2018年07月17日

一竹辻が花美術館グッズ事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

一竹辻が花美術館グッズ事件

東京地裁平成30.6.19平成28(ワ)32742著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1
別紙2
別紙3
別紙4

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    高櫻慎平
裁判官    広鹵人

*裁判所サイト公表 2018.7.12
*キーワード:写真、著作物性、事業譲渡、美術館グッズ、権利濫用

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■事案

故久保田一竹の着物作品の著作権承継者らが美術館で販売する商品等の複製権侵害性などを争点とした事案

原告:遺族、辻が花染制作会社
被告:美術館運営会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、21条、47条、32条1項、民法1条3項、112条、114条

1 著作物性の有無(制作工程写真、美術館写真、制作工程文章及び旧HPコンテンツについて)
2 著作権及び著作者人格権の主体
3 複製等の成否
4 明示又は黙示による利用許諾の有無
5 権利濫用の有無
6 著作権法47条の抗弁の成否
7 著作権法32条1項の抗弁の成否
8 損害額等
9 消滅時効の成否
10 差止めの必要性

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■事案の概要

『本件は,原告らが,故久保田一竹(以下「故一竹」という。)が開発した「一竹辻が花」という独自の染色技術を用いた創作着物作品や,その制作工程に関する文章及び写真等について著作権及び著作者人格権を有している(具体的には,原告Aが,後記一竹作品,制作工程写真及び美術館写真の著作権を有するとともに,後記制作工程文章及び旧HPコンテンツの著作権及び著作者人格権を有し,原告工房が,後記工房作品の著作権及び著作者人格権を有する。)ところ,久保田一竹美術館(以下「一竹美術館」という。)を経営する被告が,同美術館において販売している商品等に原告らに無断で上記着物作品等を複製等したことにより,原告らの著作権(複製権,譲渡権,公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権等)を侵害したと主張して,(1)原告Aにおいて,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,別紙「被告配布物目録」1ないし5,7,8,10ないし12記載の各配布物の複製・頒布の差止め,及び被告のウェブサイトにおける別紙「被告HP目録」記載の各文章の自動公衆送信等の差止めを求めるとともに,民法709条及び著作権法114条1項ないし3項に基づき,損害賠償金2765万4034円及びこれに対する不法行為後である平成28年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,また,(2)原告工房において,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,別紙「被告配布物目録」6及び9記載の各配布物の複製・頒布の差止めを求めるとともに,民法709条及び著作権法114条1項ないし3項に基づき,損害賠償金125万6783円及びこれに対する不法行為後である平成28年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(2頁以下)

<経緯>

S35 久保田一竹が「一竹辻が花」染色技術で着物作品創作
H06 原告工房が主体となり一竹美術館設立
H15 一竹死去、原告Aが着物作品の著作権を単独相続
H22 原告工房が民事再生手続開始決定
H24 訴外ICFが一竹美術館の土地等を取得

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■判決内容

<争点>

1 著作物性の有無(制作工程写真、美術館写真、制作工程文章及び旧HPコンテンツについて)

(1)制作工程写真及び美術館写真の著作物性

故一竹による「辻が花染」の制作工程の各場面を撮影した制作工程写真12点について、いずれも個性が表れないものであるとして、その著作物性を否定しています。
また、一竹美術館の外観又は内部を撮影した美術館写真2点についても、個性が表れないものであるとして、その著作物性を否定しています(43頁以下)。

(2)制作工程文章の著作物性

「辻が花染」の各制作工程を説明した文章について、その著作物性が肯定されています(44頁以下)。

(3)旧HPコンテンツの著作物性

旧HPコンテンツについて、その著作物性が肯定されています(45頁)。

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2 著作権及び著作者人格権の主体

(1)制作工程文章の著作権及び著作者人格権の主体

制作工程文章は原告Aが作成したものであり、原告Aが著作権及び著作者人格権を有していると裁判所は認定しています(45頁以下)。

(2)旧HPコンテンツの著作権及び著作者人格権の主体

旧HPコンテンツは原告Aが作成したものであり、原告Aが著作権及び著作者人格権を有していると裁判所は認定しています(46頁以下)。

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3 複製等の成否

(1)制作工程文章について

裁判所は、まず、複製及び翻案の意義について言及した上で、被告作品集の制作工程に関する文章と制作工程文章の表現上の本質的な特徴の同一性について検討。
両者を比較対照した結論として、被告作品集の当該部分は、全体として制作工程文章の表現上の本質的な特徴を直接感得することができると裁判所は判断。
複製ないし翻案にあたるとして、複製権ないし翻案権侵害、また、同一性保持権侵害を認めています(47頁以下)。

(2)旧HPコンテンツについて

被告作品集、被告パンフレット、被告特別割引券、被告HPの各文章と旧HPコンテンツの同一性について検討。
複製権ないし翻案権を侵害し、また、同一性保持権の侵害が認められるもの、あるいは、翻案権及び同一性保持権侵害が認められるもの、さらには、複製権及び公衆送信権を侵害するものがそれぞれ認められています(48頁以下)。

(3)著作権法113条6項所定の著作者人格権侵害について

原告Aは、「わさび」「石鹸」という日常品に一竹作品を縮小してラベルとして貼り付けるという被告の行為について、故一竹の名誉・声望を害するとして、著作者人格権侵害とみなされる旨主張しましたが、原告Aは一竹作品の著作者ではなく著作者人格権を有しないとして、裁判所は原告Aの主張を認めていません(50頁)。

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4 明示又は黙示による利用許諾の有無

(1)明示の利用許諾の有無

被告は、原告工房の再生計画案、原告工房及び訴外一竹辻が花と被告との不動産等売買等契約書及び附属合意書の内容に照らせば、原告らは着物(一竹作品及び工房作品)の引渡し日以降に、訴外ICFが着物を撮影する方法によって、着物の著作物を複製することを許諾し、かつ、美術館の運営に必要な範囲で利用することを明示的に許諾したと主張しました(50頁以下)。
この点について、裁判所は、契約締結の主体は訴外ICFであり、訴外ICFから一竹美術館を買い受けた被告が当然に利用許諾を受けることにはならないと判断。また、条項を検討しても、原告らが訴外ICFに対して一竹作品及び工房作品の著作権について明示的に利用許諾したことを認めるに足りないと判断。
明示の利用許諾の存在が否定されています。

(2)黙示の利用許諾の有無

原告らが被告による著作権利用を黙示的に許諾していたとは認められていません(53頁以下)。

(3)旧HPコンテンツの利用許諾の有無

旧HPコンテンツに関する明示的又は黙示的な利用許諾があったことを認めるに足りる証拠はないと判断されています(53頁以下)。

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5 権利濫用の有無

被告は、原告らは訴外Cによる美術館と展示品等の一括購入により十二分に利益を受けており、また、訴外Cが継続的に美術館への資金援助を行っているにもかかわらず、原告らは付属合意書において約した美術館経営等への協力を行わず、著作権侵害を主張して本訴による差止請求及び損害賠償請求を行っているおり、本訴請求は利益の実質的な二重取りであって、権利濫用に当たる旨主張しましたが、裁判所は被告の主張を認めていません(54頁以下)。

