2018年04月09日

写真素材集無断イラストトレース事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

写真素材集無断イラストトレース事件

東京地裁平成30.3.29平成29(ワ)672等損害賠償請求事件PDF
別紙1
別紙2

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    広瀬達人
裁判官    高櫻慎平

*裁判所サイト公表 2018.04.03
*キーワード:写真、イラスト、著作物性、複製、翻案、トレース

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■事案

写真からトレースしてイラスト化した場合の複製、翻案の限界事例

本訴原告兼反訴被告:ストックフォト会社
本訴被告兼反訴原告:同人誌制作者

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■結論

本訴、反訴請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、2条1項15号、27条

1 本件写真素材は著作物に当たるか
2 被告は本件写真素材に係る著作権を侵害したか
3 原告は本件写真素材の著作権者か
4 原告の請求が不法行為に当たるか

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告において原告の販売する写真素材を原告に無断でイラスト化して自らの作品に使用して販売した行為が,原告の当該写真素材に係る著作権(複製権,翻案権及び譲渡権)を侵害すると主張して,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償金62万3000円及びこれに対する不法行為後である平成28年10月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める(本訴)のに対し,被告が,本件本訴の提起を含む原告による過大な損害賠償請求等が不法行為に当たると主張して,原告に対し,不法行為に基づき,損害賠償金9万2200円及びこれに対する不法行為後である平成29年5月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(反訴)事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H19.11 原告が企画して本件写真素材「コーヒーを飲む男性」撮影
    原告が本件写真素材集CDを訴外ジーアンドイーを通じて販売
H27.10 被告が同人誌50冊販売
H28.07 被告が訴外ジーアンドイー、原告に謝罪
H28.10 原告が少額訴訟で提訴

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■判決内容

<争点>

1 本件写真素材は著作物に当たるか

本件写真素材「コーヒーを飲む男性」は、右手にコーヒーカップを持ち、やや左にうつむきながらコーヒーカップを口元付近に保持している男性を被写体としたものでしたが、裁判所は、写真の著作物性(著作権法2条1項1号)の意義について言及した上で、本件写真素材の著作物性を肯定しています(11頁以下)。

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2 被告は本件写真素材に係る著作権を侵害したか

原告は、被告が本件写真素材を原告に無断でトレースし、小説同人誌の裏表紙のイラストに使用して当該小説同人誌を販売した行為は、原告の本件写真素材に係る著作権(複製権、翻案権及び譲渡権)を侵害したものであると主張しました(12頁以下)。
この点について、裁判所は、複製及び翻案の意義について言及した上で、本件写真素材と本件イラストの相違点を検討。
結論として、『本件イラストは,本件写真素材の総合的表現全体における表現上の本質的特徴(被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等)を備えているとはいえず,本件イラストは,本件写真素材の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものとはいえない。』と裁判所は判断。
本件イラストは本件写真素材の複製にも翻案にも当たらず、被告は本件写真素材に係る著作権(譲渡権を含め)を侵害していないと判断されています。

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3 原告は本件写真素材の著作権者か

なお、念のため、として原告が本件写真素材の著作権者かどうかが検討されていますが、結論として、原告が本件写真素材の著作権者ではないと判断されています(14頁以下)。

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4 原告の請求が不法行為に当たるか

反訴請求において、被告は、一連の原告の行為及びこれに伴う原告の説明等が、民法90条によって禁止される暴利行為に当たる不当に高額な損害賠償金をあたかも正当なものであるかのように被告に誤信させる欺罔行為であって不法行為に当たる、と主張しましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(16頁以下)。

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■コメント

写真別紙1
別紙1
写真別紙2
別紙2

裁判所は和解を勧めたのでしょうが、原告が当初から高額な損害金を要求している(素材集CD販売価格が75枚入り4万円で1枚トレースしたところ、当初、損害金54万円を請求。その後29万円)経緯からすると、原告は受け容れなかったのでしょう。被告の依拠性が明らかな事案ですが、提訴をしても敗訴(完敗)の可能性があるという点では、著作権事案は結果の趨勢について予断を許さない紛争といえます。
また、そもそも論として、原告が本件写真素材の撮影者から著作権譲渡を受けていたのかどうかについて、本人訴訟ということもあって、原告側から十分な証拠が示されずに終わっています。
個人的な意見としては、別紙1と別紙2を比較してみると、トレースの限界事例で、イメージの盗用ともいえるレベルで東京地裁の結論と同じ、だからこそ和解しておいたほうが完敗はなかったかな、と考えるところです(和解しなかった結果として、判決が公開される公益はありますが)。
仮に(原告が著作権者であることが認定されて)知財高裁で判断された場合、著作権侵害性の肯否の結論がどちらになるかは分からず、写真からトレースしてイラスト化した場合の複製、翻案の限界事例として参考になります。
written by ootsukahoumu at 02:52|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年04月08日

データベースパッケージソフトウェア営業誹謗事件−著作権 著作権侵害行為差止等請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

データベースパッケージソフトウェア営業誹謗事件

東京地裁平成30.3.28平成27(ワ)21897著作権侵害行為差止等請求事件、平成28(ワ)37577損害賠償請求反訴事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    天野研司
裁判官    西山芳樹

*裁判所サイト公表 2018.3.30
*キーワード:データベース、著作物性、営業誹謗行為性、使用許諾契約

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■事案

データベース共有システムの使用許諾契約を巡って紛争となった事案

原告:情報処理サービス会社
被告:食料品日用雑貨販売会社

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■結論

本訴、反訴請求棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項10号の3、不正競争防止法2条1項15号

1 「eBASEserver」はデータベースの著作物であるか
2 「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースの著作権は本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していたか
3 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか
4 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、これにより原告の法的保護に値する利益が侵害されたか
5 本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるか
6 名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点について
7 不競法に基づく反訴請求に関連する争点について

