵害に基づく名誉回復等の措置として,著作権法115条に基づき,被控訴人らに対して本件広告を掲載するよう求めた(前記第1の9)事案である。』(3頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件イラストの原著作物性

本件イラストの原著作物性について、控訴人は、最終的にNALシステム構成図を見て本件イラストを完成させたとしても、それ以前に別のイラストを作成してそれをNALシステム構成図に似せて本件イラストを作成したのであるから、NALシステム構成図に依拠して本件イラストを作成したものであるとは評価できない旨主張しました。
この点について、控訴審は、
・本件イラストの原案として作成したと主張する甲12の1のイラストと本件イラストとの対比
・本件イラストとNALシステム構成図との対比

といった点から、甲12の1のイラストを原案として本件イラストの作成に利用する場合、機体全体の輪郭を含むイラストの線画の主要な部分を大きく変更する必要があるとともに、色彩も相当変更する必要があり、別案を作るに近い作業が必要になるのに対して、NALシステム構成図を原案として本件イラスト作成に利用する場合、そこまでの作業は必要なく、部分的な修正で足りるといえると判断。
そして、仮に、控訴人が甲12の1のイラストを本件イラストの作成に何らかの形で利用したとしても、そのことをもって、本件イラストがNALシステム構成図に依拠することなく制作されたといえるものではないと判断。
結論として、本件イラストはNALシステム構成図に依拠して制作されたものというべきであり、本件イラストが控訴人の原著作物とは認められないとしています(13頁以下)。

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2 本件イラストの二次的著作物性

本件イラストとNALシステム構成図の相違点の全てを考慮に入れてもなお、本件イラストにおいて、NALシステム構成図の表現上の本質的な特徴が損なわれたとはいえないと控訴審は判断。また、思想又は感情の創作的な表現が新たに加わって二次的著作物が創作されるに至ったとも認められないとして、本件イラストにおいてNALシステム構成図との同一性は失われていないと認められると判断。
控訴人の本件イラストの二次的著作物性を否定しています(14頁以下)。

結論として、原審の棄却の判断が相当であるとされています。

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■コメント

結論としては、原審同様、控訴審でも本件イラストがNALシステム構成図に依拠して制作されたことが認められ、棄却の判断となっています。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成27.12.25平成27(ワ)6058著作権侵害差止等請求事件
2016年01月12日 原審記事
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2016年07月07日

カラー版怪獣ウルトラ図鑑復刻版事件(控訴審)−著作権 著作権侵害差止等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

カラー版怪獣ウルトラ図鑑復刻版事件(控訴審)

知財高裁平成28.6.29平成28(ネ)10019著作権侵害差止等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    柵木澄子
裁判官    片瀬 亮

*裁判所サイト公表 2016.6.30
*キーワード:契約、動機の錯誤、氏名表示権

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■事案

復刻版の書籍に掲載されたイラストの許諾の有無などが争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :イラストレーター
被控訴人(一審被告):出版社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法19条、民法95条

1 本件書籍発行についての控訴人の許諾の有無
2 控訴人の許諾についての錯誤の有無
3 本件書籍における氏名表示権侵害の有無

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■事案の概要

『本件は,控訴人が,原判決別紙イラスト目録記載のイラスト(本件イラスト)の著作者であるところ,被控訴人による原判決別紙書籍目録記載の書籍(本件書籍)の複製等は,控訴人の有する本件イラストに係る著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為である旨主張して,被控訴人に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,本件書籍の複製等の差止め,(2)同条2項に基づき,本件書籍及びその印刷用原版の廃棄,(3)著作権及び著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金737万円(印税相当額の損害570万円,慰謝料100万円及び弁護士費用67万円の合計額)及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年6月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』

『原判決は,控訴人は被控訴人に対して本件書籍の発行を許諾したところ,同許諾につき控訴人に錯誤があったということはできず,また,氏名表示権の侵害があったということもできないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
 そこで,控訴人が,原判決を不服として控訴したものである。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 本件書籍発行についての控訴人の許諾の有無