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6 著作権法47条の抗弁の成否

被告は、被告小冊子、被告パンフレット及び被告特別割引券が著作権法47条の「小冊子」に当たると主張しましたが、結論としては、いずれも小冊子に当たらないと判断されています(55頁以下)。

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7 著作権法32条1項の抗弁の成否

被告は、被告小冊子、被告パンフレット、被告特別割引券、被告展示案内チラシ、被告イベント案内チラシ及び被告Facebookへの投稿における一竹作品等の複製は、著作権法32条1項の「引用」に当たると主張しました(56頁以下)。
この点について、裁判所は、いずれも一竹美術館の顧客誘引目的に作成されたものであり、それらにおける一竹作品等の利用は引用にあたらないと判断しています。

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8 損害額等

裁判所は、被告の過失を認定した上で、以下のように被告による各商品の販売等に関して原告らの損害額を認定しています(57頁以下)。

(1)被告作品集(114条1項、慰謝料)

原告A 547万5421円
原告工房 40万5465円

(2)被告小冊子(114条1項)

原告A 104万7623円

(3)被告絵葉書(114条2項)

原告A 462万2203円

(4)被告一筆箋(114条2項)

原告A 合計126万8600円

(5)被告ハンカチ(114条2項)

原告A 合計15万5240円

(6)被告カレンダー(114条3項)

原告A 34万9807円
原告工房 6万3291円

(7)被告クリアファイル(114条3項)

原告A 24万5744円

(8)被告わさびチューブ(114条3項)

原告A 5万3462円

(9)被告石鹸(114条3項)

原告A 6万8040円
原告工房  8424円

(10)被告シール(114条3項)

原告工房 5000円

(11)被告入場券(114条3項)

原告A 3万5700円

(12)被告しおり(114条3項)

原告A 8500円

(13)被告ポスター(114条3項)

原告A 3万7500円

(14)被告パンフレット(114条3項、慰謝料)

原告A 7万6214円
原告工房  6485円

(15)被告特別割引券(114条3項、慰謝料)

原告A 17万0800円

(16)被告展示案内チラシ(114条3項)

原告A 12万2400円

(17)被告イベント案内チラシ(114条3項)

原告A  7万1400円
原告工房 3万5700円

(18)被告 Facebook への投稿(114条3項)

原告A 18万7500円
原告工房 6万3750円

(19)被告HPへの掲載(114条3項)

原告A 15万9000円

(20)弁護士費用相当額損害

原告A 140万円
原告工房 10万円

(合計)
原告A 合計1555万5154円
原告工房合計  68万8115円

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9 消滅時効の成否

平成28年3月28日、原告Aから被告への通知より3年前の平成25年3月28日以前の損害賠償請求権について、時効消滅していると被告は主張しましたが、裁判所は認めていません(79頁)。

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10 差止めの必要性

主文第1項ないし第3項掲記の差止めの必要が認められています(79頁以下)。

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■コメント

山梨県南都留郡富士河口湖町に所在する久保田一竹美術館が舞台の事案。
久保田一竹美術館 ITCHIKU KUBOTA ART MUSEUM

美術館の運営会社が経営難となり、美術館の不動産や着物作品などの所有権を第三者に譲渡したものの、美術館の展示作品の著作権利用について、著作権者と事前に明確な取り決めがされていなかった(51頁以下参照)ことから紛争になった事案となります。
そもそも、譲渡の対象に美術館の「事業」が含まれていたのかどうかという点で、両者の認識に齟齬があります(33頁参照)。
損害額算定の対象となった著作権の利用態様をみてもわかるように、美術館運営引き継ぎにあたっては、権利処理について十分な事前協議が必要になることが分かります。

いずれにしても、本当に当初から作品の著作権の取扱いに関して、黙示的にでも何らかの取り決めが認定できなかったのかどうか、原審の判断の行方について知財高裁の判断を注視したいと思います。

なお、制作過程や美術館を撮影した写真について、その著作物性が否定されており、別紙2に掲載されています。スナップ写真のレベルですが、著作物性を否定した原審の判断については、疑問が残ります。
written by ootsukahoumu at 06:17|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月11日

消防支援車警告シール事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

消防支援車警告シール事件(控訴審)

知財高裁平成30.6.20平成29(ネ)10103等損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第2部
裁判長裁判官 森 義之
裁判官    佐野 信
裁判官    熊谷大輔

*裁判所サイト公表 2018.7.4
*キーワード:プログラム、説明書、ステッカー、シール、著作物性、編集著作物性、一般不法行為論

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■事案

消防支援車のプログラムやタッチパネル画面、説明書、警告シールなどの著作物性が争点となった事案の控訴審

控訴人兼附帯被控訴人(1審原告):自動車部品製造会社
被控訴人兼附帯控訴人、被控訴人(1審被告):自動車部品製造会社、電子機器製造会社

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■結論

本件控訴棄却、本件附帯控訴棄却

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■争点

条文 著作権法2条1項1号、12条1項、民法709条

1 不当な価格での入札による原告の利益の侵害の有無
2 資料流用による原告の利益の侵害の有無
3 1審原告車両の形態等の模倣による1審原告の利益の侵害
4 1審原告タッチパネル画面、1審原告説明書又は1審原告警告シールの利用による1審原告の利益の侵害
5 1審原告プログラム(1)についての著作権侵害の有無
6 1審原告プログラム(2)についての著作権侵害の有無
7 1審原告タッチパネル画面についての著作権侵害の有無
8 1審原告説明書についての著作権侵害の有無
9 1審原告警告シールについての著作権侵害の有無
10 1審被告らの故意過失及び関連共同の有無
11 1審原告の損害額


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■事案の概要

『本件は,キャンピングカー及び特殊車両等の製造等を行っている控訴人が,消防庁における消防用特殊車両の製造に係る一般競争入札に参加して落札し,自ら上記車両を製造し,これを消防庁に納入した被控訴人トノックス及びその製造に関与した被控訴人マルチデバイスに対し,被控訴人トノックスは,不当に安い金額で上記落札をしたほか,上記車両の製造に当たり控訴人から提供を受けた資料を流用し,また,被控訴人らは,上記車両の製造に当たって,控訴人が著作権を有する制御プログラム,タッチパネル画面,取扱説明書及び警告用のシールを複製,翻案したと主張して,主位的に,上記一連の行為は不法行為を構成するとして,不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,719条1項前段)として,予備的に,上記各著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条,719条1項前段,著作権法114条1項又は3項)として,損害金4億6750万円及びこれに対する不法行為の日又はその後の日である平成25年2月13日(被控訴人トノックスが上記車両を消防庁に納車した日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。』
『原審は,上記警告用シールの著作権侵害による不法行為に基づく請求のうち,被控訴人トノックスに対して12万7000円及びこれに対する上記平成25年2月13日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める請求を認容し,その余の請求をいずれも棄却したところ,控訴人が本件控訴を,被控訴人トノックスが本件附帯控訴をそれぞれ提起した。』
(2頁以下)