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■事案の概要

1 本訴事件

下記ア(3)、イ及びウの各損害賠償請求は選択的併合の関係にある。

『ア 著作権侵害を原因とする請求
 被告がその管理するサーバ内に構築して顧客に提供している別紙1被告物件目録記載のデータベース(以下「被告データベース」という。)は,原告が著作権を有するデータベース((1)被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベース,又は(2)原告が開発したデータベースパッケージソフトウェア「eBASEserver」そのもの。原告は,この「eBASEserver」がデータベースの著作物に当たると主張している。なお,原告の主張によれば,「eBASEserver」には,特に対象業界を問わないベースソフトウェアと,このベースソフトウェアに食品業界向け情報交換プラットフォームとして動作するためのオプションソフトウェアを加えたものとがあるが,以下,「eBASEserver」というときは,特段の断りがない限り後者を指す。)の複製物又は翻案物であるから,被告が被告データベースを作成することは,原告が有する上記各データベースの著作物の複製権又は翻案権を侵害し,被告が被告データベースを顧客にサービスとして提供することは,原告が有する上記各データベースの公衆送信権を侵害するなどとして,原告が,被告に対し,(1)著作権法112条1項に基づき被告データデースの複製及び公衆送信(送信可能化を含む。以下同じ。)の差止めを求め,(2)同条2項に基づき被告データベース及びその複製物(被告データベースを格納した記録媒体を含む。)の廃棄を求めるとともに,(3)著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権(対象期間は,平成19年4月1日から平成27年8月4日までである。)に基づき,損害賠償金12億6500万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』

『イ 債務不履行を原因とする請求
 被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したことは,原被告間の平成19年4月1日付け使用許諾契約書による契約(以下「本件使用許諾契約」という。)に違反するとして,債務不履行に基づき,損害賠償金42億1800万円の一部請求として,10億円及びこれに対する請求後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』

『ウ 一般不法行為を原因とする請求
 被告が,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様を剽窃して被告データベースを構築したことは,法的保護に値する利益であるところの体系的構成であるデータベース構造及び原告の営業活動の利益を侵害する不法行為であるとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金12億6500万円の一部請求として,10億円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年9月2日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』

2 反訴事件

下記イ(1)及びウ(1)の各損害賠償請求、また、下記イ(2)及びウ(2)の各謝罪広告請求はそれぞれ選択的併合の関係にある。

『ア 本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする請求
 原告が本訴を提起したことは,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであって,被告に対する不法行為を構成するとして,被告が,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権(民法709条,715条,会社法350条)に基づき,損害賠償金6億5257万円の一部請求として,1億円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するもの。』

『イ 名誉毀損を原因とする請求
 原告が虚偽の事実を記載した本訴の訴状及び平成27年8月20日付け訴状訂正申立書(以下,併せて「訴状等」という。)を提出し,被告の平成27年9月1日付けプレスリリース(別紙4。以下「被告プレスリリース」という。)に引き続き,虚偽の事実を記載した同月2日付けプレスリリース(別紙5。以下「原告プレスリリース」という。)を原告のウェブサイトの「IR情報」欄に掲載し,同年10月7日に開かれた本件の第1回口頭弁論期日において訴状等を陳述した一連の行為,又はこれら個別の行為がそれぞれ,被告の名誉を毀損する不法行為を構成するとして,被告が,原告に対し,(1)不法行為による損害賠償請求権(民法709条,715条,会社法350条)に基づき,損害賠償金5000万円の一部請求として,1000万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を請求するとともに,(2)民法723条に基づき,別紙2の要領にて謝罪広告を各1回掲載するよう請求するもの。』

『ウ 不正競争防止法(以下「不競法」という。)に基づく請求
 原告が原告プレスリリースを掲載した行為が,不競法2条1項15号の不正競争行為を構成するとして,被告が,原告に対し,(1)不競法4条に基づき,損害賠償金4000万円の一部請求として,1000万円及びこれに対する不正競争行為後の日である平成28年10月1日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めると共に,(2)不競法14条に基づき,別紙2の要領にて謝罪広告を各1回掲載するよう請求するもの。』

<経緯>

H16.09 原被告間で本件業務提携契約書締結
H17.04 被告がFOODS信頼ネット提供開始
H19.01 原告から被告にサーバ移管
H19.04 原被告間でソフトウェア年間保守契約書、本件使用許諾契約書締結
H27.08 原告が本訴提起
H27.09 被告が東京証券取引所適時開示情報閲覧サービスに掲載
H27.09 原告が原告サイトにIR情報掲載

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■判決内容

<争点>

1 「eBASEserver」はデータベースの著作物であるか

原告は、原告が平成16年8月10日に完成させた同日版「eBASEserver」は、(1)合計22個の辞書がそれぞれ様々な辞書情報を備えており、データベースの体系的な構成の中で各データ項目と紐付けられて辞書網を構成している点に創作性が認められ、(2)個々の辞書がそれ単独でも体系的構成及び情報の選択において創作性が認められるとして、それ自体がデータベースの著作物と認められるべき旨主張しました(35頁以下)。
この点について、裁判所は、
『原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることによりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,このような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアである「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著作権法2条1項10号の3)とは認められない。』
として、この点についての原告の主張を認めていません。

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2 「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースの著作権は本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していたか

原告は、被告が提供していたサービスである「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースについて、その著作権が本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により原告に帰属していた旨主張しました(36頁以下)。
この点について、裁判所は、同契約書4条1項本文の規定から、その著作権は被告に帰属する旨が原被告間で合意されていたことが明らかであるとして、原告の主張を認めていません。
結論として、本訴請求のうち著作権侵害を原因とする部分には理由がないと判断されています。

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3 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか

被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したかどうか、また、このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるかどうかについて、裁判所は、いずれについても原告の主張を認めていません
(37頁以下)。
結論として、本訴請求のうち債務不履行を原因とする部分には理由がないと判断されています。

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4 被告は原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また、これにより原告の法的保護に値する利益が侵害されたか

被告が原告から取得した原告データベース仕様に基づいて被告データベースないしそのシステムを構築したと認められず、被告が不法行為責任を負うものとは認め難いと裁判所は判断。
結論として、本訴請求のうち不法行為を原因とする部分には理由がないと判断されています(39頁)。

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5 本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるか

反訴請求において被告は、原告による本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであるとして、被告に対する不法行為を構成すると主張しましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(39頁以下)。

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6 名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点について

反訴請求において被告は、原告が訴状等を提出し、被告に被告プレスリリースによる適時開示をさせた上で原告プレスリリースを掲載した一連の表現行為について、被告の社会的評価を低下させるものであり名誉毀損の不法行為が成立すると主張しましたが、裁判所は、名誉毀損を原因とする請求にはいずれも理由がないと判断しています(45頁以下)。

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7 不競法に基づく反訴請求に関連する争点について

被告は、原告プレスリリースに含まれる本件プレスリリース表現は、いずれも虚偽の事実であって被告の営業上の信用を害するものであるとして、不競法2条1項15号の不正競争行為に当たり、同行為について原告に故意又は過失があることも明らかであると主張しましたが、裁判所は、仮に、原告プレスリリースによる本件プレスリリース表現が不競法2条1項15号の不正競争行為に当たる余地があるとしても、少なくとも、原告には故意又は過失があったとはいえないとして損害賠償請求及び謝罪広告掲載請求は認められないと判断しています(48頁以下)。
結論として、反訴請求のうち不競法に基づく請求にはいずれも理由がないと判断しています。