控訴人は、原書籍の存在すら知らず、被控訴人の担当者から本件書籍の内容の提示も受けていないから、原書籍に掲載され、本件書籍での使用許諾を求められているのが本件イラストであるとは知らなかった、むしろ、本件書籍での使用について許諾を求められているイラストは、本件イラストのような「特集ページ」に掲載されたものではなく、「記事ページ」に掲載されたものであると理解していたなどとして、控訴人と被控訴人との間では前提とする許諾の目的物が異なっていたから、意思の合致はなく、控訴人と被控訴人との間で本件イラストの使用につき許諾が成立することはない旨主張しました(11頁以下)。

この点について、控訴審は、被控訴人と控訴人との間において許諾の対象が一致していなかったということはできないとして、控訴人の主張を認めていません。

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2 控訴人の許諾についての錯誤の有無

控訴人は、本件書籍での使用について許諾を求められているイラストがどのようなものであるかを知らずに「特集ページ」ではなく「記事ページ」のイラストであると誤解していたから、仮に控訴人が許諾をしたものとされるとしてもその意思表示には錯誤がある旨主張しました(13頁以下)。

この点について、控訴審は、許諾の対象について錯誤があったということはできないと判断しています。

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3 本件書籍における氏名表示権侵害の有無

本件書籍における氏名表示の方法は、2ページの目次の左側に「さし絵」と記載した欄があり、そこに控訴人を含む6名の氏名を列記するというものでした。
控訴人は、本件書籍におけるようにイラストごとに著作者名を表示するのではなく、特定のページにその氏名をまとめて表示した場合、どのイラストを誰が描いたのか全く分からないとして、このような方法は著作権法19条が氏名表示権を規定する趣旨を没却するものであり許されない旨主張しました(14頁以下)。

この点について、控訴審は、

(1)本件書籍がテレビ番組に登場する主人公、武器、怪獣等を専ら子供向けに紹介する図鑑であり、本文を構成する約170ページのほとんどのページに大なり小なりイラスト又は写真が掲載されている
(2)本件書籍の原書籍においても、本件書籍におけるのと同様の表示がされていた
(3)単行本として発行される図鑑や事典において、そこに含まれるイラストの著作者が複数いる場合、イラストごとにそれに対応する作成者の氏名を表示せず、冒頭や末尾に一括して作成者の氏名を表示することも一般的に行われている

といった点から、本件書籍の内容や体裁において、イラストごとにそれに対応する作成者の氏名が表示されていなければ氏名表示がされたことにならないとまでいうことはできないとして、本件書籍における氏名表示の方法が公正な慣行に反して控訴人の本件イラストに係る氏名表示権を侵害するものであるということはできないと判断しています。

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■コメント

原審同様、棄却の判断となっています。

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■過去のブログ記事

2016年02月01日 原審記事


written by ootsukahoumu at 06:40|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年07月06日

自動接触角計プログラム事件(控訴審)−著作権 損害賠償等、著作権侵害差止等、損害賠償(反訴)請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自動接触角計プログラム事件(控訴審)

知財高裁平成28.4.27平成26(ネ)10059損害賠償等、著作権侵害差止等、損害賠償(反訴)請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    柵木澄子
裁判官    鈴木わかな

*裁判所サイト公表 2016.6.28
*キーワード:プログラム、著作物性、複製、翻案、営業秘密、営業誹謗行為

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■事案

接触角計測装置のプログラムを巡って退職従業員らと著作権侵害性や営業秘密管理性が争点になった事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人(一審原告):測定機器企画設計製造会社、各種機械装置開発製造会社、原告退職従業員
被控訴人兼附帯控訴人(一審被告):理化学機器の開発設計製造会社

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■結論

控訴棄却、附帯控訴変更

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、27条、不正競争防止法2条6項、2条1項7号、8号、14号

1 著作権に基づく請求
2 営業秘密に係る不正競争防止法に基づく請求
3 不法行為に基づく請求
4 労働契約上の債務不履行に基づく請求
5 損害額
6 不当利得(退職金)返還請求
7 不当訴訟による損害賠償請求
8 虚偽事実の告知に係る不正競争防止法に基づく請求