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■判決内容

<争点>

各争点について、結論としては、原審の判断を維持しています。

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■コメント

原審の判断が維持されていて、警告シールについてだけ著作権侵害と損害が肯定されています。

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■過去のブログ記事

2017年12月25日
原審記事
written by ootsukahoumu at 06:21|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月09日

「壁ドン」イラスト無断使用事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「壁ドン」イラスト無断使用事件

東京地裁平成30.6.7 平成29(ワ)39658 損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官    安岡美香子
裁判官    大下良仁

*裁判所サイト公表 2018.7.2
*キーワード:イラスト、損害論

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■事案

サイトでイラストを無断で使用したとして損害額などが争点となった事案

原告:イラストレーター
被告:インターネットメディア事業会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法23条、114条3項

1 原告は被告が本件各イラストを本件サイトに掲載することを許諾していたか
2 損害額

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■事案の概要

『本件は,原告が,被告に対し,被告が運営するウェブサイト(以下「本件サイト」という。)に,原告が著作権を有するイラスト3点(以下「本件各イラスト」と総称する。)を掲載した行為が送信可能化権(著作権法23条1項)の侵害に当たると主張して,民法709条及び著作権法114条3項に基づき,損害賠償金99万円及びこれに対する不法行為日(本件各イラストを掲載した日)である平成26年7月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H26.07 被告が本件各イラストを本件サイトに掲載
H29.06 被告が掲載取り止め

本件サイト:「ガールズVIPまとめ」

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■判決内容

<争点>

1 原告は被告が本件各イラストを本件サイトに掲載することを許諾していたか

被告は、原告のツイッター上の言動から、原告は被告が本件各イラストを掲載することを許諾していたと反論しましたが、裁判所は、当該コメントによって、原告が被告による本件各イラストを本件サイトに掲載することを許諾していたと認めることはできず、他に原告が被告による本件各イラストの掲載を許諾していた事実を認めるに足りる証拠はないとして、被告の主張を認めていません(6頁)。

結論として、被告は原告が著作権を有する本件各イラストを本件サイト上に掲載することによって、本件各イラストに係る送信可能化権(著作権法23条1項)を故意又は過失により侵害したと判断されています。

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2 損害額

・著作権法114条3項に基づく損害
合計27万円(1年当たりの使用料3万円×3点×3年分)

・弁護士費用相当額損害額
3万円

合計30万円が損害額として認定されています(7頁以下)。

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■コメント

いわゆるまとめサイトでのイラストの無断使用の事案ですが、被告のサイトを見る限り、他所から引っ張ってきたコンテンツばかりで、独自コンテンツがあるのかもはっきりせずで、どのような態様で3年間に亘ってイラストを使用していたのかが、判決文からもよく分からない案件です。
written by ootsukahoumu at 06:37|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年07月06日

ClariS「ヒトリゴト」無断配信発信者情報開示請求事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ClariS「ヒトリゴト」無断配信発信者情報開示請求事件

東京地裁平成30.6.15平成30(ワ)5939発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第40部
裁判長裁判官 佐藤達文
裁判官    三井大有
裁判官    今野智紀

*裁判所サイト公表 2018.6.29
*キーワード:プロバイダ責任制限法、送信可能化権、レコード製作者

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■事案

レコード製作会社6社が音源の無断配信者の情報開示をプロバイダに請求した事案

原告:レコード製作会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

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■争点

条文 著作権法23条、プロバイダ責任制限法4条1項

1 権利侵害の明白性
2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

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■事案の概要

『本件は,別紙対象目録に係る各レコードの送信可能化権を有すると主張する原告らが,氏名不詳者が上記各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動公衆送信し得る状態にした行為により上記送信可能化権を侵害されたことが明らかであり,権利の侵害に係る発信者情報の開示を受ける正当な理由があると主張して,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,経由プロバイダである被告に対し,上記発信者情報の開示を求める事案である。』
(1頁)

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■判決内容

<争点>

1 権利侵害の明白性

本件各発信者は、本件各レコードを圧縮して複製したファイルをコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置した上で被告の提供するインターネット接続サービスを利用し、同ファイルを自動的に送信し得る状態に置いたとの事実が認められると裁判所は判断。
裁判所は、同行為によって原告らが有する本件各レコードの送信可能化権が侵害されたことが明らかであると判断しています(3頁)。

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2 発信者情報開示を受けるべき正当理由の有無

原告らは、本件各発信者に対して著作権(送信可能化権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権等を有するところ、原告らが本件各発信者に対してその権利を行使するためには本件各発信者情報の開示が必要である。
そして、本件発信者に対してインターネット接続サービスを提供していた被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に当たり、本件各発信者情報を保有しているものと認められると裁判所は判断。
裁判所は、原告らの被告に対する本件各発信者情報開示を認めています。

なお、開示すべき発信者情報について、被告は電子メールアドレスの開示を受ける必要はないと主張しましたが、プロバイダ責任制限法4条1項に係る総務省令においては、電子メールアドレスも侵害情報の発信者の特定に資する情報として規定されている上、転居などの事情によって本件発信者の実際の住所が被告が本件発信者の住所として保有しているものと異なる可能性もあることに照らすと、電子メールアドレスの開示が不要ということはできないと判断。
結論として、原告らには被告から本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると判断しています(3頁以下)。

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■コメント

レコード会社6社のClariS「ヒトリゴト」や水樹奈々「TESTAMENT」といった音源をファイル交換共有ソフトウェアであるShare互換ソフトウェアで送信可能化した事案となります。
written by ootsukahoumu at 06:49|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年06月28日

「トムとジェリー」DVD無許諾販売事件−著作権 著作権侵害差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「トムとジェリー」DVD無許諾販売事件

東京地裁平成30.5.31平成28(ワ)20852著作権侵害差止等請求事件PDF
別紙1

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    高桜慎平
裁判官    広鹵人

*裁判所サイト公表 2018.6.12
*キーワード:共同事業合意書、過失、限界利益、侵害者利益相当額、著作権使用料相当額

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■事案

アニメDVDに関する共同事業合意書の確認に関して過失の有無などが争点になった事案

原告:映像ソフト販売会社ら
被告:映像制作会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法113条1項1号、114条2項

1 著作権侵害の有無
2 過失の有無
3 損害額(著作権法114条2項)
4 不当利得額(著作権使用料相当額)