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■コメント

商品情報などの業務効率化のためのイントラネット対応データベース共有システムの使用許諾契約などを巡る紛争です。
ポイントとしては、「FOODS信頼ネット」のシステム開発及び運営を原告から引き上げて、被告において独自にシステムを構築するに至った経緯となります(38頁参照)。

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■関連IR情報

2018年03月29日原告IRリリース
訴訟の判決に関するお知らせPDF

2018年3月28日被告IRリリース
訴訟の判決(勝訴)に関するお知らせPDF
written by ootsukahoumu at 07:53|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年04月05日

自主制作映画「すたあ」事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

自主制作映画「すたあ」事件

東京地裁平成30.3.19平成29(ワ)20452著作権侵害差止等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2018.3.26
*キーワード:映画、映画著作者、映画の全体的形成に創作的に寄与した者、映画製作者、発意と責任

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■事案

映画製作に関わる関係者間での紛争事案

原告:俳優
被告:自主映画制作者

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■結論

請求棄却

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■争点

条文 著作権法16条、29条、2条1項10号

1 原告は本件映画の共同著作者か
2 原告は本件映画の映画製作者であり被告及びCは原告に対し本件映画の製作に参加することを約束したか
3 原告は本件マスターテープの所有権を有していたか

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■事案の概要

『本件は,別紙著作物目録記載の映画(以下「本件映画」という。)の共同著作者であり,同映画の著作権者であると主張する原告が,本件映画の監督である被告が本件映画のマスターテープ(以下「本件マスターテープ」という。)を引き渡さずに行方をくらませた行為は,原告が有していた同マスターテープの所有権を侵害する不法行為である,被告が本件映画をインターネット上の動画共有サイト「YouTube」(以下「本件サイト」という。)にアップロードした行為(以下「本件アップロード行為」という,)は,本件映画につき原告が有する著作権(公衆送信権)を侵害するとともに,原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において,本件映画につき原告が有する著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害する行為であり,被告が今後本件映画を上映,複製,公衆送信若しくは送信可能化し又はその複製物を頒布する(以下,これらの行為を総称して「上映等」という。)おそれがあると主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,本件映画の上映等の差止めを求めると共に,本件マスターテープの所有権侵害の不法行為による損害賠償請求権,著作権(公衆送信権)侵害の不法行為による損害賠償請求権及び著作者人格権(氏名表示権,公表権)侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金577万5000円(所有権侵害の不法行為による損害賠償金188万5000円,著作権侵害の不法行為による損害賠償金64万円,著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償金325万円)及びこれに対する不法行為後の日である平成29年1月3日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H17.08 本件映画:サイコ&コメディ映画「すたあ」制作
H18.10 本件映画上映
H29.01 youtubeにアップロード

製作:劇団トリプルエー・スペースN
エグゼクティブ・プロデューサー:A(原告)
監督・脚本・美術:B(被告)
撮影・製作進行ほか:C

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■判決内容

<争点>

1 原告は本件映画の共同著作者か

原告は、原告が被告及びCとともに本件映画の共同著作者であると主張しました。
この点について、裁判所は、映画著作物の著作者の意義(著作権法16条)について言及した上で、
『本件映画については,脚本及び監督を被告が,撮影をCが担当し,撮影後の編集作業も被告及びCが行っているから,被告及びCは,本件映画の全体的形成に創作的に寄与した者といえるが,原告は,自らがプロデューサーを担当することが決まったなどと主張するにとどまり,本件映画の全体的形成に創作的に寄与したことを基礎付ける具体的な事実関係を主張しているとはいえないし,そのような事実関係を認めるに足りる的確な証拠もない。』
として、原告が本件映画の共同著作者であるとは認められていません(10頁以下)。

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2 原告は本件映画の映画製作者であり被告及びCは原告に対し本件映画の製作に参加することを約束したか

原告は、原告が本件映画の映画製作者であり、かつ、被告及びCは原告に対して本件映画の製作に参加することを約束したのであるから、著作権法29条1項の規定により原告が本件映画の著作権者となると主張しました。
この点について、裁判所は、映画製作者の意義について、
『著作権法29条1項の「映画製作者」とは,映画の著作物の製作に発意と責任を有する者をいい(同法2条1項10号),より具体的には,映画の著作物を製作する意思を有し,当該著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって,そのことの反映として当該著作物の製作に関する経済的な収入支出の主体ともなる者と解される。』と説示した上で、本件については、原告は本件映画を製作する意思を有していたということができるものの、原告が本件映画の製作全体について法律上の権利義務が帰属する主体であるとか、製作に関する経済的な収入支出の主体であるとの状況にあったと認めることは困難であると判断。
結論として、原告は本件映画の製作に発意と責任を有するものであったと認められず、本件映画の「映画製作者」ということはできないことから、原告が29条1項により本件映画の著作権を取得したということはできず、原告の主張は認められていません(11頁以下)。

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3 原告は本件マスターテープの所有権を有していたか

原告は、本件映画の映画製作者は原告であり、本件マスターテープの所有権は本件映画の完成時に当然に原告に帰属すると主張しましたが、裁判所は原告の主張を認めていません(12頁以下)。
結論として、被告が原告の有する本件マスターテープの所有権を侵害したことを原因とする原告の損害賠償請求も否定されています。

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■コメント

映画製作に関わる関係者間での紛争事案です。最低限、どのような取り決めを事前にしておくべきかがわかる事例として参考になります。

written by ootsukahoumu at 08:45|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年03月28日

サイト「きじなび」写真無断掲載事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

サイト「きじなび」写真無断掲載事件

東京地裁平成30.3.23平成29(ワ)35891損害賠償請求(著作権等侵害)事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    広瀬 孝
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2018.3.26
*キーワード:発信者情報開示請求

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■事案

サイトで写真が無断で掲載されて発信者情報の開示請求がされた事案

原告:個人
被告:情報通信技術関連企業

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■結論

請求認容

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■争点

条文 プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 開示を受けるべき正当理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,氏名不詳者がインターネット上のウェブサイトにアップロードした画像は原告が著作権及び著作者人格権を有する写真を複製するなどして作成したものであるから,同行為により原告の権利が侵害されたことは明らかであると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項の開示関係役務提供者である被告に対し,同項に基づき,被告の保有する発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H28.5 氏名不詳者(本件発信者)が本件画像をアップロードしウェブサイト「きじなび」で公開