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■事案の概要

『(1)原審の事案の概要(略)
(2)原判決の内容
ア 原審A事件
原判決は,被告旧接触角計算(液滴法)プログラムは,プログラムの著作物である原告接触角計算(液滴法)プログラムを複製又は翻案したものと認められる旨を判示して,被控訴人のA事件請求を,控訴人ニック及び控訴人Xに対し,損害賠償として,連帯して190万1258円及びこれに対する平成23年12月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で一部認容し,その余はいずれも棄却した。
イ 原審B事件
原判決は,(1)被告新接触角計算(液滴法)プログラムは,原告接触角計算(液滴法)プログラムを翻案したものであるとは認められない,(2)原告ソースコード及び原告アルゴリズムは,不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当せず,また,控訴人Xが,原告ソースコードを被控訴人から持ち出し,控訴人ニックに開示したとも認められない,(3)原告ソースコード及び原告アルゴリズムは,「秘密保持に関する誓約書」にいう秘密情報に該当するとは認められず,また,控訴人Xが,原告ソースコードを被控訴人から持ち出したとも認められない,(4)控訴人Xに非違行為があったとは認められない旨を判示して,被控訴人のB事件請求をいずれも棄却した。
ウ 原審C事件
原判決は,(1)被控訴人のB事件の訴訟提起は,不法行為には当たらない,(2)被控訴人の本件告知1及び2の掲載,本件告知文書A及びBの送付は,不正競争防止法2条1項15号には該当しない旨を判示して,控訴人ニック及び控訴人あすみ技研のC事件請求をいずれも棄却した。

(3)控訴及び附帯控訴の内容
控訴人らは,原判決中の敗訴部分を不服として,その取消しを求めて本件控訴を提起し,請求の一部を減縮した。また,被控訴人は,附帯控訴して,原判決中の敗訴部分の取消しを求め,請求の一部を減縮した。』(7頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 著作権に基づく請求

原審同様、被告旧接触角計算(液滴法)プログラムは、原告接触角計算(液滴法)プログラムを複製又は翻案したものであると判断。また、被告新接触角計算(液滴法)プログラムが原告接触角計算(液滴法)プログラムを翻案したものではないと控訴審は判断。
結論として、原審A事件について、控訴人ニック及び控訴人Xには、著作権侵害について故意又は過失があるとして、被控訴人に対して著作権侵害による損害賠償責任を負い、原審B事件について、著作権侵害に基づく差止め及び廃棄請求並びに損害賠償請求は、いずれも理由がないと判断しています(51頁以下)。

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2 営業秘密に係る不正競争防止法に基づく請求

(1)被告旧バージョンに係る請求(原審A事件)

(ア)控訴人Xの不正競争
営業秘密の不正使用、不正開示の肯否について、控訴人Xの行為は、被控訴人の営業秘密に該当する原告ソースコードに関して不正競争防止法2条1項7号に該当すると判断しています。

(イ)控訴人ニックの不正競争
控訴人ニックは、原告ソースコードについて不正開示行為であることを知ってこれを取得又は使用したものと認めることができるとして、控訴人ニックの行為は不正競争防止法2条1項8号の不正競争に該当すると判断しています。

(2)被告新バージョンに係る請求(原審B事件)

控訴人Xの行為や控訴人ニックの行為、ひいては、控訴人あすみ技研の行為は、不正競争によって被控訴人の営業上の利益を侵害する行為に該当するということはできないとして、被控訴人の被告新バージョンに係る差止め及び廃棄請求並びに損害賠償請求はいずれも理由がないと判断しています(72頁以下)。

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3 不法行為に基づく請求

被告旧バージョンに係る請求(原審A事件)について、民法709条にも該当すると判断。被告新バージョンに係る請求(原審B事件)については、不法行為に基づく損害賠償請求はいずれも理由がないと判断しています(90頁以下)。

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4 労働契約上の債務不履行に基づく請求

控訴人Xが、被控訴人を退職するに際して被控訴人の機密及び秘密情報に該当する原告ソースコードを廃棄せず、退職後も保有して被控訴人に返還しなかったことは、労働契約上の秘密保持義務違反の債務不履行に該当すると控訴審は判断。
被告旧バージョンに係る請求(原審A事件)について、控訴人Xには被控訴人の機密及び秘密情報に該当する原告ソースコードに関して、労働契約上の秘密保持義務違反の債務不履行を認定。これに対して、被告新バージョンに係る請求(原審B事件)については、債務不履行による損害賠償請求は認められていません(92頁以下)。