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■事案の概要

『本件は,別紙原告ら著作物目録記載の「トムとジェリー」の各アニメーション作品(以下「本件アニメーション作品」という。)の日本語台詞原稿(以下「本件著作物」という。)の著作権を各2分の1の割合で共有する原告らが,本件著作物(台詞原稿)を実演した音声を収録した別紙被告商品目録記載の各DVD商品(以下,まとめて「被告商品」という。)を製造,販売,輸入する被告の行為が著作権侵害(製造につき複製権侵害,販売につき譲渡権侵害,輸入につき著作権法113条1項1号の著作権侵害とみなされる行為)に当たると主張して,被告に対し,(1)著作権法112条1項に基づき,被告商品の輸入,製造及び販売の差止めを求めるとともに,(2)提訴の3年前の日である平成25年6月24日以降の販売分につき民法709条,著作権法114条2項に基づき,損害賠償金4179万6000円及びこれに対する平成28年7月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,また,(3)それより前である平成25年6月23日までの販売分につき民法703条に基づき,不当利得金(著作権使用料相当額)715万9228円及びこれに対する平成28年10月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。』
(3頁)

<経緯>

H22 原告らがコンテンツ提供契約締結
   原告アートステーションが台詞原稿、日本語字幕及び日本語音声収録原盤を制作
H23 被告商品販売
H24 原告らが被告に対して警告書通知
H24 被告代理人が原告ら代理人にFAX送信
   被告代理人が原告ら代理人と面談し共同事業合意書等を説明
H27 原被告らが別作品の許諾合意(使用料率10%)
H28 原告らが本訴提起

被告商品目録
1 「15のおはなし トムとジェリー ドタバタ大作戦」
2 「15のおはなし トムとジェリー わくわくランド」
3 「たのしいアニメ 100本立て DVD3枚組」

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■判決内容

<争点>

1 著作権侵害の有無

被告は、原告らに無断で韓国において原告商品に収録された本件アニメーション作品の日本語音声をその映像とともに複製して被告商品を製造し、日本国内で頒布する目的で輸入して、これを販売していると裁判所は認定。
原告商品に収録された本件アニメーション作品の日本語音声を複製することは本件著作物(台詞原稿)を複製にあたり、被告は国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとしたならば複製権侵害となるべき行為によって作成された物である被告商品を輸入していることから、上記輸入行為は原告らの著作権を侵害する行為とみなされる(著作権法113条1項1号)と判断。
また、被告商品を国内で販売する行為は原告らの譲渡権(同法26条の2)を侵害すると判断。
結論として、被告は本件被告行為により原告らの著作権を侵害していると判断されています(20頁)。

   --------------------

2 過失の有無

被告は、平成24年10月に原告らから被告商品1及び2の製造・販売について原告らの著作権を侵害する旨の警告を受けていましたが、被告代理人から同年12月に原告ら代理人に対して、被告商品1及び2の製造・販売は訴外メディアジャパンの有効な使用許諾に基づくもので著作権侵害に当たらない旨の説明を訴外メディアジャパンから受けており、その説明内容が概ね信用できると認識していることを一方的に説明しているのみで、原告らないし原告ら代理人が被告の説明に納得して上記警告を撤回したとか、あるいは、被告商品1及び2の製造・販売が著作権侵害に当たらないことを確認したなどといった事情はなく、単に本訴提起に至るまで被告に対して著作権侵害を更に主張しなかったというにすぎないと裁判所は経緯等を認定。
さらに、共同事業合意書には両代表者の記名のみで押印がないことや原告アートステーション代表者の訴外A宛てメールでは共同事業合意書が未締結である旨記載されている点も認定。
被告がビデオ・映画等の制作・配給・販売・賃貸並びに輸出入業務等を業としており、被告商品の輸入・販売に際して高度の注意義務を負担していることも勘案して、被告商品の輸入・販売を継続した被告には著作権侵害について過失があると認めています(20頁以下)。

   --------------------

3 損害額(著作権法114条2項)

著作権侵害に基づく著作権法114条2項(侵害者の利益に相当する損害)による原告らの損害は、各原告につき、62万4357円と認定されています(23頁以下)。

ア 被告商品1及び2
(929枚+889枚)×248.53円=45万1827円
各原告につき,22万5913円
イ 被告商品3
8572枚×332.91円×0.24=68万4889円
各原告につき、34万2444円
ウ 弁護士費用
各原告につき、5万6000円
エ 合計
各原告につき、62万4357円

   --------------------

4 不当利得額(著作権使用料相当額)

原告らの不当利得額(使用料相当損害額)は、各原告につき、52万5938円と認定されています(27頁以下)。

ア 被告商品1及び2
(2678枚+2619枚)×50円=26万4850円
イ 被告商品3
3万3462枚×98円×0.24=78万7026円
ウ 合計 105万1876円
各原告につき、52万5938円

   --------------------

■コメント

株式会社メディアジャパンと有限会社アートステーションとの間の共同事業合意書の成立は別訴で否定されていますが、共同事業合意書の成否が定かではない時期の販売部分が、結果として無許諾利用となった事案となります。

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■過去のブログ記事

保護期間が満了したアニメ映画「トムとジェリー」に日本語吹き替え音声を付したDVDの制作を巡って共同事業契約の成否が争われた事案の控訴審

知財高裁平成28.2.17平成27(ネ)10115著作権侵害差止等請求控訴事件、同附帯控訴事件
控訴人兼附帯被控訴人 株式会社メディアジャパン
被控訴人兼附帯控訴人 有限会社アートステーションら

2016年02月26日記事
「トムとジェリー」格安DVD事件(控訴審)
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2018年06月20日

かっぱえびせんキャッチフレーズ事件−著作権 著作者人格権確認等請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

かっぱえびせんキャッチフレーズ事件

東京地裁平成30.3.26平成29(ワ)25465著作者人格権確認等請求事件PDF

東京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 嶋末和秀
裁判官    伊藤清隆
裁判官    天野研司

*裁判所サイト公表 2018.ー.ー
*キーワード:確認の利益、キャッチフレーズ

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■事案

広告キャッチフレーズの制作者の事実の確認等を巡って争われた事案

原告:個人
被告:食品会社

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■結論

請求却下、棄却

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■争点

条文 民法709条

1 原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴えは適法か
2 被告は原告に対し原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であるとの事実を被告の社内報に掲載する旨を約したか
3 本件番組の放送及び本件新聞記事の掲載につき被告に名誉毀損の不法行為が成立するか
4 被告が本件各書面を原告に送付した行為につき侮辱の不法行為が成立するか

   --------------------

■事案の概要

『本件は,原告が,(1)被告が製造し販売するスナック菓子「かっぱえびせん」の広告用に昭和39年に制作されたテレビコマーシャル(以下「本件CM」という。)は,当時株式会社大広(以下「大広」という。)の放送制作部に所属していた原告が制作したものであるとして,被告に対し,原告が本件CMを制作した事実の確認を求め,(2)被告は,原告との間で,原告がかっぱえびせんのキャッチフレーズである「やめられない,とまらない」のフレーズ(以下「本件キャッチフレーズ」という。)を考えた本人であるとの事実を被告の社内報に掲載することを約したのにこれを行っていないとして,被告に対し,被告の社内報及びホームページへの上記事実を記載した記事の掲載を求め,(3)被告は,毎日新聞及び日本テレビをして本件キャッチフレーズが被告の社内会議にて誕生した旨を報道させ,原告の名誉を毀損したとして,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金7500万円の支払を求め,(4)被告は,原告に対して複数の書面を送付し,原告を侮辱したとして,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金7500万円の支払を求めた事案である。』
(2頁)