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

原告写真は、原告が撮影したものであり、原告が著作権及び著作者人格権を有するものと裁判所は認定。
その上で、本件発信者は別紙侵害情報目録記載1のURLに本件画像をアップロードし、これを公開したとして、原告写真を複製し、送信可能化し、改変して、原告の氏名を著作者名として表示しなかったと判断。
結論として、本件発信者の行為によって原告の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)が侵害されたことは明らかであると判断されています(3頁以下)。

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2 開示を受けるべき正当理由の有無

原告は、本件発信者に対して著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権を有するところ、その行使のためには本件発信者に係る情報の開示が必要であると判断。
結論として、原告には被告から上記開示を受けるべき正当な理由があるものということができると判断されています(4頁)。

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■コメント

写真の性質やサイトの概要がわからず、どのような事案だったのか判決文からは良くわかりませんでした。
written by ootsukahoumu at 10:44|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年03月25日

「ツェッペリン飛行船と黙想」独立当事者加事件2−著作権 独立当事者参加事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「ツェッペリン飛行船と黙想」独立当事者参加事件2

知財高裁平成30.3.19平成30(ネ)10008独立当事者参加事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    山門 優
裁判官    片瀬 亮

*裁判所サイト公表 2018.3.20
*キーワード:独立当事者参加

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■事案

参加人の独立当事者参加申出の適法性が争点となった事案

参加人:個人
控訴人:個人
被控訴人:出版社

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■結論

申出却下

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■争点

条文 民事訴訟法115条

1 独立当事者参加申出の適法性

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■事案の概要

『本件は,控訴人及び被控訴人間の当庁平成27年(ネ)第10022号損害賠償等請求控訴事件(以下「基本事件」という。)について,当庁が平成28年1月27日に言い渡した確定判決(以下「本件判決」という。)に対し,参加人が,再審の訴えを提起するとともに,再審開始の決定が確定した場合の訴訟に独立当事者参加をする旨申し出た事案である。』(1頁)

『基本事件は,控訴人が,別紙書籍目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)は編集著作物であり,控訴人がその編集著作者であるところ,被控訴人による本件書籍の複製及び販売は,控訴人の有する編集著作物に係る著作権(複製権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害する行為である旨主張して,被控訴人に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,本件書籍の複製及び販売の差止め,(2)同条2項に基づき,本件書籍の廃棄及びその版下データの消去,(3)著作権及び著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害金238万円(印税相当額の損害38万円及び慰謝料200万円の合計額)及び遅延損害金の支払を求めるとともに,(4)同法115条に基づき,編集著作者としての名誉及び声望の回復措置として謝罪広告等の掲載を求めた事案である。』

〈経緯〉

・控訴人が被控訴人を被告として東京地裁平成25(ワ)22541損害賠償等請求事件提起
・H27年1月22日棄却判決
・控訴人が上記判決を不服として控訴を提起(基本事件)
・H28年1月27日控訴棄却判決(本件判決)
・H28年6月23日上告棄却、上告不受理決定
・H30年1月26日参加人が知財高裁に本件判決について再審の訴え提起(本件再審の訴え)

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■判決内容

<争点>

1 独立当事者参加申出の適法性

参加人は、基本事件に対して本件再審の訴えを提起しているが、基本事件は控訴人が被控訴人に対し損害賠償等を請求した訴えであり、本件判決はこれを棄却する確定判決である。そして、参加人は基本事件の当事者ではなく口頭弁論終結後の承継人等でもないことから、本件判決の効力を受ける者ではない(民事訴訟法115条)。
したがって、参加人が本件再審の訴えの原告適格を有しているということはできないと裁判所は判断。
結論として、本件再審の訴えは不適法であり、本件独立当事者参加の申出は本件再審の訴えが適法であることを前提とするものであるから、本件独立当事者参加の申出も不適法であるとして、却下しています(1頁以下)。

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■コメント

知財高裁平成29年9月5日平成29(ネ)10067独立当事者参加事件判決と判断は同じで参加人が異なる事案です。

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■過去のブログ記事

基本事件
「ツェッペリン飛行船と黙想」事件(控訴審)
知財高裁平成28.1.27平成27(ネ)10022損害賠償等請求控訴事件
2016年02月12日記事

「ツェッペリン飛行船と黙想」独立当事者参加事件
知財高裁平成29.9.5平成29(ネ)10067独立当事者参加事件
2017年09月13日記事

written by ootsukahoumu at 14:58|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年03月21日

アダルト動画無断配信損害賠償請求事件2−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アダルト動画無断配信損害賠償請求事件2

東京地裁平成30.3.16平成29(ワ)29065損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    広瀬 孝
裁判官    勝又来未子

*裁判所サイト公表 2018.3.19
*キーワード:動画無断配信、損害論、消滅時効

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■事案

アダルト動画を無断配信した者に対する損害賠償請求の事案

原告:ビデオ映像制作会社
被告:個人

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法114条3項

1 著作権侵害の行為者及び侵害の有無
2 消滅時効の成否
3 損害論

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,被告は,株式会社CA(以下「CA」という。)の著作物である別紙著作物目録記載の映画の著作物(以下「本件著作物」という。)のデータをインターネット上のサーバーにアップロードしてその公衆送信権を侵害したところ,原告は,CAの被告に対する同侵害行為による損害賠償請求権を吸収合併によりCAから承継したと主張して,民法709条及び著作権法114条3項により,損害賠償金85万0085円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年10月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁)

<経緯>

H26.03 違法配信
H26.08 米国法人FC2,Incから発信者情報開示
H29.08 本訴提起

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の行為者及び侵害の有無

本件著作物のデータを本件動画サイトにアップロードして、公衆に送信し得る状態に置いたのは被告であると裁判所は認定。
そして、被告が本件著作物のデータを本件動画サイトにアップロードした行為がCAの公衆送信権を侵害し、原告はCAを吸収合併したことにより本件損害賠償請求権を承継したと裁判所は判断しています(3頁)。

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2 消滅時効の成否

被告は、本件損害賠償請求権は時効により消滅したと主張しましたが、本件著作物のデータを本件動画サイトにアップロードしたのが被告であることをCAが知ったのは平成26年8月28日、本件損害賠償請求権をCAから承継した原告が本訴を提起したのは平成29年8月26日であることから、本訴提起時において民法724条所定の3年の時効期間は経過していないと判断。被告の主張を認めていません(3頁以下)。