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5 損害額

調査費用84万円、弁護士費用額30万円の合計304万9890円が認定されています(93頁以下)。

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6 不当利得(退職金)返還請求

受領した退職金の返還請求について、被控訴人の原審B事件請求は、控訴人Xに対して不当利得返還請求権に基づき44万3131円及び平成24年10月20日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があると判断されています(98頁以下)。

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7 不当訴訟による損害賠償請求

B事件に係る訴訟提起が不法行為を構成するか否かについて、控訴人ニック及び控訴人あすみ技研の不当訴訟に基づく損害賠償請求はいずれも理由がないと判断されています(100頁以下)。

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8 虚偽事実の告知に係る不正競争防止法に基づく請求

本件各告知行為が虚偽の事実の告知又は流布に当たるか否かについて、控訴人ニック及び控訴人あすみ技研の不正競争防止法に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がないと判断されています(103頁以下)。

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■コメント

控訴人Xらによる営業秘密の不正使用等が原審に反し控訴審では肯定されており、控訴人Xの労働契約上の債務不履行も認められて損害額が増額の方向で変更されています。また、それに伴い控訴人Xの退職金の返還請求も控訴審では認められています。

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■過去のブログ記事

2014年06月10日 原審記事

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■参考サイト

協和界面科学株式会社 平成28年5月10日プレスリリース
株式会社ニックに対する訴訟(地裁・高裁)に関するお知らせ

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2016年06月28日

メガネ商品広告写真事件−著作権 売掛金請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

メガネ商品広告写真事件

知財高裁平成28.6.23平成28(ネ)10025売掛金請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    杉浦正樹
裁判官    寺田利彦

原審:千葉地方裁判所松戸支部平成27年(ワ)第209号(裁判所サイト未掲載)

*裁判所サイト公表 2016.6.24
*キーワード:写真、広告、著作物性

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■事案

メガネの商品広告写真の著作物性などが争点となった事案

控訴人(一審原告) :個人
被控訴人(一審被告):会社

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号

1 写真の著作物性

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■事案の概要

『本件は,原判決別紙写真目録記載(4),(5),(7)ないし(14),(17)ないし(25),(27),(30),(32),(34)及び(36)ないし(38)の各写真データである本件写真データにつき控訴人が著作権を有するにもかかわらず,被控訴人が本件写真データを使用して作成したチラシをメガネサロントミナガのホームページである本件ホームページに掲載した行為は控訴人の著作権(複製権)を侵害する旨主張して,控訴人が,被控訴人に対し,著作権侵害の不法行為による損害賠償及びこれに対する不法行為の日より後の日である平成27年3月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
『原判決は,本件写真データは思想又は感情を創作的に表現したものとは認められず,著作物性があるとはいえない旨判示して,控訴人の請求を棄却した。控訴人はこれを不服として控訴した。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 写真の著作物性

原審同様、写真の著作物性(著作権法2条1項1号)を否定しています。

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■コメント

原審の判断内容を確認できていないため、当事者の属性や紛争に至る経緯が明確ではありませんが、チラシ使用目的で撮影した画像をウェブサイトに流用されたため、二次使用料を請求した、といった状況でしょうか(売掛金請求というのも、よく分かりませんが)。
商品広告写真の著作物性については、スメルゲット事件知財高裁判決(知財高裁平成18年3月29日平成17年(ネ)第10094号請負代金請求控訴事件)が先例としてありますが、被告メガネショップのサイトのウェブチラシを参考に見てみると、よくあるメガネフレームの商品写真で、ライティングや切り抜きに一定の手間暇は掛かっているかと推察されるものの、著作物性を認めるほどのものでもない、との印象を受けます。
また、仮に著作物性を認めても、撮影契約内容として、ウェブチラシへの流用が許容されていたかどうかは、最近のマルチユースが常態の広告業界では、本事案のような場合は、紙媒体だけの使用だった、との認定は難しいのではないか、とは思われます。

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2016年06月24日

「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件−著作権 印税等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「中日英ビジネス用語辞典」出版契約事件