<経緯>

H23 かっぱえびせん由来のテレビ再現ドラマ放送
H24 被告が原告に原告作成書面を返送
H26 被告と原告代表が面会
H28 かっぱえびせん由来の新聞記事掲載

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■判決内容

<争点>

1 原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴えは適法か

本件訴えのうち、原告が本件CMを制作した事実の確認を求める訴えは不適法であると裁判所は判断しています(8頁以下)。

なお、付言として、仮に原告が本件CMを制作した事実ではなくて、原告が本件CMにつき著作権ないし著作者人格権を有することの確認を求めているとしても、被告はアストロミュージックから許諾を受けて本件キャッチフレーズを使用しているにとどまり、本件CMについて被告が著作権ないし著作者人格権を有するなどとは主張していないことから、原告が有する権利又は法律上の地位に存する危険又は不安を除去するために本件CMの著作権ないし著作者人格権の存否につき被告との間で確認判決を得ることが必要かつ適切であるとは認め難いと裁判所は判断。この場合も確認の利益を欠くものとして不適法であると判断しています(8頁以下)。

   --------------------

2 被告は原告に対し原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であるとの事実を被告の社内報に掲載する旨を約したか

被告の社内報及びホームページに原告が本件キャッチフレーズを考えた本人であるとの事実を掲載することを求める原告の請求は認められていません(9頁以下)。

   --------------------

3 本件番組の放送及び本件新聞記事の掲載につき被告に名誉毀損の不法行為が成立するか

本件番組及び本件新聞記事の内容が原告の社会的評価を低下させるものと認めることはできないとして、被告による名誉毀損を原因とする原告の請求は認められていません(10頁)。

   --------------------

4 被告が本件各書面を原告に送付した行為につき侮辱の不法行為が成立するか

被告の書面での表現行為が社会生活上許される限度を超えた侮辱行為であると認めることはできないとして、被告による侮辱を原因とする原告の請求は認められていません(10頁以下)。

結論として、原告が本件CMを制作した事実の確認を求める部分は不適法であるからこれを却下することとし,その余の請求にはいずれも理由10
がないからこれらを棄却

   --------------------

■コメント

原告は、「やめられない、とまらない、かっぱえびせん」のキャッチフレーズを制作したのは自分であると主張しましたが、本人訴訟ということもあり、主張立証が尽くされていません。
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「リアリ・スティック」ファイル交換共有ソフトShare不正配信事件−著作権 発信者情報開示請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

「リアリ・スティック」ファイル交換共有ソフトShare不正配信事件

東京地裁平成30.5.24平成30(ワ)6456発信者情報開示請求事件PDF

東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 柴田義明
裁判官 安岡美香子
裁判官 佐藤雅浩

*裁判所サイト公表 2018.06.11
*キーワード:プロバイダ責任制限法、レコード原盤、送信可能化権

   --------------------

■事案

TVアニメ「クロムクロ」EDテーマ「リアリ・スティック」/MICHI.rar」音楽ファイルを不正配信した発信者情報開示請求の事案

原告:レコード会社
被告:プロバイダ

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■結論

請求認容

   --------------------

■争点

条文 プロバイダ責任制限法4条1項、著作権法23条

1 送信可能化権の侵害の有無
2 開示を受けるべき正当な理由の有無

   --------------------

■事案の概要

『本件は,レコード制作会社である原告が,原告が送信可能化権を有するレコードに収録された楽曲を氏名不詳者が無断で複製した上でコンピュータ内の記録媒体に記録して蔵置し,被告の提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信し得る状態にしたことから,上記送信可能化権が侵害されたことは明らかである等と主張して,被告に対し,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき,発信者情報の開示を求める事案である。』
(2頁)

<経緯>

H28.05 原告がMICHI歌唱楽曲「リアリ・スティック」制作販売
H29.08 本件利用者がファイル交換共有ソフトShareで不正送信

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 送信可能化権の侵害の有無

本件利用者が、原告の本件レコードに係る送信可能化権を侵害したことは明らかであり、本件記録を精査しても同送信可能化行為について著作隣接権の権利制限事由が存在することはうかがわれず、その他上記判断を覆すに足りる事情は見当たらないと裁判所は判断。
送信可能化権の侵害を肯定しています(4頁)。

   --------------------

2 開示を受けるべき正当な理由の有無

本件利用者の氏名、住所等がいずれも不明であることから、原告が上記侵害に基づく損害賠償請求権等を行使するために本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものと裁判所は判断(4頁以下)。

結論として、原告の請求を認容しています。

   --------------------

■コメント

ファイル交換共有ソフトであるShare互換ソフトウェアを利用して、TVアニメ「クロムクロ」EDテーマ「リアリ・スティック」/MICHI.rar」音楽ファイルを不正配信した発信者の情報開示請求の事案です。
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2018年06月14日

JASRAC放送包括許諾契約行政訴訟事件(控訴審)−著作権 是正処置命令等義務付け請求及び法律構成の矛盾等是正控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

JASRAC放送包括許諾契約行政訴訟事件(控訴審)

知財高裁平成30.2.27平成29(行コ)10003是正処置命令等義務付け請求及び法律構成の矛盾等是正控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第1部
裁判長裁判官 清水 節
裁判官    中島基至
裁判官    岡田慎吾

*裁判所サイト公表 2018.6.11
*キーワード:義務付け訴訟、処分性

   --------------------

■事案

放送事業者とJASRACの間の包括許諾契約に関する行政庁の行政行為の処分性の有無が争点となった事案の控訴審

控訴人(1審原告) :個人
被控訴人(1審被告):国

   --------------------

■結論

控訴棄却

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■争点

条文 行政事件訴訟法3条6項1号

1 行政行為の処分性の有無

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■事案の概要(控訴の趣旨)

『別紙控訴状写しの「控訴の趣旨」記載のとおりであり,要するに,本件各訴えを却下した原判決を取り消した上で,控訴人は,放送事業者と一般社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)との間の包括的な許諾による利用許諾契約(以下「包括許諾契約」という。)に基づく音楽著作物の使用料の徴収方法に多大な誤りがあり,その誤りの要因が著作権法の条文の誤りにあるなどと主張して,原審における請求と同様に,被控訴人に対し,法務大臣を処分行政庁として,法務省,文化庁,公正取引委員会及びJASRACに対する包括許諾契約に基づく徴収方法の是正処置命令を発することの義務付け(請求の趣旨第1項)を求めるとともに,法務省を処分行政庁として,公正取引委員会及びJASRACに対する包括許諾契約に基づく徴収方法の排除,除去,及び著作権法改正の是正処置命令を発することの義務付け(同第2項)を求めるものと解される(控訴の趣旨第3項)。なお,JASRACが,国に対し,罰金を支払うことなどを内容とする控訴状の記載部分(控訴の趣旨第4項)については,被控訴人のみが被告とされた原審における請求の趣旨等に照らし,当審において,追加的に請求するものではないと解される。』
(2頁)