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3 損害論

被告の本件著作物の著作権侵害に係る使用料相当額:
販売価格278円(税抜)×再生回数8047回×卸価格使用料率0.38=85万0085円

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■コメント

動画共有サイト「FC2アダルト」で扱われた海賊版アダルト動画配信について、発信者への損害賠償を請求した事案となります。同一原告による海賊版対策の個人への損害賠償請求として今年2件目の案件となります。

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■過去の関連ブログ記事

2018年02月25日記事
アダルト動画無断配信損害賠償請求事件
written by ootsukahoumu at 09:42|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年03月14日

アダルト動画発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アダルト動画発信者情報開示請求事件

東京地裁平成30.2.28平成29(ワ)39440発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2018.3.7
*キーワード:公衆送信権、プロバイダ責任制限法

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■事案

アダルト動画無断配信に関して発信者情報開示が求められた事案

原告:アダルトビデオ制作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 原告は本件各著作物の著作権者であるか
2 本件各動画は本件各著作物の複製物であるか
3 本件各発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか

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■事案の概要

『本件は,別紙3著作物目録記載の各映画の著作物(以下,同目録の番号に対応して「本件著作物1」などといい,併せて「本件各著作物」という。)の著作権者であると主張する原告が,氏名不詳者(後述する本件各動画の番号に対応して,「本件投稿者1」などといい,併せて「本件各投稿者」という。)が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト「FC2動画アダルト」(以下「本件サイト」という。)にアップロードした別紙2動画目録記載の各動画(以下,同目録の番号に対応して「本件動画1」などといい,これらを併せて「本件各動画」という。)について,本件各動画は,それぞれ対応する番号の本件各著作物の複製物であるから,本件各投稿者による上記各アップロード行為により原告の有する本件各著作物の著作権(公衆送信権)がそれぞれ侵害されたことが明らかであり,本件各投稿者に対する損害賠償請求権の行使のために本件各動画に係る別紙1発信者情報目録記載の各情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を受ける必要があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下,単に「法」という。)4条1項に基づき,被告に対し,本件各発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

著作物目録
1 「働くオンナ2 VOL.06」
2 「巨乳痴女医の癒らしぃ治療法 月城ルネ」
3 「絶対的美少女,お貸しします。 ACT.08」
4 「続・素人娘,お貸しします。 VOL.22」
5 「心音の一日花嫁修業 水谷心音」

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■判決内容

<争点>

1 原告は本件各著作物の著作権者であるか

原告が本件各著作物の著作権者であると認められています(著作権法17条1項 4頁)。

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2 本件各動画は本件各著作物の複製物であるか

本件各動画は、それぞれ対応する番号の本件各著作物の複製物であると裁判所は認定。
本件各動画を本件サイトにアップロードする行為は原告が有する本件各著作物の公衆送信権を侵害する行為と判断しています(4頁以下)。

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3 本件各発信者情報の開示を受ける必要性は認められるか

原告は、原告が有する本件各著作物の著作権(公衆送信権)が侵害されたことを原因として本件各投稿者に対して不法行為による損害賠償請求権を行使するために本件発信者情報の開示を求めているが、損害賠償請求権を行使するためには本件各投稿者を特定する必要があるため、原告には同特定のために本件各発信者情報の開示を受ける必要があると裁判所は判断。

結論として、裁判所は原告の発信者情報開示請求を認容しています。

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■コメント

平成30年に入ってから4件目のアダルト動画系無断配信発信者情報開示請求事案。プレステージ社によるアダルト動画海賊版対策も続いています。
written by ootsukahoumu at 13:05|この記事のURL知財判決速報2018 

アダルト動画無断投稿事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アダルト動画無断投稿事件

東京地裁平成30.2.23平成29(ワ)39441発信者情報開示請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    広瀬瀬孝
裁判官    遠山敦士

*裁判所サイト公表 2018.3.3
*キーワード:公衆送信権、プロバイダ責任制限法

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■事案

アダルト動画の無断投稿について発信者情報開示請求がされた事案

原告:アダルトビデオ制作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 開示を受けるべき正当理由の有無

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■事案の概要

『本件は,原告が,インターネット接続サービスを提供する被告に対し,氏名不詳者が同サービスを利用してインターネット上の動画共有サイトにアップロードした動画のデータは原告が著作権を有する映像作品を複製して作成したものであるから,同氏名不詳者の行為により原告の公衆送信権(著作権法23条1項)が侵害されたことは明らかであると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁以下)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

氏名不詳者が別紙動画目録1ないし3記載の日時において被告から同目録1ないし3記載のインターネットプロトコルアドレスの割当てを受けてインターネットに接続した上で、インターネット上の動画投稿サイトに動画をアップロードし、不特定多数の者が再生できる状態にしました。
裁判所は、結論として、氏名不詳者の上記行為によって原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると判断しています(3頁以下)。

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2 開示を受けるべき正当理由の有無

原告は、本件各発信者に対して著作権(公衆送信権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有するが、その行使のためには本件各発信者の住所、氏名等の開示が必要であるとした上で、原告には被告から上記開示を受けるべき正当な理由があると裁判所は判断しています(5頁以下)。

結論として、原告の発信者情報開示請求を認容しています。

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■コメント

平成30年に入ってから3件目のアダルト動画系発信者情報開示請求事案。アダルトビデオ制作会社による海賊版対策が続いています。
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2018年03月13日

JASRAC放送包括許諾契約行政訴訟事件(控訴審)−著作権 是正処置命令等義務付け請求及び法律構成の矛盾等是正控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

JASRAC放送包括許諾契約行政訴訟事件(控訴審)

知財高裁平成30.2.27平成29(行コ)10003是正処置命令等義務付け請求及び法律構成の矛盾等是正控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中島基至
裁判官    岡田慎吾