東京地裁平成28.3.29平成27(ワ)24749印税等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    広瀬達人

*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:出版契約、印税支払時期

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■事案

ビジネス辞典の編著者が印税未払いを理由として出版社を訴えた事案

原告:個人
被告:出版社

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■結論

請求却下、棄却

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■争点

条文 民法415条、民法709条

1 職権による検討
2 印税支払請求権の有無
3 不法行為の成否及び損害額

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■事案の概要

『本件は,被告から出版された「中日英ビジネス用語辞典 会計・金融・法律」(以下「本件書籍」という。)の編著者である原告が,被告との間で締結した本件書籍の出版契約(以下「本件契約」という。)に基づく印税が未払であるなどと主張して,被告に対し,(1)本件契約に基づく印税140万円及びこれに対する支払日である平成26年5月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(上記第1の1。以下「本件請求1」という。),(2)被告による印税の過少申告という不法行為に基づく損害賠償金1080万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成27年9月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(上記第1の2。以下「本件請求2」という。)をそれぞれ求めるとともに,(3)本件契約17条に係る文言についての原告の解釈が正しいことを認めるよう求め(第1の3。以下「本件請求3」という。),また,(4)本件契約18条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について,本件契約が定める保存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める(第1の4。以下「本件請求4」という。)事案である。』
(2頁)

<経緯>

H18.07 原被告間で本件書籍出版契約(本件契約)締結
H26.04 被告が本件書籍を出版

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■判決内容

<争点>

1 職権による検討

本件契約17条に係る文言についての原告の解釈が正しいことを認めるよう求める点(本件請求3)と、本件契約18条に規定する発行部数を証する全ての証拠書類について、本件契約が定める保存期間の満了日からさらに2年間延長することを求める点(本件請求4)については、裁判所は、本件請求3については、何ら具体的紛争の解決に資するものではなく確認ないし給付請求の対象として不適格であり、また、本件請求4については、請求の特定を欠くとして各争点について不適法却下としています(9頁以下)。

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2 印税支払請求権の有無

原告は、被告が本件書籍の初刷1000部を既に完売し、本件書籍の増刷を既に複数回行っているとして、少なくとも本件書籍のうち初刷1000部完売の売上に相当する印税額140万円(7000円×1000部×20%)の支払いを主張しました(10頁以下)。
この点について、裁判所は、被告において本件書籍を増刷したことを裏付ける証拠は見当たらないと認定。
また、本件契約17条2項2.1後段により、被告の原告に対する印税の支払時期は、平成28年5月16日(本件書籍の奥付に記載された発行日である平成26年4月5日から2年を経過した月の翌月15日(平成28年5月15日)が日曜日であるので、その翌日)となるとして、原告の主張する印税支払請求権(履行期到来済みのもの)の存在は認められないと判断。
原告の印税支払請求は認められていません。

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3 不法行為の成否及び損害額

原告は、被告が原告に印税を過少申告したことが原告に対する不法行為に当たると主張しましたが、裁判所は、被告が原告に支払われるべき印税額を実際よりも低く伝えたとか、本件書籍の印刷部数ないし実売部数を実際よりも低く伝えたことを認めるに足りる証拠がないなどとして、原告の主張を認めていません(15頁)。

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■コメント

2014年4月5日刊行の「中日英ビジネス用語辞典 会計・金融・法律」について、編著者が出版社に対して、印税未払いなどを争点に提訴した事案となります(本人訴訟)。
本書は、「現代のグローバルビジネスの現場で使われているビジネス用語を、中・日・英の3カ国語の対訳形式で収録」したもので、編著者は上海出身で、日本のメーカーに勤務するなどして国際ビジネスの実務に携わったかたです。


written by ootsukahoumu at 05:40|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年06月22日

催眠術DVD事件(控訴審)−著作権 損害賠償等請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

催眠術DVD事件(控訴審)

知財高裁平成28.6.9平成28(ネ)10021損害賠償等請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第3部
裁判長裁判官 鶴岡稔彦
裁判官    大西勝滋
裁判官    杉浦正樹