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 行政行為の処分性の有無

控訴審でも控訴人の主張する各是正処置命令はいずれも処分性を欠くものであるとして、本件各訴えはいずれも不適法なものであると判断されています(3頁)。

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■コメント

控訴審は、本件各訴えをいずれも却下した原判決は相当であると判断しています。

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■過去のブログ記事

東京地裁平成29.10.11平成29(行ウ)165是正処置命令義務付け請求事件及び法律構成の矛盾等是正事件
原審記事
written by ootsukahoumu at 07:13|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年06月11日

FX取引自動売買ソフト無断複製事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

FX取引自動売買ソフト無断複製事件

東京地裁平成30.4.26平成28(ワ)44243等損害賠償請求事件PDF

東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官 沖中康人
裁判官    矢口俊哉
裁判官    広瀬達人

*裁判所サイト公表 2018.−.−.
*キーワード:プログラム著作物、著作者性、名誉毀損

   --------------------

■事案

外国為替証拠金取引(FX取引)自動売買ソフトウェアの無断複製の有無が争点となった事案

原告(反訴被告):個人
被告(反訴原告):個人

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■結論

本訴請求棄却、反訴一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項2号

1 本件プログラムの著作者は原告か
2 本案前の争点(反訴要件の有無)
3 被告に対する名誉棄損の不法行為の成否
4 被告の損害

   --------------------

■事案の概要

『本件は,(1)原告が,自らの作成に係る別紙1(甲12の1。以下「本件本体部分」という。)及び別紙2(甲12の2。以下「本件ライブラリ部分」という。)の各ソースコードから成るプログラム(以下「本件プログラム」という。)の著作権を有しているところ,被告において原告の許諾なく本件プログラムを複製して販売していることが,原告の上記著作権(複製権又は譲渡権)を侵害すると主張して,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金209万3600円及びこれに対する不法行為日以後である平成28年8月16日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(本訴)のに対し,(2)被告が,原告において被告と交わした電話での通話内容(原告が被告による上記著作権侵害を主張する内容である。)を録音してインターネット上で配信等した行為が被告の名誉権及びプライバシー権を侵害すると主張して,原告に対し,不法行為に基づく損害賠償金55万円及びこれに対する不法行為後である平成29年3月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(反訴)事案である。』
(2頁)

<経緯>

H28.10 原告が被告に電話
    原告がニコニコ生放送、YouTubeにやりとりの動画を投稿

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 本件プログラムの著作者は原告か

裁判所は、本件プログラムに著作物性が認められるとしても、具体的なソースコードの作成の大部分をCが担当しているなどとして、原告が創作性を主張する「本件手法メモ部分をプログラムとして記述した部分」の著作者が原告であると認めることはできないと判断。結論として原告の著作者性を否定し、原告の本訴請求を認めていません(8頁以下)。

   --------------------

2 本案前の争点(反訴要件の有無)

原告は、本件反訴が「本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合」に当たらないと主張しましたが、裁判所は、本件反訴は本訴の目的である著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求に係る請求権の行使又は催告等が、その態様に照らして原告の名誉権又はプライバシー権を侵害する不法行為に当たると主張して損害賠償を求めるものであるとして、本件本訴の目的である請求と関連する請求を目的とするものであると認めています(10頁)。

   --------------------

3 被告に対する名誉棄損の不法行為の成否

原告は動画配信サイトに被告との電話での通話内容を投稿していましたが、本件配信及び本件投稿に係る動画中における原告の発言は、被告が原告の著作権を侵害したとの印象を与えるなど、被告の社会的評価を低下させるに足るものと認められるとして、裁判所は被告に対する名誉棄損の不法行為を構成するものと認めています(10頁以下)。

   --------------------

4 被告の損害

被告に対する名誉棄損の不法行為に関する損害額として、慰謝料10万円と弁護士費用相当額損害2万円の合計12万円が被告の損害として認定されています(11頁)。

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■コメント

原告は本人訴訟ということもあって、プログラムの創作性やソースコードを作成したCと原告との権利関係といった点について主張立証が尽くされていない印象です。

written by ootsukahoumu at 08:35|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年06月10日

ジャコ・パストリアス音楽原盤権利処理事件−著作権 損害賠償請求事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

ジャコ・パストリアス音楽原盤権利処理事件

大阪地裁平成30.4.19平成29(ワ)781損害賠償請求事件PDF

大阪地方裁判所第26民事部
裁判長裁判官 高松宏之
裁判官    野上誠一
裁判官    大門宏一郎

*裁判所サイト公表 2018.−.−.
*キーワード:レコード製作者、著作隣接権、注意義務、過失、損害論

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■事案

映画のBGMに使用した音源の権利処理について、その調査確認義務を怠ったかどうかが争点となった事案。

原告:レコード会社
被告:映画製作配給会社

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■結論

請求一部認容

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■争点

条文 著作権法2条1項6号、96条、114条3項

1 原告が本件音源につきレコード製作者の権利を有するか否か
2 被告が本件音源を複製するにつき過失があったといえるか否か
3 原告の損害額

   --------------------

■事案の概要

『本件は,レコード会社である原告が,自己が販売する音楽CDに収録されている楽曲がBGMとして使用されている映画を複製した,外国映画の配給会社である被告に対し,レコード製作者の権利(複製権)侵害を理由として,民法709条に基づき,損害賠償金635万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成29年2月26日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(1頁以下)

<経緯>

H04 原告がP1とマスターレコーディング譲渡契約締結
H05 原告が「Holiday for Pans」(本件CD)販売
   本件CDにはジャコ・パストリアス演奏の本件楽曲収録
H26 トラバース社から委託を受けたスラング社がジャコのドキュメンタリー映画「JACO」に本件楽曲の音源をBGMとして使用
H27 P2から原告に許諾要請。原告は拒絶
H28 スラング社と被告が本件映画のライセンス契約締結。
   被告がスラング社からフィルム原版の送付を受け複製
   原告が被告に対して本件映画の配給中止等を通知
   被告が日本の映画館で上映

   --------------------

■判決内容

<争点>

1 原告が本件音源につきレコード製作者の権利を有するか否か

裁判所は、原告が本件音源のレコード製作者としてその権利を原始取得したとは認められないものの、レコード製作者の権利を有するP1からその権利を譲り受けたことによって、本件音源についてレコード製作者の権利を取得した(承継取得)と判断しています(7頁以下)。