*裁判所サイト公表 2018.3.2
*キーワード:義務付け訴訟、処分性

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■事案

放送事業者とJASRACの間の包括許諾契約に関する行政庁の行政行為の処分性の有無が争点となった事案の控訴審

控訴人(一審原告) :個人
被控訴人(一審被告):国

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 行政事件訴訟法3条6項1号

1 行政行為の処分性の有無

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■控訴の趣旨

『別紙控訴状写しの「控訴の趣旨」記載のとおりであり,要するに,本件各訴えを却下した原判決を取り消した上で,控訴人は,放送事業者と一般社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)との間の包括的な許諾による利用許諾契約(以下「包括許諾契約」という。)に基づく音楽著作物の使用料の徴収方法に多大な誤りがあり,その誤りの要因が著作権法の条文の誤りにあるなどと主張して,原審における請求と同様に,被控訴人に対し,法務大臣を処分行政庁として,法務省,文化庁,公正取引委員会及びJASRACに対する包括許諾契約に基づく徴収方法の是正処置命令を発することの義務付け(請求の趣旨第1項)を求めるとともに,法務省を処分行政庁として,公正取引委員会及びJASRACに対する包括許諾契約に基づく徴収方法の排除,除去,及び著作権法改正の是正処置命令を発することの義務付け(同第2項)を求めるものと解される(控訴の趣旨第3項)。
なお,JASRACが,国に対し,罰金を支払うことなどを内容とする控訴状の記載部分(控訴の趣旨第4項)については,被控訴人のみが被告とされた原審における請求の趣旨等に照らし,当審において,追加的に請求するものではないと解される。』
(2頁)

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■判決内容

<争点>

1 行政行為の処分性の有無

控訴審も控訴人の主張する各是正処置命令はいずれも処分性を欠くものであるとして、本件各訴えはいずれも不適法なものであると判断しています(3頁)。

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■コメント

原審同様、控訴審でも行政行為の処分性を否定しています。

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■過去のブログ記事

2017年12月30日 原審記事

written by ootsukahoumu at 08:59|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年03月08日

沖国大ヘリ墜落事故映像無断使用事件−著作権 著作権侵害差止等請求本訴事件、損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

沖国大ヘリ墜落事故映像無断使用事件

東京地裁平成30.2.21平成28(ワ)37339著作権侵害差止等請求本訴事件、損害賠償請求事件PDF
別紙1
別紙2

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    天野研司
裁判官    西山芳樹

*裁判所サイト公表 2018.2.28
*キーワード:引用、権利濫用

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■事案

沖縄国際大学に米軍ヘリコプターが墜落した事故に関する映像を無断で映画に使用した事案

原告:テレビ放送会社
被告:映像制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法32条、48条1項、114条3項、民法1条3項

1 差止め及び削除を求める請求は特定されているか
2 本件部分は「まだ公表されていないもの」〔著作権法18条〕に当たるか
3 本件映画に原告の名称を表示していないことは「その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って」〔著作権法19条2項〕されたものといえるか
4 著作権の行使に対する引用〔著作権法32条1項〕の抗弁は成立するか
5 原告による著作権及び著作者人格権の行使は権利の濫用に当たり許されないか
6 原告が受けた損害の額
7 差止め、本件各映像の削除及び謝罪広告の掲載の各必要性が認められるか
8 原告が被告からの本件各映像の利用許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は被告に対する不法行為を構成するか
9 原告が被告との交渉内容を秘匿したまま本件事件を提起した事実を自社の放送波で放送すると共に自社のウェブサイトに掲載しマスコミ各社に同内容のリリースを配布した行為は被告に対する不法行為を構成するか

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■事案の概要

『(1)本訴事件
本訴事件は,別紙1著作物目録記載1ないし4の各映像(以下,番号に対応して「本件映像1」などといい,併せて「本件各映像」という。)の著作者及び著作権者である原告が,被告が原告の許諾なく本件各映像を使用して製作した別紙3映画目録記載の映画(以下「本件映画」という。)につき,(1)被告が本件映画を上映する行為は本件各映像につき原告が有する上映権(著作権法22条)を侵害する,(2)被告が本件映画を記録したDVDを販売する行為は本件各映像につき原告が有する頒布権(著作権法26条1項)を侵害する,(3)被告が本件映画の上映に際して原告の名称を表示しなかったことは本件各映像につき原告が有する氏名表示権(著作権法19条1項)を侵害する,(4)本件映像2のうち別紙2−2「著作物目録の著作物2」の(11)ないし(16)の部分(約8秒。同別紙に「未公表部分」との記載のあるもの)及び本件映像4(原告第2準備書面5頁に「原告著作物3」とあるのは,同準備書面別紙の記載に照らし,「原告著作物4」の誤記と認められる。)のうち別紙2−4「著作物目録の著作物4」の(1)ないし(4)の部分(約5秒。同別紙に「未公表部分」との記載のあるもの。以下,上記2つの部分を併せて「本件部分」という。)は,公表されていない著作物であったから,被告が本件部分の映像を使用した本件映画を上映したことは,本件部分につき原告が有する公表権(著作権法18条1項)を侵害するなどと主張して,被告に対し,(1)著作権法112条1項に基づき(本件各映像が映画の著作物であることを前提に,著作権〔上映権,公衆送信権及び頒布権(著作権法22条の2,23条及び26条)〕又は著作者人格権〔氏名表示権(同法19条)〕の侵害又はそのおそれを主張する趣旨と解される。),本件各映像を含む本件映画の上映,公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布の差止めを求め,(2)同条2項に基づき,本件映画を記録した媒体及び本件各映像を記録した媒体からの本件各映像の削除を求め,(3)著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金111万0160円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年6月21日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(4)著作者人格権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金300万円及びこれに対する不法行為後の日である平成27年6月21日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(5)著作権法115条に基づき,別紙4謝罪広告要領記載の要領により別紙5謝罪広告内容記載の謝罪広告を掲載するよう求めた事案である。』

『(2)反訴事件
反訴事件は,被告が,(1)本件映画での本件各映像の使用につき,原告が,被告による二度の許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は,共同の取引拒絶又は単独の取引拒絶として独占禁止法に違反し,被告に対する不法行為を構成するとして,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金1392万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年4月5日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,(2)原告が,本件各映像に係る被告との交渉内容を秘匿したまま,本訴事件を提起した旨を自社の放送波を通じて放送し,ウェブサイトに同内容を掲載し,マスコミにリリースした行為は,被告に対する不法行為を構成するとして,原告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金558万円及びこれに対する不法行為後の日である平成28年4月5日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。』
(40頁以下)

<経緯>

H16.08 沖国大ヘリ墜落事故、本件各映像撮影。報道番組で放映
H27.02 被告代表Aが原告に映像使用許諾申請書送付、原告不許諾
H27.06 本件映画「沖縄 うりずんの雨」製作、上映
H27.12 原告が謝罪と使用料金49万5000円を要求
H28.04 原告が那覇地裁に提訴
H28.10 東京地裁に移送