*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:損害論、みなし侵害行為

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■事案

催眠術DVDを無断複製してヤフオクで販売してた個人に対する損害額が争点となった事案の控訴審

控訴人 (一審原告):グラフィックデザイン会社、会社代表者
被控訴人(一審被告):個人

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 著作権法113条6項、民法709条

1 控訴人会社の損害の発生及びその額
2 被控訴人の行為が控訴人Xの著作者人格権のみなし侵害行為に当たるか
3 控訴人Xの著作者人格権侵害による慰謝料額
4 謝罪広告の要否
5 控訴人Xの当審における追加請求の可否

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■事案の概要

『本件は,控訴人Xが創作し,控訴人会社が著作権を有する著作物(DVD)を被控訴人が無断で複製・販売したことが,控訴人会社の著作権(複製権,頒布権)を侵害するとともに,控訴人Xの名誉・声望を害する方法により上記著作物を利用したことを理由にその著作者人格権を侵害する行為とみなされるとして,控訴人らが被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償金(控訴人会社につき上記著作権侵害による財産的損害103万0448円,控訴人Xにつき上記著作者人格権侵害による慰謝料60万円)及びこれに対する不法行為の後である平成27年4月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,また,控訴人Xが,被控訴人に対し,著作権法115条に基づき,その名誉・声望を回復するための適当な措置として,謝罪広告の掲載を求めた事案である。』

『原判決は,控訴人会社の損害賠償請求については,被控訴人が控訴人会社の著作権(複製権,頒布権)を侵害する行為を行ったことを前提に,3万0448円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却した。また,控訴人Xの損害賠償請求及び謝罪広告請求については,被控訴人の行為は控訴人Xの著作者人格権のみなし侵害行為には当たらないとして,いずれも棄却した。
 そこで控訴人らは,原判決中の各敗訴部分を不服として本件控訴を提起した。そして,控訴人Xは,当審において,被控訴人が控訴人会社の著作権(複製権,頒布権)を侵害したことによって控訴人会社の代表者である控訴人Xが精神的苦痛を受けたとして,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償金(60万円の慰謝料)及びこれに対する不法行為の後である平成27年4月16日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める請求を,前記著作者人格権侵害による慰謝料請求と選択的なものとして追加した。』(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 控訴人会社の損害の発生及びその額
2 被控訴人の行為が控訴人Xの著作者人格権のみなし侵害行為に当たるか
3 控訴人Xの著作者人格権侵害による慰謝料額
4 謝罪広告の要否

争点1乃至4について、原審同様、控訴審でも控訴人会社の損害賠償請求3万0448円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で認められており、また、控訴人Xの著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求及び謝罪広告請求はいずれも理由がないと判断されています(5頁以下)。

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5 控訴人Xの当審における追加請求の可否

控訴人Xは、控訴審において、被控訴人が控訴人会社の原告著作物に係る著作権(複製権、頒布権)を侵害する不法行為を行ったことによって、控訴人会社の代表者としての控訴人Xが精神的苦痛を受けたとして、控訴人Xの被控訴人に対する慰謝料請求の根拠となる旨主張しました(6頁以下)。
この点について、裁判所は、

『控訴人Xの被控訴人に対する慰謝料請求が認められるためには,被控訴人の行為が控訴人Xとの関係で不法行為を構成することが必要であり,そのためには,被控訴人の行為が控訴人Xの権利又は法律上保護される利益を侵害するものであることが必要となる(民法709条)。しかるところ,被控訴人が原告著作物を複製・頒布した行為は,原告著作物の著作権者である控訴人会社との関係では,その権利(著作権)を侵害する不法行為を構成することが明らかであるものの,原告著作物の著作権者ではない控訴人Xとの関係では,同人のいかなる権利又は法律上保護される利益を侵害することになるのかが不明というべきである。控訴人Xは,自らが控訴人会社の代表者であり,控訴人会社の著作権侵害によって精神的苦痛を受けたことをその主張の根拠とするが,会社の代表者たる個人が,当該会社に帰属する著作権に関して当然に何らかの権利や法律上保護される利益を有するものではないから,控訴人Xが控訴人会社の代表者であることのみをもって,控訴人会社の著作権を侵害する行為が控訴人X個人の権利又は法律上保護される利益をも侵害することが根拠付けられるものではなく,そのほかにこれを根拠付け得る事情も認められない。』