   --------------------

2 被告が本件音源を複製するにつき過失があったといえるか否か

裁判所は、外国映画の配給会社が複製しようとする映画に使用されている楽曲等の権利処理について、その処理が完了していないのではないかと合理的に疑わせる事情もない段階では、当該映画を複製するに先立って当該映画に使用されている楽曲等の権利処理が完了しているか否かを確認する注意義務を当該会社が負うとは認められないと説示。
その上で、本件の事情に照らすと、本件音源の権利処理が完了していないのではないかという合理的に疑わせる事情が存在し、被告はそのような事態を十分予見することができたとして、上記疑いを合理的に払拭できるまで調査、確認を尽くし、その疑いが払拭できないのであれば、本件音源の複製を差し控えるべき注意義務を負っていたと判断。結論として、上記注意義務を怠った過失があると判断しています(14頁以下)。

侵害論に関して、被告には原告のレコード製作者の権利を侵害するにつき過失があり、被告は原告に対して不法行為に基づく損害賠償責任を負うと裁判所は判断しています。

   --------------------

3 原告の損害額

損害論に関して、裁判所は、許諾料相当額損害(著作権法114条3項)として2万円を認定しています(22頁以下)。

   --------------------

■コメント

問題となったエレクトリック・ベース・プレイヤー、ジャコ・パストリアスのドキュメンタリー映画の予告編がyoutubeにあるので、どういう内容かが分かります。
「ベーシスト、ジャコ・パストリアスのドキュメンタリー!映画『JACO』予告編」
予告編
映画「ジャコ」公式サイト

原告はジャコ演奏の音源のマスターテープを所持していて、平成5年から音楽CDを販売していました。映画でのBGM使用について映画制作側から原告へ事前に権利処理の申し出の経緯がありました。また、映画のエンドロールには(無許諾ですが)原告レーベルの許諾表示がありました。
これに対して、被告側は、ジャコ・パストリアスの遺族等との間で原盤の利用について権利処理が整っていると反論しましたが、結論としては、被告側に許諾状況の調査確認義務違反に関する過失が認められています。
原盤の権利処理について演奏家の遺族も絡んで微妙な点を孕んでいますが、侵害論での反論内容、また損害論として損害額2万円という判決は、結論としては負けてはいない内容になるのではないでしょうか。さすが骨董通り法律事務所です。
和解となるかもしれませんが、控訴審の判断が注目されます。
written by ootsukahoumu at 06:07|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年06月08日

芸能プロダクション業務提携解消事件−著作権 業権確認等請求事件等判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

芸能プロダクション業務提携解消事件

大阪地裁平成30.5.10平成28(ワ)5587営業権確認等請求事件等PDF
別紙1 歌詞目録2
別紙2 楽曲目録
別紙3 動産目録
別紙4 CD販売一覧表

大阪地方裁判所第21民事部
裁判長裁判官 森崎英二
裁判官    野上誠一
裁判官    大川潤子

*裁判所サイト公表 2018.6.4
*キーワード:プロダクション、業務提携解消、合意

   --------------------

■事案

芸能プロダクション業務における業務提携解消の際の合意内容が争点となった事案

原告:プロダクション事業者
被告:芸能プロダクション、代表取締役P2

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■結論

請求一部認容

   --------------------

■争点

条文 民法415条

1 本件グループの各メンバーと被告モデル屋本舗との間に別紙契約目録記載の各契約が存在するか
2 原告は別紙債務目録記載1の債務を被告モデル屋本舗に対し同目録記載2、3の債務をP2に対して負っているか
3 原告は別紙動産目録記載の動産について所有権を有するか
4 原告は別紙楽曲目録記載の楽曲及び別紙歌詞目録記載の歌詞について著作権を有するか
5 被告モデル屋本舗は別紙不動産目録記載の不動産について転借権を有するか
6 平成26年11月28日にされた合意又はその債務不履行に基づく被告モデル屋本舗の原告に対する請求権の存否

   --------------------

■事案の概要

『本件本訴請求事件は,別紙本件グループメンバー表記載のグループ名のアイドルグループ(以下「本件グループ」という。)に属する同表記載1ないし7のメンバー(以下,各メンバーを同表の番号に従い,「メンバー1」などという。)とマネジメント契約を締結している原告が,被告モデル屋本舗に対し,上記第1の1(1)ないし(6)で特定される権利義務の存在ないし不存在の確認を求めるほか,P2に対しては別紙債務目録記載2,3の債務が存在しないことの確認を求めた事案である。
 本件反訴請求事件は,上記原告の主張を争う被告モデル屋本舗が,原告に対し,(1)本件グループの公演1回当たり1万円を支払うとの合意に基づく未払分の197万円,(2)CDの売上げに伴う支払についての合意に基づく未払分の300万0500円,及び(3)本件グループが公演場所とする不動産の使用方法の合意の債務不履行に基づく損害434万円の合計額931万0500円並びにうち622万0500円((1)の内金102万円,(2)の内金220万0500円,(3)の内金300万円の合計額)に対する反訴状送達の日の翌日である平成29年3月30日から,内金309万円((1)の内金95万円,(2)の内金80万円,(3)の内金134万円の合計額)に対する反訴請求に係る訴えの変更申立書送達の日の翌日である平成30年2月6日から,それぞれ支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。』
(3頁)

<経緯>

H24 被告モデル屋店舗が商店街活性化プロジェクト「DIVA FACTORY」立ち上げ
H24 原告がマネージャーとして関与
H24 本件グループが活動開始。各メンバーが被告モデル屋本舗とマネジメント契約締結
H25 原告が賃借人として本件不動産賃貸借契約締結
H26 メンバーAが本件グループを脱退、本件話合い実施
   本件グループ各メンバーと被告モデル屋本舗間のマネジメント契約解除合意
H27 原告が被告モデル屋本舗宛てに合意書を送信
   被告モデル屋本舗が楽曲及び歌詞の著作物(本件著作物)等の使用拒絶通知書送信
H28 原告が本件訴訟提起

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■判決内容

<争点>

1 本件グループの各メンバーと被告モデル屋本舗との間に別紙契約目録記載の各契約が存在するか

原告は、被告モデル屋本舗とメンバー1ないし7との間の契約という、原告自身が権利義務の主体でない契約の不存在の確認を求めました。
この点について、裁判所は、被告モデル屋本舗とメンバー1ないし7との間の契約が存在しないことが確認されたとしても、原告とメンバー1ないし7との間に契約があることが確認される、すなわち原告の実体法的地位を確保できる関係にあるわけではないとして、原告の求める確認の訴えについて原告に適格があるということはできないと判断。原告のこの点についての訴えは不適法と判断しています(21頁以下)。

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2 原告は別紙債務目録記載1の債務を被告モデル屋本舗に対し同目録記載2、3の債務をP2に対して負っているか

原告と被告モデル屋本舗との間で別紙債務目録記載1の債務の不存在を確認する利益があるとはいえないとして、その確認を求める訴えは不適法であると裁判所は判断。
また、原告とP2との間で別紙債務目録記載2、3の債務の不存在を確認する利益があるとはいえないとして、この点についても、その確認を求める訴えはいずれも不適法であると判断しています(22頁以下)。

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3 原告は別紙動産目録記載の動産について所有権を有するか