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■判決内容

<争点>

1 差止め及び削除を求める請求は特定されているか

被告は、本訴請求のうち本件映画の公衆送信及び送信可能化並びに本件映画の複製物の頒布の差止めを求める部分について、抽象的差止めを求めるものであるとして不適法と主張しました。
この点について、裁判所は、原告は本件映画という具体的な著作物の公衆送信行為及び送信可能化行為並びにその複製物の頒布行為の差止めを求めているとして、請求の特定に欠けるところはないと判断。被告の主張を認めていません(60頁)。

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2 本件部分は「まだ公表されていないもの」〔著作権法18条〕に当たるか

原告は、本件部分が未公表であり、被告が本件部分を原告に無断で公表したことは公表権の侵害に当たると主張しましたが、裁判所は主張立証が尽くされていないとして原告の主張を認めていません(60頁以下)。

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3 本件映画に原告の名称を表示していないことは「その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って」〔著作権法19条2項〕されたものといえるか

被告は、本件各映像を本件映画に使用するに際して原告の名称を表示しないことは、「すでに著作者が表示しているところ」に従ってしたものであり、著作権法19条2項により許容されると主張しましたが、裁判所は、被告の主張を認めていません(61頁)。

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4 著作権の行使に対する引用〔著作権法32条1項〕の抗弁は成立するか

本件映画には本件使用部分においてもエンドクレジットにおいても本件各映像の著作権者である原告の名称は表示されていませんでした。
この点について、裁判所は、本件映画のようなドキュメンタリー映画の資料映像として報道用映像を使用するに際し、当該使用部分においても映画のエンドクレジットにおいても著作権者の名称を表示しないことが、「公正な慣行」(32条1項)に合致することを認めるに足りる社会的事実関係を被告は何ら具体的に主張、立証していないと判断。
結論として、著作権の行使に対する引用の抗弁を認めていません(61頁以下)。

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5 原告による著作権及び著作者人格権の行使は権利の濫用に当たり許されないか

被告は、本件映画と本件各映像との関係及び本件訴訟における原告の訴訟追行態度等に照らせば、原告が本件各映像の著作権及び著作者人格権を行使することは、権利の濫用として許されないと主張しました。
この点について、裁判所は、被告の主張を認めていません(64頁)。

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6 原告が受けた損害の額

裁判所は、故意又は過失による上映権及び氏名表示権の侵害が成立するとした上で、損害論としては、以下の通りの認定となっています(64頁以下)。

・映像使用料相当額損害 11万0160円
・弁護士費用相当額損額 20万円
・氏名表示権侵害関連損害20万円

合計51万0160円

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7 差止め、本件各映像の削除及び謝罪広告の掲載の各必要性が認められるか

被告による本件映画の上映及びその複製物の頒布等の差止めと本件映画などからの本件各映像の削除が認められています(65頁以下)。

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8 原告が被告からの本件各映像の利用許諾申請を拒絶した上で本訴事件を提起した一連の行為は被告に対する不法行為を構成するか

原告による一連の行為が、独占禁止法2条9項1号イ(共同の取引拒絶)又は同項6号イ、一般指定2項(単独の取引拒絶)に定める不公正な取引方法に当たり、被告の使用及び表現の自由並びに本件映画の上映権及び頒布権を侵害する不法行為になると主張しましたが、裁判所は認めていません(67頁以下)。

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9 原告が被告との交渉内容を秘匿したまま本件事件を提起した事実を自社の放送波で放送すると共に自社のウェブサイトに掲載しマスコミ各社に同内容のリリースを配布した行為は被告に対する不法行為を構成するか

被告は、原告が自己の優越的な地位を濫用して本件各映像の使用許諾につき著しく差別的かつ不当な条件を提示し、最終的には取引を拒絶したとの事実を秘したまま被告に対して本訴を提起した事実を「ニュース」として自社の放送波で放送し、自社のウェブサイトに掲載するとともに、マスコミ各社に同内容のリリースを配布したことが映画製作者としての被告の名誉・信用を毀損する不法行為に当たると主張しましたが、裁判所は認めていません(68頁以下)。

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■コメント

総再生時間が2時間を超える本件映画において、本件各映像を使用する部分(本件使用部分)が合計34秒というものでしたが、ドキュメンタリー映画の製作にあたって、どうしてもテレビ局の報道映像を使用したいという場合に、映像素材が手元にあるとすれば、あとは引用の要件を具備すれば無許諾使用ができる訳ですが、エンドクレジットも含め、映画に出展表示がないという点では、世間的にも理解を得るのが難しい事案です。

なお、出所明示義務(48条1項1号)は引用の要件ではなく、明示しなくても正当引用性が否定されて著作権侵害となるのものではない(加戸守行「著作権法逐条講義」五訂新版317頁)ものの、32条の「公正な慣行」に引き寄せて適法引用を否定する判例もあり(東京高判平成14.4.11平成13(ネ)3677絶対音感事件控訴審)判決文PDF)、

「出所を明示しないで引用することは,それ自体では,著作権(複製権)侵害を構成するものではない。この限りでは,控訴人らの主張は正当である。しかし,そのことは,出所を明示することが公正な慣行と認められるに至ったとき,公正な慣行に反する,という媒介項を通じて,著作権(複製権)侵害を構成することを否定すべき根拠になるものではない。出所を明示しないという同じ行為であっても,単に法がそれを義務付けているにすぎない段階と,社会において,現に公正な慣行と認められるに至っている段階とで,法的評価を異にすることになっても,何ら差し支えないはずである。そして,出所を明示する慣行が現に存在するに至っているとき,出所明示を励行させようとして設けられた著作権法48条1項の存在のゆえに,これを公正な慣行とすることが妨げられるとすれば,それは一種の背理というべきである。」(控訴審PDF11頁)

本判決もこの控訴審の判断に続くものといえます。

written by ootsukahoumu at 18:45|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年02月27日

建築CADソフト海賊版販売事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

建築CADソフト海賊版販売事件

東京地裁平成30.1.30平成29(ワ)31837損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    高櫻慎平

*裁判所サイト公表 2018.2.20
*キーワード:ヤフオク、海賊版販売、損害論

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■事案

ヤフオクでの建築CADソフトの海賊版販売に関する損害賠償請求の事案

原告:プログラム開発会社
被告:個人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法21条、20条、不正競争防止法2条1項12号