として、控訴人会社の原告著作物に係る著作権(複製権、頒布権)侵害を理由とする控訴人Xの慰謝料請求には理由がないと判断しています。

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■コメント

控訴審でも原審と同様の判断となっています。

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■過去のブログ記事

2016年02月18日記事
東京地裁平成28.1.22平成27(ワ)9469損害賠償請求事件
催眠術DVD事件
written by ootsukahoumu at 08:37|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016 

2016年06月21日

ボディーバストネックレス事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ボディーバストネックレス事件

東京地裁平成28.2.25平成28(ワ)15789著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    広瀬達人

*裁判所サイト公表 2016.6.15
*キーワード:著作物性、複製、氏名表示権

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■事案

ネックレスの彫刻デザインの類否が争点となった事案

原告:ジュエリー作家
被告:ファッションブランド日本法人

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、22条、19条

1 複製権侵害の成否
2 氏名表示権侵害の成否

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■事案の概要

『本件は,ジュエリー作家である原告が,被告が輸入,販売する別紙物件目録記載のアクセサリー(以下「被告製品」という。)について,原告が制作した別紙写真一覧の写真(以下「本件写真1」〜「本件写真12」といい,これらを併せて「本件各写真」という。)に写った彫刻それ自体又は指輪に接着された彫刻部分(以下,これらを「原告彫刻」という。)を複製したものであるから,被告による被告製品の国内への輸入又は国内での販売は,原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為とみなされると主張して,被告に対し,著作権法(以下「法」という。)112条に基づき被告製品の輸入,販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに,著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づき損害賠償金合計2000万円(内訳は,逸失利益4200万円の一部である1200万円及び慰謝料800万円)及びこれに対する平成27年3月20日(原告の著作権侵害警告が被告に到達した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,さらに,法115条に基づき謝罪広告の掲載を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H25.02 原告が原告彫刻を作成
H26.09 セリーヌ社が被告製品を発表、販売

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■判決内容

<争点>

1 複製権侵害の成否

(1)類否について

原告彫刻は、乳白色の板状部材の表面に女性の裸体を表現した彫刻で、乳首のすぐ下と陰部のすぐ上の位置で胴体を上下に水平方向に直線でカットし、かつ、左乳房の中心付近で垂直方向に直線でカットしたものでした。
被告製品との類否について、裁判所は、原告彫刻と被告製品とは、女性の身体のカットの構図において共通の特徴がみられるものの、このような構図それ自体に創作性は乏しいと判断。
また、原告彫刻においては、全体に豊満で肉感的な印象を与えるものであるのに対して、被告製品は全体として平坦でひきしまった印象を与えるものであることが認められるところ、こうした相違からすると、被告製品から原告彫刻の表現上の特徴を直接感得することはできないと判断。
両者が類似しているとは認めていません(16頁以下)。

(2)依拠性について

「念のため」として、依拠性についても検討が加えられていますが、結論として認められていません(17頁以下)。

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2 氏名表示権侵害の成否

原告は、被告製品の形態が原告彫刻と寸分違わぬものであり、また、被告製品が原告彫刻に依拠して製作されたことを前提として、被告製品は国内で作成したとしたならば著作者人格権(氏名表示権)の侵害となるべき行為によって作成された物(法113条1項1号)に当たるから、被告が被告製品を輸入、販売、販売の申出をする行為は原告の氏名表示権を侵害する行為とみなされる旨主張しました。
しかし、裁判所は、被告製品が原告彫刻と類似しているとも、原告彫刻に依拠して製作されたとも認められないことから、被告製品は国内で作成したとしても原告の氏名表示権の侵害となるべき行為によって作成された物には当たらないとして、原告の主張を認めていません(20頁)。

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■コメント

平成26年9月28日、パリにおいてセリーヌ社が「CELINE 2015年春夏コレクション」を発表しましたが、その発表作品中に被告製品がありました。
ジュエリー目的でよくありそうなモチーフの彫刻作品となると、デッドコピーでもない限り、類否や依拠性の判断は、ハードルが高いかと思われます。

written by ootsukahoumu at 06:20|この記事のURLTrackBack(0)知財判決速報2016