本件グループのイベントに来たファンに販売するDVDやグッズといった動産の所有権の帰属について、原告の所有であることが認められていません(23頁以下)。

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4 原告は別紙楽曲目録記載の楽曲及び別紙歌詞目録記載の歌詞について著作権を有するか

本件楽曲の著作権について、本件話合い後も本件楽曲の著作権は被告モデル屋本舗が有していることに変わりはないとして、裁判所は、その権利者であることの確認を求める原告の請求には理由がないと判断しています(24頁以下)。
本件歌詞の著作権については、歌詞1ないし6に関しては、原告が著作者で原始的には著作権者でした。その後、JASRACで管理されていましたが、原告から被告モデル屋本舗への著作権譲渡がされた事実が認定されず、原告が著作権者であると判断されています。
歌詞7に関しては、原告はP3との共同著作であることなどを主張しましたが、結論としては、原告が歌詞7の著作権を有すると認めることはできないと判断されています。
歌詞8ないし13に関しても、原告が著作権を有すると認めることはできないと判断されています。

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5 被告モデル屋本舗は別紙不動産目録記載の不動産について転借権を有するか

被告モデル屋本舗は原告に対して本件不動産の転借権を有していると裁判所は認定。その不存在の確認を求める原告の請求は認められていません(26頁以下)。

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6 平成26年11月28日にされた合意又はその債務不履行に基づく被告モデル屋本舗の原告に対する請求権の存否

被告モデル屋本舗の原告に対する反訴請求について、裁判所は、本件グループが本件不動産で公演をした場合の支払いに関する合意を踏まえ、原告の被告モデル屋本舗に対する未払額は、平成29年3月24日以前の対象公演69回分に相当する69万円と同月25日から平成30年2月8日までの対象公演74回分に相当する74万円とが認定されています(27頁以下)。
また、原告が本件グループのCDを販売した場合の支払いに関する合意に関しては、本件話合い以前に被告らの負担で制作されたCDを対象とした上で、未払額は平成29年3月24日以前に発生した未払分である17万5500円が認定されています。
なお、被告モデル屋本舗が本件不動産を第三者に利用させて収益を得る機会を原告が妨害したとして、その逸失利益の損害賠償を請求する点については、裁判所はこれを認めていません。

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■コメント

アイドルを展開する際に複数のプロダクションが協業する場合(業務提携)がありますが、その協力関係の詳細を細かく取り決めていなかったこともあって、協力関係を解消するにあたり、事後処理内容を合意で細かく詰め切れなかった事案となります。
written by ootsukahoumu at 06:19|この記事のURL知財判決速報2018 

2018年06月02日

タレント宣材写真チラシ使用事件(控訴審)−著作権 損害賠償請求控訴事件判決(知的財産裁判例集)−

最高裁判所HP 知的財産裁判例集より

タレント宣材写真チラシ使用事件(控訴審)

知財高裁平成30.5.28平成30(ネ)10002損害賠償請求控訴事件PDF

知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 高部眞規子
裁判官    山門 優
裁判官    筈井卓矢

*裁判所サイト公表 2018.5.29
*キーワード:写真、使用許諾、プロダクション、移籍、信義則、義務違反

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■事案

タレントの宣材写真の使用にプロダクションが関与していたかどうかが争点となった事案の控訴審

控訴人 (1審原告):芸能プロダクション
被控訴人(1審被告):芸能プロダクション、タレント

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■結論

控訴棄却

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■争点

条文 民法1条2項

1 被控訴人らの不法行為責任等の有無

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■事案の概要

『本件は,本件宣材写真の著作権者であると主張する控訴人が,ホテルセンチュリー静岡ないしその委託先において本件宣材写真の複製物を掲載した本件チラシを作成,頒布したことは,控訴人が有する本件宣材写真の著作権(複製権,譲渡権)の侵害に当たるところ,かかる侵害行為は被控訴人らがホテルセンチュリー静岡ないしその委託先をして行わせた共同不法行為であると主張して,被控訴人らに対し,著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき,損害賠償金330万円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年7月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却した。そこで,控訴人が,原判決を不服として控訴した。』
(2頁)

<経緯>

H17 被控訴人X(タレント)が控訴人に所属
H21 控訴人が被控訴人Xを撮影
H24 被控訴人Xが本件タレント契約を解消
H25 控訴人が被控訴人Xを提訴
H26 SBSプロモーションが本件チラシを制作
   本件イベント開催、被控訴人Xが出演
H28 控訴人請求棄却判決確定

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■判決内容

<争点>

1 被控訴人らの不法行為責任等の有無

控訴審は、タレントである被控訴人XがAに提供し、AがBに提供した本件宣材写真を利用して本件チラシが制作されたとの事実を認めるに足りる証拠はないと認定。かえって、本件チラシに掲載された本件プロフィール写真はSBSプロモーションから本件チラシの制作を依頼されたデザイナーが、Bから伝えられた本件ウェブサイトから取得したものであると判断。本件宣材写真を提供したことによる被控訴人らの責任を否定しています。
また、本件宣材写真のデータをダウンロードさせたことによる被控訴人会社の責任についても、控訴人の主張を認めるに足りる的確な証拠はないとしてこれを否定しています(6頁以下)。

さらに控訴人は、被控訴人Xは、信義則上の義務として控訴人が権利を有する写真等が使用されないよう確認し、防止する義務があったとして義務違反を主張しました。この点について、控訴審は、被控訴人Xにおいて控訴人とのタレント契約を解消したというだけで、
自己の写真について控訴人の著作権侵害がされないように防止する信義則上の義務を負うとまでは認め難いなどとして、控訴人の上記主張を認めていません(8頁)。

結論として、被控訴人らの不法行為責任ないし債務不履行責任は認められていません。

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■コメント

控訴審でも原審の判断が維持されており、移籍元であるタレント事務所の主張は認められていません。
なお、控訴審において旧タレント事務所側は、移籍したタレントには自身の宣材写真の取扱いについて信義則上の注意義務を負うとの主張をしましたが、控訴審では注意義務の存在を認めていません。

さて、原被告いずれの芸能事務所も、ものまねタレントさんに強い事務所で、当事者のタレントさんが誰だったのか、野次馬的に興味を惹くところです。
タレント専属契約関係でここ最近では、広瀬香美さんの新事務所(設立中)移籍に伴う芸名使用制限が話題となっています(株式会社オフィスサーティー「弊社所属アーティスト「広瀬香美」について重要なお知らせ」 http://www.officethirty.com/)。
また、農業アイドルの未成年の女性が自殺して、親御さんが事務所との確執を語っており、胸が痛みます(文春オンライン「母親が告白 農業アイドルだった大本萌景さん(16)は、なぜ自殺しなければならなかったのか」 http://bunshun.jp/articles/-/7433)。

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■過去のブログ記事

2017年12月18日記事
東京地裁平成29.11.29平成28(ワ)35002損害賠償請求事件
原審記事

written by ootsukahoumu at 08:48|この記事のURL知財判決速報2018