1 被告による著作権侵害及び著作者人格権侵害の有無
2 被告による旧11号所定の不正競争行為の有無
3 原告の損害額

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■事案の概要

『本件は,原告が,「建築 CAD ソフトウェア「DRA-CAD11」(以下「本件ソフトウェア」という。)について著作権及び著作者人格権を有し,また「DRA-CAD」との文字からなる商標に係る商標権を有しているところ,被告において,原告の許諾なしに本件ソフトウェアをダウンロード販売等すると共に,本件ソフトウェアのアクティベーション機能(正規品のシリアルナンバー等を入力しないとプログラムが起動・実行されないようにする機能をいう。)を回避するプログラムを顧客に提供して同機能の効果を妨げたものであり,かかる被告の行為は,原告の上記著作権(複製権,翻案権,譲渡権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとともに,原告の上記商標権を侵害し,さらに平成27年法律第54号による改正前の不正競争防止法2条1項11号(同号は,同改正後の同法2条1項12号に相当する。以下,単に「旧11号」という。)所定の不正競争行為に該当する」と主張して,被告に対し,上記各不法行為に基づき,損害賠償金2812万9500円の一部である1000万円及びこれに対する平成28年7月2日(被告が上記商標権侵害に関する刑事事件において有罪判決を受けた日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
これに対し,被告は,商標権侵害の事実を認めるが,著作権侵害及び不正競争防止法違反の各事実及び原告の損害額を争う。』
(1頁以下)

<経緯>

H27.02 被告がヤフオクで本件商品を販売
H28.02 被告が商標法違反(37条1号)等を被疑事実として逮捕、起訴、有罪判決確定

本件ソフトウェア:建築CADソフトウェア(DRA-CAD11)
本件商標:登録番号 第5165277号

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■判決内容

<争点>

1 被告による著作権侵害及び著作者人格権侵害の有無

被告は、本件ソフトウェアの一部に原告の許諾なく改変(アクティベーション機能の回避)を加え(本件ソフトウェアの表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、変更等を加えて新たな創作的表現を付加した)、同改変後のものをダウンロード販売したものと評価できると裁判所は判断。
被告は、原告の著作権(翻案権及び公衆送信権)並びに著作者人格権(同一性保持権)を侵害したものと認定されています(9頁以下)。

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2 被告による旧11号所定の不正競争行為の有無

被告は、原告が営業上用いている技術的制限手段(アクティベーション)により制限されているプログラム(本件ソフトウェア)の実行を、当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有するプログラム(Bのクラック版)を電気通信回線(インターネット回線)を通じて提供したものと裁判所は認定。
被告は、旧11号(2条1項12号)所定の不正競争行為を行ったものと判断しています(11頁以下)。

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3 原告の損害額

著作権侵害に基づく損害額(著作権法114条3項)として以下の金額が認定されています(12頁以下)。

正規販売価格17万9550円(税込)×落札本数54本=969万5700円

なお、著作者人格権侵害や商標権侵害、不正競争防止法違反に基づく損害は認定されていません。

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■コメント

ヤフオクでの建築CADソフトの海賊版販売に関する損害賠償請求の事案となります。
written by ootsukahoumu at 23:43|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年02月25日

アダルト動画無断配信損害賠償請求事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

アダルト動画無断配信損害賠償請求事件

東京地裁平成30.1.23平成29(ワ)13897損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    林 雅子
裁判官    大下良仁

*裁判所サイト公表 2018.2.19
*キーワード:動画無断配信、損害論、消滅時効

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■事案

アダルトビデオが無断配信されたとして損害賠償請求した事案

原告:映像制作会社
被告:個人

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法114条3項

1 株式会社CAは本件各著作物の著作権者であったか
2 本件各動画は本件各著作物の複製物であるか
3 本件発信者は被告であるか
4 損害額
5 消滅時効の成否

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,原告は別紙著作物目録記載の映像作品(以下,同目録記載の番号により「本件著作物1」,「本件著作物2」といい,本件著作物1及び本件著作物2を併せて「本件各著作物」という。)の著作権を有する株式会社CAを吸収合併し,同社の権利義務を承継したところ,被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると主張して,民法709条及び著作権法114条3項に基づき,損害賠償金107万7843円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年5月3日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』

<経緯>

H26.01 本件動画1、2をFC2動画アダルトで無断配信
H26.07 原告がネバダ州地区開示命令に基づきFC2から発信者情報開示を受ける
H29.04 原告が本件提訴

本件動画1:「蒼井そら−ギリギリモザイクはげましセックス−3お姉さん手コキ」
本件動画2:「集団痴女 12コーナー 4時間」

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■判決内容

<争点>

1 株式会社CAは本件各著作物の著作権者であったか

株式会社CAが本件著作物1、2の著作権者であり、原告は平成28年12月1日に株式会社CAを吸収合併し、同社の権利義務を承継したとして、本件著作物1及び本件著作物2に収録されている本件作品の著作権を取得し、また、それらの著作物の著作権侵害により発生した損害賠償請求権を取得したと裁判所は認定しています(7頁以下)。

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2 本件各動画は本件各著作物の複製物であるか

本件動画1は少なくとも本件著作物1の一部と同一の動画であり、また、本件動画2は少なくとも本件著作物2に収録されている本件作品の一部と同一の動画であると認められ、本件動画1は本件著作物1の複製物であり、本件動画2は本件著作物2の複製物であると認定されています(8頁以下)。

結論として、本件発信者が本件各動画のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為は、株式会社CAの本件各著作物に係る公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると裁判所は判断しています。

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3 本件発信者は被告であるか

原告は、平成26年7月7日、アメリカ合衆国連邦地方裁判所ネバダ州地区が発令した開示命令に基づき、FC2から同社が入手可能な情報であり、本件発信者を特定するために十分な情報として、本件発信者の氏名、住所に関する情報の開示を受けた。
開示された氏名は、被告の氏名と同一であり、その住所は被告の従前の住所地であったと裁判所は認定。
結論として、裁判所は本件発信者は被告であると推認するのが相当であると判断しています(9頁以下)。

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4 損害額

表示再生数など諸事情を勘案した上で、本件動画1について30万円、本件動画2について5万円、弁護士費用相当額損害5万円の合計40万円が損害額として認定されています(14頁以下)。

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5 消滅時効の成否

平成26年7月7日にFC2から本件発信者、すなわち被告の登録時の氏名及び住所等の情報の開示を受けており(民法724条前段)、提訴が3年以内である平成29年4月26日であることから、消滅時効は成立していないと判断されています(15頁以下)。

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■コメント

アダルト動画を無断配信した者に対して、発信者情報開示の後の具体的な損害賠償請求をした事案となります。

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■参考判例

アダルト動画無断配信損害賠償請求事件
大阪地裁平成30.1.23平成29(ワ)7901損害賠償請求事件
判決PDF



written by ootsukahoumu at 16:00|この記事のURL知財判決速報2018